IS学園の劣等生   作:tubaki7

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第四話 苦労

正直なところ、母親と過ごした記憶はもうほとんど覚えていない。写真ではみたことある筈の顔も、もうしばらく見てないから思い出そうとすると霞ががってみえるし、声もあやふやだ。親父が言うには事故のショックで記憶もそれなりにダメージを受けているらしいが本当のところはわからない。人間の記憶ほど宛てにできないものはないと、個人的にはおもっているからだ。

 

 さっきからフラッシュバックする映像の数々。走馬灯―――――じゃないな。ISを身に纏っていてそれはない。最悪骨折とかしてるだろうけど人命保護を最優先とするよう基礎設定されている絶対防御のシステムがあるのだから。まぁ、それでもあの高さから落っこちたのだから腕の骨の二、三本くらいは逝ってるな。

 

そんなことを考えつつも冷静によぎるビジョンの一つ一つを見ていく。小さかった時のこと、事故のこと、そして学園に来るまでのこと。今こうして思い返してみれば小中高と友達なんて呼べる奴がいなかったなと思う。まぁそりゃこんな性格してりゃこうもなるか。

 

 そして、意識がゆっくりと浮上してくる。足の先・・・・動く。手の指先・・・・問題なし。五体満足なのと、外傷がないのはわかった。目を開ければ真っ白い天井と鼻をつく薬品の臭い、それに混じってなにやら甘い・・・・強いて言うと石鹸のような匂いだ。目を開ければ照明の光に目を開けらうのも躊躇われる。そして出た一言が――――

 

 

「・・・・知らない天井・・・・でもないか」

 

「起きたか」

 

 

首を90度横に回せば椅子に腰かけたポニーテールが見える。

 

 

「まぁ、な。結果は?」

 

「当然敗北だ。そこまでは覚えているだろ?」

 

「あぁ。で、代表はオルコットか・・・・」

 

 

ま、そうなるわな。それにぽっと出の新人が、しかもISに触れてまだ間もない人間が代表候補生に勝つなんてトンデモをやらかしたらそれこそ喧嘩ってレベルの話じゃなくなってくるかもしれないし。残念だったな織斑。まぁこれでよか―――――

 

 

「いや、一夏に決定した」

 

「・・・・は?」

 

 

・・・・まだ起きて間もない。きっと聴覚がまだボケてるんだろう。そんな訳でもう一度聞き返すと同じ返答が返ってきたので頭を抱える。アイツ、まさかホントに勝ちやがったのか・・・・。

 

 

「安心しろ、負けた」

 

「は?じゃぁますますなんでよ」

 

「オルコットが――――セシリアが、一夏に代表の座を譲り渡したのだ。なんでも、経験させた方がこの先もっと伸びるかもしれない。だそうだ」

 

 

そう不満げに切ったリンゴをかじる篠ノ之。それ俺の見舞い品じゃね?

 

 

「そーかい・・・・ま、どうでもいいか」

 

「む…やけに無関心だな」

 

「元々俺はアイツに一泡吹かせられればそれでよかったし、一発入れたしな。代表の座なんて端っから興味はねーよ」

 

「そうか。まぁ、その、なんだ。無事で何よりだ」

 

 

ぶっきらぼうに言う篠ノ之。つかなんでいんの此奴?

 

 

「保健委員の私も面倒なことにならなくて済んで一安心だ」

 

 

うんうんって頷いてっけどそれ保健委員としてどうなのさ。つか今サラッと酷い事言われた気がする。意外と容赦ないなこの娘は。

 

 

「あ、そ」

 

 

もうツッコむ気力もないのでとりあえず起きて丁寧に畳まれてあった上着を手に取る。ISスーツのままじゃ寒いし。

 

 

「…あのさ」

 

「なんだ?」

 

「そのリンゴうまいのはわかるよ、たぶんいいトコのだろうし。匂いからしてそうなんだろうしな。でもさ、俺いまから着替えたいんだけどそれ見ながらアンタ食べる気?」

 

「・・・・失礼する」

 

 

気づけよ。つか、リンゴ食べるのやめい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の劣等生 ~第四話 苦労~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「枢、もう起きて平気なのか?」

 

 

教室に戻った俺を出迎えたのは女子達の刺すような視線と織斑のそんな一言だった。つかなんで俺睨まれてんの?

