ハリーポッターと十六夜咲夜   作:暇をなくした暇人の集

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ハリーポッターと十六夜咲夜 組分けと驚愕

私たちを乗せたボートは自動的に湖の上を進むと、ホグワーツ城の真下にある崖の中へと入っていく。

 

 どうやら地下から城の中へと入るようだ。

 

 私はローブが濡れないように注意しながらボートを降りると、一年生の集団に混じる。

 

 

 

「ん? これはおまえさんのカエルか?」

 

 

 

 下船したあとのボートを調べていたハグリッドが船底からヒョイとヒキガエルを持ち上げた。

 

 

 

「トレバー!」

 

 

 

 それを見て、ネビルは大喜びでハグリッドのもとに駆けていく。

 

 何にしても無事カエルが見つかったようで何よりだ。

 

 ハグリッドはカエルをネビルに手渡すと、かわりに船につけていたランタンを手に取る。

 

 

 

「みんなおるか? お前さんはちゃんとカエルを持っとるな?」

 

 

 

 大声で確認した後、ハグリッドは崖の上へと続く階段を登り始めた。

 

 階段を登った先は草むらになっており、目の前には巨大と言って差し支えないホグワーツ城がそびえ立っている。

 

 その中央にはハグリッドが小さく見えるほどの大きな樫の木の扉があった。

 

 ハグリッドは大きな手を握りしめて扉を三回ノックする。

 

 その瞬間巨大な扉が少し開き、中から老女が姿を表した。

 

 

 

「マクゴナガル先生、一年生を連れてきました」

 

 

 

「ご苦労ですハグリッド。ここからは私が預かります。一年生の皆さん。私の後についてきてください」

 

 

 

 どうやら彼女はマクゴナガルというらしい。

 

 

 

 マクゴナガルは()()()をチラリと見ると、クルリと背を向けて玄関ホールを歩いていく。

 

 私たちはマクゴナガルの先導のもと巨大な玄関ホールを通り抜ける。

 

 そしてそのまま狭い小部屋のようなところへと連れてこられた。

 

 

 

「一年生の皆さん、ホグワーツ入学おめでとう」

 

 

 

 マクゴナガルは部屋全体を見渡しながら言う。

 

 

 

「貴方たちの歓迎会がまもなく始まりますが、その前にどこの席に座るか、どこの寮に入るかを決めなくてはなりません。寮の組み分けは非常に大切な儀式であり、入った寮の寮生が皆さんの新しい家族になります。共に勉学に励み、共に食事を取り、共に眠る。グリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリンの四つの寮があります。それぞれ輝かしい歴史を持ち、偉大な魔女や魔法使いが卒業しました。どの寮に入ったとしても、皆さんの誇りとなるでしょう。まもなく組み分けが始まります。身なりを整えておくように」

 

 

 

 マクゴナガルはそう言って小部屋を出て行く。

 

 部屋が生徒だけになったためか、みな囁くように周囲の者と話し始めた。

 

 

 

「いったいどうやって寮を決めるんだろう」

 

 

 

 ハリーは不安そうな顔でロンに聞く。

 

 

 

「試験のようなものだと思う。凄く痛いってフレッドは言ってたけど、きっと冗談だ」

 

 

 

「試験ねぇ……私呪文なんて一つも知らないわ。魔方陣は書けても魔法陣は書けないもの」

 

 

 

「僕は魔方陣すら書けないよ」

 

 

 

 私は周囲を見回して先程コンパートメントを訪れた少女を見つける。

 

 少女は今まで覚えたであろう呪文を片っ端から呟いていた。

 

 

 

「皆が彼女のように魔法使いの家の生まれで、魔法が得意というわけではないんだし、魔法の試験ってことはないんじゃないかしら」

 

 

 

 私はハリーを勇気付けるためにそう言う。

 

 だがハリーはいっそう表情を暗くした。

 

 

 

「彼女アレでもマグル生まれのマグル育ちなんだよ。ホグワーツから手紙が届いて自分が魔法使いだって知ったって」

 

 

 

 私が疑問符を浮かべていると、小さな声でロンが教えてくれる。

 

 やけに魔法に詳しいので、彼女も所謂名家の生まれなのだと思ったが、どうやら違ったようだ。

 

 

 

「サクヤは何か予習してきた?」

 

 

 

 ハリーは恐る恐る私に聞いてくる。

 

