コードギアス反逆のルルーシュ ロストカラーズ 補完編 作:アシッドレイン
人は、時としてかっての過ちと向かい合わなければならない時がある。
それが偶然であれ、故意であれ、結果は同じだ。
その過ちをおこしてしまった事実は変わらない。
そして、人はそれを無視するか償うしか方法を知らない。
戦闘開始から4時間後…
地下の最下層の祭壇の扉の前でC.Cを抱えた蜃気楼が降着している。
「くぅっっっっ…こんなところでやつと鉢合わせとはっ…」
そうつぶやくとルルーシュは拳をコックピットの壁に叩きつけた。
普段の彼なら絶対に見せない行動。
相手を殺す千載一遇のチャンスを不意にしただけでなく、相手の誘いに乗りそうになった自分自身の不甲斐なさと自分自身に向けられた怒りがそうさせていた。
そして、迷うルルーシュを庇うためC.Cは…。
どんっ…。
再び壁に拳が叩きつけられる。
「くそっ…」
戦闘開始から9時間経過…
戦闘終了から4時間あまりが経っていた。
イカルガの私室で、報告書に目を通すルルーシュ。
だが集中力を欠き、ソファーで眠り続けるC.Cに何度も視線を送る。
外傷はまったくないものの、ルルーシュを庇って倒れてから眠り続けていた。
そんな時、机の内線機の呼び出し音が鳴る。
「くっ…」
出ないわけにはいかない。まだ作戦は完遂していないのだから。
「2つ緊急の報告があります。よろしいでしょうか?」
オペレーターの女性の声が響く。
「かまわん」
「はい。一つめです。ライ卿がナナリー皇女殿下の救出に成功したそうです。
現在、救出後の報道報告がTVで流されています。実行犯名は、出されませんでしたがある秘密結社の仕業と発表されました」
「ふむ、そうか…」
(よくやってくれた、ライ。お前ならやってくれると思っていたよ)
「それと…もう一つは……」
オペレーターの歯切れが悪い。
「どうしたっ、きちんと報告しないかっ」
「は・はいっ。実は、教団施設内の独房施設で保護された女性の身元がわかったのですが…」
「ふむ…」
「どうやら、その女性…コーネリア・リ・ブリタニア皇女殿下らしいのです」
「………」
「どういたしましょうか?」
「………」
しばらくの沈黙。
ルルーシュの頭の中でいろんな考えが浮かんでは消えていく。
「よし、わかった。私自ら会ってみよう」
「よろしいのですか?」
「確かに我々はブリタニアと敵対しているが、特区日本に関しては契約を交わしている間柄だ。
それに本作戦は、ブリタニアとの戦闘ではない。今回に関しては、捕虜ではなく賓客として対応するように。もっとも監視は必要だし自由に行動させるわけにはいかんがな」
よく考えれば言い訳にしか聞こえないのだが、オペレーターが判断するべき事ではない。
「わかりました。どちらのお部屋にご案内いたしましょうか?」
「司令官室に案内してくれ。そこで二人で会おう」
「ですが…」
「かまわん。ただ、廊下に見張りぐらいは用意しておけよ」
「あ…はいっ。くすっ」
念のためにと思って見張りの件は言ったのだが、オペレーターはジョークのつもりと取ったらしい。
くすくすという笑い声が漏れ、内線が切れた。
(まぁ、いい…)
仮面をかぶり、司令室に移動する為、部屋を出る。
しかし部屋から出てドアが閉まるまで、無意識にC.Cを見つめていた事にルルーシュは気づいていなかった。
先ほどとは違い、かなり丁寧な対応で部屋に案内される。
もちろん、手錠は外されていないが、それでも雲泥の差だ。
そして部屋ではユフィの仇であるゼロが待っていた。
「手錠を外し通路で待っていてくれ。話が終わったら呼ぶ」
「はい、了解しました。」
兵士が私の手錠を外すとゼロに敬礼して部屋から出て行った。
「いい度胸だな…ゼロ。いや…」
憎しみに満ちた目で相手を射抜く。
「ルルーシュっ…」
「まずは座ったらどうです…姉上」
私の視線を受け止め、そう言って座り仮面を外す。
その落ち着き払った態度が私の神経を逆なでする。
「貴様ーーっ…」
私は掴みかかるとルルーシュの胸倉を締め上げていた。
「……」
言い訳もせずされるがまま抵抗をしないルルーシュ。
「なぜだっ、なぜ抵抗しないっ、言い訳しないっ…ルルーシュっ」
