TSして第四聖女になった私は魔人にNTRされるってマジィ!? 作:ピエロギ
「Elen síla, náro quetëa!!(火花よ、現れろ!!)、Venti aria, sira quetëa!!(そよ風よ、その力を見せろ!!)」
濡れた服と髪を乾かすため、風魔法と威力を抑えた火魔法を使用。いきなりの水魔法を成功させた少女は、アワワァと涙目になり、顔を真っ赤にさせながら、震え声で
「ゴ、ゴ、ゴメンナサイィ!!本当に…そんな…びしょ濡れにするつもりじゃなくてェ…」
そんな顔をしなくてええ。めちゃくちゃ魔法の才能があることを誇ってもらいたい。びしょ濡れになったのも慢心が生んだ油断。つまり、非は私にある。
「ハハッ!!すごいよ!!初めてでこんなに水を生み出せるの!!レイナは魔法の才能があったんだよ!!」
「エっ!!え!!…そうかなぁ…?制御できなかったし、水の球にならなかったし…」
「最初は水を作り出すこともできなかった私よりもずっと筋がいいよ!!」
心の中で、これが水で助かったと安堵。もし、火魔法であったなら昨日に治癒した先輩と同様に医務室に運ばれていただろうから。
もしかして、最初に水魔法なのは危険性が少ないから?
「中々に、筋がいい。だが、制御が足りないぞ、レイナ」
いつの間にか、背後に白髪の魔法教師が立っていた。そして、私に向かって
「魔法に対して慢心などせぬように」
「はい…了解しました」
「心しておくように。それでは、二人は他の生徒の指導に」
「「はい」」
むむ。注意されてしまった…これからの講義はこんなことにならないようにしないと。
「それじゃ、他の子に教えに行くね」
「うん.…」
心配そうなレイナを残していくのは、心が痛まれるけどしょうがない。それに、これで別のフレンズをゲットできるかもしれないし。
そういうわけでふらっと練習している子を探してみると、何度も魔法の行使を試みて失敗して立ち尽くしている子を発見。見た目は茶髪のウェーブが掛かった髪、目鼻立ちはくっきりとしていて、元気で明るい印象を受ける。ちょっくら話しかけてみますかッ!!
「どうかな?」
「…マジ無理。全くどうやればいいん?コレ?」
まさかのギャル!!この中世的な世界に存在するのかッ!!
心の中での衝撃をこらえながら、こういった時のコミュニケーションはどうすべきか考える。とりあえず、共感。これがないと始まらない。
「私も、最初は全然ダメで一滴の水さえ生み出せなかったよ。水の玉を一つ作るのに半年掛ったし」
「ほぇ~って、半年ッ!!それじゃ、やっぱ無理じゃん」
「そうだよね。そう思うのは仕方ないよ。だから、今度は水を生み出す以外の方法を試そう!!」
「…え?」
そう。水を生み出すのは難しい。レイナは一発で使えたが、何もない空間に水を生成するのは正直、結構な労力だ。
私には、魔法の才が無かったから気付いたことだけど、初級魔法はぶっちゃけ一番簡単な魔法というわけじゃない。いくつかの現象を連続に発生させなければならないから。
水魔法で一番初歩的な現象は水自体を操ることでないか。そう気づいたのは、水魔法に初めて成功した時、雨季で空から水という物質が降り注いていた時であった。
「それじゃ、まずここに水を用意するね。Nara luma, ela quetë!!」
そうして、ギャル少女の前に水溜りを創り出す。
「今度は、空中に一滴分の水を浮かせることを想像してこの水溜りに向かって水魔法を使ってみるといいかも」
「…うん。やってみるわ!!」
柔らかな茶髪を揺らして、少女は詠唱の準備を始める。私は彼女の隣でアドバイスをする。
「目を瞑って、集中。最初は息を吸って吐くことに集中して」
少女は瞼を閉じて、ただ呼吸音だけが聞こえる
「次に、一滴の水を想像して…….自分のタイミングで詠唱を」
息が整い、少女は魔法を使う。
「………………Nara luma, ela quetë!!」
はっと、目を見開き、水溜りに向かって手をかざした。詠唱に応えるように、水面が揺れ動き、振動する。そして、丁度真ん中、水滴が水面張力に逆らって…
「「あ!」」
ほんの少し浮いて、また水溜りに吸われていった。
(あと、もう少し!!)
