おっ?ペース速いんじゃない?
そんなに書くの楽しいのぉ?
今回はウインダム・アギラの出番は少ない……というか、基本彼らの出番は今編中ではほぼありません(今後あるとは言っていない)。物語は進展しますが、今話序盤はちょっとのんびり。
突撃!ヒーローのどんな事務所!!
軽い胸糞?注意。幾多のハーメルンSSを乗り越えてきた皆さんにはしょぼい胸糞だって信じてる。私はそう()
それでは本編どーぞ!
「そう!ワシらの、自慢の事務所や!」
「おおぉ──!」
前面がアンプル瓶のような形をしている、なにか洗練されたデザインの看板がついたビルが目に入る。過度な装飾が何もない代わりに、シンプルで清潔感や清涼感を思わせる建物だ。
「いやー、建てる時はけっこー奮発したでなあ!おかげで市民さんやらお上さんやらからの評判も上々ってな!ささ、中に入るぞう!案内するわあ」
「なるほど、事務所のデザインも重要な要素の一つなんだな……」
ガラス張りの曲面自動ドアをくぐり、受付の奥にある廊下のエレベーター……の隣の階段から上に登る。そこで、職員さんと思しき人物とすれ違った。
「おかえりなさいミクラスさん。アギラさんもついさっき帰っていらしましたよ」
「おう!報告おおきにな、今日も一日頼むでえ!したらワシらは職場体験の子の挨拶やら紹介やら何やらやってくるからや、ちいと休憩時間を取る!」
「わかりました。あ、ウインダムさんは夜勤に向けて自室で休眠中です」
「おお、了解!」
どうやら事務員さんとの関係もかなり良好なようだ。やり取りは軽やかで、なにかを気負った様子もなく、隈や体調不良なども見受けられない。良い職場を構築しているようだ。
「応接室に通すから、ちと待っとってくれな!今アギラとウインダムは通信で呼ぶさかい!」
「はい、わかりました!」
「ええ子やのう。おおい、アギラ、ウインダム!例の子が来てくれとるでえ!応接室まで来てくれーい!コケんなや〜」
通された応接室にあるふかふかのソファーに座らされ、反対側に座ったミクラスが耳に手を当てて機器を弄っている。窓の外を眺めれば、街に隣接し遊覧船が浮かぶと言う湖が視界にうつる。晴れた空の中に見える鏡のような湖は、かなり美しく──ことりと秘書さんが机にお茶を置いてくれるまで、ぼうっと外を眺めていた。
優しく微笑む秘書さんに礼を言い、湯気をたてるお茶に口をつける。ミクラスはその様子をニカニカと見守り、同僚のヒーローがやってくるのを待つ。
「お待たせぇ〜」
「ごめん、遅れたよ」
「おう、来たのう!ま紹介するで、ワシの自慢の同僚!アギラにウインダムや!」
眠たげな目をしてゆるい口調を使う普段着の人物と、ヒーロースーツをかっちり着込んだ鋭い目の人物が扉を開けて入ってきた。事前に知った情報では、前者がウインダムに後者がアギラ。
ウインダムは索敵・情報収集などサポート分野を主に得意とするヒーローで、アギラは素早い動きで相手を撹乱するスピードタイプの肉体格闘ヒーローだと彼は聞き及んでいる。
「アギラです。よろしくお願いします」
「よろしくねー!僕ウインダム〜」
「こちらこそ、お願いしますっ」
「おうおう!で、お前さんらは知っとるたあ思うけど、こちらが雄英高校の五毛くんやな!これから短い間ではあるけどもや、ワシらと活動を共にし、ヒーローのことについてしっかり教える!または彼を鍛える!わかったあ〜!?」
「はーい!」
「うん、わかった」
「ようし!張り切るでお前らぁ〜、タメになる経験にしたらななあ!」
溌剌とした様子のミクラスと、冷静でクールに頷くアギラ・ちょっと
「今日はまず、ヒーロー業務で実際の一日の流れを説明!そんで実際に体験してもらう!合間合間にこまごましたヒーローのことについて話すでな。明日からの予定も説明んときに話すからのう」
「わかりました」
「よしゃ!んじゃあウインダムは休憩戻ってええで!アギラも業務よろしく!ほな五毛くん、荷物置き行こかあ〜」
「あ、はい!ありがとうございます」
彼は先程まで背負っていた宿泊用の荷物が入ったカバンと、スーツの入ったアタッシュケースを持ち上げる。見守っていたミクラスはそれを確認したあと、にこやかに手招きながら応接室の外に出る。
