ついにこの日がやってきた。そう、グリフィンドールの開幕試合だ。
試合相手はスリザリン、因縁の対決である。
そして何より、この試合はハリーの初陣なのだ。
ハリーの父親はとても優秀なプレイヤーだったらしく、生徒だけでなく先生達からも期待を背負わさせられているようで、ハリーの細い肩は今にも折れてしまいそうになっている。
もっとも、緊張しているのはハリー達プレイヤーや寮監かつクィディッチマニアのマクゴナガル先生、そして数人のギャンブラー達ぐらいで大多数の生徒は試合結果について議論したり誰も聞かない蘊蓄を傾けるのに忙しそうである。
私の横ではハーマイオニーがハリーにトーストを勧めていた。
「ほら、何か食べないと」
「食欲が無いんだ」
「トーストをちょっとだけでも、ね?」
ハーマイオニーはいつも以上に優しい声色で言う。
だがハリーは食欲が無いを通り越して体調が悪そうでもあった。
「気負いすぎよ。負けても死ぬわけじゃないんだし」
私はそう言って皿に山盛りにしたソーセージを頬張る。
ハリーはその様子を忌々しげに見た。
「簡単に言わないでよ。サクヤはスタジアムに立たないじゃないか」
「あら、わかってるじゃない。私と違って貴方はスタジアムに立つのだから力をつけておかないといけないのよ」
私は皿に盛ってあるソーセージをフォークで突き刺すと、ハリーの口に押し込む。
ハリーは苦虫でも噛み潰すかのように咀嚼すると、無理やりソーセージを飲み込んだ。
試合時間が近づいてきたので、私はロンとハーマイオニーとクィディッチスタジアムへと向かう。
クィディッチスタジアムはとても広く、イメージするとすれば巨大な円形闘技場だ。
グラウンドには二対で合計6本のゴールがあり、客席は地上からかなり高いところに造られている。
「さあ、正々堂々戦うように!」
フーチは各寮の選手が集まったのを確認すると、ホイッスルを口に咥える。
それを合図に、選手たちは箒に跨った。
甲高いホイッスルの音色とともに、フーチはクアッフルを力いっぱい宙へと放り投げる。
それを追いかけるようにして選手たちは空へと飛びあがった。
試合開始だ。
ルールがわからない限り楽しめないので、とりあえずロンに聞いてみる。
「ロン、ルールを教えてくれないかしら。」
「あーそうか、サクヤは知らないんだったね。」
「ええ、ルールが分からないとハリーをどう応援すれば良いのかもわからないわ。」
「チームは7人で3人が点取るチェイサー、2人が暴れボールのブラッジャーを打ち返すビーター、
1人がゴール守るキーパーで、そんでハリーがやってるのがシーカー、
名前の通りスニッチを見つけて捕まえる役さ。
クアッフルって赤いボールで点取るんだけど、
これは一回のシュートで10点、スニッチ捕まえると150点で試合終了。
簡単だろ? まあ、やってみると全然簡単じゃないけどな!」
『あいたっ! これは痛い! ブラッジャーがベル選手の後頭部を直撃! クアッフルはスリザリンの手に渡ります』
ブラッジャーはスタジアムを不規則な動きで飛び回るソフトボールほどの大きさの鉄球だ。
ブラッジャーには選手を叩き落そうとする魔法が掛けられており、標的を見つけては軌道を変え、選手に襲い掛かる。
スニッチと比べ急な方向転換はできないらしく、飛んでくるのがわかっていれば避けるのはそこまで難しくはない。
だが、それは飛んでくるのがわかっていればの話だ。
死角から飛んできたブラッジャーに気づくのが少しでも遅れると、たちまちブラッジャーの餌食となってしまう。
ビーターがブラッジャーを打ち合うことによってブラッジャーは更に変則的な動きとなるのだ。
「なんで鉄球なのよ。下手したら死人が出るわ。」
私はチェイサーを必死に目で追っているロンに聞く。
ロンはクアッフルを見失うまいと必死に目で追いながら答えた。
「当たっても痛くなかったら誰も避けようとしないだろ? それに、すごい勢いで打ち込まれるから柔らかい素材だと壊れちゃうんだ」
「いや、そこを魔法で何とかしなさいよ・・・」