TSして第四聖女になった私は魔人にNTRされるってマジィ!?   作:ピエロギ

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入学

「それでは、88回生の入学式を行う」

 

 壇上に上がっている強面の男性がそう宣言する。

 

 スキンヘッドで、ヤが付く業界にいそうな風貌。ここの教官として勤務しているのだとしたら、元軍人だろう。

 

 つつがなく式典は進み、最後に最優秀新入生の挨拶が行われる。事前にテストを受けて、心技体、魔法も含めたものを検査の結果だ。

 

「アレクシオス・ヴィン・セラフィム、前へ!」

 

 一位は……私じゃない。それはそう。何事にも突出した才能をもった人物は存在する。そう、目の前にいる真っ赤な髪色のあどけなさが残る青年のように。

 

〈あれ、王族の?〉

 

〈そうらしいわね。王族直系が学園に入学することここ十数年いないらしいし、超強いらしいわよ~〉

 

 後ろで、目新しい学生服の女学生が姦しい。聞いた話だと、彼はサラブレッド。超優秀なのもうなづける。

 

「皆さん、こんにちは。私はアレクシオス・ヴィン・セラフィムです。この度、聖紋学園の新入生代表として皆様の前に立つことを大変光栄に思います」

 

 彼は一呼吸置く。その動作さえ、力強さと優雅さが伝わる。まさに、王としての風格というものだろう。

 

「はじめに、私たち新入生を歓迎し、支えてくださる教官の皆様、そして今日ここにお集まりいただいた全ての方々に、心から感謝の意を表します」

 

 続けて

 

「学園での生活は、甘いものではありません。毎日の訓練は我々の肉体と精神を極限まで追い込むでしょう。しかし、それこそが真の力を引き出す道です。我々は、この苛烈な環境を乗り越えることで、真の戦士として成長するのです」

 

「そして、その暁には、悪鬼羅刹の魔人の命でもって、祖国に貢献することを誓いますッ」

 

 なかなか、肝が据わっていること言うじゃないか。正直、彼以外がこんなことを言っても一笑に付すだけになるだろう。実力、血筋、カリスマ、そのすべてが揃っているからこそ、言葉に重みが乗っている。

 

「最後に、教官の皆様、先輩方、関係者の皆様に改めて感謝を申し上げます。我々は、この苛烈な道を全力で歩み、必ずや期待に応えてみせます」

 

 そう、入学式は締められた。聖印者は必ずしも、高貴な家庭から出るということでもない。現に、右も左も分からない田舎暮らしであったものもいる。

 

 あっ、私の近くで一人、新入生の中で倒れた。多分、これからの生活の不安が爆発してしまったんだろう。式典中に倒れなかっただけ、マシか。

 

「大丈夫ですか?」

 

 駆け寄って、顔色を伺う。黒髪の幼さが残るかわいらしい女の子だ。血の気が引いて青白くなっていた。気休めにしかならないけれど、回復魔法をかける。

 

 少しだけ、顔色が戻る。

 

「一人で立てますか?」

 

 うぅと唸るだけ、返事が返ってこない。

 

 近くに寄ってきた強面教官に、医務室の場所を聞く。

 

 私の鍛えた体なら女の子一人ぐらい運べると思うけど、教官が軽々背負ってしまった。

 

「そこの新入生。回復魔法を今使っただろう。ついてこい」

 

 有無を言わさず指示をされる。大人しく従う他なさそうだ。

 

 十傑集走りでとっとこ医務室に向かう。途中で、上級生や教官にまたかといった風に見られたけど、気にせず向かう。

 

「失礼、入学式で倒れた学生だ。治療を頼む」

 

「わかりました。そこのベッドに寝かしてください」

 

 優しそうな女性が対応する。こうなることが珍しくないのだろう。かなり落ち着いていた。

 

「そこの子は?」と問われる。すると

 

「倒れたその新入生を、回復魔法で介抱した新入生だ」

 

 教官が代わりに答えた。

 