ミクラス曰く職員の宿泊スペースは最上階付近にあるようで、客室もそこにあるらしい。こんどはエレベーターを使ってのぼった。ヒーローの仕事柄なのかはわからないが、車椅子だって余裕で入りそうな広いエレベーターの部屋は、五毛楽の尻尾もやすやすと受け入れた。
「ああ……こんことから言うんも不自然やけど、あれな!ヒーロー事務所の形態ってかなり自由な感じでなあ」
「ええと、皆さんの快適なように事務所は作られるって感じですかね?」
「せやせや!つまるところ、うちは事務所と寮がいっぺんになったみたいな形やけど、五毛くんが事務所つくるときは真似せんでもええってこと!好きなカタチにしたらええんやでー」
実際、事務所の形は幅が広い。雇用人数・所属人数も違えば、ヒーローとしての方針もそれぞれ違う。規模、立地、個性に適応した材質などなど。それに、事務所を持たないヒーローも少ないながら存在する。代表としてはミルコが挙げられるだろう。
ミクラス事務所では、もともと事務員最初の一人に金銭的に不自由な者を雇うという事情があったのも関係し、住み込み可能の物件が出来上がった。
加えてヒーロー三人は夜勤も含め、ある程度誰かはそこに常駐していた方が良いという方針の為に個人の部屋が設置された。無論休日も取ろうと思えば取れる。ただみんな自主的に事務所に居るだけで。
というか、大手の事務所*1は高層ビルの事務所を持つヒーローも多く、そういった事務所にはやはり宿泊機能が備わっていることも多い。
「ちょっと夢の広がる話ですね!」
「おおっ、わかる〜?!やっぱし好きな構造の自分の建物っちゅうのはロマンあるよな!劇的◯フォーアフターとか
「えっ、俺も見てましたよビフォ◯アフター!良いですよねっ」
「マジか!家の改造ってなんであない楽しそ──
……こほん、脱線脱線。ええと、この階の構造としてはワシら三人の部屋と一緒に、更に事務員さん様の部屋が計五つ!まあ使われとるんはワシら以外の部屋やと二つだけやけどね。奥に共有スペースで洗濯機・乾燥機ゾーン。シャワートイレは部屋の中やで」
かちゃりと誰も入室していない空の部屋のドアを開けたミクラスは、軽く指を差しながらトイレの扉を指差す。いわゆるユニットバスで、とは言えかなりしっかりした代物のようである。掃除も入っているのか、清潔だ。
部屋の中に視線を戻せば、大体6、7〜8畳くらいのホテルのような室内があった。簡素なミニキッチンも付いており、本格的に住めそうである。
「ふは、どうや!結構ええ部屋やろ?五毛くんの泊まる部屋はここ使ってもろたらええから、好きに使うてえな」
「立派な部屋ですね……ありがたく使わせていただきます」
「おー!そしたら、廊下で待っとるからスーツ着替えよか?早速活動体験やね!」
「はい!」
「ワシらは人数が少ないからな、他のヒーローたちとちょびっと違うっちゅう可能性もあるて思といてな!それはそれとして、体験開始!まず説明から入ります!」
「はい!ミクラス先生!」
「ええ返事!ワシらはまず、朝起きたとき(夜勤以外の時)は早朝訓練をこなすんやね!やっぱり訓練はやっとかんと鈍るでなあ。五毛くんもヒーローになった時、学生時代ほどとは言わんけれども怠けることのないよーに!」
ミクラスはお茶目な様子で告げてゆく。実際に夜勤は基本的に一人があたり*2、残り二人は基本的に朝に起きることが多いそうだ。そして訓練。内容的には基礎トレや組み手が多いという。朝食については先に食べるか後に食べるかそれとも分けるのかも自由だそうな。
「訓練もろもろが終わったら、基本的に活動内容はパトロールが主やねえ。事務員さんを雇ってるヒーローのメリット、ええところとしてはやっぱり書類作業が少ないことやねー」
「ヒーローの書類作業というと、どんなのがあるんですか?」
「良い質問やで五毛くん!それはな、ヒーローの給料形態が基本的に歩合やからやねんな!国からお金を貰うっちゅう感じやからヒーローは公務員とも言える。
けどな、何もかんもだーいぶ違うねん!犯罪の発生率の低さ*3とか、逮捕協力・人命救助の貢献の申告!この申告が書類やね!書類ちゅうかデータでもええんやけど。したら専門機関が調査してお給料貰ういう感じやねー。まあ基本、歩合制!
