……ちくしょう。今回こそ、上手く説得出来ると思ってたのに………あんな全力で逃げられるとは……。
確かに、ちょっとやり過ぎたかなって思うけど、あそこまで怖がらなくても………何も取って食べたりしないのに……はぁ……。
まあ、上手くいかなかったのは残念だけど、引きずってもしょうがなし、切り替えて行こう。
私は、そう思いながら顔を上げて校舎の方に振り返る。うん、後輩の皆やユメ先輩と先生に怪我は無さそうだ。
良かった~~。せっかく来てくれたのにいきなり怪我を負わせちゃうなんて、そんな事絶対あっちゃダメだからね!
校舎の方も………うん!最初に撃たれた銃痕がちょっと有るけど、グラウンドがえぐれたりしてないし、大した被害は無さそう!これなら直ぐに直せるねっ!
「あっ!ホシノちゃん!ヒトミちゃん!二人ともお疲れ様~~。」
「ああ、ヨルハ。ええ、貴方もお疲れ様です。」
「ヨルちゃんお疲れ様。今回も相変わらずすっごい暴れてたね!」
「えっ!?そ、そんな事ないよ!あのくらい普通だよっ普通。そうだよねっホシノちゃん!」
全く、ヒトミちゃんはオーバーなんだから。
ホシノちゃんからも何とか言ってあげてよ。
「いえ、普通じゃないでしょあれは。」
「………え。ホシノちゃん……」
私は、信じられない言葉にホシノちゃんの方に視線を向ける。ホシノちゃんは相変わらず冗談何て言いそうにない、真面目そうな表情を浮かべながらそのまま続けた。
「大体ヨルハは何で、銃を使わずにわざわざ近づいて鎮圧してるんですか。腰に下げているその銃は飾りですか。」
「ああ、それあたしも気になってた。何でなのヨルちゃん?」
「そ、それは…私ヒトミちゃんみたく銃の腕そんなに良くないし………弾だってもったいないし………何より銃で撃つより近づいて殴った方が楽だし………」
「「………。はぁ……」」
私の言い分に二人から呆れた様な視線が向けられるのを感じる。
「………前から思ってましたけど、ヨルハは偶におかしなところがありますね。」
「ホ、ホシノちゃん!?」
「あたしもそれには同意するわ。ヨルちゃん時々なんかズレてる所があるもんね。」
「ヒトミちゃんまで!?うぅぅ………二人して酷くない!?」
何でこんな時だけ二人とも仲いいのさ!!だってしょうがないじゃん!!楽なものは楽なんだもん!!
私は顔を思いっきり膨れさせながら抗議するように二人を睨んだが、二人はどこ吹く風と言った具合に全然気にした様子も無く相手にしてくれなかった。ちくしょう……。
もういいもんっ!どうせ私は考え無しの暴れん坊将軍ですよーーだ!
私はすっかり開き直って二人の視線から逃げるようにそっぽを向いて、校舎の方に歩きだした。
「あーあ……すっかりいじけちゃったよ。ほら、ホシノのせいなんだからちゃっちゃとヨルちゃんの機嫌取ってきなよ。」
「はあっ!私だけのせいだって言うんですか!さっきのはヒトミだって乗っかって来たじゃないですか!」
「おやおや………そうだっけ………?」
「ホントに…貴方ときたら………脳みそちゃんと入ってるんですか。もしくはもう腐ってるんじゃ……」
「オイこらっ失礼だろうが!あたしの頭はちゃんとみっちり詰まっているし、腐ってもいませんー!」
「あーそうでしたね。実の姉に対する欲望
「言いたいことはそれだけか………この性悪チビピンクがっ………大体一番荒っぽい癖に良く人に常識を語れるな。なあ、知ってるかアビドス以外からのお前の評価……荒くれもんやらむき出しのナイフやらいつ爆発するか分からない不発弾やら総じてひどいもんだぞ。特にゲヘナ何て危険人物として七囚人差し置いてかかわっちゃいけない人認定貰ってたよ。そんなんでよく周りに迷惑をかけるなって人に言えるな。」
「いや、ちょっと待て。言いたいことは色々あるけどその前に………私って他の自治区でそんな風に言われてるんですか!?何で私だけ……貴方やヨルハはどうなんですか!?」
「あーーー…あたしらの事は特になんも……」
「噓だっ!!」
「噓じゃないよ。マジの話、あたしらの事はホシノの噂に隠れてあんまり話題に上がらないみたいなんだよね。」
「そ、そんな………」
「まあ、これも日頃の行いってことだねっ!これからは周りに迷惑を掛けないように気を付けようねっ!ホシノちゃんww」
「(ブチっ!)こんの…腐れシスコンが!!その減らず口閉じないと今ここで無理やり縫い合わせてやりますよ!!」
「やれるもんならやってみろよ!暴走チビがっ!!大体もとはと言えば、そっちがケンカ売って来たからだろうが!!」
「なんですかっ!!」
「なんだよっ!!」
(ガルルルルッ!)
