タイトルはウルトラQより“甘い蜜の恐怖”。原作のドロドロはございませんので、ご安心ください。
「お疲れさん!! 緑谷少年以外は大きな怪我もなし!しかし真摯に取り組んだ!! 初めての訓練にしちゃ皆、上出来だったぜ!」
「相澤先生の後でこんな真っ当な授業……何か拍子抜けというか……」
「真っ当な授業もまた私たちの自由さ!それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば!着替えて教室にお戻り!!」
そう言うと、オールマイトは凄まじいスピードでその場を去った。そのあまりの急ぎように少し訝しむ者もいたが、あの巨体でどうしたらあんなスピードが出るんだろうという疑問にシフトされていき、然程違和感を残すことはなかった。
「急いでるなオールマイト……かっけぇ」
「──さ、教室戻ろ」
「振り返りしようぜ振り返りぃ〜」
「いーじゃん。ほらゴモラ、行こ」
「はぁーい」
彼は特に断る理由もなかったし、別に嫌でもなかったので気軽に言葉を返した。自分なりに反省点は色々あったのだし、他の人の反省点も自分に反映することができるかもしれないと彼は思った。
「ねー、そのゴモラってあだ名?」
「ん。そうそう、個性がゴモラサウルスだし、
「へぇ、いいね!私もゴモラって呼んでい?」
「いいよ」
「やた!私は芦戸三奈!」
「じゃ俺もゴモラって言うよ」
「芦戸さん、尾白。よろしくー」
強い“個性”はいつだって憧れの対象。かっこよければかっこいいほど、ヒーロー向きであればあるほど人気になるのだ。
「ぐぬぅあがが……!!何故ヤツの周りにのみ女どもは集まるゥ……!!」
「
「この短え間でやばいヤツだってわかるお前が悪い」
えーと、例外はある。峰田実の個性は弱くない。寧ろ強い部類ではあるのだが……見栄えの悪さよりもなによりもその言動が人気のなさの大部分を占めている。
「尻尾触らせて!」
「いいけど、根元はやめてね」
「はーい!」
余談ではあるが、彼の尻尾は別に犬猫のようにモコモコでもないし、蛇のように滑らかでもないが、程よい肉感と重量、ひんやり感でクッションとして大変好評であります。人を持ち上げるくらいのパワーだってあるのだ。
しかしその感触を楽しむクラスメイトの中にとある闖入者が発生したのである。
さわさわにぎにぎ、なでなでなで。
「ちょ、ちょっと耳郎さん……?あの、撫ですぎ……っ」
別に恥ずかしいことはないハズであるのだが、なんだかとても変な気分になるのである。耳郎響香一人の際はそれほどスキンシップは強くないが、他の人──(特に女子)が尻尾で遊んでいる時に激しくなるのだ。
「…………」
「な、なんか喋って?」
「あら〜」
「あらあらまぁまぁ」
「耳郎さ──」
「持ち上げて」
「え?」
「尻尾で、持ち上げて」
「アッハイ」
彼はふわりと尻尾を胸くらいの高さまで持ち上げ座りやすいように水平に位置を調節する。中学時代から友人達に人気のちょっとした小技であった。
「ギリギリィィイィイイ」
「ほんとやばいってお前」
「ない人望が消し飛ぶってお前」
「オイラにも尻尾があればァァアァア」
「お前の尻尾に需要はねえ」
「オイラの玉をサワりにくる女子が居たって良いだルゥオオ!?」
「居ねえ」
「おおー!人持てるんだ」
「すっげ椅子じゃん」
「耳郎ちゃん、猛獣使いみたいね……」
「誰が猛獣ですか誰が」
「見たまんまお前だよ」
さながらライオンや虎の背に乗るサーカスの猛獣使い扱い。とはいえ別に彼としては嫌なわけではなかったので、更衣室前までの道のりを尻尾に耳郎響香を乗せたまま歩んだ。彼女はズボンなので、高く上げて覗かれる心配もなかった。
