IS学園の劣等生   作:tubaki7

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シャルロット編も終盤・・・というか、数話しかやってませんが、長すぎるとアレなので手身近に。そして構成の都合上、ラウラVS一夏は省略します(回想という形ではだしますが、内容はシャルがいないのと鈴とセシリアの扱いが変化しただけで他はアニメ、原作と一緒です)




第壱拾五話 夢の護り人

 

壊れたものは元に戻らない。子供の頃、大切だったぬいぐるみ――――家族も。

 

 そして、夢さえも。

 

 小さい頃・・・と言っても今もそうだが、母に対し強い憧れがある。女手一人で自分を育て、いつも優しく真っ直ぐであった。決して腕っぷしが強いわけでもなんでもない、どこにでもいるごく普通の女性だった。でも、そんな母が自分の理想であり、夢だった。母のような女性になりたい。自らを偽ることなく、どこまでも真っ直ぐに向き合う、そんな人に。

 

 父との会話は数える程度。死んだ母の葬儀の時でさえ、会話を交わしたという記憶はない。初めての時は・・・もう、覚えていない。鮮明に想い出せる会話といえば、自分にIS適正が見つかった時のことだ。

 

 ―――おまえをデュノアの息子として(・・・・・)迎え入れる。

 

 それが、初めて聞いた父の声であり、与えられた役割だった。自らを殺し、ひたすら自分は男だと言い聞かせ育てられた。ISの訓練に教養、辛くはあったが、苦しくはなかった。それが父の為になると思っていたから。だから、恨みはない。むしろ感謝すらしている。独りぼっちだった自分を拾ってくれたのだから。

 

 いつだっただろうか。そう―――まだ日本で言う、中学生だった頃のことだ。通っていた学校で書いた作文。なんとも子供じみているが、当時はそれが嬉しかった。仕事で滅多に会えない父に会える、ましてや自分の感謝の想いを面と向かって言えるのだから。生き生きと、笑顔が自然とこぼれる。離れ離れだったとはいえ、実の父。義母は苦手だが、それでも父のことは好きだった。―――何故か、と言われるとわからないが。

 

 一生懸命書いた。心からの想いを、数枚の用紙にありったけに乗せて。喜んでくれるだろうか?笑ってくれるだろうか?

 

  でも、現実は残酷で。そんなささやかな想いさえ、バラバラになってしまう。

 

 散らばった紙。破かれ、床に散乱するそれを見て、悟る。―――あぁ、自分はただの道具なのだ、と。

 

 必要とされるのは、IS適正があるから。それがなくなれば、自分はまた独りぼっちになる。そうならないようにするには、言いつけを守らないといけない。そうしないと、またバラバラになってしまう。もうあんな悲しい想いをするのは嫌だ。だからこそ、彼女は自分を道具とした。

 

  しかし、そんな自分に居場所を見出してくれた人がいた。一人は、優しく、強い意志でここにいてもいいんだと言ってくれた。そしてもう一人は、不器用ながらも自分に勇気を与えてくれた。

 

 帰りたい。あの場所へ、今度はちゃんと、胸を張って。母のように、偽ることなく、どこまでも真っ直ぐに向き合いたい。その為にはまず、ちゃんとごめんなさいと言おう。それから、本当の自分を知ってもらうんだ。

 

 

  だから。

 

「・・・フフ」

 

 この現実に立ち向かう勇気を、どうかもう少しだけ。

 

 

 

 

 

 IS学園の劣等生 ~第壱拾五話:夢の護り人~

 

 

 

 

 

 鴻上コーポレーション代表取締役会長、鴻上元蔵とデュノア社社長であるシャヴェール・デュノアの会談は平行線をたどっていた。紐解いてしまえば、こちら側が差し出した条件は枢 巧のデータを開示する代わりにデュノア社の技術提供と、シャルル・デュノアを制作中の機体のテストパイロットとして雇いたいということ。合同製作として、ロールアウトした機体の所有権についてはパイロット共々、共有すること。ハチャメチャな条件だが、要は「こちらの傘下に入れ」ということだ。たしかにデュノア社の保有する技術は世界でもトップクラスといえる。だがこちらはあの正規男性操縦者である巧のデータを保有している他、すでに第三世代型の製作にも独自で着手している。これまでデュノアが喉から手が出るほど渇望した第三世代に、だ。決して悪い条件ではない。

