コードギアス反逆のルルーシュ ロストカラーズ 補完編 作:アシッドレイン
ジャンル 昼ドラ(嵐の前)
注意点 ニーナ嫌いな人はスルーでよろしく。
この話は、データ破損、損失の為、話数が飛んだりします。
ご了承ください。
カチャカチャとキーボードを叩く音が響く。
「うーん…」
どうも思ったような結果にならず、私のキーボードを叩く手が止まる。
すると彼は画面に覗き込むとデータをじっと見始める。
私の顔のすぐ傍に綺麗な彼の横顔。
私は思わずその横顔に見とれてしまう。
まるで人形みたい…。
しばし画面に見入っていた彼は、そんな私に気が付かず、見とれていた私のほうを振り向くと画面の一部を指差す。
「ここのデータがおかしいんじゃないかな」
ほんの数センチの先に彼の顔。
ドキンと心臓が大きく跳ねる。
心臓…壊れそう。
一気に顔が真っ赤になるのが自分でもわかる。
そんな私の変化にきょとんとした表情を見せる彼。
慌てて私は画面のほうを向くと彼の指摘する場所をチェックし始める。
いけない、いけないっ…。
思考をデータの方に向けてざっと簡単に頭の中で計算してみる。
そんな私に彼が言葉を続ける。
「動かしている者としての意見なんだけど、ここのところがしっくりこない感じなんだ。
ここをもう少し何とかしたらもっとスムーズに動くと思うんだ」
彼の意見を入れてデータを変更してみる。
するとどうだろう。
一気にデータの不具合がなくなっていく。
「す、すごいです」
私は思わず彼のほうを見て叫んでしまう。
気がつくと無意識のうちに手なんて握ってたりする。
あ…。
我に返って慌てて真っ赤になって手を放して俯いてしまう。
彼も照れているのだろう。
視線を私から外しているが、幾分赤みの差した頬がはっきりとわかる。
「あ、ああ…。先生の教え方がいいからね」
そう言うと笑い出す。
それにつられ私もくすくすと笑う。
そして、私はつくづく感じてしまう。
私の心の中で彼の占める割合が日を負うごとに大きくなっていっていると。
いや、実際にそうなのだ。
最近は、常に彼を見ているのだから。
「あ…そうだ。ガニメデの右腕の伝達速度が遅くなっていると思うんだけどどうかな?」
そう言われ、PCですぐにチェックをしてみる。
確かに通常に比べ、5%程度落ちているのがわかる。
だが、よほどのベテランでない限り、そう簡単にわかるレベルではない。
すごい…。
思わず感嘆の声が出そうになる。
「そうですね。確かに落ちてます。でも…」
「でも?」
覗き見るように聞き返してくるライさん。
「これって…よほどナイトメアに精通してないとわかんないと思うんですけど…」
私の言葉を聞いてもどうもピンとこないみたいな彼の表情。
あ…かわいい。
思わず、そう思ってしまう。
男の子にこんな感想を持つことなんて今まででは絶対にありえなかっただろう。
うふふふ…。
思わず含み笑いをしてしまう。
ますますきょとんとなるライさん。
それがかわいく面白くて笑いが止まらない。
「ひどいなぁ…」
苦笑しつつ、文句を言うのもかわいかったりするから始末が悪い。
「ご、ごめんな…さいっ…でもぉ…くすくすくす…」
こんなに楽しく笑ったのは初めてかもしれない。
なんとか笑いが収まって、私が謝ると彼は苦笑しながらも許してくれた。
「まぁ、ニーナの笑顔が見れたから、問題ないかな」と言って…。
その言葉に真っ赤になってうつむく私。
それをニコニコしながら見ているライさん。
「あーっ…ひどいです」
思わずそういう言葉が自然と出てしまう。
「あははは…ごめん。ごめんよ。でも、これでおあいこさ」
そう言われてしまえば、反論できない。
それにそのおかげで私が知らない違う私を見つけることが出来たし…。
今まで、こういう風に文句を言ったりすることはほとんどなかった。
それが冗談や悪ふざけでの文句であっても、今まではそれがいじめに繋がったから。
ああ、ライさんといると楽しい…。
私の知らない私をどんどん見つけさせてくれる人。
そういう認識が私の中で出来上がっていく。
彼となら…私は、もっと自由に羽ばたけるかも…。
そう思ってしまう。
やっぱり、彼は私の王子様なのね。
私には彼が必要…。
だから、彼といつも一緒にいたい。
彼を独占したい。
そういう思いがどんどん強くなっていく。
ああ、これが恋なのだろうか…。
私は始めての大きな感情の波に翻弄されてしまっていた。
「…ごめんなさい。やっぱり右腕の伝達系の予備パーツないみたい」
在庫パーツのリストをチェックして彼に告げた。
「そっか…。まぁ、今でも困らないけど、予備はあったほうがいいかなぁ」
「そうね。まだ学園祭までには時間あるし、それにまだいろいろ実験もしたいし…」
私もそう言って彼の意見に賛成する。
それに一緒にナイトメアの実験をする限り、常に彼と一緒にいられるし…。
こっそりとそう考えてしまっている自分がいる。
だが、その後で彼の口から出た何気ない言葉が私をドキリとさせる。
「やっぱり、前の時みたいにカレンに案内してもらってゲットーに買いに行くしかないか…」
カレン…。
カレンといっしょに…なの?
