IS学園の劣等生   作:tubaki7

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第弐拾壱話:揺れる心

 ―――ええ、計画は順調。・・・そう。彼女が。なら、私ももう潮時ですかね・・・はい・・・わかってますよ。全ては、〝完璧な子(オルフェ)〟の為に・・・。

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

「フムムム・・・・っ」

 

 夜。白熱したビーチバレー大会も終わりを迎えたというのに、興奮冷めやらぬIS学園一年生たちは、その有り余る気力と体力を食欲へと変えて夕食に舌つづみを打っていた。メニューは海産物を中心とした和食。他にもこういう旅館の料理には定番な鍋物や山菜など、彩豊で見ても良し味も良しの文句なしの構成だ。それに感心しながら巧は一口、また一口と胃の中へと放り込んでいく。箸が止まらないとはまさにこのことなのだろう。そんな彼の右隣。ふとうめき声に視線を向ければ、そこには薄金色の、特徴的な髪型の少女。風呂上りの為ほんのり紅に染まった頬はなんとも歳不釣り合いなまでに色っぽい。何やら苦痛に顔を歪めるその姿さえも、美しいと言えるだろう。

 

 相手が、巧でなければ。

 

「だから無理するなって言ったんだ」

「そ、そういうわけにもいきませんわ・・・この席を勝ち取るのに払った犠牲に比べれば・・・ッ!」

 

 いや、犠牲って。そんなツッコミを入れつつ、その原因とおぼしき人物を左隣に認識する。

 

「ややや、このお刺身油が乗ってておいしいですねぇ。むむ、この山菜の天ぷらもなかなか・・・あ、猪田さん。その茶碗蒸し、いらないなら貰っても?」

「え、あ、うん。どうぞ」

「ヒャハーッ!ありがとうございます!」

「ほのりん、すごい食欲だねー・・・」

「あの量、食べたら確実に太る・・・でも・・・」

「この食欲が、やまやんに負けないほどのアレを生成してるかと思うと・・・」

 

 ハァ。壮大な溜息がそこらじゅうから聴こえてきた。此奴の食べっぷりはいつ見ても気持ちいいと思う反面、呆れもでてくる。

 

「すごいねホノカ。あれだけ動いてまだそんなに元気なんだ」

「もちのロンですよ。むしろデザートまでいけます!」

「あはは・・・」

「おお~、これは本ワサですね!・・・くぅ~、この鼻に抜ける感じが堪りませんなぁ!」

 

 ほのかの反応を見て興味深そうに皿に盛られたわさびを見るシャルロット。そんなに美味しいものなのだろうか・・・。ほのかとわさびとを交互に見てから、山の形に盛られた端っこのわさびを丸ごと(・・・)箸でつまむ。そしてそれを・・・そのまま口に放り込んだ。

 

「fづしあhcjwpけおいっだsjsだぽfphs!?」

 

 それはいったいどこの国の言語なのだろうか。いや、むしろ地球上で存在するのか。そんなことを問いただしたくなるようか言葉になっていない言葉をわめきながら、シャルロットは顔を真っ赤にして悶える。

 

「ありゃ?どうしたんですかデュノアさん」

「アンタの馬鹿みたいな食べっぷりに感化されてわさびを丸ごと口に入れたんだ。・・・大丈夫か?」

 

 転がるシャルロットを起こし、そう聞くと彼女はコクンと頷いてから無理やり笑顔を作り「ふ、風味があっていいねぇ・・・」なんてことを言ってみせる。その根性はみあげたものだが、やはり無理がある。

 

「デュノア、鼻を抑えるな。余計苦しくなるぞ」

「ふぇ、ふぇも・・・」

「いいから、抑えるな」

 

 頑として離さないその手を無理にはがそうとはせず、あくまでもそっと手を握り優しく促す。シャルロットはそれに渋々従い、手を離した。

 

「いい子だ。そしたら鼻から息を吸え」

 

 息を吸うシャルロット。さながら水の中に長時間潜った後のように思いっきり吸う。

 

「次に口から吐く。それを繰り返すんだ」

「・・・・ホントだ、もう平気だよっ」

 

 嬉々とした表情と声で言うシャルロット。

 

