TSして第四聖女になった私は魔人にNTRされるってマジィ!?   作:ピエロギ

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TS、誘拐、魔人

「…やっぱ、ち〇こないか…」とひとり呟く。

 目の前の鏡には、裸体を晒した、金髪碧眼の少女が映っていた。

 

 ここは、中世ヨーロッパではない。中世っぽい魔法と奇跡がある、奇妙な世界。

 

 というか、私が生まれ変わっている時点で、超常現象的なものが存在していることに、疑う余地がない。地球で生まれた私が、幼女になっているんだからな。

 

ということで、新生、私ことセリーナ・ファン・ヴァルトレックは、悲嘆に暮れていた。

 

——我が息子は逝ったか。

 

 悲しみが、胸いっぱいに溢れ出す。

 

 今の今まで、一人で行動することはできなかった。お風呂も、召使いに、自動的に洗われていた。トイレをする時さえ、お股を直視しないようにしていた。

 

 その時に、自分の目で確かめろよ!と思ったが、怖かったのだ。

 

 ソレを見てしまったら、確定してしまう。

 

 何がって?

 

 童貞も卒業できずに、死んでしまって、転生という奇跡が起きたにも関わらず、もう、その機会は永遠に巡ってこないということにだよ!

 

 今も足がプルプルしている。ちょっと過呼吸っぽい。ヤバい。頭がクラクラする。

 

 「ネリー。ごめんなさい。ちょっと疲れちゃったみたい。手を貸してくれる?」と外に控えているだろう、私の乳母であり、メイド長であるネリーに聞こえるよう、大きめな声で呼ぶ。

 

「はいッ、お嬢様。こちらのお召し物に袖を通させていただきます」と、慣れた手つきで、薄手の衣服を、身に付けさせられる。

 

「ごめんなさい。ネリー、少しだけショックを受けてしまってね」

「いいえ、お嬢様。これは、お嬢様のせいではありません。ただ、私も歯がゆく思います」と彼女の目から涙が、頬に流れた。

 

「ネリー。私の為に泣いてくれるのね。ありがとう」

「当然のことでございます。貴方のことは、赤ん坊の時から自身の娘のように、思ってまいりました」

 

――娘とか言わんといて。傷口が広がる。

 

「どうして、貴方が、選ばれてしまったのでしょう」とネリーは私の背中のちょっと上、うなじの下辺りを撫でた。そこには、白肌に薄い焼き印が付いていた。

 

 「もう、どうしようもなかったのよ。今は受け入れるしかないわ」と答える。

 

「あぁ、神よ。なぜ、この子にこんな試練をッ…」と嗚咽混じりの声を上げながら、ネリーが、私を抱擁する。

 

 「お部屋に戻りましょう」という私の声で、「申し訳ございませんッ」とネリーは抱擁を解いて、私の部屋まで運んでくれた。

 

「ネリー。私が眠りにつくまで一緒にいてくれない?」とベッドに潜りながら、ネリーにお願いをする。

 「もちろんです。このネリー、お嬢様が望むことであれば、何事も遂行いたします」

 「そこまで、気を張らなくていいわ。ただ、そばにいてちょうだい」

 

 そうして、私は目を瞑った。瞼の裏には、自身の男性的象徴がなくなった体の姿が映し出された。

 

 劣情を抱くなんてことはない。ただ、心に何か大きな穴が開いてしまったような感覚になる。このまま、暗闇の中に独りでいることに耐えられなかった。

 

「ネリー、やっぱり、何かお話を聞かせてちょうだい」

「それでは…初代王の英雄譚をお話しいたします」

「何度も聞いたお話だけど、今は落ち着きたいから、それでお願い」とネリーに言うと、彼女は、語り始めた。

 

 今は、昔。この地には、邪知暴虐な魔人が君臨していました。この地に住まう人間たちは、それはもう、大変な暮らしであったと言います。ゆえに、英雄の登場を心待ちにしておりました。

 

―――この世界には、魔人と呼ばれるようなファンタジーな存在もいる。彼らは、その数こそ少ないが、強力な魔法を操り、人間と敵対している

 

 続けて、ネリーが語る。その内容は、簡単に説明すると次のようになる。

 

 外洋の遥か彼方から、一人の男が、波浪に揉まれるには心細い小舟に乗って、南岸の小さな港町にたどり着いた。その男が言うには、自分が大いなる意志によって遣わされた救世主だと。

