コードギアス反逆のルルーシュ ロストカラーズ 補完編 作:アシッドレイン
中華連邦が解体され、超合衆国となって1ヶ月以上が経とうとしていた。
たが、未だに代表が決まらず、超合衆国は大きな動きもとれず不安定のままであった。
その最大の原因は、合衆国中華とその周辺の合衆国との衝突にある。
かって中華連邦時代に苦渋を舐めさせられ続けた国々が、合衆国中華中心の流れに難色を示していたためだ。
また、機会さえあれば侵攻しようとするEUやブリタニアの動きも活発になっており、そのため黒の騎士団の主力は大陸から動く事が出来なくなっていた。
「ゼロ、相談とは何だ?」
イカルガの司令室に呼ばれた藤堂は、入ってくるなりゼロが座っている机に近づいた。。
彼にしてみれば、ゼロから相談というのはめったに無い事であり、よほどの事だと思ったのだ。
「ふむ、藤堂…今の現状をどう思う?」
ゼロは椅子に座ったまま、藤堂に問いかけた。
「こう動きが取れなくてはな…。なんとか打破したいが政治に関しては私にはどうする事も出来ん」
藤堂は、軍人らしい意見を述べる。
「そうだな。扇らが調整役で動いてはいるが、時間がかかりすぎる」
「確かに…。副指令は、相手の意見を聞きすぎる傾向にあるからな。
こういう事にはあまり向いてないのかもしれん」
「だが、彼以上に最適な人材がいない現状では、扇達にがんばってもらうしかないか…」
まるで確認をするかのようなゼロの言葉に、藤堂は自分の力不足を感じた。
そして、かってゼロの片腕として動いていたライ作戦補佐の有能さをしみじみ実感する。
彼がゼロの側にいれば、こういう状況にならなかったのではとさえ思えてしまう。
二人が黙った事でしばしの沈黙が司令官室を満たす。
ほんの1~2分程度の沈黙ではあったが、藤堂にとってそれはとても長い時間に感じられた。
その沈黙は、ゼロが椅子から立ち上がることで破られた。
「やはり、そうするしかないか…」
ゼロは決断すると、藤堂の方を向く。
「藤堂、これから私は独自に行動する。よって黒の騎士団はお前に任せる」
「?!」
いきなりの言葉に、藤堂は言葉を失った。
「扇達にはそのまま調整役を続けさせろ。
時間は無いが、無理をして途中で超合衆国が瓦解してもらっても困るからな。
しっかりやるように言っておいてくれ」
そこまでゼロが指示を出した時、藤堂がやっと言葉を発した。
「なせだ…ゼロ。私では、君のように全体を見回しての判断などできんぞ」
「自分の事は良くわかっているようだな。だが、やってもらうぞ、藤堂。
この現状が超合衆国が軌道に乗るまで続くとは限らん。だから、打てる手は今のうちにすべて打ちたいからな」
「しかし…」
渋る藤堂に、ゼロははっきりと言う。
「藤堂鏡四郎。別に私と同じことをやれとは言わん。
きちんと方針さえ間違えなければ、お前なりに黒の騎士団を動かせばいい。
それに判断に困る時は、合衆国中華の黎 星刻に相談すればいい。
また、ディートハルトや行政特区のライには協力するようにきちんと連絡しておこう。いいな……任せたぞ」
そこまで言われてしまえば、返す言葉も無い。
そして、藤堂がゼロの申し出を受け、方針やいろんな作業の確認の打ち合わせが終わったのはそれから3時間後の事だった。
「どうぞ。開いてます」
書類整理をしていた僕の部屋に咲世子さんが入ってくる。
「夜分遅くすみません」
「かまわないですよ。ところで何かあったんですか?」
そう言って、ハッとして身構える。
「またからかうのは勘弁して下さい…」
「…あ…」
咲世子さんは、その言葉にしまったという表情をする。
「ああ…忘れてましたわ。道理で物足りないと思いました」
がくっ…。
思わず椅子から滑り落ちそうになった。
「で…用事は?」
椅子に座りなおしながら、咲世子さんの方を向く。
「こちらを…。ルルーシュ様から連絡がきております」
そういうと、特殊な装置の付いた電話機を手渡してくる。
「ルルーシュから?」
僕はそれを受け取り、電話機に話しかける。
「どうしたんだ…ルルーシュ」
「ライか…。すまないな、こんな時間に…」
少し沈みがちの声。
何かあったのか…。
不安が心の底から湧き上がってくる。
「実はな…」
言いにくそうだが、ルルーシュは教団殲滅作戦での事を話し始めた。
V.Vを捕らえる事に失敗し、Cの世界という別空間で皇帝と対峙した事。
そして、その皇帝との対峙の際、ルルーシュを庇いC.Cが倒れ、現在記憶が失われてしまっている状態である事。
また、超合衆国の計画進行スケジュールの大幅な遅れが深刻なのも大きな問題だった。
話しを聞いている僕でさえ動揺してしまうほどだから、それを実際に体験したルルーシュにとっては、この程度の動揺で済むはずも無いだろう。
「で、どうするんだ…これから…」
僕は、ルルーシュの話が終わると感情を殺した声で聞いた。
「すまないが、しばらくC.Cをそちらに預けさせてくれ」
「それは構わないが……」
暫くの沈黙の後、覚悟を決めた声でルルーシュは答えた。
「黒の騎士団が動けない以上、暫くは私独自で動こうと思う。騎士団は、藤堂に任せるのでフォローを頼む」
「わかった。任せてくれ。………それはそうと……ルルーシュ…君は大丈夫か?」
最後の言葉は、友人として彼に聞く。