「力強い尻尾だな」
「細かい動きは苦手なんだけどねー」
「……これだけの重量の塊が猛スピードでぶつかってくる攻撃と考えると……」
「うわぁ、威力がすごいわけだ」
「俺らも負けんぜ!ブン回す前に捕まえるのよ」
「ああ成る程、動く前に固めりゃあ」
「ちょっとー。本人の前で対策練らないでほしいんだけど」
彼は既にかなりクラスメイトと打ち解けていた。彼のコミュニケーションスキルが高いというのもあるが、それと同じくらいこの場の皆のコミュ力は高かった。コミュ強とコミュ強は惹かれ合う──何はともあれ、緊張や疎外感を何も感じず馴染んでいると言えた。
「ほら耳郎さん降りて、更衣室だよ」
「ん。じゃあまた後で」
「じゃあ」
当たり前だが、絶対に女子更衣室まで彼女を運ぶわけにはいかなかった彼は尻尾から早めに降りてもらう。手を軽く振って、男子更衣室に入った。数時間前も訪れた、清潔で新しいちゃんとした更衣室は使っていてここちよい。
「やっぱコスチューム着てると気合いとか色々力入っちまうなァ〜」
「わかるぜ、わかりやすく憧れに近づける感じがする」
「雄英女子……良い……」
「わかる」
「人目を憚れ。特に片方、主に顔」
彼らにも“憧れのヒーロー像”というのがある。それは特定のヒーローであったり、自分の中の理想であったりするのだ。個性の使用やそれに合わせたヒーローコスチュームは“憧れ”に一歩踏み出せる素晴らしいアイテムなのだ。
「ゴモラの尻尾はさ、尾白より長えけど……自転車とかバイクとか乗る時どうすんだ?」
「あー。そもそも乗らないかなぁ……下手に乗り物に乗るより走る方が速いからね。けどまぁ乗るとしたら──オーダーメイドで尻尾も乗せられるやつを作るしかないよね」
「走った方が速えってのはすげえな。そういや体力テストの持久走も圧倒的だったわ」
「切島はゴツい乗り物とか似合いそうだし、瀬呂は空中軌道の補助アイテムとかかな」
「そっか、空中の姿勢もアイテムでサポートできりゃ楽だ」
入学したばかりの一年生がアイテムに頼ることを考えるのはあまり多くなく、むしろ珍しいと言える。会話の流れとして乗り物からの派生が無ければ、今も興味は持たれていなかったはずだ。
彼が使用しているサポートアイテムはと言えば、特殊な機能はほとんどないのだが──強いていうなら「巨大化して元に戻った後も裸にならない」のが機能である。素晴らしい。彼は仕様書を見た時にとても喜んだ。
「これからどんな授業があるんだろうか。楽しみだが、同時に勇み足になりそうだ」
「そういう気持ち、すごいわかる」
「なんとかなるっしょ!頑張りゃ」
続々と着替え終わるクラスメイト達。彼もケースに鎧を詰めるのだけ少し苦戦したものの、大した時間も要さずに制服を着終えた。割と早くに着替えられたので、入り口付近で彼女を待つ。
「先に行っとくぜ〜」
「うん。反省会にはもちろん俺も参加するから、すぐいくよ」
「よっしゃ!じゃあまた後で」
壁にもたれかけ、そろそろ赤の差してきそうな窓越しの空を見上げる。流れる雲は太陽を隠さずに校舎を照らし、その日差しは容赦なく彼の瞳に降りかかった。そこまで眩しくはなかったが、なんとはなしに見上げたその目で睨みつける。
男女更衣室から聞こえて来る会話は曇ったり混ざったりして内容がわからない。手持ち無沙汰な彼はとりあえず手慰みに尻尾についた埃を緩慢な動きで払っていく。毛のない尻尾はそこまで汚れないのだが、まあ、とにかく暇つぶしになれば良かった。
