パパと私とスーパーヒーロー。   作:にゃかぽけ

8 / 75
大人の階段

少し気持ちが落ち着いてきたら、いろいろと心配なことが出てきた。

 

「モクロー?ヒトモシ?どこ......?」

 

そういえば、モクローとヒトモシが無事かは、ちゃんと確認してあげられていなかった。

 

ベルトごと、ボールがない。

 

「あー。寝にくくね?と思ってベルト外しちゃいましたー。ほんまごめんやでー」

 

ジョーイさん...だよな?はスマホから目を離さないままだ。

 

「勝手に預かったモクローとヒトモシは、バリ元気っすよー」

 

モクローとヒトモシが勝手にボールから飛び出して、忍ポケのダンスを踊って見せてくれた。

「おいで」と小さく言ってみたら、大袈裟なくらい元気よく、腕の中に飛び込んできた。

 

温かい。なんならヒトモシは熱い。良かった。本当に。

 

「ミミッキュは......。どんな様子ですか?」

 

「それなんすけどー。ケガとかはないんすけど、ちょっとヤバめの雰囲気あってー。ミミッキュが腕を出しっぱなしにするのって、ビミョーっていうか、あんま健康に良くないんすけど、ずっとなんか持ってて説得しても手放さないし、全然腕しまってくれないんすよー」

 

ジョーイさん.....だな。たぶん。意外とちゃんとしてるし。たぶんのジョーイさんは、スマホから一度も目を離さない。

 

「どこ探してもあの子のボール無いから、回復マシンにも入れてあげれなくてー。とりま、おねーさん起きるまでなんかできることないか、めっちゃググってたんすけど、結局なんもしてあげれてなくてー。早く休ませてあげたいんすけど、あの子のボール、無くしちゃった系すかねー?」

 

ずっとスマホいじっててやる気無さそうだし、本当にジョーイさんかと疑っちゃったけど、そういうことだったんだ。

真の天才ジョーイさん。疑ってごめんなさい。

 

ミミッキュと出会った経緯を説明して、まだ野生であることを伝えた。

 

「マジすかー?ヤバめっすねー。つっても意識はしっかりしてるんで、おねーさんがいけるなら、ゲットしてあげたらよくないっすか?とりまこっちに連れてきやーっす」

 

ジョーイさんと話してるうちに、いつの間にかいつもの完璧なパパに戻ってたパパが、新品のボールを手渡してくれた。

 

「その子と話をしてあげよう。大丈夫。きっと、レイラの言葉なら聞いてくれるはずだ」

 

ミミッキュはボールが怖かったりしないだろうかと考えていると、少し遠くからジョーイさんの「あ、ちょいまち!いきなりどうしたんすかー!?」と言う声がして、そちらを見るとミミッキュが走ってきて、私を見るなりじゃれついてきた。

 

一通りじゃれあったあと、腕を出しっぱなしでつらくないか聞いたら、ミミッキュは少しだけ迷って、色違いちゃんを私に預けて腕をしまってくれた。

 

私は意を決して新品のボールを見せて「ねぇ、良かったら」まで言ったところで、ミミッキュは嬉しそうに自分からボールに入ってくれた。

 

--------------------

 

そのあとは、公民館のおじいちゃんのご厚意でパパと一緒に公民館に泊まらせてもらえることになって、ゆっくりパパと話をすることができた。

 

岬での出来事は意外にも目撃者が結構いて、現場に落ちていたカバンから海に落っこちたのが私だということはすぐにわかったらしく、連絡を受けたパパは速攻で研究室を飛び出して、岬から海に飛び込んで私を探し始めたらしい。

 

1週間くらい泳ぎ続けて、さすがにお腹がすいたってことでやむを得ず岸に上がってみたら、事件があったその日のうちにすごく悪い人は逮捕されていて、供述や目撃者の証言から、私がしんじゃって、パパも後を追ったみたいに報道されててびっくりしたようだ。

どう考えても、パパが生きてた事の方がびっくりだと思う。

事実、世間は『シナミ博士、奇跡の生還!』と騒がしかったらしい。

でも、私も生きてるんだし。スーパーマサラ人ってなんかこう......ヤバめっすね。

 

パパは、無事に犯人が捕まって良かったと言って笑顔を作ったが、目が全く笑ってなかった。

無事に犯人が捕まったことより、パパが岸に上がるまでに捕まっていて、犯人が無事だったことの方に安心した。

 

そんな感じの取り留めのない話をたくさんしたけど、私はフトゥー博士の話はしなかった。気が付いたら、すぐに助けてもらえたという事にした。

 

