TS転生釘崎野薔薇   作:楼ノ卦

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住めば都。実際そこは、ほぼ都②

 

 

 

 

高専による援助を約束して貰ってから、数日が経った。この数日間、オレは高専で寝泊まりをさせてもらっていた。

 

 

あの後、五条は、「んじゃ、これから任務があるから」と言ってそそくさと出ていってしまった。それから、二度と会えてない。ちなみに、通話も、文字のやりとりもしていない。

領域展開を見せてくれる条件とやらも、説明されずじまいだ。

 

 

 

この数日間、学校も行ってなければ、外にも出ていない。その代わり、高専の施設を見て回ったり、修練場を借りて鍛錬をしたりなどをして過ごしていた。あと、そうそう。

それらをする合間に、引っ越す物件を調べていたりもしていた。

 

普通、未成年者が賃貸借契約を結ぶには、親権者の同意が必要と法律で定められている。

オレの親権者は婆ちゃんであるが、婆ちゃんとは喧嘩別れして以降、会っていない。

 

そこらへんの心配も無いワケではないが、呪術界は法外的な立ち位置を持つのだ。

オレの一人暮らしが違法であったとしても、そこはなんとかなるだろう。故に、オレは楽観しながら不動産のホームページと睨めっこしてるワケである。

 

 

 

そのまま、高専に住めばいいのではないか?

その考えも一瞬だけ浮かんだ。しかし、ここは都心からはかなり離れた山の中。この辺りには、他の小中学校がない。最寄りの学校に通うとなると、かなり手間が掛かりそうだ。今のオレは、まだ小学生。一応、義務教育真っ只中である。

 

まぁ、中身は義務教育課程修了済みの成人男性なのだが。正直、二度目の義務教育を受ける必要性は無い。前世の知識で事足りるため、勉強も別にしてないし、これから真剣に取り組むつもりは無い。真っ当な高校や大学に進学するつもりも無いし。義務教育範囲では、いくら休んだとしても、留年になることはない。無事に卒業出来る。高専に引き篭もっていたとしても、問題は無い。それどころか、引き篭もってひたすら修練を続けてた方が、有意義だろう。

オレが強くなることは、人々の為になる。人々の安寧を守ることだけを考えるのならば、高専暮らしを選ぶべきだ。

 

 

 

だから、高専ではなく、街の中で暮らしたいというのは、オレのエゴだ。

これは、高専に入るまで、市井の中で暮らしていたいというあくまで、私情である。

 

 

……高専は、一般の業者の出入りが制限されるから、手軽に菓子が食べられない。せっかく東京に来たんだ。スイーツ専門店巡りとかもしたいし。面白い駄菓子屋、品揃え多めのスーパーとかが近いといいな。

……うん。コレが正直な本音の一つでもある。

兎に角、高専で生活を送る予定は、今は無い。

 

 

勿論、呪術の研鑽も忘れていない。

呪術高専は、その敷地外でも修練場を保持している。公園の一部や体育館を借りて、呪術の修行なんて始めたら、呪術規定違反で処罰は免れまい。高専修練場から近場であることは、マストだろう。

 

 

不動産のwebページという大海原を、マウスという船に乗って探索する。

 

 

「ふふっ」

 

自然と口元が緩む。

オレの目星の付けた幾つかの物件はかなりの好条件な代物である。

ちょっと楽しいぞ、物件探し。

まるで、宝探しだ。

 

 

高専という後ろ盾がある以上、もしかしたらちょっとお高めな物件にも手を出せるかもしれない。

愉快、愉快。夢の広がる話である。

 

 

 

そうやって、次の居住地が絞れてきた頃合いに。バカ目隠し(五条悟)はやって来た。

 

 

「うーい。おつかれーい、野薔薇。あ、今から荷物全部まとめてね。出かけるよ」

 

 

「はい?」

 

 

「ほれほれ。早く早く。四十秒で支度しないと置いていくよ?」

 

「は?」

 

いきなり何を言っているんだこの男は。

 

 

だが、コイツが「さーんじゅうきゅ、さーんじゅうはち」と言う具合でカウントを始めたので、仕方なく、部屋に置いてあった私物を全て、バッグに詰める作業を始めた。

 

 

部屋の私物の広げ具合は、明らかに、四十秒で全てを詰められるような状態では無かった。しかし、オレも呪術師の端くれ。呪力による身体強化を駆使した超人的な速度で、手を動かす。

呪霊退治をする際とタメを張るくらいの集中力の渦に自身を落とす。

その結果、なんとか、数日の生活の痕跡を消すことに成功した。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

いきなりなんなんだよ!

普通こういうのって、予めに一声連絡つけるもんだろ。突然過ぎるぞ。

 

はぁ。

荷物全部詰めたはいいけど。でも、まだ移住先の住居も決まってないし。これからどうすんのさ。いきなり呼びつけて連れて行かれるってことは、領域を見せてくれるのだろうか?否、それこそ、高専の敷地内でいいのでは?外出する必要は無いだろ。

 

 

 

 

いや、まさか……。

後部座席に乗り込んだ後、車が発進する。

 

 

「……なぁ、五条先生。今から行く所って」

 

 

「? あぁ、まだ言ってなかったけ。キミの新居だよ」

 

 

あ─────ッッッ!!この野郎!

やりやがった!!マジでやりやがった!

物件指定してるならすぐに言ってくれ!

せめて連絡はしてくれ!

今まで物件選びしてた時間返しやがれ!!

