IS学園の劣等生   作:tubaki7

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今回はかなり短いデス


第壱拾壱話 印象

目まぐるしく目の前を行き交う閃光。時折空間の歪みを検知したアラートが鼓膜を伝ってその危険性を伝えてくる。それをやっとの思いで回避すれば、今度は後方からまた光がほとばしる。青い、細長く忌々しいそれは未だに慣れない。こんなものを平然と壊しにいける彼奴は絶対にどうかしてると思う。

 

  だが、やってみせなければ負けてしまうわけで。

 

 この勝敗には自身の名誉と尊厳に関わる。アレが公にされれば二度と日向を歩くことなどできはしない、そほどまでに恐ろしいものだ。・・・実際、何が書いてあるかなんて知りもしないが。だがそれだけに、恐ろしい。

 

「どうしました?避けてばかりではわたくし達は倒せませんわよ!?」

 

 わかってる。だがそうする意外に自分ができることがあまりにも少ない。遠距離、というより飛び道具の類が一切苦手な自分にとって、制御はほぼ機体任せ。引鉄を引くのにも、並のパイロットより時間がかかる。その為自分に合ったスタイルを近距離、ISによる肉弾戦にしたのだが、こう相性が悪いと手も足も出ない。

 

「これで終わりよッ!」

 

 背後で振りかぶられる巨大な両刃刀。しかしそれが振り下ろされることはなく、甲高い音を立てて主の手から離れる。自身から後方、5時の方向を見れば、まだ硝煙の立ち昇るライフルを構えた相方の姿が。

 

「ナイスッ!」

 

 チャンスだ。敵は背後、普段ある身長差は今は無い。そのまま左後方に回転しながら腹部に肘打ちを入れれば、気がそれていた為反応できずに逆くの字に曲がって跳ぶ。それを見て拡張領域(バススロット)から拳銃を生成し発砲。残念ながら大したダメージにはならないまでも肘打ちの威力があるためバランスを崩して落下していく。これで少しは楽になった。頭上を見上げれば、交錯するレーザーと弾丸。それらがまるで雨のように降り注ぐ中に、怯みもせず向かっていく。深緑と蒼の間を抜ける黒は二機が対峙する高度より高く飛翔し、太陽を背に止まる。

 

「クッ、小癪な真似を・・・しかし!」

 

 ISのハイパーセンサーにそんな小細工は通用しない。すぐさま余分な光をシャットアウトし、肉眼で見ても害のないよう視界をクリアにする。そこにライフルの照準を合わせれば―――

 

「油断大敵ですよ、オルコットさん!」

 

 一発。たった一発の弾丸がライフルに命中。爆発し、その爆風でバランスを崩す。なんとか立て直して空を見上げるも、そこには既に2人の姿はなかった。

 

「いったいどこに・・・!?」

 

 たとえハイパーセンサーがいくら優秀でも、最終的にその狙いを絞るのはパイロットの役目だ。それを見失ってしまえば、いくら万能な機械であろうと役に立たない。

 

  そして。

 

「こっちです!」

 

 その声に振り向けば、ロックオンされたと機体が警告を発する。しかしながらいくら彼女がこの学園の教員といえども無敵というわけではないし、超天才的な射撃の名手というわけではない。まだこのロックから外れることができる。そう考え、機体を急速上昇させたが―――それがマズかった。

 

「かかりましたね。枢君!」

「なッ!?」

「ラァァァァァァァァァアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!!!!」

 

 雄叫びを上げて蹴りの体勢で突っ込んでくる。回避しようにも勢いに乗りきったこの状態では急旋回は不可能だ。何もすることもできず、セシリアはキックを受け落下。その最中、上がってきていた鈴とぶつかり二人そろってグランドに沈んだ。

 

「それまで。勝者、即席ペア」

「やりましたね、枢君!」

「ま、まぁ、先生の技術があってこそでしたけどね・・・」

「またまた、そんなことないですよ。二人の位置取りや癖まで、全部枢君の言った通りでしたよ?自信を持ってください」

 

