高一から志望校一度も変えずに勉強してもおちるんですね。
ネタの解説は後書きに書いてあるはずです。
目の前に棍棒が迫り、自身の想定の甘さを後悔した。
しかしもう時間を止めるほどの時間はない。
時間を操れるのに時間が足りないなど、実に皮肉な話だ。
せめてもと目をつぶった瞬間、強い衝撃が加わり倒れこみとっさに前受け身を取った。
何故自分が前に倒れこんだのかと振り向くと、
そこには口をあんぐりと開けたハリーとロンが立っていた。
「サクヤ!!なんで君がここにいるのさ!!」
「あらロン、ここは女子トイレよ?男子トイレは廊下の反対側でここじゃないわ。」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!」
杖を抜いてトロールの方を振り向くと、
奴は相変わらず阿保面を引っ提げてこちらとハーマイオニーを交互に見つめている。
きっと全員で何人かを数えられずに困っているのだろう。
もしくはどれから食べるべきか考えているのか。
ロンが落ちていた蛇口を拾いトロールに投げつけると、トロールは大きく吠えて私に向かって突っ込んできた。
「ちょっとロン!!何してくれてるのよ!!」
私は慌てて横に逃げながら叫ぶ。
「ゴメンサクヤ!!」
トロールは私が避けたことに気を取られたせいで減速するのを忘れ、そのまま壁にぶつかりひっくり返った。
今ならクィレルの有能さがよく分かる。トロール使いはどうやってこの脳足りんを操っているんだろうか。
将来の仕事候補からトロール使いを排除しながらハーマイオニーに声をかける。
「ハーマイオニー!!今の間にこっちに来て!!」
ようやく再起動を果たしたハーマイオニーだったが、まだ不完全だったようで、あちこちに体をぶつけながら向かってくる。
「大丈夫、ハーマイオニー?」
「多分・・・」
「ところでロン、ハリー、トロールは何をしているの?私には理解できないんだけど。」
「多分自分の鼻をへし折った壁を殴りつけてるんだと思うよ。」
「具現化したバカだよ、あいつは。」
「でもその"具現化したおバカさん"は出口まで壊してしまってるけど、どうするの?」
「仕留めるしか無いんじゃない?」
「「・・・・」」
「冗談よ。」
ハリーとロンの正気を疑う視線が心に刺さる。
「案外ありかもしれないわね。」
「マーリンの髭!!仕留めるだって?あのデカブツを?」
「幸運なことに私はハンカチも持ってるし、あいつのおかげで小石は沢山落ちてるわよ。」
「マグルの神話か何かかい?」
「うん。神の加護を受けた少年が巨人を倒す話さ。」
「残念ながらここにいるのは魔女と魔法使いよ?
主の加護は無いと考えるべきでしょうね。」
「それもそうね。」
誰もトロールについて触れない。
どうにもならない現実からは目を背けるのが一番なのだ。
・・・まあ目を背けても吠え声は聞こえてくるのだが。
「さて、どうするべきだと思う?」
入学早々"大きな問題"に出会ってしまった自身の運の悪さを嘆きながら、私たちは嫌々現実と向き合うことにした。
トロール・・・巨大な人型生物。知能という言葉の対極に位置するような大馬鹿。
ダビデとゴリアテ・・・少年が手持ちの投石器で大男を倒す話。
旧約聖書「サムエル記」に記される。
魔女と主の加護・・・キリスト教では魔女は悪魔の手先とされる。