少し前はこの尻尾がなかなか好きになれなかった。邪魔だし、感情に揺さぶられて勝手に動くし、上を向いて寝られない。電車なんかに乗る時もまあ苦労した。それは今もかもしれないが、そういうのに配慮され始めた社会に助けられている。
「あ、ゴモラ……待っててくれたんだ。ありがとう」
「ううん、別に。俺が勝手に待ちたかっただけだし」
耳郎響香が扉から出るのが視界の端に映って、持たれていた壁から離れる。ちらりと見れば女子達がいっぱいいた。……彼は固まりかけたが、なんとか堪えて普通に動いた。なんとなく勝手に脳内で彼女一人の状況が思い浮かびあがっていたので、ほんの少し動揺したのである。
今日の観戦中に覚えた彼女らの名前は──蛙吸梅雨さん、麗日お茶子さん、葉隠透さん。下の名前については、クラス発表の際に書かれていた名簿で覚えた。それを授業で顔と一致させていった。
「五毛くんだよね?戦闘訓練、スゴかったね!すっごい強かった!」
「うんうん、私やったら勝てる気せぇへんもん」
「えーありがとう。でもみんなの試合も見てたけど、頑張ってたじゃない。……その、葉隠さんはドンマイだけどさ」
「ふぐぅ……いや、あれは轟くんが強すぎたんだよー!」
「あれは仕方ないわ、透ちゃん」
「うんうん」
実際、見せ場もなく試合を終えてしまった葉隠透と尾白猿夫は不憫の一言に尽きるだろう。ビルが凍りつく瞬間に察知して、氷の波を飛び越えるなんなりしても、着地点から凍らされていた可能性は非常に高い。
非常に冷えた氷に手や舌が引っ付いた経験はないだろうか。表面が溶けていない氷は本来そんなもので、つまり拘束力も高いのだ。
「ウチらじゃ確かに突破はムズいけど……ゴモラならいけんじゃないの?」
「ん、まあ…………やれないことは、ない……かな──」
彼は喋りながら、轟焦凍と敵対した際のシュミレートをしていた。轟焦凍は炎の力を何故か使わない。対自分の時も使わない想定で考えると──
「うん。やりようによるけど、多分」
「ほんとうに強いのね、ゴモラちゃん。ちょっと羨ましいわ」
「大丈夫?ゴモラ、強がってない?」
「失礼だなあ耳郎さん。確かに氷や炎はとっても見栄えがよろしいけどもね」
「パワー自慢の人相手やと、モノを浮かせても戦えないんよねー……本人を触れられれば別やけど」
人と駄弁るのは楽しいことだ、人によって向き不向きはあるけども。人間は会話によって進化してきた種族でもあるのだし、言葉というのは便利なものだ。喋っているとすぐ教室に着く。
「おっ、来たなゴモラ!」
「こっち来いよー」
「はいはぁい、今行くよー!」
切島鋭児郎、砂藤力道に呼ばれて近づいていく。彼らは彼らで互いや他の人の試合について意見を交わしているようで、二人以外もかなりその話題で盛り上がっていた。
「ゴモラは俺らの試合、どう思ったよ?最初だから結構アレだが授業の時に言われた『相方に作戦を任せすぎた』っての、その通りだと思うんだ」
「まぁ、あれはその前の試合達からルールも変わってないってこともあったし……そうだなあ。砂藤くんはあんまり搦手をしないよね」
「搦手なんざ漢らしくねえ!」
「あの、切島くん。本当にヒーローになったらそんなこと言ってられないと思うよ?多分。漢気を通して戦って、
「──……」
「まぁ、心掛けとしてはすごくいいと思うけどね。俺もなんだかんだ言って被害を出さない戦い方、模索中なんだし」
「ゴモラ───お前、すげぇ考えられるんだな……!」
「えっ?」
「いや、正直個性見てるとゴリゴリのパワータイプって感じだと思っててよ」
「……そんなに脳筋っぽいかな、俺……」
「すまん」
彼は心の中でひっそりと涙を流した。