心の中で残念に思う。失敗して落胆してないといいんだけどと思っていると
「えッ!!マジでウチが今のやったの!?ヤバ!!ありがとうッ!」
活発な少女に抱き着かれる。あぁ、そうか。初級魔法を使えるようになって一年ぐらい経っていたから忘れていた。
魔法という現象を自分自身で使って初めて見ることができた時の達成感。そして万能感。それは、魔法に焦がれてた人間にとって媚薬のようなものだ。
「喜んでもらえて良かった!詠唱して何も起こらないのとっても辛いの分かるから、少しでも変化が見れると嬉しいよね」
「そうそう、ちょー恥ずかしいし、へこむ!!」
「だよね~」
おっ、共感。詠唱してうんともすんとも言わないと恥ずかしいのは誰だって同じか。
「ふむ。何かしらに水を溜め、水魔法の発動の有無について調べる方法か…」
いきなり、さっきのようにルシアス先生が背後に立ってそう言う。正直びっくりした。
「中々どうして、良い手法。素晴らしい教え方だ、セリーナ嬢」
「色々と試行錯誤して、思いついた方法です…因みに先生は最初から魔法が使えましたか?」
「魔導書を見れば、一発でできた」
なるほどね。最初からできたことで、できない者がやるトライアンドエラーを知らなかったのか。
「ふむふむ。これは使えるな。タチアナも含め感謝する」
そう言って去っていった。この教師、まさか、生徒の名前、初日で全員覚えているのか。しかもちゃんと感謝を伝える。ふ~ん。結構いい先生かも?
タチアナと呼ばれたパリピ少女に改めて、向き合う。そう言えば自己紹介をしてなかった。
「タチアナちゃんでいいのかな?そういえば、名前聞いてなかったね。私はセリーナ」
「うん、よろしくね!セリーナちゃん!!」
そうして、新たなクラスメイトと親しくなった。元気たっぷりの明るい少女、タチアナちゃん。彼女に教える傍らで、レイナが教えている所を目撃した。相手はバイオレットカラーの姫カット。大人しそうな子だけど、ヘヴィーメタルとか好きそう。
「なんか、こうゴワー!!ていう感じになって、水がドバー!!ていうことを考えながらやると水がぷしゃーー!!って!!」
黒髪少女は、身振り手振りで一生懸命に教えているが、相手はポカンとして「?????」と疑問に埋もれている。
レイナちゃん。教えるのはちょっと苦手みたいだ。
「講義を終了する。午後のガリアーノ教官による訓練は熾烈なものだ。万全を期して、向かうように」
えっ、そんなにキツイの?隣のポジティブ少女も流石に顔を青くしている。
この空気を打開するためには…
「取り合えず、昼食を取りにいかない?」
「そうね。確か、食堂で貰えるんだっけ?」
学園にいた時は、昼食を取れていた。といっても…ビスケットやスコーン。炭水化物が主で、軽食といった感じ。
まぁ、この後の訓練で吐く人の多さを考えたらこれくらいの量が良いのかもしれない。
「私の友達、レイナって言うのだけど彼女も誘うね」
「了解!!私も昨日できた友達を誘ってみるよ」
といって解散。レイナを見つけると、あの時に教えていた子と仲良くなっていた。
「あっ!!こっちだよ、セリーナ!!」
「どうも~。そっちの子は教えていた?」
「そうそう、さっき仲良くなったんだよ」
そうして、改めて、その容姿を確認する。青紫色の髪と目。私とレイナよりもちょっと背が小さい少女。
「…シーファです…よろしく…」
ちょこんとお辞儀をする。KA WA EE!!これは、とんでもない破壊力ですぜぇ!!
