パパと私とスーパーヒーロー。   作:にゃかぽけ

9 / 75
2つめの星〜キタカミの里編〜
只者じゃない


私が海に落っこちてから、まるっと2年の時が経った。

 

モクローはフクスローに進化したし、ヒトモシはランプラーを通り越してシャンデラに進化した。

ミミッキュはフクスローとシャンデラと一緒にオタ活に精を出していた。

でも、夜な夜な色違いちゃんのばけのかわを眺めては泣いていた。

 

私は、強くなりたいと思うようになった。

 

色違いちゃんがしんでしまったことは、私の中でくろいてっきゅうみたいにずっしりと残り続けた。

私の手からこぼれ落ちてしまった命の重大さに打ちのめされた。

 

もう二度と、こんな思いしたくないし、誰にもさせたくない。

 

私はどこかの地方でジムリーダーになりたいと思うようになった。

ジムリーダーが四天王みたいに同じ場所にいないのを疑問に思って調べたら、ジムを各所に配置しているのは、ジムリーダーとして選ばれた強いトレーナーのそれぞれが、ジムを中心に近辺の平和を守っている為だと知った。

 

アローラにポケモンジムがないのも疑問に思っていたけど、アローラには各島に守り神がいるから、ポケモンジムではなく守り神を祀るキャプテンやしまキング、しまクイーンが必要とのこと。それも素晴らしいことだけど、違うんだ。

 

私は、平和を守りたいんだ。

 

それをポケモンたちに伝えたら、ヒーローものに憧れる私のポケモンたちはみんな、すごいやる気満々になった。

一緒に強くなって平和を守ろうと約束した。

 

その日から、ミミッキュは泣かなくなった。みんな、強くなった。

 

おかげでしまめぐりの試練を全部突破しちゃったもんね。今はカキくんも突破したけど、私が1番早かった。

 

あとはどの地方でジムリーダーを目指すか考えなくちゃ。スクールを卒業したら、その地方に引っ越すんだ。

 

おばあちゃんやおじいちゃんがいるカントーやホウエンがいいかな。

 

ジョウトに行ってマツバさんに弟子入りするのもいいかも。

 

修学旅行で行ったシンオウも、神秘的で素敵なところだったな。

 

ポケウッドのあるイッシュもいいな。超スーパースターのハチクさんやナツメさんもジムリーダーとの二足の草鞋だ。ポケウッド女優とジムリーダー、どっちもなれたりしないかな。

 

大都会、ミアレシティのあるカロスはどうだろうか。ジムリーダーになったら、高級タワマンに住めちゃうくらいお給料がもらえるだろうな。

 

ガラルのポケモンリーグは他の地方と少し違って、ジムリーダーも参加するトーナメントでチャンピオンを決める。その様子が世界中で配信されるし、ジムリーダーになっても、ずっと上を目指して頑張れそうだな。

 

パルデアもいいよね。フトゥー博士と会ったのも何かの縁のような気がしてパルデアのことを調べたら、調べれば調べるほど素敵な場所だった。キタカミも比較的近いし、何度も遊びに行きたいな。

 

ジムリーダーになる夢。絶対、叶えようね。

 

--------------------

 

私とパパは、改めてお礼をするために、またキタカミに足を運んだ。

すぐ行きたかったけど、パパが急に忙しくなったせいで、時間が作れるようになるまで2年も経ってしまった。

 

パパは公民館に着くなり、キタカミ公民館のおじいちゃんに何度も頭を下げて分厚い封筒を差し出した。

キタカミのおじいちゃんは一度断ったが、二度目はものすごくにっこにこの笑顔で素直に受け取った。

あー、そういう感じなんだ。ふーん。なるほどね。

 

話を聞くに、いまある『ともっこ』とやらの像より豪華な『おにさま』だったかの像を建ててほしという要望が、里の人から山ほど届いているけど、里の人からの募金だけでは到底まかない切れず、資金不足でなかなか進まなかったという事だった。

 

そうか。それなら納得。私も、大人になってもまっすぐ一生懸命な人になれるといいな。

厨二病の完治が難しく、穿った考えをしてしまうのは私の悪い癖だ。

 

