私たちを取り囲むように現れたヘルメット団は、手に持っている銃をこちらに向けながら慌ただしく動いている。
見ればすでに私達の居る公園の外周を固められてしまい、逃げるにしても戦闘は避けられない状態になっていた。
「くっ、ヘルメット団がどうして!ちゃんと奴らの拠点は潰したはずなのにっ――。」
「多分、こいつらこの前潰したところの別のヘルメット団ってところかな……。大方、私たちの抵抗が予想以上にしつこかったから、学校を襲うんじゃなく直接生徒をさらっちゃった方が確実、とでも考えたんでしょう。」
「ああ、大方その通りだが……、貴様よく私達の計画が分かったな。」
ヒトミ先輩の言葉に一人のヘルメット団員が反応を返してきた。
よく見ると、他のヘルメット団員と比べて、そいつだけ明らかに被っているヘルメットが違うし、さっきも他のヘルメット団員に指示を飛ばしていたように見えた。
つまり………あいつがこのヘルメット団のリーダー。
「何処かから、情報が漏れていたのか……。あっちの拠点の連中には襲撃のことは伏せていたはずなんだが。」
「別にーー、対して不思議なことじゃないよ。ただ、うちの勘のいいのがこの前襲ってきた馬鹿どもに違和感を感じてったってだけ。それに、狙うなら一年のアヤネかセリカだとも思っていたし、その二人なら比較的明るい時間に帰るアヤネより、バイトで家に帰るのが遅くなるセリカだって事は簡単に予想付くよ。」
「ふっなるほどな。しかし、それが分かっていながら敢えて一緒にいるなんて………。随分とお優しい先輩だですな~~。それとも自分の実力も分かっていないただの馬鹿ですか~~。まあ、あんな廃坑寸前の寂れた学校に通ってるんだししょうがないわな!!あっはっはっは!!!!」
「「「「「「あっはっはっは!!!」」」」」
リーダーの奴はいきなり態度を変えると、こちらを嘲笑うかのような笑みを浮かべながら私達を馬鹿にしてくる。
周りのヘルメット団もリーダーと一緒に私とヒトミ先輩を嘲笑うっている。
悔しいっ―――。今すぐにでも目の前に奴をぶっ飛ばしたいっ!
でもダメ。こんな囲まれている状況で下手にこちらから仕掛けても、簡単に制圧されてしまうだろう。
何よりこっちが私とヒトミ先輩だけに対して、あっちの人数は少なくとも20人以上、10倍以上の人数差だ。とてもじゃないけど簡単に相手にできる人数じゃない。
おまけにこんな人数差に加えて、見た感じ榴弾砲に加えて何処か持ってきたのか戦車の様な影まで見える事から、向こうはしっかり武装を準備してきている事が分かる。
それに比べて私達はいつも使っている銃があるだけ………。
正直、まともにやって勝てるとは思えなかった。
「ふーん……。寂れた学校……ね。随分好き勝手言ってくれるけど、その寂れた学校一つ、満足に落とす事も出来ない無能集団は、一体どこの誰だっけ――――ねえ?」
そのヒトミ先輩の言葉にヘルメット団は苛立ったのか、笑い声を止め、代わりに殺気交じりの視線をヒトミ先輩を向けて来た。
しかし、そんな視線を向けられてもヒトミ先輩はいつもと変わらず薄い笑みを浮かべながら、ヘルメット団の方を見ていた。
………いや、いつもより若干イラついているような気もする。
「あんまり調子に乗るんじゃねぇぞ、このカス共が!!てめぇら今、自分達の置かれている状況分かってんのか!!」
(((((ガシャン!)))))
「――っ!」
リーダーの生徒がそう言いながら、片手を上げると周りのヘルメット団の銃口が私達を捉える。
いつ発砲されるか分からない緊張感から、私は無意識に息を吞んで、そんな私の様子を見ながら、更にまくし立てるようにリーダーの生徒は話続ける。
「こっちはやろうと思えば、何時でもてめぇらなんて蜂の巣にできんだよ!!どうせこの後砂漠に埋めるつもりだったし、今ここでやっちまってもいいだぞ!!」
――っ!?やっぱりこいつら本気で私たちの事、殺そうとしてるってことね!
どうにかしてこの場から逃げないと!でもどうしたら!!