実務に関しては犯罪の取り締まりがメインやけど、事件が怒った時には警察からの応援要請もある!もちろん事件発生時に動いたらあかんちゅうわけやないけどね!地区ごとに一括で要請されるんよ」
彼は予想以上にタメになる話の内容に少し驚いた。ヒーロー活動の実態……というのも変だが、どれも大切なことだ。軽くメモを取りながらその話に聞き入る。ミクラスとしても、至極まじめに聞く彼に対して話しやすいらしい。緊張もなく、わかりやすいように話してくれた。
「そうだ、ヒーローの中にはCMなんかに出ていらっしゃる方々も居ますよね?ああいった仕事も書類が必要なんでしょうか」
「おおっと、鋭い!せやねえ、あれはちょっと違うねんな〜。ヒーローは公務員扱いやけど、『副業』がOK!っちゅう珍しい立場やね!副業に関しては書類の必要はなし!依頼者側とのやり取りだけやねー。ワシも農業のCM出たことあるなぁ、懐かし」
「なるほど、納得です」
「今日は午前パトロール行ってみよか!あと、ヒーロー活動とはちゃうけど午後に一緒に訓練しよ」
「っはい!是非とも!」
先生達とも違う別のプロヒーローに見てもらえる──それも、マンツーマンだ。彼はこの機を逃すまいと張り切る……が、その前にパトロールがあるので、ミクラスの後に続いて事務所を後にした。
「普段ワシらがこの街を歩くルートは十種類くらい決めてあるんやけど──」
「?」
「どれ歩くんかは大体気分!」
「気分!?なんですか」
「うん!パターン決めとったら対策もされやすいからねえ、ランダムに動くほうがええと思うでー。まあ目撃情報やら報告やらなんやらあったらすぐに飛んでくけどな!」
「なるほど……!」
いい加減な言葉などではない。きちんとした理屈と経験に裏打ちされた、まさに為になる話。なるほど確かに言われてみれば、ヒーローの通る・通らぬ道がわかっていれば隠れるのも容易い。また、ヒーロー自身が街を広く把握することで、ヴィランが逃げた際にも追いやすい──メリットは多い。
パトロールにおいて、乗り物を使うヒーローは少数のようだ。なぜか?ヒーローの母数が多いので、見守りの範囲がかなり広い。そのためヒーロー個人が多くの範囲を見る必要はないからだそうだ。基本その足で歩き、些細なことも見逃すまいと目を凝らす。
「あー!ミクラスさーん!おつかれさまでーす!」
「おーう!◯◯さんもおつかれー!がんばりやー!」
「ミクラスぅ〜!また今度うちで食べてってくれ〜!」
「よっしゃー!うちの同僚も一緒に連れてくわー!」
ミクラスの地元人気は高い。市民に親身なヒーローであり、人情もあり、なにより強い。まさに愛されるヒーロー。この付近のヒーローの中でも事件解決件数などはもっとも高いのだ。
基本的にヒーローは人助けのお仕事であり、向き不向きはあるもののミクラスというヒーローはそこらへんを大事にする。坂道や横断歩道でご高齢の方の荷物を持ったり、落とし物を交番に届けたりなど、そういった些細な面も彼が人気の高い要因の一つだ。
「まあ、こんな平和そうなトコでも起こることは起こる!から、それなりには気ぃ入れておかなあかんけどねえ」
「やっぱり……犯罪は起こりますか」
「うん。こことはちゃうとこやけど、最近はステインいう奴ものさばりよるやろ?感化される人もおるんよねー。普段の業務が連絡来てからの駆けつけっちゅうカタチが多いヒーローも、今だけはちとパトロール増やしとるんやわ」
いつもは街に出ないような、規模の小さい事務所も最近はパトロール──警邏に回るヒーローが多いのだという。基本的に犯罪の取り締まりだけなら、事務所に電話をかけられてから出動するヒーローも少なくはない。ヒーローの姿が街に多いと、犯罪の抑制につながるからだ。
「直近やと、かなり大きい図体のやつがATM強盗しとってなぁ──」
「大変だぁぁーーッ!!助けてくれぇっ、ヴィランがぁ……!!」
「なんやと?!大丈夫か!!」
彼とミクラスはよろよろと走ってきた男性に駆け寄り、今にも倒れそうな様子だったので座らせた。そして話を聞けば──
「わっ、私の娘が、人質にぃいっ……!氷結の個性を持ったヴィランが、強盗中に娘をぉぉ!!」
「わかった、絶対ワシらが助けたるからな……!落ち着いて、現場には絶対戻らんでくれ!警察に電話をかけて、安全なところに退避するんやっ」
「わ──わかった……」
酷く呼吸の荒い男性はガタガタと震え、見開いていた目を閉じた。よじるその腕は身体を掻きむしるようで、その悲痛な思いをなおいっそう強く感じさせた。
憤った様子のミクラスはしかし冷静に、インカムを操作して連絡を取った。ただ──五毛楽は彼に対し、先程まで微塵も感じていなかった「圧迫感」と「気迫」をひしひしと感じ取っていた。
