IS学園の劣等生   作:tubaki7

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今回からシャル編になります


第壱参話 悪あがき

 ヒーローなんていない。これは枢 巧の持論だ。いつだって頼りになるのは自分だけ。物事を最終的に決めるのも自分。他の誰かに決めてもらうなど、それはただの甘えに過ぎないのだ。

 その点、シャルル・デュノアという少女は強いと言える。昨日の今日で自ら決断を下したのだから。

 

「本当にいいんだな?」

「うん。ありがとう、二人とも」

「・・・シャルルがいいなら、俺は何も言わない」

 

 相も変わらず不機嫌な一夏をしり目に巧はほのかへと目線を送る。それが合図となり、待ってましたと得意げに眼鏡をかけて説明を始める。ちなみに度は入っていない。

 

「こほん。まずデュノアさんを取り巻く状況を整理しますね。まず一つ目は、現在貴女の素性を知っているのは私含めこの三人だけです。幸い、この学園にはフランス政府所属の代表候補生はいませんので、不幸中の幸いですね。二つ目は、もう既にデュノア社がこのことに気づいていてもおかしくないということ」

「どういうことだよ?」

「俺達に正体が割れてから一度も連絡を取っていないらしい。定期的に報告をあげるよう命令されていながらそれがパッタリと途絶えたとなれば、何かあったと考えるのがセオリーだ」

「そして三つ目・・・正直これが一番厳しいですね」

 

 そう言いながら小型の端末を操作し、ホロウィンドウをいくつか表示する。

 

「上記二つに関してはさほど問題視することではないのですが、この三つ目である、デュノアさんが強制送還されてしまうということです。学園の規則では三年間の在籍中は企業、軍といえどもよほどの緊急時でなければ召集はできないことになっています。ですが」

「それはあくまで三年間だけ。卒業の肩書がついた瞬間デュノアに待ってるのはどのみち地獄だ」

 

 巧が続け、ほのかが「そこで」と言ってホロウィンドウを操作する。そこには、なにやらデフォルメされたイラストが描かれていた。

 

「私達は一学生です。それはどうあがこうと変わりはありません。ですがそれは私達だけでやろうとすればの話です」

「ど、どういうこと?」

「フッフッフッフ。こんな可愛い女の子を道具のように扱ったんです。大人って奴ぁ、許せませんよねぇ・・・」

 

 なにやら楽しそうだ。意味深に笑う姿にもはや苦笑しかでてこない二人に対し、また悪乗りが始まったと巧は頭を抱える。

 

「こうなったら大人を巻き込んじゃえって算段です!」

「要するに、だ。俺達じゃ学生ってだけで言うこと成すこと全てがその粋に納められる。だったら、こっちもそれなりの地位と権力のある大人に対抗してやろうってことさ」

「・・・ちょっと待ってくれ。千冬姉は無理なんじゃないか?」

 

 たしかに、一夏の読みは正しい。この学園で・・・いや、この世界で最も影響力の強い人物はIS開発者の篠ノ之束を除けば織斑千冬ただ一人。しかし彼女はこの学園の教師である前に、様々なしがらみが存在する。それが何かはわからないが、ヘタをすれば彼女にさらに重荷を背負わせてしまいかねない。そうでなくとも彼女を動かすにはそれ相応の理由が必要となるのだ。これだけでは、まだ甘い。

 

  しかし、それだけが手ではないとほのかは笑う。

 

「たしかに織斑先生に出てきてもらえれば心強いです。が、それには様々な難関をクリアしなければならない為時間がかかりすぎてしまいます」

「じゃぁ、どうするの?」

「・・・俺達にアテがある」

 

 

 

 

 

 IS学園の劣等生 ~第壱参話:悪あがき~

 

 

 

 

 

 アナウンスに従って、通路を進む。辺りはサラリーマンやら観光客やらでごった返しており、平日だというのに混雑していた。現在地、成田空港。ここからシャルルの故郷であるフランスへと飛び立つことになる。

 

「でも凄いよね、鴻上会長って」

 

 不意にシャルルがそんなことを漏らした。

 

「二人が提案したことを二つ返事で了承したあげく、その理由が面白そうだからって・・・」

 

 なんというか、色々とスケールが違うなとしみじみ思う。第一印象はちょっとぶっ飛んだおじさんかと思っていたが、話せば話すほどその性格というか、器の大きさには感服するしかなかった。

 

「まあ巧さんがマフィンで釣ったという裏事情があるのはこの際黙っておきましょう」

「口は災いの元ってことわざ知ってるか?」

 

 なぜだろう。このやりとりがなんだか安心する。が、少し気がかりなことが一つ。

 

「一夏はいないの?」

「彼奴には残ってやらなきゃならないことがある(・・・・・・・・・・・・・・・・・)からな」

 

 しかも意外にもそのことを彼から言い出したのだ。やはり彼女―――ラウラとは決着をつけなければならないらしい。転校してきた時のあの挨拶からしてやはり何かあるのだろうか。

 

 まあ、それはそれとして。

 

「そろそろ出発の時間だな」

「いざ行かん!フランスへ!」

「すみません、この荷物もコンテナに積んでもらえませんか?」

「ちょ、私人間!ヒューマン!」

 

 それにしても容赦ない。この二人の芸はいったいどこまでいくのか少し興味がわいてきたシャルル。これから敵地に乗り込むというのにまったくテンションを変えることなく機内へと向かう二人を追いかけシャルルも歩みを進める。

 

「あッ・・・ごめんなさい。大丈夫ですか?」

「ええ・・・私の方こそ。そっちは大丈夫かしら」

 

 視線を上げる。その瞬間、シャルルは息を呑んだ。

 

「デュノア、何してる。早く行くぞ」

「う、うん!・・・って、あれ・・・?」

 

 気が付けば、先ほどぶつかってしまった女性はどこかへと消えてしまった。辺りを見回して探すも後姿さえ発見できなかった。

  飛行機に乗る。席の順は窓側にシャルル、間に巧で通路側にほのかだ。

 

「見てください巧さん!」

「ん?」

「CAさんですよ!」

「だからなんだ」

「制服がエロいです!私が着ればさらにエロ―――」

「なぁデュノア、フランスで一番旨いと思う料理はなんだ?ありすぎて絞れない」

「あ、えっと・・・」

 

 悲しそうにハンカチを噛むほのかと存在を完全になかったことにしてこちらに話を振る巧。ここまで来てやめてほしいとは言わない。むしろ気分が和むので見ていて楽しいのだがいかんせんリアクションにこまる。こういう時一夏達のあの対応ぶりは見ていて本当に凄いと思う。それと同時に―――

 

(ちょっと、羨ましい・・・かな)

「むぅ、私の胸ならイチコロなのに・・・」

「アンタのは見飽きたんだよ」

「酷いッ!私とは遊びだったのね!?」

「これでも羨ましいと思うか?」

「ナチュラルに心読むのはやめてほしいけど、うん。これは流石にイヤかな」

「味方が一人もいない件」

 

 かくして、爆乳馬鹿と劣等生プラスシャルルという異色すぎるメンバーを乗せて飛行機は離陸する。目指すはフランス―――デュノア社。

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