「よかったですねデュノアさん。まるであやされてる子どもみたいでしたけど。あ、それと巧さん、私もわさびが辛いので背中さすってください」

「お茶でも飲んで舌火傷してろ」

 

 どうしてこうも態度が違うのか。1年1組だけでなく、彼らを知る者なら誰しもが抱く疑問だが、それも追及するだけ不毛なので少し気になった程度で済ます。そうする辺り、クラスメートたちもだいぶ扱いに慣れたのかもしれない。

 

「ありがとうタクミ」

「礼を言うほどでもないだろ。添えてあるわさびは、刺身の生臭さだったり油濃さを緩和する意味合いも持ってるんだ。少し待ってろ」

 

 そう言い残し、いったん自分の席に戻って再び戻ってくる。その手には刺身の無くなった皿、その端には少量ではあるがわさびが盛られていた。巧はシャルロットから彼女が使用していた箸を受け取ると、そのわさびを取り、彼女の皿に乗せる。

 

「おまえはフランス出身だから、わさびに馴染みがない。だからさっきみたいに量の調節を間違えるんだ」

 

 そう言いながら、残った赤身の上に少量のわさびを乗せて醤油にくぐらせる。それを醤油がこぼれぬよう、皿ごと持ち上げてシャルロットの口元まで持って行き。

 

「ほら」

「え、あああああの、タクミ?ここ、これは・・・」

「怖がるな。騙されたと思って食べてみろ」

 

 いや、そういうことではなくて。そう言いたかったが有無を言わせぬ顔で迫られるので何も言えず、今度は恥ずかしさに顔を真っ赤にしながらも刺身を食す。すると、どうだろうか。先ほど感じたイヤな辛さではなく、鼻に抜ける風味とツンとした感覚がなんとも心地よい。それに赤身の油も少し苦手だと思っていた彼女もこれには美味しいと思わずこぼした。それに気を良くしたのか、うっすらと笑う彼を見てまた顔を赤くする。

 

「美味しいと思えたならそうやって食べてみろ。だが、無理してわさびをつけることはないからな」

 

 そう言い残し自分の席に戻る巧。少し名残惜しそうに見つめるシャルロットに、何故か敵意を向けるほのか。そんな二人を軽くスルーしつつ、自身の食事に戻ろうとした時。セシリアが限界を迎えた。

 

「くふぅ・・・足が・・・!」

「だから無理するなって言っただろ。ほら」

 

 身動きできないでいるセシリアの躰を軽く此方に倒す。

 

「た、たたたたた、タクミ貴方何を!」

「騒ぐな。注目の的になりたいのか?」

「ぐっ・・・それもそうですが・・・」

 

 何故こうなった。そう言おうとするもいきなりのことに言葉は口から出ることはなく、かえって騒いだことにより足の痺れが全身を駆け巡って顔を歪める。

 

「ゆっくり足を伸ばせ。・・・そうだ。それでいい。あとはよくマッサージしておけよ」

 

 抱いていた肩を離す。その際に「あ・・・」と声を漏らすセシリア。

 

「どうかしたか?」

「い、いえ・・・なんでもありませんわ」

 

 つい、ツンとした態度で返してしまう。プライド故か、はたまた条件反射か。彼女らしいといえばらしいが、印象を悪くしてしまいかねないその行動に後悔するセシリアだったが、取り繕うと巧を見れば素知らぬ顔で再び食べ始めていた。それがなんだか納得いかず、そして悔しくもあり、やけになるかのように食べ始める。

 

  直後、シャルロットと同じことをしたのは言うまでもないことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園の劣等生 ~第弐拾壱話:揺れる心~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 織斑千冬。巧が所属する1組担任であり、世界覇者であるブリュンヒルデの称号を持つ彼女の印象を、これまでの事を踏まえて言うのであれば。それはすなわち、暴君と言って差し支えないのかもしれないと巧は思う。

 

 ここは織斑姉弟の泊まる部屋。そこでは千冬がうつ伏せで寝そべり、自分と弟の一夏がマッサージをしているという状況だ。

 