 私は静かに首を横に振った。

 

 

 

「教科書は軽く捲ったけど、呪文は何も。実感が湧かないのよ。杖を振って魔法を使うっていう」

 

 

 

 私の知る常識とかけ離れ過ぎていて、入学までの間呪文は勿論のこと杖に触ってすらいなかった。

 

 もっとも、私は時間停止というあまりにも便利な力を持っているが、だからといって魔法の世界にすんなり馴染めるかといえば、そうではない。

 

 生まれ育った環境というのはあまりにも大きかった。

 

 

 

「まもなく組み分けが始まります。一列になってついてきてください」

 

 

 

 マクゴナガルが戻ってきて、部屋の扉を大きく開く。

 

 ついに組み分けの儀式が始まるということか。

 

 私たちはマクゴナガルについて小部屋を出て、一度玄関ホールへと戻る。

 

 そして大広間へと足を踏み入れた。

 

 そこは今まで見たこともないような空間だった。

 

 空中には無数の蝋燭が浮かんでおり、四つの大きな長机を照らしている。

 

 長机には既に多くの生徒が座っており、皆興味ありげに私たちの顔を覗いている。

 

 天井には満天の星空が映し出されており、まるで話に聞くプラネタリウムのようだった。

 

 四つの長机の間を通って職員が座っているのであろう長机の前まで案内される。

 

 そしてそのまま職員に背を向けるように、在校生に対面するように並んだ。

 

 私たちが在校生の好奇の目に晒されていると、マクゴナガルが私たちの前に椅子を一つ置く。

 

 そしてその上に魔法使いが被るようなトンガリの、ボロボロの帽子を一つ置いた。

 

 皆がその帽子に注目する。

 

 次の瞬間、帽子が裂け目を口のように動かして歌い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帽子が歌い終わると、大広間が喝采に包まれる。

 

 帽子の歌の内容を要約するとこうだ。

 

 この帽子が入る寮を決めるということ。

 

 グリフィンドールには勇敢な者が、レイブンクローには賢い者が、ハッフルパフには優しい者が、スリザリンには真の友を得ようとする者が集まるということ。

 

 どうやら私たちは一人ずつあの帽子を被り、寮を決められるらしい。

 

 試験なようなものは無いと予想はしていたが、このように決めるのは予想外だった。

 

 

 

「なんだ! 僕たちはただ帽子を被るだけ! フレッドのやつあとで覚えてろよ!」

 

 

 

 先程まで顔を青くしていたロンは途端に元気になり憤慨する。

 

 周囲がざわめく中、マクゴナガルが一歩前に出てよく通る声で言った。

 

 

 

「呼ばれた者から椅子に座って帽子を被り、組み分けを受けてください」

 

 

 

 それを聞いて大広間は一瞬で静まり返る。

 

 

 

「では、始めます。ハンナ・アボット」

 

 

 

 マクゴナガルに呼ばれて金髪おさげの少女が少々転びそうになりながら椅子の前に出てくる。

 

 そして椅子に座り恐る恐る組み分け帽子を被った。

 

 次の瞬間組み分け帽子が大声で宣言する。

 

 

 

「ハッフルパフ!」

 

 

 

 長机の一つから大きな拍手と喝采があがった。

 

 少女は照れながらもテーブルの方へと駆けて行き、空いている椅子に座る。

 

 

 

「スーザン・ボーンズ」

 

 

 

「ハッフルパフ!」

 

 

 

「テリー・ブート」

 

 

 

「レイブンクロー!」

 

 

 

 その後も次々と名前を呼ばれては、寮を決められていく。

 

 その度に決まった寮の机から喝采があがった。

 

 ネビルのカエルを探していた少女(名前をハーマイオニー・グレンジャーというらしい)は組み分け帽子自体が組み分けに少々悩んだらしく、四分ほどじっくり悩んでグリフィンドールと叫んだ。

 

 その後のネビルにも組み分け帽子は散々悩み、最終的にグリフィンドールと叫ぶ。

 

 いや、ネビルのそれは悩んでいるというより説得しているように見えた。

 

 逆に言えば、マルフォイなど一瞬だった。

 

 帽子が頭に触れるか触れないかというところでスリザリンと叫ぶ。

 

 マルフォイは満足げな笑みを浮かべてスリザリンの長机に座ると、こちらに目配せした。

 