 

 その男は、漁民に困っていることはないかと聞き、彼らは、からかい半分で無理難題を押しつけた。

 

 何日分にもなるほどの大量の魚、燃料の薪、そして、深い海底にしか生えていない薬草などだった。

 

 しかし、それらの難題を男はいとも簡単にこなし、僅か半日足らずで漁民の要求に応えた。港の人たちは、彼がただ者でないことが分かると、彼にこの地の魔人について話した。

 

 そうして、彼は各地で、魔人によって生み出された魔物や、怪物を倒し、その地に住む人々を助け、束ねていった。そして、かの魔人が住まう居城に軍を率いて、魔人と一騎打ち。

 

 それまでは、魔人には、どんな攻撃も効くことがないと言われていたのだが、彼の放つ剣戟は、いとも簡単に魔人の体を切り裂いた。最後には、魔人の首を討ち取り、ハッピーエンド。

 

 その男は、この地の王となり、国を作った。彼の首には、奇妙な印がついており、初代王が国を治めてから、時折、同じ印を付いた子供が生まれ始めた。

 

 その時は、王の“夜遊び”によるものかと思われたが、物理的に不可能な場所で生まれた子供にも印が付いていたことから、その可能性は消えた。

 

 因みに、初代王は、結構な性欲モンスターだったらしい。妾がたくさんいたようだ。

 

 ウラヤマケシカランッ!

 

 こっちは、経験値ゼロだってのに…

 

閑話休題

 

 その印は、聖印と言われ、聖印が付いた人物の斬撃や魔法攻撃は、魔人に対しての有効打になる。だから、速攻徴兵される。王族や、貴族の直接的な跡取りのような立場でないと、断れない。

 

 私の背にも、それらしい痕がついていた。今は息子のショックを受けているが、明日からは、そのことについても真剣に考えていかんとな。

 

 まっ!どうやらこの家はかなり裕福なところらしいし、戦場に向かわせるようなことはしないだろう。ガハハハッ、特権階級サイコー! 

 

 

 

 それに、徴兵されれば、婚約の話もなくなるかもしれないし、退役したら、のんびりスローライフだ~

 

 そう、最初は思っていた。今思えば、本当に自分がそんな程度で済むと考えていたことが余りにも憎らしい。甘すぎるだろッ!見通しが!

 

 現に今、私は生と死の境目に直面している。今の私はあの屋敷に住んでいた頃と異なり、タッパも、体付きも成長し、立派なレディになった。そんな女性が、所々破れた、素肌が見える修道服を着て、薄暗い部屋の中、椅子に縛られている。

 

 外からは怒号が聞こえ、尋常でない雰囲気が感じられる。そう、今の私は、魔人の拠点に連れ去らわれて、囚われている。

 

 外からの言い争いの声が聞こえた数分後、扉が開かれる。廊下側の照明が逆光となり、相手の顔は見られない。しかし、爛々と光る赤い瞳はその者が人外であることを示していた。よく見れば、角が二本生えているのが分かる。

 

 ゆっくりとその魔人は、私の方へ近づいてきた。私の前まで、歩を進めると、その容姿を確認できた。短く整えられた銀髪に、赤い瞳孔、そして、大海原を思わせる深い青色の肌を持った偉丈夫が、私の前に立ちはだかった。

 

(捕虜になった女性の扱いなんてものッ予想できる!クッソ!慰み物になってしまうぞッ。もし、日本のHentai的文化魔人だったら、感度3000倍にされてしまうッ!)

 

 童貞卒業の前にグッバイバージンとか笑えない。そんなことになれば、魂が裂かれてしまう。私の心は依然として男なのだ。体は女だが、主観視点だと、男と致していることになる。私は同性愛者じゃない。それだけは、変わらない。

 

 私は相手の瞳を睨みつける。無駄な抵抗かもしれない。その赤い視線もこっちの瞳をのぞき込んできている。

 

 ウゥ…怖い…。前世のお父さん、お母さん、そして妹。私は今世、とんでもない目にあって野垂れ死にするようです。

 

 そんなことを考えていると、相手の恐ろしい魔人が口を開いた。

 

「貴公は、聖女セリーナ・ファン・ヴォルトレックでいいな?」

「そうであったとしてッ、大人しく答えるとお思いですか!?」

「まぁ落ち着け、人間。ここでの問答がお前の処遇を決める重要なものになる。大人しく答えろ」とその魔人は私を脅迫する。

 

「…私自身、そう自称したことはありませんが、多くの人からそう呼ばれていました」

「———今まで、我々の仲間を殺したことは?」

 

(ない!こちらとら、攻撃魔法ほとんど使えない聖印者にあるまじき、ぼんくらやぞッ!)