私がこの場を切り抜ける方法を必死に考えている間も、あいつの話は終わらない。
「大体なっ!てめぇら何か誤解してんじゃねえのか!!あたしらが苦戦してたのは、あの小鳥遊ホシノとかいう化け物だけだ!!あの化け物にさえ気を付けちまえば、他はなんてことないカス共の集まりさ!!あの気の抜けたようにいつもヘラヘラしてる頭の弱そうな生徒会長も!!!すっとぼけた態度でとろそうなお前も!!!何より、今も震えるばっかでなんにもできない、守って貰ってばっかりな、何の役にも立たないバカな後輩共とかな!!!あーはっはっはっ!!」
………悔しい。
あれだけ好き勝手言われても、何も言い返せない自分が……、あいつの言う通りなんだって証明してしまっているようで、今何もできない現実が………何よりも悔しいっ
そして、………情けない。
私は余りの悔しさに、拳をこれ以上ないくらいに力を込めて握りしめ、情けなさに涙が零れそうになる。
そんな状況じゃないことは分かっている。
あんな奴の言葉なんて気にせず、今はこの場を切り抜ける方法を見つける方が先立ってことも頭では理解している。
………でも、どうしてもさっきあいつが言った言葉が頭から離れない。
………ヒトミ先輩。やっぱり私は………。
私がそんな風に自己嫌悪に陥りそうになっていると、
「………ふっ、くっくっくっ………。」
隣からヒトミ先輩の笑い声が聞こえて来た。
ヒトミ先輩の様子に、リーダーの生徒は笑うの止めてヒトミ先輩を気味悪そうに見つめる。
「なんだコイツ。いきなり笑い始めて………気持ち悪いな。」
「ああ、ゴメン、ゴメン。あんまりにもバカな話だったもんで、何か一周回ってわらけてきっちゃってねぇ~~。」
「はあ~~………てめぇ何言って「あのさ……。」――っ。」
「そっちこそ、ちょっと勘違いしてるみたいだから、親切な私が特別に教え解いてあげるよ……。」
まるで幼子に物を教えるように、ヒトミ先輩は指を立てながらゆっくりと話始める。
「先ず一つ目。さっきあんたは、ウチの後輩が何の役にも立たないとか、ふざけたことぬかしてたけどさ………そう思ってる時点で、あんたな~んにも知らないただのバカだから。」
「なんだと!!」
「ウチの後輩は皆、揃いも揃って優秀な子達ばっかりさ。本当なら守る必要なんてこれっぽちも無いのに、あたしらが先輩風吹かしたいがために、勝手に守っているように見せてるってだけ。……何ならあたしたちの方が、よっぽど助けて貰ってる。」
「ヒトミ先輩………。」
「次に二つ目。どうやらあんたらは、小鳥遊ホシノがアビドスで最強だ、って思ってるみたいだけど………そんなことないから。」
「えっ?ちょっと、ヒトミ先輩?」
「あんな真っ直ぐ突っ込む事しか脳の無いピンク猪が最強とか絶対にないから!あいつなんて、ちょっと硬い事しか取り柄の無いただの戦闘狂ってだけ、あんな奴よりあたしの方が何倍も強い!!」
「いやっ、今そんな事言ってる場合じゃないから!?」
噓でしょ!こんな時なのに、そこ気にする普通!!どんだけ対抗心が強いのよ!!
そんな私達のやり取りに鬱陶しくなったのか、リーダーの生徒が声を荒げて来た。
「さっきから訳の分からないことをごちゃごちゃと!いい加減うるせえんだよ!!!!もう面倒くせえっさっさと目的の場所に運んでやるよ!!おめえら、この二人取り押さえろ!!!」
「「「「「「了解!!」」」」」」
リーダーの合図と共に辺りを取り囲んでいたヘルメット団員達が、一斉に私とヒトミ先輩の方に駆け出してくる。
こうなったら、出来る限り応戦して隙を見て逃げるしか――。
私がそう考えて身構えると、
ドカ───────────────ン!!!
「「「「ぎゃーーーーーーーー!!!!」」」」
突如後ろの方で爆発が起こり、それと同時に複数人の悲鳴が聞こえて来た。
「な、なに!?」
突然のことでビックリした私は、反射的に後ろを振り向くと、爆発による煙があっち上っており、周囲に私たちの後ろを固めて居たであろう数名のヘルメット団員が倒れて気絶していた。
「な、なんだ!?」
リーダーの生徒も私や他のヘルメット団員と同じように困惑した様子で煙の方視線を向けている。
しかし、ヒトミ先輩ただ一人だけが、特に驚いた様子も無く、いつもの笑みを浮かべていた。
「………そして三つ目。これが最後だけどさ………あたしらの生徒会長は、ちょっとポンコツで、心配性で、努力家で、………………そして。」
立ち込める煙から複数の足音が聞こえてくる。
その足音は駆けるような足音でこちらに迫ってくる。
そして、煙から複数人の人影が飛び出して来た。
「とっても仲間想いなんだよ!!」
「セリカちゃん!!ヒトミちゃん!!二人とも無事!!!」
「ヨルハ先輩!?皆!?それに先生まで!!?」
そこには、ヨルハ先輩を筆頭にアビドス生徒会の皆とユメ先輩と先生が駆け付けてくれた姿があった。。