 彼はどうやら私にもスリザリンに来てほしいらしい。

 

 

 

「ハリー・ポッター」

 

 

 

 その後も組み分けは続き、ついにその名前が呼ばれる。

 

 ハリーの名前が呼ばれた瞬間、大広間はざわめきに包まれた。

 

 ハリーは今にも死にそうな顔をしながら椅子に座り、どこか祈るようにしながら組み分け帽子を深く被る。

 

 

 

「グリフィンドール!」

 

 

 

 組み分け帽子は少し悩んだあと、大声でそう叫んだ。

 

 次の瞬間グリフィンドールの長机が爆発したかのような大喝采と拍手が起こる。

 

 ハリーはようやく一息つけたのか、グリフィンドールの机に座る頃には笑顔が戻っていた。

 

 

 

「サクヤと僕だと、どっちが先だ?」

 

 

 

 ロンが小さな声で聞いてくる。

 

 冷静に考えればすぐにわかることではあるのだが、ロンはそれどころではないようだった。

 

 

 

「貴方よ」

 

 

 

「ロナルド・ウィーズリー」

 

 

 

 私がそう言うと同時にロンの名前が呼ばれる。

 

 ロンはギクシャクした足取りで椅子に座ると、覚悟を決めて組み分け帽子を被った。

 

 

 

「グリフィンドール!」

 

 

 

 組み分け帽子はすぐさま寮名を叫ぶ。

 

 ホグワーツ特急の中で兄弟皆グリフィンドールに入っていると言っていたが、ロンもその例に漏れずグリフィンドールとなったようだ。

 

 

 

「サクヤ・ホワイト」

 

 

 

 マクゴナガルに名前を呼ばれて、私は椅子の前まで移動する。

 そして椅子の上に置かれた組み分け帽子を手に取り先生方の方向を向くと、

 何故か先生達が驚愕の表情を浮かべていた。

 いや、ダンブルドア先生とマクゴナガル先生は平然と、

 鉤鼻の先生はうつむいていた。

 

 どうしよう・・・私何か変なことしてしまったのかしら。

 

 

 とりあえず今までの人をまねて椅子に座って組み分け帽子を被る。

 

 私の頭には少々大きかったのか、帽子は私の目元まで落ちて止まった。

 

 

 

「ふむ、今年は難しい生徒が多いのう……君は特に難しい」

 

 

 

 組み分け帽子はブツブツと独り言のように呟く。

 

 

 

「君は非常に勤勉で頭がいいようじゃな。だが、君には隠れた忠誠心がある。一度忠誠を誓った相手には自分の命すらいとわないじゃろう」

 

 

 

「じゃあレイブンクローかハッフルパフ?」

 

 

 

 私は組み分け帽子に尋ねる。

 

 

 

「ふむ、そうじゃな。だがワシが思うに、スリザリンも悪くない。君はスリザリンに入れば、間違いなく偉大な魔法使いになるじゃろうな。考え方が合う友もきっと見つかるじゃろう」

 

 

 

「グリフィンドールは?」

 

 

 

「論外じゃな」

 

 

 

 即答だった。

 

 どうやら帽子はレイブンクローかハッフルパフかスリザリンかで相当悩んでいるようだ。

 

 だが、そこまで即答されてしまっては、私としてはその先の可能性が気になってしまう。

 

 

 

「私としてはグリフィンドールがいいなと思っていたんだけど」

 

 

 

「ふむ、君の希望としてはグリフィンドールなのか。それは本心かな?」

 

 

 

 本心も何も、私自身にはどの寮にも執着はなかった。

 

 グリフィンドールに入りたい理由があるとすれば、仲良くなったハリーやロンがいるから。

 

 まあそれぐらいしか思い浮かばなかった。

 

 

 

「ふーむ、どうしたものか……きっとどの寮に入っても君はうまくやっていける。だが、入った寮によって君の人生は大きく変化するじゃろう」

 

 

 

 組み分けに時間が掛かっているためか、少し心配そうな顔でマクゴナガルがこっちを見ている。

 

 周囲もなかなか決まらない私の組み分けに、少々ざわつき始めていた。

 

 

 

「スリザリン……いや、レイブンクローか……」

 

 

 

「だからグリフィンドールは?」

 

 

 

「グリフィンドールは君には合ってない。それをわかったうえで言っておるのか?」

 

 

 

「まあね」

 