「悪いな枢。巻き込んで」

「まったくだ。部屋に戻ろうとしてみればいきなり掴まって連行。その理由が、他生徒が騒いだ原因が俺だからなんて理不尽なもの・・・俺が何をしたってんだ」

「・・・枢、貴様一夏以上の才かもしれんな」

 

 色んな意味で。そう心の中で付け加える。巧は嫌味全開の顔で千冬を見るが、そんなものはどこ吹く風だと言わんばかりにスルーする。非常に悔しいが、この人になにかで敵うかと言われたら精々家事スキルとしか言いようが無いため、グヌヌと唸ってマッサージを続ける。しかし考えてみれば、いつもなら反省文を書かされるところをこんな労働で済んでいるんだ。背に腹は代えられない。

 

「ン・・・一夏、そこは・・・っ」

「千冬姉、だいぶ溜まってるみたいだね」

「お前らの相手をしているとな・・・」

「そう。・・・じゃ、こういうのは?」

「アアンっ、お前、少しは手加減を・・・」

「姉弟でなんつー会話してんだお前ら。これただのマッサージだろ。つか、先生も楽しんでないか?」

「フン・・・そこで聞き耳を立てているガキどもに、少しはオトナの色気というものを教えてやっただけだ」

 

 扉を指さす。それに「ああ、なるほど」と納得して開けてみると、雪崩がごとくドドド、と倒れる女子6人。

 

「・・・なにやってんだお前ら」

 

 呆れ、溜息を吐く。

 

「ちょうどいい。一夏、枢。お前ら二人でジュースでも買って来い」

「いいのかよ、名前で呼んで?」

「今は、な。そら、つべこべ言わずにさっさと行ってこい」

 

 そう言って強引に二人を部屋から退室させ、残った6人を部屋に入れる。

 

「さて、お前らには罰を与えなければな」

 

 ニヤリ、と笑ってそう切り出す千冬。直感的に自身と同じモノを悟ったほのかは「あ、ヤバイ」となんとかして逃げようとするもさすがはブリュンヒルデというべきか。あっさり掴まってしまい身動きもとれず元の位置に戻されてしまう。千冬は6人の前にドガッとわが物顔で座ると、冷蔵庫から取り出したビールを一口煽る。

 

「ふむ・・・本当なら彼奴らに何か一品作らせるところだが・・・ここにはうってつけのつまみがある。今日はそれで晩酌といこうか」

 

 直感、的中。深いため息をつくほのかと、その気迫と振る舞いになにも言えない5人。

 

「・・・一夏は家事が上手い。それにマッサージもできるし、私が言うのもなんだがあの面だ。おまけにあのお人よしの性格。間違いなく優良物件だが・・・欲しいか?」「「「くれるんですか!?」」」

「やるか馬鹿者。勘違いするな」

 

 グビッとビールを煽る。落胆する鈴、ラウラ、箒。

 

「そして枢。彼奴は性格こそああだが、一夏に負けず劣らずの優良物件だ。・・・欲しいか?」

「「「くれるんですか!?」」」

「やるか馬鹿者どもが」

 

 同じ手にひっかるな、と最後に付け加えまたビールを煽る。

 

「・・・だが一夏はわかりやすいとしても、だ。枢は何故だ?」

 

 たしかに、と思う。目に見えて優しく、人当たりの良い一夏とぶっきらぼうでわかりにくい巧。どちらがモテるかと言われたら当然前者だろう。千冬も女だ。そのくらいは考えもする。だが、こと巧に関しては少しわかりづらい面も多い。内に秘めた想いを引き出す為・・・という建前で本当は本人が面白がって聞きたいだけの為に、千冬は促すようにシャルロットを見た。その視線に応えるように、彼女はポツリポツリと喋りだす。

 

「ボク―――私は、彼に勇気をもらいました。自分自身と、家族と向き合う勇気を。それに、強さを教えてもらったんです。タクミが、私が私でいていいんだと教えてくれました。ちょっと強引で不器用だし、言葉も悪いしツッコミに容赦ないけど・・・でも、そういう所も含めて、好きになったんです」

 

 恥ずかしがるどころか、むしろ嬉々とした顔でそう言ってのけるシャルロット。それに感心したのか拍手をするメンバー。それが鳴りやめば、次はおまえだとほのかを見るが―――

