IS学園の劣等生   作:tubaki7

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第壱拾九話 パートナー

 臨海学校。IS学園には一般の学校と同じように幾つか行事が存在する。それは、たとえIS専行の学校といえども自分達が〝女子高生〟であることを忘れない為に用意されたものらしい。これはひとえに、「自分たちは選ばれた人間ではある。だが、驕ってはいけない」という気持ちを大事にしてほしいということから設けられた行事だ。そして一年生は間もなくこの臨海学校が控えている。

 

  そして、今年の一年は特別な一年なわけで。女子陣は水着選びに必死というわけだ。

 

「巧さん、これなんてどうでしょう!?私の超ダイナマイトボディにはぴったり―――」

「凰は活発な印象を受けるから、そこまでスタイルにこだわる必要はない。むしろあんな駄肉をぶら下げている奴よりも選ぶバリエーションも広いんだ。だからお前は今の自分を最大限に生かせる水着を選べばいい」

「今日の私の扱い酷くないですか!?」

 

 一夏がいないとなれば、同じ男である巧に意見を聞いてくるというのは極自然の流れである。だがこの同居人は別だ。手に取った水着は明らかにモザイクかR-18指定が入るような危険極まりないもの。こんなものを真っ先に選ぶ奴は大概アドバイスしたところで碌なものを選びはしない。それが彼女と寝起きを共にしている巧が培ったものだ。コレに比べたらラウラの過剰なアピールなど、可愛いものである。

 

 そんなこんなで鈴に一言二言アドバイスした巧は次に箒の方へ。彼女も性格が幸いして他の5人よりも難航しているようだ。

 

「これなんてどうだ?」

 

 そう言って手に取ったのは上下白のビキニタイプ。それを見て一気に茹でタコのような顔になるあたり少し先が思いやられる気がしてならない。

 

「な、何故私がこんな破廉恥なものを着なければならないのだッ!」

「アンタはあのゲテモノの次にいいものを持ってるんだ。自分の武器は最大限に生かしてこそのもの。武道においても、それは言えることだと思うが?」

「うっ・・・し、しかし・・・」

「・・・はぁ。何度も言うが、アンタは自分に自信があるのかないのかどっちなんだ」

 

 強気になったかと思えば急に弱気になる。女の子は浮き沈みが激しくデリケートな生き物だとはほのかの談だが、ここまで激しいと嫌気もさしてくる。軽く溜息をつく巧。箒は少し、視線を落とした。

 

「・・・私は、皆みたいに女の子らしくはない。事故とはいえ、一夏にも木刀を振り回したり叩いたりなどしょっちゅうだ。それに私は、肝心な時に・・・何も・・・」

「だからなんだ」

 

 間髪入れずに言われた言葉に箒は顔を上げる。

 

「上ばかり見たって仕方ねぇだろ。だったら今のアンタができる全部を一個ずつやるしかない。だったら、周りと自分を比べて疲れるなんて暇ないだろ?要は自分のことをどれだけ理解して、自分の力を発揮できるかってことだ。さっき凰にも言っただろ?」

「・・・今の、私を・・・」

「それにだ。アンタがどれだけ不器用でも、彼奴と衝突したとしても。そんなアンタを理解できない織斑じゃねえと俺は思うがな」

 

 上手くいかないものだな、こういうものは。そうバツがあるそうな顔を見せないようにあえてそっぽを向いて言う。

 

「枢・・・」

「・・・つーかさ」

「なんだ?」

「・・・そんな女の子らしくない女の子に惚れた俺は、いったいどーすりゃいいんだよ」

 

 そう吐き捨てて、そそくさとその場を退散する。取り残された箒のことを気にかけられるはずもなく、巧は水着売り場から離脱して、ショップ前のベンチに腰掛けて息をつき、天井を仰ぐ。何を言ってるんだ俺は・・・そんなことを小声で呟いて顔の熱を冷やす。我ながら、らしくない。

 

「あら、枢君?」

 

 呼ばれて横を見れば、見慣れた容姿。子どもが背伸びして大人のマネしてみました感がにじみ出ており、さらに独り身ですと言わんばかりの両手一杯の買い物袋。・・・何故だろう、少し同情してしまった。

 

「今何か失礼なこと考えてませんでした?」

「いや、ただ山田先生はいつ見ても可愛いなと」

「やだ、そんな・・・あ、でもクールな枢君もいいですね・・・」

 

 ダメだ、コイツ。同類だ。巧は頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園の劣等生 ~第壱拾九話:パートナー~

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん元気ですね。私なんか外の暑さにやられちゃってもうヘトヘトですよ」

 

 ガッツリ買い物を楽しんでる人が言う台詞じゃないと思う。そう言いたげな視線を向けるがとうの本人はまったく気が付いていない。

 

「枢君は行かなくていいんですか?」

「さすがに女物の水着売り場に男がいるのは、短時間といえど居心地はいいものじゃないんで」

 

 さすがにさっきまでこっぱずかしいことを言っていて耐え切れなくなって出てきたなんて言えない為そう誤魔化す。

 

「ですね・・・。こうして見ると、皆さん本当に仲がいいですねえ。なんだか羨ましくなります」

「先生にもいるでしょ、こういう・・・いや、すんません」

「なんで謝るんですか!?」

「いや、なんだかその・・・ごめん、マジごめん」

「タメ口!?というか、私だって友達ぐらいいます!・・・・います・・・・」

 