 

 だが、それを良しとしないには理由がある。

 

「残念だが、この条件はいただけませんな」

「ほう、理由をお聞きしても?」

「・・・なに、ただの意地ですよ」

「わかりますなあ。私も昔はよく意地を張ったものです。まあ、この年にもなってくるとそれも薄れてしまいますがね。これからの時代は、今を生きる若人が作り上げていくもの・・・そしてそれを後押するのが、私達の役目である・・・そうは思いませんかね?」

「生憎と、私はまだ退くわけにはいかないのですよ。・・・・やるべき事を、成すまでは」

 

 互いに視線を交わす二人。一触即発、そんな緊張感が漂う中で、一人静かに口元に笑みを浮かべる女性をほのかは睨む。シャヴェールの妻、ディアンノ・デュノア。先ほどから感じる得体のしれなさと居心地の悪さは、まるで蛇に睨まれた蛙のようだ。この女、得体がしれないと警戒心をとがらせる。するとそれに気づいたのか、先ほどの妖艶な笑みとは裏腹に清々しいほどの笑みを浮かべる。

 

「あらあら、どうかしました?」

「・・・いえ」

「申し訳ない、緊張のあまり顔が強張ってしまったらしいですな。いやはやお美しい奥様を目の前にしてしまったのもあるのでしょう」

「あらイヤですわ」

 

 気に入らない。そう心の中で吐き捨て表では謝罪の意を述べておく。そして、彼女の視線はシャルルの方へ。

 

「貴女も、もっと楽にしていいのよ?」

「・・・母様」

「なあに?」

 

 少しの間を空け、意を決したように顔を上げシャルルが口を開く。

 

「僕の友人である、タクミ・カナメが行方不明なんです。鴻上会長達と合流するまでは一緒だったんですが・・・それから全く連絡が取れないんです。何か情報がありませんか?」

「・・・そうね。彼の捜索は引き続き行っているわ。でも・・・」

 

 そこで、ディアンノが顔を陰らせた。わざとらしいその行動にほのかの怒りが沸々と沸いていく。

 

「うちの調査員が・・・これを発見したそうよ」

 

 ディアンノが見せたそれを見て、戦慄する。黒いペンダント。それは彼の為に自分が丹精込めてチューニングした、彼の力であり、空へと飛ぶための翼。広い部屋で、距離を置いたこの位置でもそれはハッキリと確認できた。

 

  人の、血。それが何を意味するものかを理解した瞬間、ほのかの中で何かが切れた。

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああッッッッッ!!!!!!!!!!」

 

 懐から銃を抜く。この距離からなら、確実に仕留められる。そう確信しながらトリガーに指をかけるほのか。だがそれをディアンノは嘲笑う。

 

「ダメだよほのかッ!」

「離してくださいッ!彼奴は・・・彼奴は巧さんを!」

「そ、そんな、私はただ―――」

「黙れッ!そんな猿芝居・・・もうこっちは見飽きてるってんですよ」

 

 ほのかの刺すような視線がディアンノに向けられる。常人ならこの剣幕で尻もちでもついてしまいそうなほど迫力と殺意に満ちているが、それを真っ向から受けても彼女の余裕が揺らぐことはなく、それどころかさらに笑みを浮かべる。

 

「・・・そうね、いい加減飽きてきた頃ですし。ねえ、アナタ?」

「・・・・」

「父様・・・」

 

 しかしシャルルの言葉に応えることはせず、ただじっとこちらを見つめたままだ。

 

「悪いけど、貴方達はもう用済みなの。全員、ここで消えてもらうわ。・・・そうね、そこのおっかなぁいお嬢さんの錯乱で発砲した銃が私のかわいいかわいい息子に当たって、それが原因で悲しみに暮れる私が次いで発砲。なんてシナリオはどうかしら?悲劇的で涙をそそると思うのだけれど」

 

 楽しんでいる。この状況を、まるで映画を演出する監督のような振る舞いだ。それがさらにほのかを煽る。

 