 

「私の生きる理由。私の存在理由そのもの・・・巧さんがいない世界なんて、私にはなんの意味も持ちません」

 

 恋心・・・そう言うには違和感のある声色と表情でほのかは千冬に返す。普段とは違う雰囲気に千冬はビールを煽りつつ目を細めてその言葉を聞いた後「なるほどな」と呟いて缶を置いた。

 

「ところで・・・オルコット。お前はどうなんだ」

「どう、とは?」

「とぼけるな」

 

 圧するような声。言い逃れなどできるはずもなかったが、やはりかとセシリアは静かに深呼吸をする。

 

「・・・一夏さんは、素敵な方です。彼は、わたくしの知っている殿方の印象とはまったく違い・・・何もかもを、変えてくれました。ですが・・・タクミは、なんだか違うんです。彼を見ていると・・・こう、胸の奥が・・・切なくて・・・」

 

 自分でも何を言っているのかわからなくなり顔を赤くするセシリア。それを見て満悦な顔の千冬。完全にこの状況を楽しんでいるなとほのかは溜息。早く終わらないかと祈る。

 

「なるほどな・・・と、ビールがなくなってしまったか。オルコット、それから篠ノ之。これをやるから、お前たちで買って来い」

「それなら私が―――」

「光野はここで待機だ」

 

 お前が行くと面白くないだろという意の視線を送る千冬。それに涙を流しながら「拷問だ」と呟く。そんなほのかの想いを受けつつ、二人は退室した。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「まったく・・・とんだ目に合いましたわ」

 

 愚痴をこぼしながら前を歩くセシリア。その後ろ姿を見ながら箒はふと先ほどのセシリアのことを思い出す。自分も一夏のことを聞かれたらあんな風になってしまうのだろうか・・・?

 

「箒さん?」

「な、なんだ!?」

 

 セシリアに名前を呼ばれ、ドキッとして後ずさる。

 

「そっちは何もありませんわよ?」

 

 そう言われ、自分の行こうとしていた方向を見れば突き当りだったことに気が付く。それほど考えていたのかと思いながら、それを悟られまいと「そ、そうか」と言いそそくさと先に行ってしまう。それを見て首を傾げたセシリアは後を追おうとするも。

 

「オルコット?」

 

 腕にペットボトルを抱えた巧と遭遇した。

 

「た、タクミ!?」

「いやなんでそんな驚くんだよ・・・」

「別に、驚いてなどいませんわ。タクミこそ、一夏さんと一緒だったのではなくて?」

「トイレ行くから先に帰っててくれってさ。アンタは?」

「わたくしは、織斑先生から買い出しを頼まれまして先ほど・・・あら?」

 

 ふと振り返るとそこに箒はもういなかった。追いかけようと思い、一歩踏み出したところで突如足に痛みが走り、その場に蹲ってしまう。何事かと様子を見に歩み寄った巧は、すぐにその原因に察しがついた。

 

「だから言っただろ。それに、畳の上でも長時間の正座は慣れてなければ体に負荷もかかる」

「うう・・・何も言い返せませんわ」

「こんな時まで張り合おうとすんな。とりあえず、そこの石段に座れ」

 

 巧の肩を借りながら、ジンジンとする足を引きずって石段に腰掛ける。すると巧は彼女の前に膝をついて腰を下ろし、足に触れた。

 

「な、なにをるすんですの貴方は!?」

「何って、マッサージだよ。あれからやってないんだろ?それに、こうしなきゃできなねーし」

「自分でできます!」

 

 強がるセシリアをジト目で見たあと、巧はふくらはぎ辺りを軽く触れる。するとそこから走った痛みに身を震わせ、声にならない声をもらした。

 

「で、どうする?」

「・・・お願いします・・・」

 

 我ながら情けない。なんと屈辱的なことか。この程度で足を痺れさせてしまうなど、鍛錬の足りない証拠だと悔いるセシリア。その足元では、浴衣の下から伸びるすらりとした美しい白い肌の足を丹念に揉み解す巧が目に入った。ヘタに刺激しないよう優しく触れながら手を動かすその姿は、少し新鮮にも見える。真面目な表情、優しい、しなやかな手つき。