 やがて尻すぼみになりガックリと項垂れる真耶。なんだか悪いことをした気分になる巧。少しバツが悪そうに頭をかきながらフォローをしてみることに。

 

「せ、先生はもう買ったんスか?」

「あ、私はまだ・・・。し、正直な話、その・・・合うのが見当たらなくて・・・」

 

 そう話す真耶の顔は先ほどとは打って変わって頬が高揚して薄紅色に、そしてその頬を隠すかの如く添えられた両手。恥じらう乙女、山田真耶23歳。未だ生まれてこの方親族以外の男性との接触は世間話と、最低限のコミュニケーションのみという生娘。おまけに、少し・・・いや、もはや手遅れかもしれないほどに腐っている。これじゃわからなくとも当然と言われればそうかもしれない。

 

 が、自分とてそれは同じ。おそらく初恋であろうものは最初から撃沈。儚く、しかし壮大に散ってみせたからなのか、今は言葉にあまり遠慮がない。

 

「・・・織斑先生が引き締まったアスリート体系なら、先生はその逆。ぽっちゃり気味のマシュマロ体系」

「マシュマロ・・・?」

「俺も、彼奴の持ってる雑誌をつまんで読んだだけの知識しかないですけど。山田先生って、織斑先生より男性受け良い体系なんだしもっと自信持っていいとおもいますけど―――」

「本当ですかッ!?」

 

 手を掴まれ、キラキラと目を輝かせながらグイッと近づく真耶。いきなりのことに若干ビビりながらも巧は頷く。すると真耶はさらに顔を明るくする。まあ常日頃から隣にいるのがあのブリュンヒルデ、織斑千冬なのだ。比べてしまうのも仕方ないというもの。それでよほどうれしかったのだろう。

 

「・・・えっと、緑色のビキニとかいいんじゃないですかね?あのリボンのついたやつとか」

 

 巧の意見を聞くなり真耶はフォーミュラもビックリなスピードで指さした水着を手に取り、会計を済ませて戻ってくる。

 

「ありがとうございます枢君っ!」

「ど、どうも・・・」

 

 暑苦しい。というか、単純である。これはこれでからかいがいのある人だなと思っていると、何か思い出したかのように手を叩いた。

 

「そういえば、一日目の自由行動なんですが、クラス対抗のビーチバレー大会があるみたいですよ。二人一組で、優勝者には豪華プレゼントもあるとか!」

「プレゼント・・・よくそんな予算ありましたね」

「なんでも、実行委員の子が提案したみたいで。それに運動部顧問の先生方が乗っかって、面白そうだからって理由であっさりと」

 

 そんな軽いノリで大丈夫かIS学園。というかよくあの鬼教官が許可だしたなと思考していると、補足するような形で真耶が付け加える。

 

「ちなみにその時、織斑先生は寝てました」

「ホント大丈夫かIS学園」

 

 まあとは言え、決まったものは決まったものだ。反対する気もないし、したとしても今更遅い。強制でなければ参加しなければ済む話であって。

 

「でも豪華プレゼントか・・・それは興味あるな」

 

 こういうのは、割と嫌いではない。見る分にはいいかもしれない。が、そうもさせてくれそうにない人間がここに一人。

 

「ですよね!?だから枢君、私と一緒に出場し―――」

「ちょぉぉぉっと待ったああぁぁぁぁッ!」

 

 間髪入れずに仁王立ちする、馬鹿。面倒くさいのがとうとう来たなと溜息。

 

「巧さんはパートナーである私と組みましょう!」

 

 嫌な予感しかしない。隣に座って腕を絡めるほのかに向かって心底「嫌です」という視線を向けるが、そんなものが効果を発揮したことは出逢って今日まで一度もない。当然、スルーしながら自分を挟んで向こう側から顔を覗かせる真耶と火花を散らし始める。

 

「それに、教師が生徒の催し物に出て、なんかズルいです!」

 

 意味がわからない。ツッコむよりも溜息が出る。

 

「わ、私だって遊びたいですッ!」

 

 おい教師・・・と言いたいが、普段のあの様子を見ればそれも頷ける。

 

「そのおっぱいで織斑さんだけでなく、巧さんまでも誘惑しますか!?でも残念でした。巧さんは私のおっぱいに夢中なんです!」

「おい馬鹿。砂浜に八墓村にされてぇか駄肉」

「もっと、もっと罵って・・・ッ!」

 

 帰りたい。助けて。思わず涙が出そうになった時、ふとほのかが言う。

 

「それに。私といれば、たとえ世界中が敵にまわったとしても無敵ですから!」

 

 屈託のない笑顔を見せ、ほのかは言う。

 

「・・・保留で」

「そこはツンデレで、フッ・・・お前にはやっぱり敵わないな。とかなんとか言いながらかっこつけて最終的に私を選ぶところですよ!」

「アンタ、俺をなんだと思ってんだ」

「ヘタレナルシスト」

「表にでろ。今日こそミンチにしてやる」

 

 容赦のない言葉のデッドボール。それに苦笑いをしながらも、真耶は思う。

 

(・・・やっぱり、私が組むより(・・・・・・)もお似合い・・・なのかな?)

 

 首を傾げながら、そう思った真耶であった。

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