IS学園の劣等生   作:tubaki7

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第六話 結果と経過

 

「それでは、織斑君のクラス代表就任を祝いまして――――」

 

「「「「かんぱーいっ!」」」」

 

 

そんな賑やかな声が食堂に響く。今回は担任である織斑先生他諸々の許可もあり一組+αで壮大に織斑のクラス代表就任を祝おうということで集まっている。

 

 さて。もうおわかりなように俺は凰との対戦にまんまと敗北して強制的にこの場に居合わせているわけだが、ものの見事に俺の周囲には誰もいない。――――いや、いた、ただ一人。

 

 

「巧さん巧さん、この焼きそばめちゃくちゃ美味しいですよ!?ンン、このから揚げも中々・・・・」

 

 

目の前で皿いっぱいのパーティ料理をバクバクと平らげていく同居人(名前は忘れた)。毎度ながら思うがコイツの胃袋は宇宙かなんかにつながってるんじゃないかなと思う。

 

 

「そんなに油ものばっかり喰ってっと腹壊すか太るかするぞ。野菜も採れ」

 

「大丈夫です!栄養は全部胸(ここ)に行きますので!」

 

「それを男の俺に言うのはどうかと思うぞ」

 

 

えへんとご自慢の胸を張る同居人。ぶっちゃけた話もう見慣れた。というか、コイツの私生活姿を垣間見てるからもうなんの気も起きないといった方が正しいか。何れにしてもかなりご立派だとは思うが俺には通じんぞそのネタ。

 

 

「どこにもいないと思って探してみればここにいたのか」

 

 

同居人とそんな会話をしていると上手く輪を抜け出してきた今回の主役、織斑がジュースの入ったコップ片手にやってきた。ちなみにオルコットは自慢気に代表争いの模様を美化しまくって語っており、篠ノ之はというと剣道部仲間と談笑している。・・・・表情は硬いが。

 

 

「主役が抜けてきていいのか?」

 

「たまには外の空気も吸いたくなるさ」

 

 

ここ、外じゃなくてただの壁際なんですけどネ。そんなことを言うのも野暮なので「そうか」と短く返す。軽くコップのオレンジジュースを傾けて差し出すと、織斑も同様に出してくる。カツン、と音を鳴らして中身を煽れば口の中にオレンジ特有の甘酸っぱさが広がる。果汁100%とはわかってるなと食堂スタッフに関心しつつ喉を潤した。

 

 

「鈴と戦ったんだって?」

 

 

もう噂が広まってたのか。女子の情報ネットワークの速さには某大手企業もびっくりだろう。

 

 

「あぁ。結果はボロ負け、手も足も出なかった。噂は本物だ」

 

「そうか…」

 

 

感想を聞いて何やら思いふける織斑。

 

 

「なら、安心した」

 

 

その後にそんなことをつぶやいた。驚くことにもう此奴は先を見据えている。さすがはあの姉にしてこの弟ありといったところか。まぁ感想を聞かされてしょんぼりされるよりは100倍マシだが。

 

 

「勝てる見込みはあると思うか?」

 

「あんだけ啖呵きっといてさっそく弱音か?俺の関心返せ」

 

「言ってくれるなよ。俺だってそれなりに弱気な時だってる」

 

「説得力がないな。・・・・あるとすれば、そうだな」

 

 

ふぅ、と息をついて頭の中で今日収集したできうる限りの凰の情報を整理しながら呟く。

 

 

「凰の機体はオルコットと同じ第三世代、しかもパワー特化で燃費も悪くない。対して白式はスピード特化といっても過言じゃないが、だからと言ってパワーで劣っているわけじゃない。正直五分五分だ。けどそりゃアンタが白式の特性をよく理解してこその結果と言っていい。まぁ何が言いたいかというと――――」

 

「今の織斑さんが勝てる確率は限りなく0に近い、と」

 

 

いつの間にか聞いていた同居人がゴクンと口の中のものを飲み込んでからそう繋ぐ。それを聞いて織斑ががっくりと肩を落とすのが横目で見えたがコイツさっきの自信はどこ行ったんだ?

 

 

「…まぁ、なるようになるさ」

 

「そう…だな。オシ、なんか何とかなりそうな気ぃしてきた!」

 

 

へこんだり前向きになったり。ホント忙しい奴だなコイツ。でも、見ている分には飽きないか。

 

 

「頑張れよ代表。それなりに応援してやる」

 

「おう、頼むぜ」

 

 

こういうノリも、悪くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の劣等生 ~第六話 結果と経過~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば」

 

 

聞こえてくる騒がしい歓声に交じってそんな風に切り出したのはオルコットだ。なにか思い出したように呟く。

 

 

「タクミは二組の凰さんと戦ったのでしたわね。実力のほどはどうでしたの?」

 

「・・・昨日の夜話しただろ。そうまでして傷口を抉りたいかアンタ。やっぱ性格悪いな」

 

「~ッ!・・・コホン、このわたくしを出し抜いたのです。単純なことだったとはいえそれは紛れもない事実。頭のキレ、というよりは悪知恵ですわね。それが常人よりも少しは働く貴方が、なんの攻略法もなしに一夏さんを送り出すとは思えませんもの」

 

 

此奴…褒めてんのか貶してんのかどっちだ。この性格ホントどうにかなんねぇかな…織斑と俺とでなんか態度違くね?