「アギラ!事件や、今どうしてる」
『強盗でしょ、今向かってる──ただ、ミクラスも来てほしい』
「もちろんや。ウインダム!仲間やら協力者やらがおらんか探してくれ!見つけたら捕縛!ワシらは鎮圧に向かう!!──五毛くん、行くで!」
「っわかりました!」
彼らは駆け出した。場所はすでに警察からの連絡で把握済みであり、何も迷うことはない。ただ走る、ひたすらに走る。猛牛もかくやという様相形相で。市民は避難を終えているかもしくは現在進行形で避難中真っ只中のようだ。
「──五毛くんっ、いや、ゴモラ!」
「はい」
「プロヒーロー、ミクラスの名前において、人の命が危なくなった時──迷わずにその個性を発揮することを許可するッ!!」
「──はいっ!!」
「ただし!戦闘はなるべく避け、救助に徹すること!また、行動によって人質等の身が危険にさらされる事のないように動くこと!」
「わかりま──承知しました!!」
「よろしい!そろそろ現場や、気張りや!!」
彼らは思わず呻く。事件現場から軽く数百メートルはあるが、それでも地面に霜が這っているのだ──とてつもない範囲を持つ個性のヴィランである。
「っこらあかんな、サポートアイテムが役に立たへんかもしらん……」
ミクラスの腕に装着されたサポートアイテムは、彼の個性の炎の耐性が高いことに着目された代物で、短時間ながら炎を纏った/放出する肉弾戦を可能とするものであるが……これだけのレベルの氷雪系個性を相手にどこまで通じるかは未知数である。
「状況は!」
「っミクラスさん!犯人は一人!銀行内に立て籠ってる!幼い女の子の人質が一人っ」
「奴の個性は強力な冷気や吹雪を発生させるもの!また、触れたものの温度を下げる事もできるようで──触れられている人質の女の子が危ないです!」
「卑怯なぁ……ッ!」
見れば、人質の服には既に霜が厚く張り付いており、このままではかなり低体温症などの症状が危惧される。無論それが続けば少女の命とて危険である。
「世間様はよォォォ、どいつもこいつもステインステインステイン……どォォォして俺がヴィランデビューゥゥゥするッてぇ時にあんな奴が出てくるんだよォォォ!邪魔なんだよカスがァァァ!」
「そんな、くだらん理由で……ッ!!」
「くだらん、だとォォォ……!?てめーもカスかァァァ!?覚えとけェェェ!俺の名はガンダー!吹雪の王!ヴィランネームはガンダーだァァァ!!」
「知るかボケ……!!その子を離さんかい!!」
「何からなにまで破綻してやがる……やってることがみみっちいんだよ……!」
危ないクスリの使用者か、それともただ頭の弱いバカか。厄介なのは実力があることで、状況も相まってかなり凶悪だ。
密室に近い銀行内での個性の行使により、室内温度は既にマイナス百何十度を下回っている。……人質の命が非常に危ない。
「名を知らしめたいってんなら人質なんか取らずに戦え……!」
「くそ、ワシもやってもうたけど、これ以上は刺激するんやない!ヤバいで、人質の子がもたん。かなり危険な状態や……!」
「あ゛ー……?ケッ!だったら捕まえてみろってんだァァァ!!」
「飛び出してくるぞ!!」
「いゃあああああ!!」
彼らはすぐさま迎撃態勢をとる。ガンダーとやらが真っ直ぐ突っ込んでくるのに合わせ、素早く人質の女の子に攻撃が当たらぬ位置を確認、瞬時に整えた──が。
「はっ?」
「ギャハハハハハハァァァ!!!」
ガンダーは人質を投げ飛ばした。その膂力は氷雪系個性のそれには見えず、女の子は彼らの頭上高くを飛んでいく。急に放り出された彼女は先ほどまでの極度の緊張状態の所為も合わせてか、何が起きたのかわかっていない様子だ。
すぐに戦線を離脱し、子どもの元に跳ねたのはゴモラだ。戦闘経験の浅かった彼は、初めから女の子を救うことを第一目的としていたためにすぐに動けた。道路を超え、向かいの歩道まで飛ばされた彼女に走る。
「あばよォォォ!!」
「貴様ァァアァア!!」
ガンダー、逃走。投げた女の子を囮に、壁から屋根へ、屋根から屋根へ強引に飛び移り逃亡を開始した。
「五毛くん良くやった!ワシらは奴を追う!その子を無事に頼む!!」
「はいっ!!ガンダーはお願いします!!」
「──任されたッ」
※この作品のカプセル怪獣ズはウルトラ銀河伝説のセブンに鍛え直された(と噂される)カプセル怪獣ズ並の練度とします。戦績の悪い彼らは幻影です。
ガンダー(ドブカス精神吹雪モンスターマン)。
ちょっと肌が青いだけで見た目は普通の人類系クソモンス。原作でミクラスと戦ったってことで出さざるを得ない。
ミクラスは優良ヒーロー、異論は認めない。
無能なんかじゃないやい!
ではまた次話で!シュワッ!