「これで建てることができます。誠にありがとうございます」

 

キタカミのおじいちゃんは90度以上の角度で深々と頭を下げた。

 

「とんでもない!そのような素晴らしい事業のお力になることができ、光栄でございます」

 

パパとキタカミのおじいちゃんはペコペコと頭を下げ合っていた。大人って大変なんだね。

 

「それに、また公民館で宿泊させて頂けるとは。本当に何から何まで、ありがたい限りです」

 

「いやぁ、ここは宿泊施設もない田舎ですからね。昔から伝承を重んじ過ぎるが故に、代々同じ家系の者だけしか住んでおらず、若者もどんどん出ていってしまうような里です」

 

「またご謙遜を......」

 

「よそから人が訪れることがほとんどないので、レイラさんを発見した者も、まさか遭難者がいるなんて思いもよらず、レイラさんがあんまりにもべっぴんさんなのもあって『てらす池の精さまだ!てらすさまだ!』なんて騒ぐものだから、新しいお祭りを始めようかと思ったくらいです」

 

パパはやんわりドヤ顔をしてる。やめてくれー。

 

「そうだ。最近、伝承について新たな発見があったと伺っています。僕は研究者ですので......長年......のような......すばらし......!それが......どのように......したという......」

 

あーあ。始まっちゃった。

 

「では、まずは昔の伝承を記した書物をご覧になりませんか?」

 

「ありがとうございます!是非!」

 

キタカミのおじいちゃん、私より早くパパの話を制止するとはなかなかやるな。

 

「よし、レイラも一緒に行こう」

 

「えー。せっかく来たんだし少しお散歩したいよ」

 

「......っダメだ!!!!」

 

パパが大声を出すのは初めてだった、びっくりした。反射的にじんわり目が潤んだ、

 

「おっと......。大きい声になってごめんね。観光ってパンフレットとかで情報を集めるのが楽しかったりするじゃないか。アローラで得られたキタカミの情報は少なかったし、せっかくなら先によく調べて、どこに行くか一緒に決めようよ」

 

パパの顔が見れなかった。

でもきっと、いつもの優しくて完璧なパパの顔をしているんだと思う。

 

「それに、シナミ家の人間たる者、歴史的背景を知らずによその文化に土足で踏みいるなど......言 語 道 断!」

 

いきなりどしたん?話はちゃんと聞いてるよ。

 

「人々が長年培ってきたものに対して、誤った認識をしてしまったり、不躾な行いをしてしまったら......!それはもう、切腹ぷくぷく島流し、ハラキリぽっきり、それっきりだ!」

 

「ぶっ.....!!」

 

吹き出してしまったじゃないか!

忍ポケでほぼモブなのにカルト的人気を誇る、ご近所のぷく丸さんのセリフを出すのはあまりにも卑怯だ。

もう負けでいいです。ちくしょーめ!

 

「まぁまぁ、そうおっしゃらず。ではレイラさんには里の精鋭をお付けしようではありませんか。堅苦しい話を聞かされるよりも、里の同じ年頃の子たちと回った方がレイラさんも楽しめるでしょう」

 

「.....恐れ入ります。では、お願いできますでしょうか」

 

パパの暴走をいなした上に、完全に御してしまうとは.....!キタカミのオジキ、只者では無いでござるな......!

 

キタカミのオジキは、ゼイユちゃんとスグリくんという姉弟に連絡をしてくれた。

 

ゼイユちゃんとスグリくんの話は里の人から聞いていた。今日はお祭があるみたいで、夕方にご挨拶に行って案内してもらう予定だったけど、すぐ来てくれるみたいだ。やった!