「こっちこそ、よろしくね。シーファちゃん」
「…うん…セリーナ」
「そうだ、ちょっと食堂に行かない?私もさっき仲良くなった子たちと行くの」
「…ごめんなさい…少し用事があるの」
「ううん。気にしないで!!無理に誘ってごめん。レイナはどうする?」
「うぅ….どうしようかな…」
「…私のことは気にしないで…午後の訓練の時に落ち合いましょう」
「…うん。それじゃ、行こうセリーナ」
というわけで、レイナと一緒にタチアナの所へ。何人かのグループができていた。なんというコミュ力。
合流し、自己紹介云々を終えて、皆で移動し、配給を貰う。午後の訓練が行われると知らされている広場の木陰でガールズトークが始まった。
話の中で分かったことだけど、タチアナはこの国の北部出身で、森で暮らす猟師の娘らしい。
「せっかく、都会に来れると思ったのに、この学園の周り、マジ森しかないじゃん!!」
タチアナの言葉に何人かの女子が頷く。秘匿する為なのかは知らないが、近くの集落に行くのにもかなりの時間を要する所にこの学び舎がある。
「そう言えば、セリーナって貴族でしょ!?どんな風な生活してたの?やっぱり華やかなのかな~」
話の流れが私の方へ。
ゴージャスな生活というものに憧れを持つ少女たちの視線。クォレハ、どう答えるべきか。
「確かに、ドレスや装飾品を付けて社交界とかに出ることはあったけど…」
目を輝かせて、タチアナを含んだ女生徒が私の話を聞く。
「実際は、礼儀作法に厳しくて自由な時間はなかったわね。刺繍や裁縫などの手仕事も習っていたし…」
そこら辺の今よりもっと幼かった時の記憶。言われるがままに与えられた課題を淡々とこなしていたと思う。
「それに、聖印が出てからは訓練ばっかり。でも、そのお陰で魔法について早くしてたからよかったかも」
「ふ~ん。お嬢様だからって楽ってわけじゃないんだね、ガチ大変そう」
そんな話をして時間を潰し、ビスケットをかじる。女子の輪に入って会話するってこんな感じなのか?
疑問に思いながらも、他の子たちの話に合わせて、相づちを打ち、交流していれば、時間に。
「これより、午後の訓練を開始する!!早く集合しろ!!」
一回生が続々と集まる。その中には、さっきの青髪少女、シーファが革製のサイドポーチを付けていた。
「今日の訓練が一番楽で、一番単純だ。あの丘の後ろに沼地がある。そこまで走って、記章、行けば分かる場所に置かれたエンブレムを持って帰ってこい!!」
教官の指した方向を見る。丘まではだいたい目測で十キロ程度だろうか。丘から沼までの距離は分からないが、往復で二十数キロ。
山道や沼といった足場が悪い場所。まだ子供の年齢で走り切れる距離じゃない。
「もう、訓練は始まっている。準備できた者から行け!!」
一番早く走り出したのは、アレクシオス。何の躊躇いも感じさせずに、疾走。それに続いて、反骨精神が刺激されたのか男子生徒が走り出していった。
「ちょっと、早く行かないとヤバくない!?」
「待って!!このまま、無理に走り出したら途中で倒れる!!」
「んじゃ…どーすんの…?」
この訓練の目的を考える。たぶん、教官は事前調査で測れない、困難に直面した時の反応を見たいのか?
そうした困難に対応する方法の一つは…協力して乗り越えること。
「私は治癒魔法か水魔法なら扱える、途中で怪我や水分補給が必要な時に言って。タチアナは山道の走り方を教えてくれない?」
「え…!?でも、ここ故郷の森とは全然違うし…」
「大丈夫。下り坂や上り道での体重移動のやり方なんかの基本で。それだけで、大分楽になるよ」
「マジ…!?」
私以外で、治癒魔法や水魔法を扱えるクラスメイトを探す。すると姫カット少女、シーファが私と同じく治癒魔法を扱えるという。なんという僥倖。
バックアップがあるに越したことはない。
「それじゃ、そろそろ行こうか」
集まった一回生を率いて、最初の肉体訓練、ランニングが始まった。