 そんな風には答えられないので、適当に返す。

 

「仲間たちを支援し、戦線に送り返していました。彼らが、魔人を殺したのなら、私も間接的にですが、殺したのと同じです」

 「…そうか」と目の前の魔人は、短く答えた。そして

 「君は、我々が憎いか?」と

 

素っ頓狂な質問だ。当然————————————————————————憎い

 

相手の言い分も分かる。初代王の話が本当なら、人間の方が侵略者だ。人間側の方が強欲だと思うし、傲慢だと思うのは私が前世の記憶をもっているからだろう。

 

「多くの人々がそう思うように、私はあなた達、魔人を憎んでいます。治癒師として、あなた達に殺された人もたくさん見てきました。でも…」

 「でも?なんだ?」と赤目をギラつかせながら、続きを話すように、促してきた。

 

 「それは、あなた達も同じでしょう。こちらも殺してきました。その痛みが積み重なっているから互いを憎しみ続けるしかないのでしょう?」

 

 そう答えると、目の前の青肌の魔人はその目を大きく見開いた。

 

 ヤバかったか?嘘でも、憎んでないっていった方がよかったか?と冷や汗をかきながら様子を伺っていると

 

 「…こちらの質問に真摯に答えてくれてありがとう、セリーナ。君の待遇は直に良くなる。それまで、耐えてくれ」と答えると、背をこちらに向けて、部屋から出ていった。

 

 これは…耐えたか?凌辱エンドは回避?つまり、逃れられたってこと?

 

 ヤッターーー!!

 

 この私の交渉力ならば、これくらい余裕。勝った。風呂入って寝てくる。

 

 いや、ここ牢獄やん。風呂どころか体も拭けない。もし水魔法使っているとこ見られたら、やっぱ苗床で…となるかもしれない。

 

 今日は我慢しよう。明日はちょっとぐらい、いいかな~

 

 と、この時の私はのんきにそう考えていたのであった。

 

 

 白亜の柱と、細部まで手の込まれた彫像が立ち並ぶ廊下の先にある扉に、尋問を終えたことを報告するため、ノックをしてから入室する。

 

 中には、大理石で造られた執務机に座って作業をする一人の魔人がいた。白蓮の如き一点の曇りのない白い肌、天空に浮かぶ雲のように柔らかい優美な白髪。紫石英(アメジスト)色の幻想的な瞳をこちらに向ける、私の師だ。

 

「尋問が終わりましたので、ご報告に参りました」

 

「苦労を掛けたね、クシール」と私の名前を呼ぶ。「それで、どうだったかな?」と聞かれる。

 

「我々に敵対心を抱いていていますが、これ以上、争いを望まないという言葉は本心でした」

 

「君の嘘を見破る魔法で見た結果なら信じよう。それ以外に何かあったか?」と聞かれる。

 

 そういえば、私を見るなり、変におびえていたが、捕虜となったことを考えれば、当たり前か。

 

「何やら挙動不審でしたが、捕虜になった状況を鑑みれば、不自然と言うほどには。それと、こちらも同胞を殺されて引くに引けないと理解を示してくれました」

 

 すると、目の前の白亜の紳士の表情が僅かに変わった。口角が常日頃、顔を合わせていたから気付くほどの小さな変化だった。

 

「…ならば、一度私からも話してみないとな」

「彼女は拘束はされていますが…印者です。もしも、がないわけではありません」

「それは、彼女も同じだ。いつ殺されてもおかしくない。対話を試みるには、こちらもリスクを負わなければならないのだよ」と諭される。

 

「…了解いたしました」と答え、主の邪魔にならないように、部屋を退出する。

 

 部屋で、独りとなった白き魔人は、背もたれに大きく寄りかかり、自身の角を触りながら呟く。

 

「セリーナ、やはり君はあの時の少女なのか…」

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