 

(・・・こう見ると、タクミも悪くないですわね・・・)

 

 と、そこでハッとなって首を振る。何をやっているんだ自分は。こんな事だから足を痺れさせて動けなくなったり、ヘンに恋路を邪魔されたりするのだと己を律する。

 

「・・・無理すんなよ」

「え?」

「アンタが俺に気を使ってくれるのは、正直嬉しいしありがたいと思ってる。でも、それで辛い事とかイヤな思いするのは御免だ。だから、そこまで気に掛けることはないぞ」

「・・・わたくしは、ただ・・・」

 

 ただ―――その先が言えなくて、黙ってしまう。言えた筈の言葉、それが何故か、不意に消えてしまう。なんて言いたかったのかわからない。今何かを伝えたかった気がしたが、それもわからない。

 

  わからない。自分の気持ちが。

 

 そのわだかまりに答えが出ないまま暫くの沈黙が続き、巧の手が足から離れることで思考が現実へと戻される。促されるままに立ち上がれば、先ほどまで続いていた痛みもすっかり消えていた。

 

「これでよし」

「あ、ありがとう・・・ございます」

「ああ。んじゃ、先に行くぞ」

 

 再びペットボトルを抱えて歩き出す。それを見て、セシリアは思わず彼を呼び止めてしまった。自分でも、ほぼ無意識の行動にどうしていいかわからず戸惑うセシリア。月明りに照らされながら、まるで止まったかのようにも思える時間が2人の間に流れる。2人とも何も言葉を発せないでいると、後ろから声がした。

 

「セシリア、枢」

 

 箒だ。手には缶ビールとペットボトルを数本持っている。ペットボトルの方は、おそらく一夏から受け取ったものだろう。それをみて巧が口を開いた。

 

「織斑は一緒じゃないのか?」

「一夏なら、さっき旅館の従業員の人に囲まれてサインをねだられてたぞ」

 

 これまた不機嫌そうに言う箒。そういえば有名人的な扱いをされてもおかしくない境遇だったなと思い、自分もその類に含まれるということを今更になって思い出す。が、それも彼と比べたら大したことではないかとすぐに脳内から消して「そうか」と返した。

 

「それよりもセシリア、いきなりいなくなるからビックリしたぞ」

「箒さんが置いていったのではありませんか」

「あー、こんなとこで面倒事おこすな。ほら行くぞ」

 

 そう言って先陣をきる巧に渋々ついて行く二人。

 

「そういえば篠ノ之。アンタ彼奴に水着見せたのか?」

「い・・・いや、それは・・・」

「見せてねーんだな」

 

 やれやれ、と溜息を吐く巧。なんのことだと首を傾げるセシリアに、巧は説明する。

 

「織斑に見せたくって、水着を新調したんだ。相談を持ち掛けられたから選んだはいいが・・・結果はこのザマだ」

「い、いざとなるとだな―――」

「言い訳はいい。ま、アンタの性格上予想はしてたがまさかな・・・」

 

 今度は落胆。そして。

 

「前にも言っただろ。遠回りばかりしていると、いつか言いたいことも言えないくらいに距離が離れていく。だから、躊躇うなってな」

「そうは言っても、できないのだからしかたないだろう」

「めんどくせーな・・・いいか?乙女心だなんだって言ってたら絶対にタイミング逃す。だから、こういうのは自分の気持ちをストレートに伝えればいい。偽らず、飾らず、ただ真っ直ぐに」

 

 真っ直ぐに・・・気持ちを伝える・・・。その言葉に、セシリアはハッとなる。この胸の想いを、ただ真っ直ぐに伝える。

 

  ―――そうだ、わたくしは・・・。

 

 そう思ったセシリアの行動は早かった。

 

「タクミ」

「ンだよ、今このヘタレに説教を―――」

「好きです」

「・・・・・・ハ?」

「貴方の事が・・・好きです」

「・・・・セシリア・・・・?」

 

 頬を撫でる風は、少し冷たく少女の髪を揺らした。




グダグダになってしまったかもしれないまさかのセシリア告白回。もっと雰囲気を出したかったのに構成力が無いためこの結果に

非力なわたしを(以下略
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