星暦一〇二〇年代(ほぼ現代)のお話。
 動画の姫の正体とは?


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当作は、樽見京一郎先生著作『オルクセン王国史 ~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~』の二次創作品です。ネタバレ要素を含みますので、WEB版読了後の閲覧を推奨します。
また、当品はフィクションでありますので、実在する人物、国家、組織などは無関係です。またそれらを貶める意図は一切ありません。閲覧時はご了承ください。



【オルクセン王国史二次創作】悲劇か喜劇か

 星暦一〇二〇年代のお話。

 

 エーリッヒ・グレーベンは一旦公職を退き、悠々自適な生活を送っていた。晴耕雨読の日々。もっとも、魔種族にとってはリフレッシュ期間にすぎないのかもしれないが。新しい技術について行けずに後進に道を譲る古参がいる一方で、年長者が新たな挑戦者として現れることも少なくない。

 現に彼の義父も、最新のパソコンを買い込んで楽しんでいるようだ。使いこなせるのかと心配する向きもあったが、

 

「なんじゃ、8ビット時代から使こうておるのを知らなんだのか? 大戦術やマイコンウォーズも面白かったぞ」

 

 などと(のたま)う始末。義父の適応力の高さを再認識することになったのだった。見習わなければならないだろう。

 オルクセンでは、学び直しを重要視しているため、何度でも大学に行くことができる。ただ、グレーベンほどの有名人ともなれば、教授連中も萎縮してしまうことが屡々(しばしば)であった。そんな彼の知識欲を満たしたのが、インターネット上の教養講座や動画である。本だけでは解りにくい内容も、動く図や豊富な写真が助けてくれる。名前や外見に囚われず、議論する事も出来る。もっとも、匿名性ゆえに罵倒や攻撃的なやりとりも少なくなかったが。

 

 そんなある日、グレーベンは面白い動画を見つける。キャメロットやエルフィンドの演劇を解説するものだ。最近の流行りらしく、美少女オークのCGが表情豊かに語る。変声機(ボイスチェンジャー)を使っているのが判るが、落ち着いた、やや古風とも言える口調が耳に心地よい。演劇論など無縁な生活だったが、いつしか引き込まれていき、生放送を楽しみにするまでになった。

 

 ところがである。夕食後に書斎で(くだん)の動画を見ていると、彼の妻が入ってきた。コーヒーを入れてきてくれたのだ。

 

「何をご覧になっていらっしゃるの?」

 

「ああ、これはね、戯曲の解説動画で、中々興味深いんだ。古い逸話などにも詳しくて」

 

 そう説明すると、妻が急に真顔になったものだから、

 

「いや、アルバムで見た幼い頃の君に似ているとか、そういうことじゃないんだ。純粋に彼女の知識の深さに……」

 

 言い訳を並べようとしたところで、彼女が大笑いした。腹がよじれるほどである。全く、しばらく見たことのないような有様だったので、グレーベンは困惑するばかりであった。理由を問い詰めたが、妻は頑として口を割らなかった。

 

 悲劇か、喜劇か。幸い、グレーベンが動画の姫の正体を知ることは無かった。

 




【あとがき】

 オルクセン王立演劇協会公式Vの正体っていうツイートがあまりに面白かったので、同音異曲で一筆。二人目の犠牲者?
 一四〇文字のインパクトが凄すぎますよね。
 『オヤジが美少女になってた話』(キヅケヤイ)って漫画もありますけど、ありますけど!

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