それから、10年の月日が流れた。
「てらすさま、テンポ遅かったね!BPMアゲて前日リハするよ!」
「ピーニャくんジョーイさん、遅れてごめんなさい!」
ジョーイさんはスマホから目を離した。
「バス遅延してたんすねー。事故とかじゃなくて良かったっすー」
アカデミーを卒業したあと、ピーニャくんはお医者さんになって、ポケモンセンターがなかったキタカミに立派なポケモンセンターを建ててくれて、DJとしてはDJジョーイの弟子になっていた。
明日はゼイユちゃんの結婚式。
公民館にお泊まりしてたら、ゼイユちゃんが訪ねてきた。
「てらす!明日の歌と手紙の用意はバッチリなんでしょうね!?」
「ゼイユちゃん!結婚おめでとう!もちろんだよ!DJジョーイもDJ悪事もいるからね!ゴキゲンナンバーも感動BGMも完璧!」
「DJ悪事、こんなダサい名前であんな見てくれの癖に、結構泣かせるアレンジしてくんのよねー。ふふふ。楽しみだわ」
ゼイユちゃんはモデルさんをしたり、おみやげやさんをやったり、お面職人になったりして、どれもしっくりこなくてずっと悩んでたみたいだけど、明日からは、由緒正しいお家柄の旦那さんのお嫁さんになる。
『そもそもわたしが働くなんて間違ってたのよ。ボンボンと結婚して毎日ダラダラ過ごすの!』ってとってもとっても幸せそうに報告してきた。
旦那さんには初めて会ったけど、ブルベ学園でチャンピオンの経験もあるのに正直あんまり由緒が正しそうに見えない、なんて言うか......。歯磨き粉みたいなおにいさんだった。
DJジョーイのゴキゲンな余興でみんな一緒に歌ったり踊ったりした直後に、DJ悪事のアレンジBGMのイントロ部分でいきなりゼイユちゃんが泣き出すから、もらい泣きしちゃって親友からの手紙は全然読めなくて、私の分も全部アオイちゃんが読んでくれた。
ちなみに、スグリくんからの手紙も全部アオイちゃんが読んだ。
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せっかく長期でおやすみを取ったので、バトルロイヤルの世界大会を観戦しに行った。
「開会式で聖火の舞を踊るのは......。一足先にダンスで世界を制した!ファイヤーダンサー、カキ!」
世界の様々なダンスに人気アニメのキメポーズを取り入れたカキくんのファイヤーダンスは、年齢も性別も人種も問わず、全員が大歓声をあげてスタンディングオベーションしていた。
開会式で既にボルテージマックスになった会場は、大熱狂の試合が繰り広げられた。
「......さて!ついに決勝戦!決勝のカードは......永遠のライバルであるマキシマム仮面が引退してから怒涛の5連覇!アローラ代表、ロイヤルマスク!」
「勝利の炎で、リングを焼き尽くすぜ!みんな、エーン ジョイ!していってくれよ!」
ものすごい大歓声だ。
アローラ人としてはロイヤルマスクさんを応援しなきゃいけないんだろうけど、今回はお相手さんを応援するって決めてる。
「そして、対するチャレンジャー!総再生回数1000億回越えの『スターレスリングちゃんねる』のおねえさんが、本気のフェイスペイントで電撃参戦!パルデア代表、ビワ!」
「よいこのみんなー!ビワおねえさんだよー!ロイヤルマスクさん、背中は見ないでねー!」
大歓声と子供たちの泣き声が上がった気がしたけど「ウォオオオーーーッ!!!」っと言うビワちゃんの雄叫びで全部かき消された。
ロイヤルマスクさんは一瞬でけちょんけちょんにやられてしまった。
これは余談だけど、ロイヤルマスクさんの大ファンのククイ博士がショックのあまり寝込んでしまったので、しばらくパパが忙しそうにしていた。
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さて。今日は私のジムに初めてチャレンジャーが来る。できたてほやほやのアローラのポケモンジムでもうバッジを7個集めたなんて、かなりの強者だ。