 自信を持つ、ね。イマイチそんな気になれないでいる巧。気まずそうに顔を反らし、目線を泳がせるその様子を見てピンときたほのかが言う。

 

「あ、巧さんてば山田先生のムチムチ爆乳見て興奮してるんですね!?言ってくれれば私がぬ―――」

「先生、俺銃の練習したいんですけど教えてもらえますか?的ならそこの駄肉女にするんで。凰、手伝え」

「言い方は気に入らないけどそーいうことなら全面的に協力するわ」

「私の命がFLYHIGHしそうなんですが!?」

 

 相変わらず仲がいい。そう微笑む一夏の横で苦笑するしかないシャルルであった。

 

 

 ◇

 

 

「では、各自別れて起動から歩行練習までを行うように」

 

 今日の課題はISへの搭乗、そして起動から歩行までの基本に沿った実践。専用機持ちをリーダーにし、別れての授業だ。そうなってくると必然的に人気の者とそうでない者がでてくる。当然、人気ナンバーワンは織斑一夏。次点でシャルル・デュノアとなっている。転校初日だというのにこの人気には少し驚いたが、もっと驚いたのはあの衝撃的な挨拶をしたラウラ・ボーデヴィッヒだ。彼女のもとにも列ができている。聞くところによると、なんでも彼女は現役の軍人とのこと。そうでなくとも代表候補生で、あのルックス。一部の生徒の見る目が若干怪しい気もするがそれでも彼女が人気をはくしているのは間違いない。

 

  そんな考察を、グランドの隅でする。

 

 けっして誰も寄り付かず、寂しいのがバレて同情されるのがイヤなわけじゃない。断じて。

 

「ボーデヴィッヒさん、思いのほかコミュニケーションはとれるみたいですね」

「アンタ、彼奴のことなんだと思ってたんだよ」

「私のご主人様に手を上げる不届き者」

「出来た従者だこと・・・」

 

 キャピっ、なんてことを言ってくるが全力で無視。こちらを見てあたふたする山田真耶と、溜息をつく織斑千冬に見えるように隣にいるほのかを指さす。それを見て安堵する真耶と、やれやれと言った顔をする千冬。この二人のリアクションからして彼女たちの指示でないことがうかがえる。

 

「織斑の列に行かなくていいのか?」

「私、どちらかというとああいう朴念仁はノーサンキューなので」

「バッサリいくなあ」

 

 相も変わらず口から出る言葉のエッジが半端ない。毒だけにとどまらず、そこにナイフまで追加されたようだ。

 

「巧さんほどでもないですよ」

「よせ、照れる」

「え、照れるという概念があるんですか?」

「その胸削ぎ落とすぞ」

 

 とはいえ、自分も割と容赦ない。しかしこうやって気心知れる間柄だからこそできる会話内容なわけで。他の人間だったらこうはいかないと改めてこの同居人のノリの良さというか、テンポの合う心地よさを実感する。この学園内のみならず、今までの人生の中でここまで波調の合う人間はいただろうか。いや、いない。

 

  だから。

 

「さて、授業は授業ですし。巧さん、私をエスコートしてくれませんか?」

「・・・善処する」

 

 差し出された手を、握るのだった。

 

 

 

 

 

 

  IS学園の劣等生 ~第壱拾壱話:印象~

 

 

 

 

 

 織斑一夏。ISの世界大会であるモンド・グロッソでその頂点に登りつめたブリュンヒルデの称号を持つ織斑千冬の弟。姉弟ともに容姿に関してはかなりハイスペックであり、こと一夏に関しては中身もいい。優しい、かっこいい、おまけに家庭的。そこまでしてモテないわけがない。一方、枢 巧はというと一夏とはキッチリ別ベクトルだ。容姿に関していえば目つきが悪い、茶髪、態度が悪い、言葉使いが悪い、喧嘩っ早い。揚句の果てには実は人間じゃないなどと言われる始末。当たっているものもあれば尾ひれのものまで上げればキリがない。印象は、はっきり言って最悪だ。

