Blue/SOULS   作:文才の無い本の虫

4 / 5
第3話 / YOU DIED

 

 

 

 

 

S.C.H.A.L.E(シャーレ)ビル奪還から一ヶ月の時が過ぎた。

 

その間、S.C.H.A.L.E(シャーレ)は周辺組織との折衝、連邦生徒会への苦情対応、ある程度必要性の高い案件の為にフル稼働していた。

 

電子メール等の精査をA.R.O.N.Aに頼んで尚、只人なら軽く過労死する仕事量を己の限界まで上げ切った能力――主に【体力】と【持久】に物を言わせて誤魔化している状況。

 

 

「こんな所で無駄だと思っていた【理力】が役に立つとはな・・・・・」

 

 

精査を終えた書類を積み上げ、独りぼやく。

 

落第生への対応等の生徒の人生が関わる案件が来ていなかったのは未だS.C.H.A.L.E(シャーレ)の【先生】――己が試されている段階だからだろう。

 

そう言えばとS.C.H.A.L.E(シャーレ)ビル奪還を手助けしてくれた少女達を思い浮かべる。

 

 

「結局、彼女達への挨拶にも行けていないな」

 

 

すると『シッテムの箱』の画面が付き、A.R.O.N.Aが顔を覗かせた。

 

 

『報告。メールが追加で182件、手紙や書類が二箱来るそうです。この調子では当分先になりますね』

 

 

「そうか・・・・・行くときは土産の一つでも持参しなければ連邦捜査部としても面目が立たんな」

 

 

そうやってA.R.O.N.Aと話しているとS.C.H.A.L.E(シャーレ)の部室に金の長髪の連邦生徒会の生徒――岩櫃アユムが荷台を押して入って来た。

 

勿論荷台の上にはA.R.O.N.Aが言っていた手紙や書類が入ったダンボールが積まれている。

 

その量にか、少し申し訳無さそうにアユムは言う。

 

 

「こんにちは、先生。こちらの件もお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

 

アユムはこの一ヶ月、書類等を運ぶ為にS.C.H.A.L.E(シャーレ)と連邦生徒会を往復してくれている。

 

取りに越させるという方法もあるのに、申し訳無いからと荷台を押している。

 

彼女も仕事が忙しいだろうに。

 

 

そんな彼女に対し頷く。

 

 

「了解した」

 

 

それはそうとして、だ。

 

 

「アユム、コーヒーを淹れる。少し休んでいくと良い」

 

 

「え、申し訳無いです」

 

 

「良い。何時もの礼だ」

 

 

些か髪の状態や目の下の隈が目立つ。

 

これもまた【先生】としての役割だろう。

 

アユムをソファーに座らせ、コンビニで買った豆でコーヒーを淹れる事にする。

 

確か、フィーカと言うのだったか。

 

砂糖とミルクも一緒に出す。

 

アユムは砂糖とミルクを少しずつ加えて飲んでいた。

 

 

「はぁ・・・・・落ち着きます。先生はコーヒーを淹れるのがお上手ですね」

 

 

「それ程でも無い。ただの見様見真似だ」

 

 

フェイスガードを少し上にして何も加えていないコーヒーを流し込む。

 

 

苦みと香り。

 

初めて飲んだ時は泥水かと思ったが、案外悪く無いモノだ。

 

 

あの水色の髪の少女(連邦生徒会長)が何かをしたのか、今の己は不死人としての能力を持ち合わせたまま、食事や睡眠を必要とする身体と成っていた。

 

頻度等は只人だった時や生徒達に比べると大分緩やかではあるものの、だ。

 

睡眠欲や食欲など長らく無かったものだから煩わしくも思うが、それが人間が生きるということなのだろう。

 

 

「では、また来ます。お茶、ありがとうございました」

 

 

「ああ」

 

 

ビルの下までアユムを見送り、書類の精査に戻る。

 

ダンボールから書類を取り出し、積み上げ、戦闘中の視野を参考に書類を流し見て行く。

 

 

「子猫の捜索依頼に窓の修理依頼?連邦生徒会は何を思ってコレを此方に回したんだ?」

 

 

『電子メールにも類似したものが届いています』

 

 

意味のわからなかったり、対応優先度が低い物をダンボールに詰め、優先度が高そうな物を残していく。

 

すると、書類の間に小さめの封筒が挟まっているのを見つける。

 

 

「うん?」

 

 

『・・・・・スキャン完了。アビドス高等学校から送られてきた手紙の様です』

 

 

「ふむ・・・・・」

 

 

A.R.O.N.Aの言葉に、頭の中から知識を引きずり出す。

 

アビドス。

 

確かリンに取り寄せてもらった【キヴォトス】内の学園の資料に載っていたはず。

 

場所は・・・・・個目の棚の上から・・・・・。

 

 

「コレか」

 

 

記憶を頼りに数ある棚から、アビドス高等学校と銘打ったファイルを引き出し、ファイルを開く。

 

連邦生徒会の情報だと今は生徒数五の弱小・・・・・というか廃校寸前の学校だが、過去はマンモス校だった様だ。

 

主な問題は砂漠化による莫大な出資とその借金、か。

 

借金に関しては正式な取引の為に連邦生徒会は動けず、絡んでるのは――A.R.O.N.Aに「グレーゾーン反復横跳びが得意な企業」と称される――カイザーグループと来た。