私の心が一気に不安という名の黒雲に覆い尽くされていく。
確かに前回のときは、カレンと一緒だったかもしれない。
でも…なんで…。
その思いが口から自然と出た。
「なんでカレンなの?」
私は慌てて口を閉じたものの、もう遅い。
「彼女はああ見えてナイトメアの事詳しいんだ。だから、部品とかいろいろ吟味するときに助かるからね」
彼は、そう言った後、慌てて「今の黙っててね」と苦笑して付け加える。
私は素直にうなづくものの、彼をとられた気持ちで一杯になっていた。
彼の側にいたいのに…。
なんで邪魔が入るの…。
泣きそうになってしまう。
いつもそうだ。
何かいいことがあると必ずどんでん返しがあって、私は損をする。
そう…いつも、いつも、いつも…。
なんでそうなのよ。
私は…やっぱり…いらない人間なのかな…。
そして、今まで幸せだった気持ちが一気に坂を転げ落ちるように悲しい気持ちへと変わっていく。
もちろん、それだけではない。
惨めな…あまりにも惨めな自分を認識してしまい、諦めと虚脱感に襲われる。
普段ならそれで終わりだろう。
その場は愛想笑いをして、諦めて、後で自室で泣いて後悔をする。
いつもと同じことの繰り返し。
その…はずだった。
だが、この時、私の心に現れたもう一人の私が叫ぶ。
-それでいいの、ニーナ?諦めきれるの?彼のことを…。
その叫びは、諦めという底なし沼に落ちようとしていた私の心を引きとめた。
-彼は、あなたの王子様じゃないの?
そう思ったわ。でも…私じゃ…。
弱気になっていく私の心。
だが、もう一人の私は、それでもなお言葉を続けていく。
-せっかく見つけたあなたの王子様を何もせずあきらめていいの?
あなたの王子様がカレンと仲良くなって、付き合うようになってもいいの?
その言葉と同時に仲良く微笑んで話す彼とカレンの姿が脳裏に浮かんでくる。
いつしか見詰め合う二人。
そして、近づく顔と顔。
ゆっくりと、そうスローモーションのように近づく唇。
その瞬間、私の中で何かがハジけた。
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああっっっっっっ。
私は、心の中で絶叫する。
今まで我慢していたものを一気に出し切るかのように。
いや…。
嫌だ…。
嫌だよぉ…。
ライさんは。私の王子様なの。
カレンなんかには渡さない。
まるで呪詛のように呟く。
それを楽しそうに見ていたもう一人の私が囁く。
-そう、それでいいの。
貴方は、今まで自我を殺し我慢しすぎていた。
もう遠慮することなんてないのよ。
自分の思うように動けばいいの。
さぁ、ニーナ。貴方の心を解き放ちなさい。
その言葉の一つ一つが、ニーナの心に染み込んでいく。
そう、それは甘美な悪魔の囁きのようだった。
やっぱり、カレンと行くしかないのかな。
僕はそう思い、すこし残念な気持ちになった。
本当なら、ニーナと行きたいという気持ちがあったから。
だけど、彼女は前回のときも怖がっていたしなぁ…。
そう思っていたら、ニーナが僕の顔を見上げる。
「…ライさんさえよければですけど……私とでは駄目ですか?…」
確かに小声でたどたどしくだがはっきりとそう言うとすぐ俯いた。
耳が真っ赤になっているということは、多分、顔はもっと真っ赤に違いない。
僕は、ニーナの思いもしない提案に一瞬きょとんとしたが、すぐに肯定する事をしなかった。
「いいのかい?無理してない?」
そう聞き返す。
僕にしてみればすごくうれしい申し出だがニーナに無理してほしくない。
だが、そんな僕の問いに、彼女は顔を伏せたまま、答える。
「…うん。大丈夫」
そう答えた後、一呼吸間が空き、今度は真っ赤になった顔をまっすぐ上げて僕を見つめて言った。
「…それに、何かあってもライさんが守ってくれるって信じてるから…」
その言葉が僕の心に染み込んでいく。
あの怖がりで、ゲットーに近づくことさえ嫌がっていた彼女が、僕を信じて一緒に行こうと言ってくれている。
あの…ニーナが…。
僕は感激し、無意識のうちにニーナを抱きしめていた。
「わかった。ニーナは何があっても僕が守るよ」
そして、自然とそう答える。
「…うん」
僕の顔のすぐ側で頷くニーナ。
だが、すぐに軽い抵抗をする。
「…い、痛いよ…ライさん」
その言葉で僕にかかっていた魔法が一気に解ける。
慌てて僕はニーナを解放するとすぐに謝った。
「ご、ごめん…。つい…」
何度も頭を下げて、謝り続ける。
いくら親しくなったとはいえ、今回のことはやりすぎだと自覚してしまう。
だけど、そんな僕をくすくすと笑って見ていたニーナは、赤面しながら…それでもゆっくりとはっきり囁いた。
「…今度からは、優しくお願いします…ね」
僕は、大きく何度も頷いたのだった。