「ふっ…大丈夫だよ、ライ。無茶はしない」
少し明るめの声で答えが返ってくる。
「ならいいんだけどな…。
君は何でも自分で背負い込みすぎるからな。少しは僕も頼ってくれよ」
受話器の向こう側で、苦笑しているような笑いが漏れる。
「もう頼ってるさ。お前じゃなきゃ、ナナリーやC.Cを安心して預けられないからな」
「わかったよ。……でも、本当にきつい時は連絡をくれよ」
「ああ、その時は真っ先に連絡するからな期待していろ」
軽口のやり取りではあったが、互いに相手を心配している事がわかる。
そしてしばし談笑し、ルルーシュは最後に僕にこう伝言して電話を切った。
「そろそろ大きく何かが動きそうだ。注意しておいてくれ」と…。
そしてその夜は、ルルーシュの電話の後、もう1本電話を受ける事になった。
「やぁ、元気にしてるか、ライ」
「ええ、元気だけはありますよ、ノネットさん」
しかし、返事は返ってこない。
(あ……)
以前何度も言われた事を思い出し、すぐさま言い直す。
「いえ…義姉さん」
「そうかぁ、元気が一番だからな」
言い直した途端、返事が即答される。
(現金だな…相変わらず…)
苦笑が漏れる。
「いや、元気ならいいんだよ。相変わらずバリバリやってそうで安心した」
「義姉さんこそ、元気ハツラツって感じじゃないか…」
「当たり前だ。私はいつも元気だからな」
そういわれ、確かにその通りだと思ってしまいそうになる。
今までどんな事があっても前向きで元気に対応してきたノネットさん。
だか、見えないところで悩み苦労している事を僕は知っている。
伊達に1年近く世話になったわけではない。
だが、それは言うわけにはいかない。
言えばノネットさんを傷つける。
だから、いつもどおり軽口で対応する。
「元気がない義姉さんなんて想像できないからね」
「こいつ…」
互いに笑いあう。
「そういえば3日後だったな…。皇帝陛下の行政特区日本の視察は…」
「ええ、そうですよ。おかげで今夜も遅くまで事務処理です」
苦笑が漏れる。
「あははは、がんばれよ」
「もちろんですよ。任せてください」
「おうおう、逞しくなったなぁ…。では、今度そっちに行った時は、模擬戦楽しみにしておくからな」
騎士になるまで修行と称して模擬戦でこってり絞られた事を思い出す。
「なるべくお手柔らかにお願いします」
「おいおい、お手柔らかにやったら意味が無いからな。本気でやるからな」
「ひいーっ…勘弁してください」
「あははははは…」
受話器の向こうから笑い声が響く。
だが、その笑い声はすぐに落ち着いた声に変わる。
「どうも嫌な予感がするんだ。それにこっちもEUの動きがきな臭いからな。何が起こるかわからん…気を付けろよ」
「僕の事を心配してくれるのはうれしいけど、義姉さんこそ気を付けてください」
「当たり前だ。ライの成長ぶりを見ない事には、死んでも死にきれんからな」
お互いに笑うと別れの挨拶をして電話を切った。
電話が終わると椅子に深く座り、背もたれに身体を預けた。
独自に集めた資料や情報から何かが起こりつつあるという事は一応考えてはいたが、その考えが今の二人の電話から確信へと変わっていた。
だが、普通なら何か起こる場合には前兆があり、それによって予想が立てられるのだが、今回はありすぎて予想がまったく出来ない。
そう…一気に世界が動こうとしている感じがする。
だが、何もしないわけにはいかない。
出来ることをやっておかなくては…。
僕は、再び書類に手を伸ばし、作業を再開した。
皇帝陛下の行政特区日本視察の当日。
僕は、式根島のブリタニア基地で案内役として皇帝陛下の乗るグレートブリタニアを待っていた。
この島と神根島は帝国直轄領となっており、先行して来ていたシュナイゼル殿下達はすでに到着し、警備についている。
「やぁ、実際に会うのは初めてだね、ライ卿」
「はい。行政特区設立の草案の際、映像電話でお話して以来です、殿下」
臣下の礼をとり、そう答える。
「まぁ、楽にしてくれ。硬苦しいのは抜きでいきたいからね」
「ありがとうございます。それに今回、こちらの基地利用の許可と警護の協力を頂き大変助かりました。
現在の特区内の治安部隊と騎士団の戦力では、とてもではありませんがここまでの警備体制は無理でしたから」
「気にする事は無いよ。一応、特区を承認した人間の一人だからね。協力は惜しまないよ」
シュナイゼルはそういうと微笑んだ。
裏表の無い笑顔のように見える。
だが、その笑顔を素直に信じる事は出来なかった。
本能が警告を発している。
「おや…そろそろだね。到着は…」
海の向こうに微かな点がいくつか見えてくる。
そして、その点の集まりの中にあるひときわ大きな1つの点「グレート・ブリタニア」に皇帝陛下が乗っている。
ごくりと唾を飲み込む。
何度か皇帝陛下とは直に会ったことがあるが、あの目の前にした緊張は忘れられない。
そして、以前ルルーシュの電話にあった皇帝と対峙したという話やCの世界という別次元の話…。
予想がつかない事を皇帝は実施しようとしている事だけはわかっている。
だから今回の視察がただで済むわけはないだろうと予想していた。
だが、僕は怯む訳にはいかない。
そう決心し、皇帝の到着を待つ。
しかし、その決意は意外な形で裏切られる事となる。