に部活も放り出してやる!!
中間考査対策勉強も放り出してやる!!
私たちがトロールを倒した直後、出入り口が吹き飛び杖を構え陣を組んだ先生たちが突入してきた。
「おお、援軍だ!ちょうど“後片付け”の時間にね。」
「ちょっとロン!黙りなさい!」
幸い先生方には聞こえていなかったようだ。
というよりもロンの戯言なんかに構っていられないほどに混乱していたのだろう。
まあそれもそうだろう。学校にトロールが出たかと思えばそれが女子便所に入り込んだので急いでそれを駆除しに行ってみればそこでは空っぽの頭が潰れたトロールの横で一年生が四人で騒いでいたのだから。
私なら扉を閉めて見なかったことにする。
「グリフィンドールから5点減点。
ウィーズリー、教師に対する口の利きかたには注意しろ。」
どうやらスネイプ先生はこんな状況でもグリフィンドールからの減点は忘れなかったようだ。
その言葉に対しロンが口答えをしようとするも、その口を開く前に四人共々マクゴナガル先生に抱きしめられ、呼吸ができなくなってしまった。
「せ、先生!窒息します!!」
「……よく無事でいてくれました。」
マクゴナガル先生の声は震えていた。
自慢の高身長のおかげでお腹をギリギリと締め付けられ目を白黒させているロンはそれどころではないようだったが。
しばらくするとマクゴナガル先生も満足したようで、私たちを解放してくれた。
「それで四人とも、何故こんなところにいたのですか?下手をすれば死んでいたかもしれないのですよ!」
確かにそれはそうだ。
無傷でトロールを殺すことができたのは単純に運が良かったからに過ぎない。
どう言い訳したものかと迷っていると、私の横で震えていたハーマイオニーが声を絞り出した。
「みんな、私を探しにきたんです……」
ハーマイオニーは自分の体を抱くようにしながら続ける。
「私……本でトロールのことを読んで……一人で倒せると思って……」
嘘だ。
ハーマイオニーはロンとの喧嘩が原因でトイレで泣いていた。
ハーマイオニーがハリーやロン、私を庇おうとマクゴナガルに嘘をついている。
「サクヤは私を引き止めようとここまでついてきてくれて……でも、結果として私は何も出来ませんでした。それどころかサクヤまで巻き込んでしまって……ハリーやロンが駆けつけてくれなかったら……私、きっと死んでいました」
マクゴガナルはじっと何かを考えるように私たちを見ると、ハーマイオニーに厳しい口調で言った。
「貴方は確かに他の生徒と比べてほんの少し優秀です。ですが、所詮ホグワーツの一年生に過ぎません。まだ十一歳の子供なのですよ? 過度な自信は身を滅ぼします。これに懲りたら二度と無茶なことはしないように。グリフィンドールは五点減点です」
減点と言われ、ハーマイオニーはしゅんと小さくなる。
先程命の危機に瀕した時よりもダメージが大きく見えるのは私だけだろうか。
マクゴナガルはハーマイオニーを先に寮に帰すと、今度は私たちに向き直った。
「先程も言いましたが、貴方たちは運がよかっただけです。ですが、野生のトロールと対決できる一年生はざらにはいません。一人10点ずつ上げましょう。今日はもう帰りなさい」
「わかりました。マクゴナガル先生。おやすみなさい」
私は口早にそう言うと、ハリーとロンの手を引いて逃げるように女子トイレを後にする。
グリフィンドールの寮へと続く階段を上りながらロンが冗談交じりに言った。
「三人で三十点は少ないよな」
「ハーマイオニーが五点減点だから実質二十五点だけどね」
ロンの軽口をハリーが訂正する。
それに対しロンは不満を垂れた。
「ああやって彼女が僕らを助けてくれたのはありがたかったけど、僕たちが彼女を助けたのも確かなんだぜ?」
「僕たちが鍵をかけてトロールを閉じ込めなかったら助けは要らなかったかもしれないよ」
「貴方たちが鍵をかけたのね」
ハリーとロンは隠していた答案用紙が見つかった時のような反応をする。
あの時扉が開かなかったのは、この二人が扉に鍵をかけたからだったのか。
結果としてこの二人に助けられたのは事実だが、この二人が鍵をかけなかったら扉を開けてすんなりトロールを外におびき寄せることができたはずだ。
「まあ誰も大怪我を負っていないのだし、何も言わないわ」
「うん、ごめん。ありがとう」
私たちは廊下を進み、突き当りにある太った婦人の肖像画の前にたどり着く。
肖像画の横にはハーマイオニーが一人ぽつんと立っていた。
ハリーとロン、ハーマイオニーの間に少し気まずい雰囲気が流れる。
私は小さくため息をつくと、ハリーとロンの背中をドンとハーマイオニーのほうへと押した。
「うわっ!」
ハリーとロンはつんのめりながらもなんとかハーマイオニーの手前で踏ん張る。
二人は文句ありげに私を見たが、私は視線でハーマイオニーのほうを示した。
「あー、その……ありがと」
ロンが小さくハーマイオニーに言う。
「助けてくれてありがとう。ごめんね」
ハーマイオニーも、恥ずかしそうに二人に返事をした。
「はい、じゃあこれで仲直り。談話室に入りましょう?」
「「「「アミキティア!!」」」」
四人で太った婦人に合言葉を伝える。
順番に入り口の穴を這い上がり、談話室の中に入った。
談話室の中では大広間から運ばれてきたのか、ハロウィン料理がテーブルに並んでいる。
先程たらふく食べたところだが、あんなことがあったあとだ。
私たちは嬉々として料理に飛びついた。
アミキティア・・・言語の「Amicitia」はラテン語で「友情」を意味する言葉。
ホグワーツの合言葉は状況によって変わる。
しかし合言葉を考えているのは誰なのだろうか。
校長か、もしくは他の誰かなのか・・・