Blue/SOULS   作:文才の無い本の虫

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第1話 / 盾があれば…

 

 

 

 

 

 

ガ――――――――――

 

 

 

 

 

「・・・・・先生、起きて下さい」

 

 

凛とした鋭い――()()()()()()()声が聞こえる。

 

 

「先生!!」

 

 

目を開き、()()()()()()声の主を見る。

 

白い衣装に青いネクタイ。

 

そして、尖った耳と頭上に浮かぶ光輪。

 

 

ああ、成る程。

 

此処が【キヴォトス】の北の不死院か。

 

久方振りの死に戻りの感覚。

 

だが・・・・・思いの外、悪く無いものだ。

 

 

「ふむ・・・・・君は?」

 

 

その声の主である少女――気が狂っていなければ七神リン――に一周目と同じ様に問う。

 

すると彼女は記憶と同じ様に少し瞬きをした後、答えた。

 

 

「私は七神リン、学園都市【キヴォトス】の連邦生徒会所属の幹部です・・・・・そして貴方はおそらく、私達が個々に呼び出した先生・・・・・の様ですが」

 

 

一周目をなぞる様にリンの話を聞きながら、状況を確認する。

 

死ぬ前と装備は変わっておらず、亡者化も起きていない。

 

【キヴォトス】だからか?

 

それにしても・・・・・あの『災厄の狐』、だったか。

 

一発で即死とは・・・・・。

 

避ける以外の対策が無い。

 

せめて、盾が使えれば違ったのだろうが。

 

無いものを強請ってもしょうが無い。

 

再び挑むだけだ。

 

 

「先生?大丈夫ですか?」

 

 

「ああ。少し考えていた」

 

 

それから、出来るだけ前と同じ様に行動をなぞっていく。

 

少女達に一礼し、陸路で『連邦捜査部S.C.H.A.L.E』のビルに向かう。

 

道中は指揮などと呼べるものではないが、状況を俯瞰し、少女達に前衛、中衛、後衛と分け、指示を出す。

 

 

「『災厄の狐』の撤退を確認しました!!」

 

 

「コレが、先生の力・・・・・?」

 

 

戦闘指揮も行う『先生』とは一体・・・・・。

 

まあ良い。

 

 

そうして、『災厄の狐』の一度目の襲撃を退け、ようやく目的地に着いた。

 

少女達を外に待たせ、警戒を怠らず、ビルの中に入る。

 

 

さて・・・・・ここからが分水嶺だ。

 

 

『霧の指輪』で気配を、『佇む竜印の指輪』で音を消し、引き抜いた『プリシラの短剣』を構えながら降りていく。

 

前回は扉を開けた瞬間に発砲され、即死した。

 

この白いロングコートも多少の防御性能はある様だが、頭部に喰らっては元も子もない。

 

油断していた・・・・・少々慢心が在ったのかもしれない。

 

 

聞き耳を立てる。

 

扉越し故に、少し聞き取りづらいが、艶やかさのある声が聞こえる。

 

 

「うーん・・・・・これが一体何なのか、全く分かりませんね。爆発しても困りますし・・・・・」

 

 

やはり前回と同じ。

 

ならば行動パターンの一つは回避出来る。

 

 

向こうから射線が通らないように扉の横に隠れながら素早く扉を開く。

 

 

「!!」

 

 

カンッ

 

 

丁度頭の高さを銃弾が通過して行く。

 

この速さは、発射されてからでは避けられそうにはない。

 

 

「何方かわかりませんが・・・・・姿を見せたらどうですか?」

 

 

律儀に姿を見せる必要は無い。

 

巨人墓地のパッチの様に卑怯さが勝つ時もある。

 

 

頼みの綱は、『プリシラの短剣』だ。

 

あの光輪――ヘイローを保っている者はすべからく堅い。

 

故に出来るだけ素早く接近し、瞬間的にダメージを叩き込むしか無い。

 

 

・・・・・今だ。

 

 

走り出し、接近する。

 

瞬間、『災厄の狐』は銃を此方に向けた。

 

 

「其処ですね?」

 

 

引き金が引かれる数瞬前に横にローリング。

 

少し横を銃弾が通過する。

 

彼我の距離は1メートルも無い。

 

 

「ちっ、串刺しになってしまいなさい!!」

 

 

『災厄の狐』が動き出す。

 

銃の先に着いた短剣で刺し殺すつもりか。

 

流石のスピードと言える。

 

だが、この場面で長物での刺突とは――甘い。

 

 

僅かに重心を下げ、迫る刃を見極め、左手の甲で――弾く(パリィ)!!

 

 

「な?!」

 

 

もう息を潜める必要は無い。

 

敵を恐れるな!!

 

歯を食いしばれ!!