「私も母やナナリーのことがありますから、姉上の怒りは私自身納得できるものです。それに姉上にはそれを行う権利がある…」
寂しそうな目が私を見ている。
その目には深い後悔と懺悔の光に満ち満ちているように見えた。
それで一気に怒りが収まっていく。
「どういうつもりだ…ルルーシュ。お前らしくないぞ」
胸倉から手を離し、ルルーシュを見下す。
「…俺らしくない…そうかもしれませんね」
自嘲気味に笑う。
その姿は、壊れやすいガラス細工を連想させた。
「くっ…」
テーブルを叩きつける。
憤りのないイライラが収まらない。
独房でV.Vが話したユフィー乱心の真相が思い出される。
「あれはね、両者にとって不幸な事故だったんだよ。偶然という産物が作り出した悲劇ってとこかな」
「どういうことだっ」
「そのまんまさ。ゼロは特区日本を受け入れてハッピーEDになるはずだったんだよ。あの時はね…」
そこまで言うとニタリと微笑むV.V。
「だけど、ギアスが暴走しちゃって、あの惨劇が始まっちゃった。だから、ゼロはああいう行動を取らざる得なくなった。それだけだよ」
まるで楽しくてしょうがない…そう言う表情のまま喋り続ける。
「そうそう、君も知っているライも実はギアス持ちだったんだ」
「なに…」
確か、ノネットの所で何度か見た事がある白銀の青年が…。
「彼も一生懸命止めようとしたみたいだね。ギアスの力を使い切ってまでね。でも無理だった…」
くっくっくっ…嫌らしく声を出して笑い始めるV.V。
「おかしいだろう…人は自分の為に力を得て行使しておきながら、その力に振り回される。なんて滑稽で笑えるんだろうね」
「信じられるかっ、貴様の言う事など…」
「くっくっくっ…信じなくても構わないよ。どう考えるかは貴方次第だし」
あの時は、ろくに信じられなかったが今のルルーシュを見ているとより真実味が増していく。
「姉上…いずれ罪に対しての罰は受けるつもりです。もちろん、償いも…」
ルルーシュが荒れる私を見ながら言葉を続ける。
「ですが…もう少しだけ時間をいただけませんか?」
「どういうつもりだっ…」
自分の手をじっと見つめるルルーシュ。
「ナナリーの為にできる事をやっておきたい」
「ふん…図々しいな」
「わかっていますよ、姉上。でも血塗られたこの手でナナリーにできる事があるのならやっておきたいんですよ」
その姿は、1年前の自分の姿のように思えた。
すべてを捨て一人飛び出し、ユフィ乱心の真実を求め、必死になって世界中を渡り歩いた自分の姿に…。
「…いいだろう。ではお前の命は一時預けておいてやる。で、私をどうするつもりだ?」
どっかりと椅子に座りルルーシュを睨みつける。
「姉上は、今日の連絡便でエリア11に戻ってもらいます。その後をどうするかはナナリーに任せます」
「いいのか?ゼロの正体がお前だと言うかもしれないのだぞ」
その問いに苦笑して答えるルルーシュ。
「姉上は、相変わらず交渉が下手ですね。そう言う事は、言わずにやったほうがいい。それにそういう言い方の時ほど姉上はやらないでしょう」
「くっ…」
見透かされている…。
こういうところが嫌いなのだ…こいつの…。
「姉上、いや、コーネリア皇女殿下。すべてが終わったら貴方にこの命、差し上げましょう。お約束します」
そう言うとルルーシュは仮面を取るとかぶり始めた。
時間が来たと言う事だろう。
「わかった。それまで死ぬなよ。お前の命は、私のものだからな」
仮面で表情は見えなかったが、ルルーシュは苦笑したように思えた。
ブザーを押し、通路の兵士を呼ぶ。
私とゼロの会談はこれで終了した。
僕はその通信を聞き驚いた。
コーネリア皇女殿下が発見され、保護されたというのだ。
そして、今日の連絡便でこちらに向かうという。
「コーネリア姉さまが見つかったんですか?」
「ああ、スザクを利用していた教団の本部に監禁されていたらしい」
「よかった…」
ホッとしたという感じのナナリー。
だが僕には不安の要素が大きかった。
ノネットさんのお世話になっていた時に何度か会った事があるが、真実を求める一途な思いは評価できるがあまりにも脆いイメージが付きまとっていた。
そう硬さゆえの柔軟性の欠如といった感じか…。
そんな彼女がゼロに救出されて戻ってくる…。
ゼロからの連絡がない分、不安は増すばかりだった。