今までパパに隠し事をしたり嘘をついたりして、バレなかったことは一度もなかったけど、どうやらバレていないみたい。

生きてる!と気が付いたら、すぐに助けてもらえたんだし、物は言いようだ。

 

なんだか少しだけ、大人になれた気がした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

アローラに帰ってきたら、なんだか大変なことになっていた。

 

アローラの海に落っこちた私がキタカミの鬼が山で見つかったことは、高低差のありすぎる珍事件として大騒ぎになった。

 

取材とかがいろいろ来たけど、すぐに来なくなった。

「なんでだろう?」とパパに聞いてみたら「不思議だね」と言ってにっこりした。目だけ笑ってなかった。権力のちからってすげー。

 

スクールの友達や先生たちは、思い思いに私の無事を願ってくれていた。

 

リーリエちゃんはエーテル財団の調査範囲を海に集中してもらえるようルザミーネさんに働きかけてくれた。ルザミーネさんも快諾してくれて、たくさんの団員さんが私を懸命に探してくれていた。

 

マオちゃんは毎日アローラの神々にごちそうをお供えして、私を護って無事に帰らせてほしいと必死に願ってくれた。

 

スイレンちゃんは手にマメができるくらい、ずっと釣りをしてくれた。それで仮に私が釣り上げられたら結構ホラーな感じになっただろうけど、気持ちは嬉しかった。

 

カキくんは私が戻ってくるための目印になるようにと、時間と体力の許す限りファイヤーダンスを踊り続けてくれていた。

 

マーマネくんは、大好きな天文学をほっぽり出して海についての自然科学を勉強してみたらしい。

 

「海流についてわかればレイラが流された場所がわかったりしないかなって思って」

 

と言いながら恥ずかしそうに冗談めかして見せてくれた新しめの科学書には、ボロボロの天文学書よりもびっしり付箋がついていた。

 

オーキド校長は、いろんなツテを使って、私を探すレーダーを開発しようとしていた。

 

オーキド校長は伝説の天才博士のオーキド博士のいとこで、あの天才博士をアローラまで呼びつけて相談しようとしてたらしく、タイミング良くオーキド博士にお会いすることができた。

 

オーキド博士は私がシナミ博士の娘だと知ると「おぉ!シナミちゃんの娘さんか!こんなに大きくなっておったのか!シナミちゃんが結婚してから学会でしか会わなかったからのう。会えて嬉しいぞ!」と言いながら、とっても嬉しそうにしてくれた。

 

シナミちゃん……。なんでパパはちゃん付けで私はさん付けなんだ?

 

オーキド博士の話によると、パパに初めてのポケモンを渡したのはオーキド博士で、パパはオーキド博士の研究所で働いていたこともあるらしい。

パパは伝説の人間と知り合いだったんだ。すげー!全然知らなかった。

 

可能なら会いたいとおっしゃられたので、パパに連絡したら「ご足労いただくなんてとんでもない!」とすごく立派な手土産を持って2分くらいですっ飛んできた。

 

パパが伝説の人間であるオーキド博士と親しげに話している姿は、なんだかソワソワした気持ちになった。

 

オーキド博士は観光もするからと言って、お孫さんとそのご友人と一緒にいらっしゃっていたんだけど、なんと!オーキド博士のお孫さんのご友人は、シャインファイア役の俳優さんだった!

 

無口で謎に包まれていて、でも誰よりも熱い思いを秘めた、圧倒的最強ヒーロー。

俳優さんの名前も素性もひた隠しにされていたのに……!

 

ご本人は一言も喋ってくれなくてちょっぴり残念な気もしたけど、オフなのにファンの前でキャラクターのイメージを崩さないように完璧に振る舞ってくれるなんて……。それはそれで感動で震えた。

 

色紙を用意してサインをお願いしたら『レイラちゃん 無事で良かった。会えて嬉しいよ』と書いて渡してくれた。俳優さんの名前は……きっと隠したいんだろう。

 

家宝にする。額縁に入れて飾ろう。保存用も書いてもらいたかったけど、恥ずかしいし申し訳ないし、言えなかった。やっぱり後からすごく後悔した。

 

シャインファイアの俳優さんは、握手を求めたら快く受けてくれた。

握った手はとても温かく、そして強かった。

誤解のないように言っておくと、ふんわり優しく握ってくれたけど、とてつもない、なんらかの強さを感じた。

 

余談だけど、オーキド博士のお孫さんはかなりのイケメンだった。

 

そんなこんなもありつつ、平和に時が流れていった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。