(シャーーーッ!)
「二人ともいいかげんにしてっ!!!全然来ないと思ったら何してるの!!?」
(ぐえっ)
(ぐぼっ)
私は今まさに自分の銃を構えようとしていた二人の間に滑り込むと、二人の頭を抱えるように拘束した。
あ、危なかった……っ。全然こっち来ないから様子見で振り返って正解だったよ。
「放してくださいっヨルハ!!ヒトミには、ここで日頃の口の悪さをキッチリと思い知らせないといけないです!!」
「どの口が言ってんだよっ!!口の悪さならホシノだって大概だろうがっ!何なら直ぐに手が出るそっちのほうが悪質だろうが!!」
「それは貴方が直ぐにケンカ吹っ掛けて来るからですよ!何かにつけて私に突っかかって来てっ!何ですか!私の事好きなんですか!?」
「なんでそうなるんだよ!!髪だけじゃなくて頭の中までピンク色なのかお前はっ!!あたしよりやっぱそっちの方が先に常識を学ぶべきだね!あとっあたしはお姉ちゃん一筋だ!!!!」
「二人とも、何で拘束されてるのに喧嘩し続けてるの!?普通ここは一旦落ち着くところじゃないかな!?」
私が抱えこんで身動きが取れないはずなのに、今も勢いが収まるどころかドンドンエスカレートしている様な気さえする二人の親友に、私は動揺を隠せずにいた。
いや、おかしいよねっ!この状況で騒ぎ続けないよね普通!ああもうっ!私達まだ先生にまともに自己紹介もしてないのに………二人がこんな調子じゃ先生に自己紹介何て絶対無理だよぉ。
わざわざ来てもらってるのに~~ふえぇぇぇん。
あと、後輩のみんなも少しは手伝ってよ~~。今も遠くから見てるだけじゃなくて落ち着くように説得とかしてくれてもいいんだよ。
私が今だ騒いでいる両脇の二人をどうしようかと真剣に考えると、今一番頼りになって………同時に一番来て欲しくなかった人がやって来てしまった。
「もう、三人とも………その辺にしなきゃダメだよ。」
((スン………))
ホシノちゃんとヒトミちゃんがさっきまでのやり取りが噓のように静かになった。
二人は固まったまま額に汗をにじませながら、ゆっくりと首だけ動かして話かけてきた人の顔を伺う。
いつもの私なら、おーー!凄ーーい!とかやっぱり二人とも息ぴったりだね!でも言いながら騒ぐところであるが………かく言う私もそんな余裕はなく二人と同じようにその人の顔を伺った。
「ユ、ユメ先輩………」
そこには予想通りの………本当なら外れていてほしかった人物。ユメ先輩がいつもの笑みを浮かべながらこちらにやって来ていた。
い、いやあの顔は違う………。一見いつもの優しい先輩の笑顔に見えるけどあれは、
「三人とも……とっても仲良しで良いと思うんだけどね。ちょーっと言い過ぎなんじゃないかな?」
「ま、まってお姉ちゃん!私たち別にケンカしてたわけじゃっ!」
「そ、そうですユメ先輩!私たちちゃんと仲良くしてます!」
「ユメ先輩!ほら二人とももう落ち着いてるし、もう大丈夫じゃないかな!」
「三人とも……」
「「「はいっ!」」」
「ちょーっと……お話しようか?」
「うへえぇぇぇ~~~」
「ひええぇぇぇ~~~」
「ふええぇぇぇ~~~」
私たちは連行される囚人の様な気持ちで部室へと戻って行った。
どうして、こうなるの~~~