 

 

「あぁ・・・・つか、この視線はなに」

 

「えっとだな、それは――――」

 

「待っていましたわよタクミ!」

 

 

と、そこへ現れたのはガイ立ち――――いや、所謂仁王立ちをするセシリア・オルコットだった。つかなんで呼び捨てよ。

 

 

「相っ変わらず喧しいなァ…こっちとら気絶から目ェ覚ましたばっかなんだから大声出すなよ…」

 

「あ、それはすみません…って、そうではありませんわ!」

 

 

此奴人の言う事聞いてんのか?・・・・いや、聞いてねーなうん。

 

 

「ンだよ」

 

「貴方に少々お話があります。ついてらっしゃいな」

 

 

いやもう少しで休み時間終わり・・・・ってやっぱり聞いてない。

 

 

「不幸だ…」

 

 

 そうやって連れてこられたのは屋上。幸い一年の教室は屋上へ行くには最短のルートなのでそう時間は有さない。ドアを開ければ整備された芝生とベンチ、それからイベントポップを示す三角錐のホロウィンドウが展開され、各学年、クラスごとの次の授業の科目や休み時間の残りなどが表示されている。

 

整備しつくされた屋上。中学時代の殺風景なコンクリートとはエラい違いだ。

 

 

「・・・・んで、こんなトコに連れて来てなんか用?告白・・・・って、雰囲気じゃねーよなどう考えても」

 

「当たり前です。なぜわたくしがそのようなことしなければならないんですか」

 

「ハイハイ、そーですね。で、本題は?」

 

 

メンドクサイのでとっとと終わらせてほしい。そう思って多少邪険に扱っていると、オルコットが急に頭を下げた。角度90度、キッチリした謝罪の角度でのお辞儀だ。

 

 

「いつぞやのことは申し訳ありませんでした。わたくしとしたことが、代表候補生としての自覚はおろか、ノブリス・オブ・ルーシュの精神にそぐわない軽率かつ愚かな振る舞いをしてしまい――――」

 

 

あ~…これ長いわ、絶対長いわ。

 

 

「あ~いい、そういうのいらないから」

 

「ですが、それでは・・・・」

 

「いや別に俺そこまでこの国に愛着あるわけじゃねーし、悪口言われたとことで痛くも痒くもないしさ。というか、いいトコだらけってわけじゃないしな。だからそれに関しての謝罪はノーサンキューで」

 

 

不思議そうに首を傾げるオルコット。・・・・くそ、少しかわいいとか思っちまった。なんか悔しい。

 

 

「では、なぜ貴方はあの時あのような?」

 

「単純にうるさかったのと、そうなりゃとりあえず収まるだろうと思って」

 

「なるほど。一枚喰わされたわけですか」

 

「まぁ、代償がコレだったけどな」

 

 

そう苦笑いして額に巻かれた包帯を指さす。どうやら落ちた衝撃で頭を打ったらしい。ちなみにこの包帯はさっきドヤ顔してた篠ノ之ではなく保健医である小野遥先生だ。

 

 

「痛くないのですか?」

 

「あぁ、まったく。正直包帯もいらないんだけどえっと・・・・彼奴、誰だっけ、あのホラ、俺と同室の・・・」

 

「…ヒカリノさん、です」

 

「そう、ソイツ。ソイツがしとけってうるさくってさ。だから」

 

 

イカン、とうとう記憶の方までキタかこりゃ。

 

 

「そうだったのですね・・・・。それにしてもあの時は驚きました、まさかあんな無茶な戦法でいどんでくるとは」

 

「ん?何が」

 