 

 

「…凰の機体、〝甲龍〟はパワーバランスの取れたイイ機体だ。スペックもパイロットの技術も申し分ない。中でも厄介なのはそれを使いこなす凰の腕と・・・・」

 

 

モニターの中ではすでに試合が始まっている。始めに動いたのは凰の方だ。

 

 

「あのユニットだ」

 

 

 

 

 

 

side:out

 

 

 

 

 

 

side:一夏

 

 

白式が警告を鳴らした。思考が答えをはじき出すよりも躰が勝手に動く。

 

 

――――アンタのいいとこは機械もビックリして腰抜かすほどの直感だ。当たる当たらないに関わらずそれに合わせて動いた方がいい。余計なことは考えるな

 

 

・・・・今になって思い返してみればアドバイスしてるようでバカにしてるよな、アイツ。でもそのおかげでさっきの避けられたんだから蔑ろにもできねぇ・・・・うーん。

 

 

「ちょっと!何試合中によそ見してんのよアンタは!?」

 

 

おっといけねぇ。今は試合中だったな。仕返し云々はその後だ。

 

 

「悪い。でも、ヒヤッとしたぜさっきの」

 

 

さすがに初見で躱すのは絶対無理だ。枢からの助言がなかったら確実にくらってたぜ。

 

 

「・・・・ふ~ん」

 

 

何か探り当てたような顔でそう呟く鈴。その眼はしっかりと俺が出てきた東側のピットを見ていた。こりゃバレたな。合掌、ドサクサに紛れて俺も鈴の仕返しに参加しようか?

 

・・・・ん?待てよ。ってことは鈴の奴、俺のことは知らない・・・・それなら、〝アレ〟も知られてないってことになるよな?

 

 

(この勝負…まだ勝機はある!)

 

 

自然と雪片を握る手に力がこもる。落ち着け俺、頭はクール、心はホットにって枢も言ってたじゃねーか。少しシャクだけど、こういう時は彼奴のアドバイスにはホント助けられる。

 

やれるだけのことは全てやってきた。箒から剣道の感を取り戻させてもらって、セシリアから操縦技術のノウハウを教えてもらって・・・・まぁ、二人とも細かすぎたり大雑把すぎたりでイマイチよくわかんなかったケド。

 

そして、枢からは貴重なアドバイス。口は悪いし見かけもなんか不良っぽいしなんかとっつき難いけど、でも頼りになるイイ奴だ。

 

・・・・それに、雪片(コレ)を持ってて一回戦負けなんて成績は織斑千冬の弟として、なによりあの人の生徒として!

 

 

「・・・・鈴」

 

「アによ?」

 

「負けないぜ」

 

「…フン、かかってきなさいよ。ま、勝つのは当然アタシだけどねェ!」

 

 

絶対に、勝つッ!!

 

 

 

 

 

 

 

side:out

 

 

 

 

 

 

 

 

side:巧

 

 

「凄い…凄いですよ織斑君!」

 

「・・・・ま、上々というにはまだ動きに無駄があるがな」

 

 

辛口評価しながらも弟の奮闘ぶりを見て少し口角が緩んでるあたりこの人絶対ブラコンだと俺の中で位置づけておく。

 

でも彼女の言うことも頷ける。日が浅いから動きに無駄があるのは妥協するとしてもこの短期間であそこまで動けるのだから大した成長だ。

 

 

「そ、そこだ一夏!――――えぇい、そここう、ズバッとだズバッと!」

 

「あぁ、そうではありません!クイックターンを利用してからのカウンターを・・・・そうです!空気抵抗を利用して――――」

 

 

・・・・この二人に教わっててよくまぁあそこまでできたもんだ。俺だったら絶対途中から自分だけでやってるぞ。

 

 

 

「おやおや~、嫉妬ですかぁ?巧さん」

 

「うるせぇ」

 

 

正直、ああいうのを〝才能〟とかって言うだろうな。

 

 

「・・・・ンだよ」

 

「今巧さんの思ってること当ててあげましょうか?」

 

 

ニヤリと口角をゆがめる同居人。

 

 

「アイツがここまで動けるようになったのは元々の潜在能力、才能のおかげもあるんだろうな。俺がアドバイスしなくてもアレを見切ることができた・・・・劣等生の俺には到底無理な芸当だな―――――違いますか?」

 

「アホ」

 

「あだっ!?」

 

「…まぁ、思ってないこともない。けど、違う」

 

「どういうことです?」

 

「彼奴に劣ったとは思ってない。・・・・まだ」

 

 

そう、世の中才能が全てじゃない。努力次第でそんなモンは幾らでも――――

 

 

(…って、何をやってんだ俺は)

 

 

少し、関わりすぎているのかもしれない。こんな熱くなってどうすんだ。俺はただナァナァでこの三年間を何事もなく終えればそれでいい。

 

それでいい・・・・筈なんだ。

 

 

「――――ッ、織斑先生!」

 

「どうした?」

 

「学園の空域内に正体不明の熱源が侵入したとの情報が!」

 

 

管制室内の空気が一瞬にして張りつめたものに変わる。状況を理解している教員二人の顔付が先ほどのものとは違い、険しいものへと変わっていた。小声ではあるものの、近くにいた俺と同居人はしっかりとそれを聞き取ることができた。

 

 

正体不明の熱源――――?

 

 

 そして、その数分後。アリーナが一瞬にして地獄絵図と化した――――。

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