心躍った時間を、返してくれェェ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

車の向かった先は、埼玉県であった。と言っても東京からは離れていない。そこは、東京の目と鼻の先である、埼玉県さいたま市だ。

 

そのまま車は進み続け、到着したのは、さいたま市の某所。

閑静な住宅街であった。

 

 

「さて、着いた。野薔薇、ここがキミの四年間の棲家だ」

 

 

埼玉県、さいたま市。

……なんとなく、分かってきた。

というか、既に分かった。

 

さっき「八十八橋」って書かれた橋通ってたもん。

 

 

 

「実はね、君の家には素敵なお隣さんが居てね。君と同じぐらいの子たちさ」

 

五条が、オレの新住居だという家の隣家のインターホンを鳴らす。

 

 

幾許か経って、隣家の扉が開いた。

扉を開け、出てきたのは、小学生の少年だった。黒髪のウニウニ頭に、その目の前の(五条)を心底ダルそうに軽く睨みつける眼。

 

 

「やっ恵。元気にしてた?シスコンは卒業出来たかい?」

 

 

「元気だったよ。アンタが来なければ」

 

 

原作のキーパーソンの一人。

将来、呪術高専の同期として、高専で共に過ごす仲間。

 

伏黒恵がそこに居た。

 

 

 

五条のおちょくりに、毒を吐き返す伏黒。

だが、五条は意に介す素ぶりを見せず、ケロッとした様子。ノーダメージである。結果、伏黒に一方的にストレスが溜まったカタチになった。哀れ伏黒。

 

 

出会い頭にストレスをぶつけられた不快さを飲み込むためであろうか。目を瞑り、はぁ、と溜息を吐く。

 

 

そして、彼が目を開けると、オレと視線がぶつかった。

 

 

少し面食らった表情でこちらを見てくる。

五条悟一人の来訪を想定していたのだろう。

同世代の女の子が五条と同伴して、家に訪れたことに少し驚いたようだ。

 

「あぁ、野薔薇。この子は伏黒恵。僕が面倒を見てる子たちの一人でね。野薔薇と同じく、呪術高専に入学して、呪術師になってもらうことになってる。君たち、同学年(タメ)でしょ。だから、野薔薇にとって将来の同期に当たるワケ」

 

 

オレに伏黒の紹介をする五条。

呪術高専、呪術師というワードが出た際、伏黒は眉を顰める。

五条のオレヘの説明を聞いて、目の前の少女がどんな存在なのか、彼は何となく察したようだ。

 

 

「始めまして、オレは釘崎野薔薇。これからはキミのお隣に住む事になる…らしい。よろしくね」

 

 

「……よろしく」

 

社交辞令の挨拶こそ交わしたものの、その挨拶のトーンは高くない。伏黒がややダウナー気味なのもあるのだろうが……

 

 

伏黒は明らかにオレを警戒していた。

 

 

伏黒恵は、悪人が嫌いで善人も苦手、ストレスは人間関係といった、難儀な男である。

小学一年生の頃の伏黒は、津美紀の母が消え、五条が訪れるまで、津美紀と二人で暮らしていた。その二人の暮らしでは、頼りになる大人なんておらず、信じられるのは、姉しか居なかった。そこでは、大人を頼ることが出来なかった。無償で頼れる人間が存在が居なかった。

 

 

それに、生まれつき頭がよかったのもあるだろう。環境と、生まれながらの頭脳。その二つが相まって、信じるに値する人間の希少性を、伏黒は、幼い段階で理解したのだろう。しなくてはならなかったのだろう。

 

 

まぁ、初対面の人をいきなり信じられるヤツは居ない。信じてしまう方がよっぽど危険だ。

伏黒のこの対応は、ごく自然なものであり、正しいものである。

 

まぁ、将来は同じ呪術高専東京校に一年生として入学するのだ。今のうちから親交を深めるのも悪くは無いだろう。

 

 

だが。

 

 

「……………」

 

 

 

……伏黒君、ちょっとオレのこと露骨に警戒し過ぎじゃないか?

 

 

 

 

思い当たる節はある。

 

 

 

伏黒は中学時代、グレていた。

グレた原因は、将来、呪術師になることを定められたことに対する反発である。

 

 

"俺が誰を助けるってんだよ"

 

不平等に人を助けるという信念に目覚める前に漏れた、彼の吐き捨てられた内心である。

人を助けなくてはならない呪術師への不満が伺える。

 

今の伏黒恵は、小学六年生。伏黒の姉の津美紀は、中学に進学している。嫌でも、進学という観念を意識する時期だろう。

側にいる人が、進学を果たし、次は自分の番である。だが、進学先の中学を卒業したら、その次の進学先は?呪術高専である。

 

 

つまり、中学の進学が近づいたことにより、彼のなかで、将来呪術師になるという既定路線のイメージがより強くなったのではないだろうか。

 

そんな小学六年生の伏黒の前に、呪術高専、ひいては、呪術師を強く意識させるような存在が、隣に越して来たのだ。

不快にならないワケが無い。

 

嗚呼、なんと間が悪いことだろうか。

彼にとって不快な存在であるオレが、今すぐ伏黒と関係を築くのは、かなり難しいだろう。

骨が折れそうだ。

時間を掛けて、ゆっくりと距離を縮めるよう努めるしかないだろう。

 

 

「あ、そうだ。野薔薇。領域のことなんだけど、恵と仲良くなったら教えてあげるよ。逆に言えば、それまではお預けってことで」

 

 

 

 

はい?

 

 

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