「ISでの肉弾戦もそうですが、貴方がわたくしに一発拳を入れるまでのことです」

 

 

えっと・・・・あぁ、ミサイル真正面から殴り落としたやつか。

 

 

「後から聞いたことですが、腕に酷い火傷を負ったそうではないですか」

 

「え、そうだっけ?」

 

 

そう思いながら制服の袖をまくってみる。すると右腕が青く、そして赤くなっていた。どうやら本当に火傷してたらしい。

 

 

「重症ではありませんの!どうして安静にしてないのですか」

 

「いや、そう言われても俺痛覚ないし・・・・」

 

「・・・・はい?」

 

「あ、そういや言ってなかったっけ。俺、小さい頃ちょっとした事故にあってさ。それで脳に後遺症が出たらしくて痛覚がないんだ」

 

 

・・・・あ~。だからこの話題は出したくなかったんだよ。でもこれ言わないと説明つかないしな・・・・仕方ないか。

 

 

「そ、れは…」

 

「別にアンタが気にするこっちゃないだろ。それにそういう反応されるとこっちが困る」

 

「ですが・・・・」

 

「・・・・なら、今日俺の部屋来てくれ。あ、織斑と篠ノ之も誘ってくれると助かる」

 

「そんなことでよろしんですの?」

 

「あぁ。ちょーど新作のケーキを作ろうかと思ってて味見する奴が欲しかったんだ。それでチャラ、いいな?」

 

 

俺の提案に頷くオルコット。なんだ、案外素直でいいトコあんじゃんコイツ。

 

 

「よし、じゃぁ決定な。じゃぁ戻ろうぜ、いい加減にしないとあの鬼教師の鉄槌がくだる」

 

「フフ、そうですわね」

 

 

 

 

 

 

 

side:out

 

 

 

 

 

 

side:セシリア

 

初めての胸の高鳴り。あの時、あの攻撃を受けてから自分の中で芽生えた知らない感覚は今もまだ強く根付いている。苦手だった、ひいては嫌いですらあった男性との会話も、なぜかこの人達とは違った感覚になる。

 

これは・・・・いったいなんなのでしょう?

 

もしや、これがいわゆる恋・・・・というものなのでしょうか?いかんせん初めての経験ですのでわたくし事なのにさっぱり理解できません。ただ・・・・名前を、特にあの織斑一夏・・・・さんを口にした時の高鳴りが、それに近いかもしれないです。

 

ですが…この、タクミ・カナメという男性はどこか違う気がするのです。具体的に何がと訊かれると返答に困ってしまいますが、でも今は〝何かが違う〟としか形容ができません。

 

この気持ちは・・・・恋?それとも・・・・――――

 

 

「お~いなにやてんだ?」

 

「あ、はい。というか、レディを差し置いて勝手に行くとはなにごとです!」

 

「だぁ~わかったからその甲高い声やめてくれ。痛みはなくても他の感覚はあるんだから」

 

「失ッ礼ですわね!こう見えても国営放送のコンクールでは賞を取ったこともあるんですのよ!?」

 

「ブービーか?」

 

「貴方という人はァ・・・・!こら、待ちなさい!」

 

 

・・・・恋、ではなさそうですわね、おそらく。

 

それにしても、殿方がケーキをですか。かなり意外でしたが、どのようなものなのでしょう?

 

柄にもなく、心が少し弾んでしまうのは乙女の性、というものですわね、きっと。




~第四話幻のエピローグ~

†巧&ほのか自室にて†

一「うまい!こんなうまいケーキ喰ったの初めてだぞ!スゲーな枢!」

箒「う、うむ。これは中々…」

セ「クッ、これは認めざるを得ませんわね…」

巧「喜んでくれたみたいで何よりだ。んで、感想は?」

ほ「では、私が代表して皆さんの意見をまとめたことを言いますね」

巧「あぁ」

ほ「巧さん、嫁になりませんか!?」

巧「誰が嫁だ。つか織斑、おまえちょっと話があるから表にでろ」

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