そんなことを考えてたら、7人目のジムリーダーから連絡があった。
「ついにレイラさんのところにチャレンジャーが行くんだな。おれに勝ったチャレンジャーさんな、ジョウトのジムバッジを全部持ってて、おまけにおとーちゃんはカントーの元ジムリーダーさんだって言うから本気だしたのに負けちまって......。でも、なんだろ。わやうれしい」
「そっか......!実は、リーグのデータ管理システムのセキュリティが不安で今リーグに挑戦させる訳にはいかないから、私、絶対勝たないとヤバい」
「にへへ!でも、笑い事じゃない。なるべく早くなんとかしねえと......。そうだ!ボタンさんに手伝ってもらったら?」
「その手があった!スグリくん天才!連絡してみるよ。ありがとう!」
すぐにボタンちゃんに連絡した。
「......そっか。行ってあげたいところなんだけど、今パルデアのリーグもサーバーの調子悪くて手が離せないんよ」
「ざんねん......。でもパルデアのリーグのサーバーがやられるなんて、何があったの?」
「調子悪い(物理)なんよ。四天王のとっくんにネモくなったトップチャンピオン様が参戦してきて、ゼンリョクを出しすぎたオルくんがやった」
「あはは!ネモちゃんとオルティガ先輩は相変わらずだね」
「ホントに困ってるんよ......。壁もまた穴が空いてさ。メロちゃんがキレた後こっそり泣いてるの見ちゃったし、もうアートパネルつけるのやめようかな......。まぁ、そのあたりの愚痴はまた今度聞いて。とりあえず、遠隔で操作して状況だけ見るよ」
「あはは......。わかったよ。ありがとう!じゃあ、アクセスキー送......」
「いや、大丈夫。はいれた」
「えぇ......。やっぱり脆弱......」
「あ、これならすぐなんとかなるかも。任せて」
「すごーい!ありがとう!お願いします!」
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......さて、チャレンジャーさんが来たぞ。クールそうな目付きの鋭い、赤髪のおにいさんだ。私と同い年くらいかな。
ジョウト出身みたいだけど、ゼンリョクでポーズをキメてワザ名を叫んで、ゼンリョク声量測定マシーンで100%以上取る試練は突破できるかな。ふふふ。
と思ったら意外にも、めちゃゼンリョクでポーズをキメて「マキシマムサイブレイカー!!」と叫んで一発クリアした。
エスパーポーズを選んだんだ。相棒がエスパータイプなのかな。
ゴーストタイプのジムにエスパータイプで来るとはいい度胸だ。
「ハウオリジムのゴーストタイプのジムリーダー、レイラです。よろしくお願いします」
「おれは......。世界で最強になる男、シルバーだ」
「いいね。でも、負けないよ!よぉし、行くよ!ミミッキュ!」
「フーディン。いくぞ」
ひえー。このおにいさん、マジで強い!よぉし。ここでゴーストZをキメるしかない。
「ゼンリョクで行くよ!『無限暗夜への誘い』!」
これ、何回言っても超かっこいいな。厨二病、一生治んないや。
パルデアでゴーストZ使ってたら、私はラブリースターさんじゃなくて無限暗夜さんだったのかなぁ。
ゴーストZにすれば良かったな。
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......ふぅ。それにしても、バトルのあとはお腹すくなぁ。お弁当の配達まだかなぁ。
「アローラ!お待たせしましたー!おなかスカヌ団でーす!!」
「やったー!待ってたよー!パイセンさん、いつもありがとう!」
今日のメニューは『伝説の料理人ペパー氏監修 今朝とれたてぴちぴちマヒマヒきりみフライのひでんサンドイッチ』だ!やったー!