「セリーナ・ファン・ヴァルトレックです」

 

 自己紹介をしておく。

 

「あら、貴方が。ヴァルトレック家の令嬢さんね」

 

「はい、本日からこの学び舎の一学生になりました」

 

「ヴァルトレック家は優秀な娘さんを持っているようだ。あの場で最も早く行動を起こせたことは称賛に値する」

 

 教官、めっちゃ褒めるやん。そんなに褒めても何も出んぞ。私の自己肯定感は爆上がりだけど。

 

「それでは、先生。後はよろしくお願いします」

 

「私はどうすればよいでしょうか?」

 

「ここで、その倒れた半端者が寮分けに間に合うように介抱してやってくれ」

 

 そう言い残すと、教官は立ち去っていった。半端者は言い過ぎじゃないだろうか。

 

「ガリアーノ教官が褒めるなんて珍しいわね。あの人堅物として有名なのに」

 

「そうなのですか。確かに気難しいように思いましたけど」

 

「それは事実ね。あら、私ったら、名乗るのが遅れたわね」

 

 目の前の治癒師が恭しく頭を下げて名乗る。

 

「カルム聖紋学園駐屯治癒師、マリシア・オルフィス。マリーが愛称よ」

 

「よろしくお願いいたします。マリーさん」

 

 マリーさんのダークブロンドのボブカットの髪が揺れる。

 

「それじゃ、本職の回復魔法、見せてあげましょう」

 

 そういうとベッドで寝かされていた女の子に、私と同様に回復魔法をかけた。

 

 

 

 すると、顔色が完全に正常になり、穏やかな寝息がきこえるようになった。

 

「すごいです!どうやったんですか?」

 

「治癒魔法って単に傷を癒すだけじゃなくて、体の緊張や血の流れ、こわばったりしている所をほぐせるのよ」

 

 初耳だ。ネリーとの訓練の最中は、怪我をすることが多かったから、そうした使い方をしたことがなかった。

 

 でも、筋肉痛とかを癒せたりできるのならそうした使い方もできそうだな。

 

「今度は、貴方の番ね」

 

「へぇ?」

 

 間抜けな声を出していると、医務室の扉が開いた。上級生だろう男に背負われて、怪我人が運ばれてきた。

 

「マリー先生、すまねぇ。実践訓練で怪我人だ」

 

 その先輩は、ベッドに怪我した上級生を乗せる。

 

「それじゃ、一緒にやっていきましょうか」

 

…マジで?

 

 けが人を見ると、所々に火傷が見える。多分炎の魔法を喰らって、痛みに耐えかねて意識を放してしまったのだろう。

 

 すぐに、治療しなければ、死にはしないが、その火傷の痕は消えることはないと思う。

 

「貴方は治癒魔法を。私は患部を冷却して、壊死した所を取り除くわ」

 

 この学園、ヤバい。頭イかれてる。何、今日来たばっかの新入生にこんなことさせるの!?

 

 

 

 

「ぷはぁー、何とか終わった~」

 

 そう言葉を吐いてへたり込んでしまう。

 

「最初にしては、中々筋がいいわね。聖印者じゃなかったらウチの所に欲しいくらい」

 

 マリーさんはお茶を持ってきてくれた。それをフーフーしながらゆっくり飲む。

 

「ここじゃ、急患って珍しくないんでしょうか?」

 

「そうね。訓練で、下手なことをして怪我する生徒は絶えないわね」

 

 そんな訓練、これから受けることになるの?絶望なんだけど。

 

「聖印者が訓練で死ぬようなことがないように、ここでは優秀な衛生兵が駐在しているわ」

 

 それじゃ、マリシアさんも優秀な治癒師だということだろう。

 

 施術が終わった頃に、倒れた黒髪ガールが起き上がった。

 

「……あれ、私……」

 

「おはよう、寝坊助さん。貴方、倒れてここに運ばれたのよ」

 

「…ゴメンナサイッ!!迷惑をおかけして…」

 

 目が覚めたその少女は、少し濡れた黒い瞳を細めて、頭を下げた。

 

「私じゃなくて、彼女に言って。あなたを介抱したのは彼女なのだから」

 

 そう、優れた治癒師は私を紹介した。

 

「どうも、あなたと同じ新入生のセリーナです。よろしくね」

 

(おっ、ここで新入生の友達ゲットか?)