とはいえ仕方ないところはある。基本的に個性は本人の資質や血に起因し、そして発現させた個性に多少なりとも性格を引っ張られるケースが非常に多い。切島鋭児郎しかり、爆轟勝己しかり──…その点、五毛楽の個性と精神はかなり乖離しているとも言えた。理性的な
まぁ、彼の場合…一人暮らし歴が割と長いので、ゴモラサウルスの個性に引っ張られて生まれていたかもしれない、溢れかえる暴君のリビドーも向ける先が存在しなかったのかもしれない。抑えなければ生きていけなかったとも言う。
その時、スイーと軽く静かな音で教室の扉が開く。そこから覗く顔は、授業の試合で酷い怪我を負った緑谷出久。コスチュームから着替えておらず、その格好のまま腕に包帯を巻いていた。
「おお緑谷来た!!おつかれ!!」
控えめに見ても怪我が治ったようには見えないが、とはいえ試合終了直後よりは怪我の度合いが良くなっているのは確かのようだ。
「いや何喋ってっかわかんなかったけど、アツかったぜ おめー!!」
「へっ!?」
「よく避けたよ──っ」
「一戦目であんなのやられたから、俺らも力入っちまったぜっ」
どわっ、と一気に話しかけるクラスメイト達に緑谷出久はとにかく困惑していたが、とはいえ評価されたことはまんざらでもないようで、悪い気はしていなさそうであった。
「俺ぁ切島鋭児郎!今、皆で訓練の反省会してたんだ!」
「私、芦戸三奈!よく避けたよ──!」
「蛙吸梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」
「俺!砂藤」
「わわ……」
軽い自己紹介が挟まったようだが、彼らの勢いは収まっていない。わいわいと楽しげに緑谷出久に話しかけていた。
「あれ!?デクくん怪我!治してもらえなかったの!?」
「あ、いや……これは僕の体力のアレで……。あの、麗日さん……それより──」
何事かを聞いた緑谷出久はそのまま教室を出て行ってしまった。五毛楽はリカバリーガールという人の治療も万全じゃないんだな、と考えつつ、緑谷出久がすぐに消えたことについて耳郎響香と首を傾げあっていた。
〜突発的思い付きのキャラファイル〜
U.A.FILE. –Unknown number− その②
CLASSNo.15
TORAMA URU(
○個性 光エネルギー(正式名称未定)
・光をエネルギーとして色々なことに活用できるぞ!光の溢れる場所で強く、光のない場所に弱いという常闇踏影の「
身体強化、装甲、飛び道具、飛行!何でもござれ!類い稀なる万能性があり、非常に多彩な戦闘を可能にするぞ!光るぞ!
得意技は「光輪」!手に添わせて武器の様に扱うもよし、チャクラムの様に飛ばすもよしの便利技だ!どこぞの八つ裂きスラッシュなんとかみたいにとげとげはしていない!
暗い場所であまり光を使いすぎると光エネルギーは枯渇、無個性状態になってしまうのだ!!
乕間’s
乕間’sヘア……さらりと垂れ、月光に照らされるような銀髪。
乕間's全身……細身だが、筋肉はしっかりある。意外と骨太。
乕間's胸……明るい間は青いランプのついた制御装置をつけている。
乕間's瞳……少し金の入った白。
乕間'sファッション……紅白を好む。
乕間's舌……炭酸が苦手。
この子の髪型やら何やらは想像にお任せするぜ!
面倒見が良くて優しい兄ちゃんポジかな?でも長男っぽいかと言われるとコレガワカラナイ。まあこの世界に彼の兄弟はいません。カラーリングの似た兄弟なんていないったら。
いつか彼メインの閑話も書きてえな!インターンとか(大分先)!
2025.2.10 再掲による細部の内容改訂
後から付け足した峰田実関連が少し変化しております。