「何がかわいい息子だッ!人を物みたいに扱って、それに加え殺そうとしているくせにッ!」

「もう、そいつに利用価値などない。デュノアであることを否定したいのであればするがいい。しかし、それ相応の覚悟があってのことなんだろうな?」

「・・・」

 

 怖い。手が、足が震える。ここまでの恐怖は感じたことがない。声がかすれる。うまく言葉がでてこない。呼吸が苦しい。重圧で押しつぶされそうになるシャルル。だが、彼女はそれを振り払う以外に選択肢はなかった。

 

 覚悟はあると言った。自分を必要としてくれた人がいた。温かい居場所をくれた人がいた。そして、立ち向かう勇気をくれた人がいた。自分を、こんな嘘偽りだらけの自分を友達と言ってくれる人たちがいた。その人達の為にも・・・・何より、自分を変える為にも。

 

「・・・、」

 

 ――――どうしても怖い相手に立ち向かう時に、こう言ってやれ

 

「・・・ある人が、教えてくれたんです」

 

 だから、少しだけ・・・ほんの少しだけ。

 

「どうしても怖い時に使う、呪文があるって」

「へぇ・・・それはなんなのかしら?シャルルちゃん」

「・・・クソッタレ」

 

 勇気を、ください。

 

「・・・気に入らないわね、その顔。あの女にそっくりだわ」

 

 怒りと妬みに、顔が歪んだ。勝気な笑みを精一杯作って言ったのが効果があったのかどうかはわからないが、とりあえず一矢報いることができた・・・と思う。

 

 ディアンノが右手を掲げる。その動作と共に光の粒子が辺りに散り、一瞬光って収まる。レモンイエローの装甲に、黒光りするオート式のマシンガン。ほのかが三人を守ろうと前にでる。銃を構えてはいるが、それもISの前では無力。ここで死ぬのか―――そう思った瞬間。突如窓が割れ、何かが入ってきた。トリコロールで塗装された、外見からして龍を思わせるようなすらっとしたシルエット。なびく金髪が、かのフランス革命を促した女神を彷彿とさせる。

 

「ハァイ、なんだか私のいない間にずぅいぶんと好き勝手やってくれたようねぇ」

 

 突如乱入してきた女性に唖然となる。いったい何者なんだと思考を巡らせようとするも突然のことに頭がついてこない。ただただ立ち尽くすその状況で、唯一シャルルだけが反応を示した。

 

「その機体・・・貴女は―――」

「ハロー、お嬢さん。マリアンヌ・エリエールよ。あの時はどーも」

 

 知り合いだったとは。さらに驚愕しつつマリアンヌと名乗る女性を見上げる。

 

「ディアンノ・デュノア・・・貴女のこと、色々調べさせてもらったわ。現フランス代表の名において、貴女を拘束させてもらうわ」

「ふ、フランス代表!?」

 

 さらに混乱する頭。それを必死に整理しようと首を横に振る。

 

「・・・残念だけど、そういうわけにもいかないのよね」

 

 にやりと笑い、蹲っていたシャルルを掴んで人質とする。側頭部に突き付けられた銃口が、きらりと冷たく光る。

 

「あら、そんなオイタをするとその子のナイト様がお怒りよ?」

 

 足音が響く。そして―――

 

「・・・なぁ。夢を持つって、どういうことなんだろうな?」

「・・・教えてあげましょうか。夢を持つと、こう・・・熱くなったり、でも時々急に切なくなったりするんです」

「相っ変わらずアバウトだな」

「でもその方がちょうどいいじゃないんじゃないですか?」

 

 返した答えに笑みで返してくる。それを見て、自分もまた微笑んだ。

 

「オイおばさん」

「おば・・・ッ!」

「知ってるか?夢を持つとな。時々すっごく切なくなるが、時々すっごく熱くなる・・・らしいぜ。俺には夢がない。でも、守ることはできる。だから・・・デュノア。まずはアンタの夢から守ってやるよ」

 

 不器用だなぁ。そうこぼしながら、シャルルはその人物を見る。

 

「よう。仕返しに来てやったぜ」




さて、次は巧vsディアンノ。ノワールの新装備もお披露目です
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