会えるのをとっても楽しみにしてたんだ。

 

ものの数分くらいでゼイユちゃんとスグリくんは来てくれた。

 

「はじめまして。ようこそキタカミへ。わたしはゼイユ。こちらは弟のスグリです。先日お越し頂いたときは私も弟も学校の寮におりまして.....。里の者からかねがねお話を聞いておりました。里のご案内はわたしたちにお任せください」

 

スグリくんは少しモジモジしてたけど、ゼイユちゃんはびっくりするくらい美人で丁寧でハキハキとしていて、パパと私に深々と頭を下げた。

 

「ささ......レイラさん。早速行きましょう」

 

ゼイユちゃんに背中を押されて、私は振り返ってパパに小さく手を振った。

 

外に出たらなんだか懐かしい気持ちになった。

キタカミは、異世界の東方の国みたいに、のどかでゆったりとしていて、アローラよりも潤った感じの風が吹いている。

 

「さて、と」

 

ゼイユちゃんは私の正面に立った。

 

「ふーん。アンタが『てらすさま』ね。あたしには少しだけ劣るけど、確かにカワイイわね。よし、行くわよ」

 

ゼイユちゃんはスイッチが切り替わったみたいになって、ものすごい歩幅でスタスタと進んで行った。モデルさんみたいだ。

 

ゼイユちゃん、私よりちょっぴり歳上に見えるし、美人で背が高くてすごく丁寧でだったから、近寄り難いタイプの人かなって思っちゃったけど、少しだけ、くだけた感じになってくれてよかった。私のことカワイイって言ってくれた。えへへ。すぐに仲良くなれそうだ。

 

「わやー。ごめんな、ねーちゃんさっきまで『てらすさまに会えるのよ!?スグ、失礼の無いようにしなさいよ!?』なんて言いながら、スキップして来たんだべ」

 

スグリくんは「にへへ」とふにゃふにゃのゆるゆるした笑顔で笑った。スグリくん、ちっちゃいポケモンみたいでとっても可愛らしいな。多分、私よりも少しだけ年下だな。

 

「ねーちゃん、照れてるだけだべ。すぐに慣れて落ち着くから、しばらくゆるしてな」

 

スグリくんがぽてぽて走りながらゼイユちゃんを追いかけて行った。何をゆるせばいいのかわからないけど、とにかく、私も急いで追いかけた。

 

--------------------

 

「じーちゃん、ばーちゃん、ただいま。てらすを連れてきたわよ」

 

ゼイユちゃんは靴を脱ぎ捨てて足を止めずに歩いていく。

スグリくんはゼイユちゃんの分まで靴を揃えて「ねーちゃん、まってぇ」と言いながら行ってしまった。

 

「これっ、待ちなさい!てらすさまと......!じゃなかった。レイラさんと呼びなさい!」

 

姿は見えないが、おじいさんの声がする。なんだかとっても懐かしいなぁ。

 

優しいおじいちゃんとおばあちゃんが出迎えてくれた。

 

「まったく......。すまないね。お久しぶりだね、レイラさん。元気そうで本当によかった」

 

ゼイユちゃんとスグリくんのおじいちゃんのユキノシタさんは、鬼が山で遭難した私を最初に見つけてくれた人だ。

ヘトヘトだった私を介抱してくれたのは、おばあちゃんのヒエさん。

 

「レイラさん......。背も伸びて、さらにべっぴんさんになって......」

 

ヒエさんは頭を撫でてくれた。

 

マサラのおばあちゃんもホウエンのおじいちゃんも当然大好きだけど、ユキノシタさんとヒエさんも同じくらい大好き。

ユキノシタさんの声とヒエさんの体温は、他の人よりちょっぴり特別に感じちゃうな。

 

「あぁ、昔のばーさんくらいべっぴんさんだ」

 

「まぁ、じーさんったら.....。今もこの歳にしてはべっぴんだと思うんですけどねぇ......」

 

ユキノシタさんは焦っていて、それを見てヒエさんは幸せそうに笑っていた。和やかな空気が流れている。夫婦っていいな。

私もいつか、ユキノシタさんとヒエさんみたいな、ずっと仲良しの夫婦でいられる相手を見つけたいな。まだ初恋すらしたことないけど......。

 

「てらす!なにしてんのー?早くこっち来なー!」

 

ゼイユちゃんが呼んでる。なんだかウキウキしてる感じがする。

 

「レ イ ラ さ ん!」

 

ユキノシタさんが怒ってる。

何故かスグリくんは「わゃー」と謎の鳴き声をあげてる。とっても楽しい。姉弟っていいな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。