「こちらこそいつもありがとうな!毎日の大口注文、助かってるぜ!お陰様で大儲けだ!」
「じゃあそろそろマオちゃんにプロポーズしなよ。マオちゃんが作ったお弁当も食べたいよー」
「そうよなぁ。でもマオには苦労かけたくねぇからよ。もう少し金貯めるわ」
「そっか。頑張ってね!そうそう、今月も炊き出しのボランティアに寄付しといたからね!」
「本当にありがとよ!じゃあまた明日な!」
「マオちゃんを泣かせたら、スイレンちゃんと一緒にぶっ飛ばすからねー!またねー!」
「ひょえー!」
パイセンさんは次のお届け先のお弁当を大切に抱えながら早歩きで逃げていった。
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「ただいまー」
「れいちゃん、おかえり!今日はね、かみちゃんと一緒にロコモコ丼作ったの!ハンバーグ、星の形にしたの!見て見て!」
へたっぴな星形のハンバーグが乗ったロコモコ丼だ。かわいい。サーモンピンク色のソースがかかってる。なんのソースかな?
「デオキシス、ハバタクカミ、ありがとうね」
「ハハッ!」
ゲンパチいわく、ハバタクカミは遥か昔の私のご先祖さまのポケモンだったらしい。ご先祖さまはピカチュウも持ってて、とっても仲良しだったみたい。
きのみでキャッチボールして遊んでたみたいで、シャドーボールとかテラスタルオーブやモンスターボールみたいな丸いものが好きなんだそうだ。
ご先祖さまは私と顔がそっくりだったみたいで、ハバタクカミは私を見つけて一緒に遊びたくて、ミミッキュもピカチュウと似てて楽しくなってテンションが上がりすぎちゃったと言って、すごく謝ってくれた。
私も悪いムウマって決めつけてごめんねって謝った。
それにしても私はママそっくりだし、ママはホウエンのおばあちゃんそっくりだし、ご先祖さまの顔面の遺伝子は最強の遺伝子だな......。
ちなみに、ハバタクカミにモンスターボール型のおもちゃを買ってあげたら、使う用と保存用をほしがるオタク気質だった。
「あれ?パパとマーマネくんの分は?」
「はかせとまーまねは、急いで天文台に行くって言うからお弁当にしてあげたの。特別なお星様を見つけたんだって」
「そうなんだ。なんだかんだ、パパは星が大好きだよね」
「そうだね!ねぇねぇ、れいちゃん。早く食べよ?」
たべる!と思ったら電話だ。シュウメイくんからだ。
「ごめん、ちょっと電話出るね」
「レイラ殿!たった今レイラ殿のジムリーダー衣装のデザイン案を送ったので、すぐに!ナウ!見てほしいでござる!」
「えぇ......。うん、わかった。ありがとうね!」
えーっとどれどれ......。
「ひとつ!忍ポケをイメージした忍者衣装!レジェンド忍者キョウ殿からも太鼓判をゲットしたでござるよ!」
「そうなんだ!すごい!......でもさ、とってもかわいいけどさ......。こんなに胸元が開いてると、ゴーストZのポーズしたら、ちちがポロリする思う」
「ムムム......。しかし、レイラ殿の豊かなちちを使わない手は無いと思うのでござる!」
誰が何にどう使うつもりだ。
それに、キョウさんってカントーの四天王で、娘さんは私より少し歳上のジムリーダーさんだったよな?
娘さんがジムでこれを着てても大丈夫なの?やっぱりカントーのリーグは悪い人ばっかりなの?