 

  まぁ、それも彼の本質を知れば、話は変わるのだが。

 

「デュノア」

「なにかな?」

「これから織斑と愉快な仲間たちと昼飯喰おうってことになってな。一緒に来るか?」

「えっと・・・行ってもいいのかな?」

 

 そもそもの疑問を述べる前に考えたところを見るにツッコみをいれたかったのだろう。だがまだ初日ということで断念したようだが。

 

「いいも何も、俺だけじゃ収拾がつかないんでな」

 

 要は道ずれ、ということらしい。だが、それが理由としてではなくただ建前として言っているというのは喋り方からしてなんとなく伝わった。あ、そうか。この子ただ不器用なだけなんだ。そうとわかれば話は早い。

 

「そう・・・なら、一緒しようかな」

 

 なんとなく、子を持つ母の気持ちがわかったような気がした。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「・・・なぁデュノア」

「なに?」

「殺意で人って殺せると思うか?」

「それは多分無理なんじゃないかなぁ」

 

 そんな会話ができるようになってしまった辺り自分もいよいよ毒されてきたかと思う。だが、現実逃避というか、そう言いたい気持ちもなんとなく察しがいったのでそれ以上のやり取りをすることはしなかった。

 

  美少女に自分の手料理を食べろと囲まれせがまれる。こんな構図を彼が見ればこうなるのも頷けた。

 

「巧さん、アーン!アーン!」

「お前自分で食わせるとか、せめて作るとかしないのか」

「私、家事一切できませんっ!」

「清々しい返事だね・・・」

 

 此奴も此奴で色々手におえない。そう放置気味になってきた同居人に致し方なく食べ物を放ってみる。一口噛みしめれば目を輝かせ、咀嚼すれば恍惚の表情すら浮かべる。あ、ヤバイい。此奴をダメにしているのは明らかに自分だとようやく気付いたがもう遅い。この女、徹底的にダメ人間街道を全力疾走している。

 

「おいひぃ・・・ッ!」

「・・・・そ、そんなに?」

「此奴が大げさなだけだ。なんなら食ってみるか?」

「え、いいの?」

「ああ。から揚げでいいか?フランス人の口に合うかわからないが」

 

 そう言って箸でから揚げを一つつまむ。それをこちらに向けた。首を傾げて視線を隣に反らせば、その意図が理解できる。

 

「・・・あーん」

 

 男同士で・・・なんて思うかもしれないが、逆に同性だからなんの気兼ねなくできるという利点があるのだろう。だが、それにしてもこれは・・・―――

 

「お・・・・美味しいッ!」

「そうか。そりゃよかった」

「こんなに美味しいの食べたことないよ!」

 

 絶賛の嵐。料理人の息子としてそれはなによりも嬉しいものだ。そしてそれを聞きつけ群がる影も。

 

「枢、俺にも!」

「お前は男同士でアーンとかいう誰も得しない絵面をやりたいのか。海に沈めるぞ朴念仁」

「態度酷すぎねえ!?」

「喧しい。喰いたきゃ喰え」

「なんだかんだでくれるんじゃねーか・・・・ん~、やっぱ枢の料理は最高だな!」

「ま、また負けた・・・」

「グゥ、殿方にひけをとるとわ・・・ッ」

「この味・・・青のりか?」

 

 三者三様といった感想が飛ぶ中、唯一隠し味を言い当てたのは箒だ。

 

「その通り、よくわかったな。わからないぐらい細かいかと思ったが」

「噛んだ瞬間に口に海苔特有の磯の香が広がった。うむ、好きな味だ。私のもどうだ?」

「おう。・・・・ニンニクが効いてるな。よく揉みこまれているし、それでいてしつこくない」

 

 そこから始まる料理トーク。その姿はさながら。

 

(主婦の世間話・・・)

 

 それが、この光景を見た五人の一致した感想だった。

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