 

 

「――!!」

 

 

「ぐっ!!」

 

 

体勢が崩れた相手に、すかさず舞う様な回転斬りを叩き込む。

 

鈍い手応えだが、確実に効いている。

 

 

怯み――長物――取った!!

 

 

「こんな、所でッ!!」

 

 

苦し紛れの突きを回転斬りの勢いで躱し、その回転を乗せた回し蹴りで『災厄の狐』を横の壁に叩き付けた。

 

これで暫くは起きれまい。

 

 

カラン、カラン

 

 

「・・・・・うん?」

 

 

相手を視界に入れたまま下を見る。

 

其処には、『上級騎士の兜』のフェイスガードが床に落ちていた。

 

突きを避け切れていなかったのだろう。

 

 

少し、疲労状態や状況を鑑みる。

 

殺す事は出来る。

 

だが、あの水色の髪の少女から託された使命は・・・・・。

 

 

「クックック・・・・・潮時、か」

 

 

苦笑気味に、笑う。

 

すると横の壁にもたれ掛かりながら立ち上がった『災厄の狐』が言う。

 

狐の面は外れ、少女らしい端麗な顔を歪めて此方を見ていた。

 

 

「ゴホッ・・・・・何が、可笑しいのですか」

 

 

「俺は、『先生』だ。『災厄の狐(貴様)』を殺す事が使命では無い」

 

 

ジェスチャーで部屋の外を指す。

 

 

「・・・・・犯罪者である私を、見逃すと?」

 

 

「ああ。その通りだ、『災厄の狐』。俺の気が変わらぬ内に、疾く去るが良い」

 

 

「・・・・・」

 

 

沈黙が間を支配する。

 

暫くして、『災厄の狐』が口を開いた。

 

 

「ワカモ・・・・・狐坂ワカモです。覚えて置いて・・・・・・・・・・いえ、何時か覚えさせてあげます」

 

 

そう言う『災厄の狐』――ワカモは挑戦者の表情をしていた。

 

狂暴さや闘争心が過不足無く剥き出しにされた良い表情だ。

 

 

「クックック・・・・・ああ、期待して待たせてもらおう」

 

 

すると、ワカモは仮面を被り直す前に、少し微笑んだ。

 

今度は少女らしい、可愛らしい表情だった。

 

 

「では、また何時か・・・・・()()()

 

 

そう言い残し、ワカモは去って行った。

 

思わず、独り言が溢れた。

 

 

「少し不謹慎だが・・・・・“使命”以外の楽しみが増えたな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◢◤◢◤◢◤◢◤

 

 

 

 

 

ワカモが去り、『上級騎士の兜』の修理が終わってから暫くして、リンが地下室にやって来た。

 

そしてリンは渡すものがあると言って近くのデスクの引き出しから、何かを取り出した。

 

 

「受け取って下さい、先生。これが、連邦生徒会長が先生に残した物。『シッテムの箱』です」

 

 

リンから白い板――()()()()()()()タブレットと言うらしい――を受け取る。

 

随分前に感じる、リンの説明を思い出した。

 

このタブレットと己に、この学園都市の命運が賭かっているとは不思議な物だ。

 

 

「私は少し離れていますね」

 

 

そう言って部屋の外に出て行ったリンを見送り、電源ボタンを押す。

 

すると画面に光が付き、『シッテムの箱』は文字を羅列していく。

 

 

[Connecting to the Crate of Shittim…]

 

[システム接続パスワードを入力してください。]

 

 

その文字を見て、少し悩む。

 

鍵か。

 

 

「うーむ・・・・・うん?」

 

 

――我々は望む、ジェリコの嘆きを

 

――我々は覚えている、七つの古則を

 

 

ふと脳裏に浮かんだ言葉。

 

ジェリコ、七つの古則・・・・・どれも覚えの無い言葉。

 

だが、何故かしっくりとくる。

 

そう思った時、既に指は動いていた。

 

そして、文字が次々に羅列されて行く。

 

 

[我々は望む、ジェリコの嘆きを]

 

[我々は覚えている、七つの古則を]

 

[接続パスワード承認]

 

[生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムをA.R.O.N.Aに移行]

 

[メインシステム、通常モードを起動します]

 

[『シッテムの箱』へようこそ、先生]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 









『シャーレのロングコート』

『連邦捜査部S.C.H.A.L.E(シャーレ)
『先生』の白いロングコート
鮮やかな青で『連邦生徒会』の紋章が描かれている

極めて高い縫製技術と特殊繊維による逸品であり
防弾性だけでなく静穏性、隠密性にも優れている





『シッテムの箱』

連邦生徒会長が遺したオーパーツ
白いタブレットの形をしており
また特殊な盾ともなる

全てを挫かれ、折れてしまった彼女は
自らの血肉を削り、器を創り
運命を打破する鍵となる幼い神性を見出した

彼に託す為に血肉を削った彼女は
果して、本当に折れていたのだろうか





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