あーやだやだ。
「では、ふたつ!シャインゴーストから着想を得た、ゴーストヒーローボディスーツ!」
「あ、これかわいい!......けど、身体のラインが出すぎかな?10代の頃と違って、気を抜くとすぐにおなかに肉がついちゃうんだよね」
「ではもう少しこのように......。今、おニューの修正案を送ったでござる!」
なるほど。さっきよりなんか色々とえらいことになってる。
これはもうどうしようもないな。
「3つ目は......?え!これ!めちゃくちゃいいじゃん!超かわいい!」
「そうであろう!みっつ!レイラ殿の母上たる伝説の歌姫、サクラ レイ殿の舞妓はん姿のフォトを細部まで舐め回すように観察し妄想を広げ、てらす池の精さまのイメージをミックスした着物でござる!」
それ、絶対にパパに言うなよ。言うにしても慎重に丁重に言葉を選ばないと、ハラキリどころかミンチに......いや、ミンチどころかゴミクズチリカスになって、それっきりだ。
「でもね、色はあいいろがいいな」
「我は愛の色は視認したことがないでござるよ?」
さすがのギャグセンスだ。吹き出してしまった。でも、シュウメイくんの場合はギャグのつもりでない可能性高いから、いい加減にして欲しい。
「ム!......あぁ!すまぬ。藍色でござるか!ひとえに藍色と言っても......。ムムム......」
「夜のアローラの海みたいな感じの、深くて鮮やかな藍色がいいんだ」
「なるほどでござる!がってんポッ拳、承知の助でござるよ!では、いくつか生地のサンプルを仕入れておくゆえ、それを見て最終決定してほしいでござる!」
「うん!シュウメイくんありがとう!じゃあね!」
よぉし、今度こそたべる!
「いただきます!」
「れいちゃん、どお?おいしい?」
「おいしい!このソース、なんのソース?すごくおいしい!」
「はかせがオーロラソースって言ってた。ぼくのおへその中のオーロラとは色がぜんぜん違うのにね」
あ、その胸元ついてる宝石みたいなコアっておへそだったんだ。胎生じゃないポケモンにおへそって必要なのかな。
「ぼくのおへそ、れいちゃんの目の色と似てるの。うれしい」
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それにしても、私のジムにはチャレンジャーが来ない。
おなかスカヌ団の社員さんが『アローラのジムリーダーがみんなバカつえーって文句言われてますけど、大丈夫なんでスカー?』と心配していた。
全体的にレベルが高めかも知れないけど、バカみたいな難易度じゃないはずなんだけどなぁ。
1人目のジムリーダーのグズマくんが顔面怖いしめちゃくちゃ強いくせにうっかり手加減しすぎてみんな勝たせちゃうから、ちょっと調子に乗っちゃったチャレンジャーさんが2人目以降で心をバキバキに折られちゃうのが良くない気がする。
グズマくんの配属変えようかなぁ。でもポータウン周辺は何故か困ってる人が集まってくるから、面倒見のいいグズマくんにいてもらいたいしなぁ。
ぼーっとしながら事務作業をしていたら、電話が鳴ってビクッ!ってなった。
「オレだ。自らの手持ちのポケモンの保護を依頼してきたトレーナーがいる。失業し、病気のポケモンの治療費を工面できなくなったんだそうだ」
振り込め詐欺の闇バイトの人からの電話みたいだけど、エーテル財団の代表、グラジオからの電話です。
「ポケモンはしばらくこちらで面倒を見る。トレーナーの就職支援を頼めるか?」
「もちろん!いつでも案内できるよ。他のジムリーダーが優秀すぎてチャレンジャーが来ないから、結構暇してるんだよね。あはは」
「そうか。こちらも専務が『ゼンリョクのガンバリーリエです!』と言ってオレの仕事も片付けてしまうから、時間にかなり余裕ができている」
「そうなの?じゃあ今日のお仕事が終わったらポケモンバトルしようよ!」
「いいだろう。ハウオリジムで待っていてくれ」
「よぉし!負けないぞ!」
「フッ......。オレがレイラに負けたことがあったか?」
「はじめてバトルしたとき!私が勝った!」
「そんな昔のことは忘れてしまったな」
「えー!?なにそれ!」
「フッ......。嘘だ。あの時は必死になって格好つけてみたが、思い出しただけで悔し過ぎて震える」
「あはは!じゃあ、待ってるね!」
〜完〜