 

 

「うーむ、難しい生徒じゃのう……」

 

 

 

 私にはそこまでグリフィンドールの素質がないのか。

 

 確かに私は小心者で性格もひねくれているかもしれない。

 

 だが、上っ面はちゃんと優等生を演じられているはずだ。

 

 私の頭の上に組み分け帽子が置かれてから既に五分以上が経過している。

 

 

 

「そこまで迷うなら私に選ばせてよ」

 

 

 

「選んだ結果がグリフィンドールじゃから迷っておるんじゃ」

 

 

 

 ふむ、私がグリフィンドール以外を選べば、そこまで迷わないのか。

 

 私は他三つの寮のどこに入りたいのか真剣に考えてみる。

 

 勉強ができるほうではあると思うが、勉強が好きなわけではない。

 

 孤児院では優しく面倒見のいい少女で通っているが、あくまで体裁を保つだけの人付き合いだ。

 

 考え方が合う友達が欲しいかといえば、欲しくないのが結論だった。

 

 きっと私は同族嫌悪するタイプだろう。

 

 私は組み分け帽子と一緒にうんうんと悩む。

 

 だが、次の瞬間組み分け帽子が溢した言葉に、私は固まってしまった。

 

 

 

「君のその時間を止める能力を鑑みると……」

 

 

 

 それを聞いた瞬間、私は時間を止めていた。

 

 静かに椅子から立ち上がると、帽子を掴んで目の前に掲げる。

 

 

 

「ワシは被った者の記憶を読む。それを頼りに組み分けを行うのじゃから当たり前じゃろう?」

 

 

 

 組み分け帽子は悪びれる様子もなくそう言う。

 

 いや、今はそれどころではない。

 

 知られた。

 

 知られた。

 

 知られた。

 

 

 

「知られたのなら、仕方がないわね」

 

 

 

 私は組み分け帽子を片手に、長机の方へと移動する。

 

 そして大きな七面鳥に刺さっているナイフを手に取った。

 

 

 

「心配せんでいい。ワシは決して組み分けの際に読んだ記憶を公表することはないわい」

 

 

 

「そんなの信用できないわ」

 

 

 

 私は長机に組み分け帽子を投げ捨てる。

 

 組み分け帽子はじっと私の方を見た。

 

 

 

「ここでワシを引き裂いて、その後どうするつもりじゃ? 確かにワシを引き裂けば、君のその能力の秘密は守られるじゃろう。で、その後どうする? バラバラになったワシを頭の上に乗せて時間停止を解除するのか? それともこの場から逃げ出すのか?」

 

 

 

 確かに、組み分け帽子の言う通りではある。

 

 だが、私にはこの時間を止める能力がある。

 

 一秒も掛からず、ロンドンまで帰ることだって可能だ。

 

 

 

「サクヤ・ホワイトよ。ここは魔法界じゃ。マグルの世界では逃げ切れるとしても、魔法界で同じことが通じると思わんほうがいい。それに、ダンブルドアの面前じゃ」

 

 

 

 私は七面鳥にナイフを突き刺し戻すと、組み分け帽子を掴み直す。

 

 

 

「それでいい。だが、誓って約束しよう。ワシは君の秘密を決して誰にも語らん。そもそも語れんようになっておる。ワシを作ったのはホグワーツを創設した魔法使いたちじゃが、ダンブルドアとてそんな偉大な魔法使いたちが作ったワシに、開心術など使えんじゃろう」

 

 

 

「……なら、いいんだけど」

 

 

 

 私は訝しげに組み分け帽子を睨むと、帽子を被り椅子に座り直す。

 

 そして時間停止を解除した。

 

 

 

「で、結局私が入る寮はどうするのよ」

 

 

 

 私は組み分け帽子に再度問う。

 

 

 

「今のやり取りで決まったわい」

 

 

 

 組み分け帽子は大きく息を吸うように尖った先端をくねらせる。

 

 

 

「スリザリン、と行きたいところじゃがグリフィンドール!!」

 

 

 

 組み分け帽子は大きな声でそう宣言した。

 

 私は用事は済んだと言わんばかりに組み分け帽子を椅子に置くと、グリフィンドールの長机へと移動する。

 

 拍手とともに迎えられた私は、空いている席へと座った。




やっと丸写しから三次創作に変えられる・・・

へっくすん様、本当に謝謝!!
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