 

 入学初日にトッモができれば、大金星だ。それが、黒髪美少女なら最高だ。

 

「ワッ、ワァ、ワタヒはッ!!レイナですッ!!」

 

 ほう、レイナ…玲奈。この世界の人名はややこしい。日本人的な名前ならこの上なく覚えやすし。

 

「…レイナ。とっても馴染み深い名前ね。実は私もこの学園に来て不安なの。友達になってくれる?」

 

 笑顔。いやらしい目的とかないよ~というチャラい男が言いそうなセリフ。これ、レイナちゃんにキモイとか思われてないよね…?

 

 まぁ、杞憂だったんですけど。

 

「こっちこそ!!友達欲しかったの!!」

 

 おっ!!反応は上々。レイナの手を取り、キャッキャッする。その姿を見て、マリーさんは笑って

 

「貴方たち良かったわね。もう歩けそうなら、中央ホールに行けば寮の部屋に分けられるから行ってきなさい」

 

 すると、レイナちゃんは顔を曇らせる。そら、友達となっても、すぐに別れることになるだろうから。ここは安心させるか。

 

「大丈夫よ。聖印者は数が少ないから訓練や勉強で別々になるとは思えないわ。毎日会えるわよ」

 

 曇った表情が少しだけ晴れた。安心させられて良かった。

 

 「それでは、マリーさん。お邪魔しました」

 

 そう言って、医療室を後にした。その後分かったことだけど、あのガリアーノ教官が手を加えたのだろうか?寮では、2、3人の部屋に入るのだが、私とレイナちゃんの二人部屋ということになっていた。

 

 つまり、年端も行かない少女と同じ部屋で寝食を共にするってこと。

 

 キャ——不純ッ!!イケマセンッ!!エッチ過ぎます!!

 

チェリーボーイには刺激が強すぎるぜ。ベイべー

 

 そんな風にドギマギしている私の横で、さっきまでの不安が完全に払拭した、淑女レイナちゃんがいたのであった。

 

 

「レイナ…第三聖女の方か…」

 

 やっぱり魔人の間でも知れ渡っていたのか。殲滅姫、聖女レイナ。それが彼女の現在の姿。

 

「いや…人違いかもしれませんよ」

 

 心の中でヤッベ!!と思った。これじゃ、仲間を売ったみたいだ。映画の中で仲間を売った捕虜の結末は死。

 

 取り合えず、しらばっくれよう。

 

「嘘をつくな。さぁ、続きを話してもらおう。お前の話は思った以上に興味深い。先ほど、捕虜としての価値について警告したが、すぐに実践するとは」

 

 何コイツ。メチャクチャ煽るやん。性格悪いッ!!

 

「もう何もじゃべりません…」

 

「そう、臍を曲げるな。これは、褒美だ」

 

 そう、青い巨躯格子の入り口に近づいてくる。

 

 褒美…ハッ!!そういってエロいことする気だぞ!!このドむっつり魔人!!

 

「イヤ!!私まだ清いんです!!…初めては愛した相手って決めているんです!!」

 

 同情を誘う文句を並べる。逆に欲情を誘う?うるさい!!これ以外どうしろと…

 

「…??何を言ってるんだ。暇なのだろう」

 

 と言って本を渡される。文字は魔法を詠唱するときに発音する魔法文字であった。

 

「…ありがとうございます」

 

 恥ずかしくなった私は、話を取り合えず変えるため、身の上話を続けざるを得なくなった。

 

 おのれ、クシール。恐ろしき魔人よ。




書いてた物はこれですべて放出しちゃいました~
不評だったら打ち切りということにします。
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