 

連邦生徒会もアビドス高等学校も手詰まり、という訳か。

 

 

ファイルを閉じて棚に戻し、デスクに置いた手紙を取る。

 

その封を開け、中身を広げた。

 

 

「連邦捜査部の先生へ。こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。今回どうしても先生にお願いしたい事がありまして、こうしてお手紙を書きました。単刀直入に言いますと、今、私たちの学校は追い詰められています。それも、地域の暴力組織によってです。こうなってしまった事情は、かなり複雑ですが、どうやら私たちの学校の校舎が狙われているようです。今はどうにか食い止めていますが、そろそろ弾薬などの補給が底をついてしまいます。このままでは、暴力組織に学校を占領されてしまいそうな状況です。それで、今回先生にお願いできればと思いました。先生、どうか私たちの力になっていただけませんか?』

 

 

「ふむ・・・・・成る程」

 

 

定期的に暴力組織の襲撃に遭っており、物資が底を尽きそうという事か。

 

借金の事は書いていない。

 

後から言うつもりなのか、自分達だけで解決したいのか、もしくは動かなかった連邦生徒会への不信感か。

 

・・・・・一番考えられるのは最後だな。

 

 

「A.R.O.N.A、支援物資の手配をしてくれ。出来るだけ早く出発したい」

 

 

『了解』

 

 

「それと、データ上で架空の人物を作れるか?」

 

 

『可能です。名前はどうしますか?』

 

 

「そうだな・・・・・」

 

 

少し芸が無いが、初めの使命を教えてくれた彼の名前を借りようか。

 

 

「ハンドラー・・・・・ハンドラー・オスカーだ」

 

 

ハンドラー(支援者)とは・・・・・些か安直では?』

 

 

「クックック・・・・・何かあった時に相手が勝手に連想ゲームをしてくれればブラフにもなる。なぁに、それが悪巧みというものだろう?」

 

 

『成る程』

 

 

己は生徒達の思い浮かべる理想の清廉潔白な『善い大人』では無い。

 

故に、『悪い大人』なりに手を尽くさせてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◢◤◢◤◢◤◢◤

 

 

 

 

 

ザクリ、ザクリ

 

 

靴が踏んだ砂の音が耳に届く。

 

 

「・・・・・ハァ」

 

 

溜息をつきながらも砂漠を歩く。

 

前も後ろも見渡す限りの砂と、ちらほらと廃墟が広がっている。

 

 

「まさか、砂漠化がここまでとはな」

 

 

そうぼやくと左手に持っていた『シッテムの箱』からA.R.O.N.Aが言う。

 

 

『電波圏外。現在地不明です。ですが、マッピングは継続中の為、駅には戻れます。ナビゲートしますか?』

 

 

その言葉に少し考える。

 

 

「・・・・・いや、良い。アビドスの現状を知る良い機会だ。もう少し歩いてみるさ」

 

 

『了解。マッピングを継続します』

 

 

そうして暫く無言で燦々と照り付ける日の中、砂漠――正確には砂漠に飲まれた市街地だろう――を歩く。

 

あまりにも熱気が籠もるため、兜のフェイスガードを少し上げながら息をする。

 

 

ああ、太陽によるこの暑さをあの太陽の戦士ならどう言うのだろうか。

 

人々を照らすのではなく、焼き尽くさんとするこの陽光を。

 

 

そうやって歩いていると、地面が微かに揺れ、砂が舞う。

 

すかさず『プリシラの短剣』を構え、『上級騎士の兜』のフェイスガードを完全に下ろす。

 

 

『警告。地中に高エネルギー反応。接近しています』

 

 

そして、巨大な蛇が現れた。

 

 

〔――――――――――――!!!!〕

 

 

その巨蛇は天に向かって吠える。

 

聞き取れぬ十二音を。

 

その駆体は白い装甲に覆われ、冠には光輪を戴いていた。

 

まるで、神か何かの使いの様でもある。

 

そして、その巨蛇は此方を向き、顎を開く。

 

その顎に光が収束する。

 

明らかに即死する熱量。

 

慣れない足場、サイズの違い・・・・・避けるのは容易くない。

 

 

「クソッ!!」

 

 

咄嗟に『シッテムの箱』を“仕舞い”、『プリシラの短剣』でなけなしの防御姿勢を取る。

 

 

〔――――――――――――(アツィルトの光)

 

 

光が、放たれた。

 

それは避ける間もなく着弾する。

 

思わず、出てしまいそうになる苦悶の声を噛み殺す。

 

 

「グ、ゥ・・・・・」

 

 

全身が熱い。

 

火を継いだ時と比べれば、幾分かマシかも知れない。

 

光によって溶けていく兜の中、巨蛇を見据える。

 

頭は、次はどう戦うかと考え始めていた。

 

 

「巨蛇よ・・・・・必ず、この刃を突き立ててやる。待っていろ」

 

 

そして、意識は暗闇に飲まれ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()タ―――――――――

 

 

――音が、聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 









『手紙』
連邦捜査部S.C.H.A.L.E(シャーレ)に送られてきた手紙
綺麗な便箋に丁寧な字が書かれており
送り主の几帳面な性格が伺える



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。