コードギアス反逆のルルーシュ ロストカラーズ 補完編 作:アシッドレイン
ジャンル シリアス
本来なら三部作の予定でしたが、上のみで、それ以降は書いてません。
気が向けば、続き書きたいですね。
個人的には、ヴィレッタ・ヌウ物語が落ち着いたら、次の候補かなぁ。
僕は、一人、瓦礫の影で蹲っていた。
血が止まらず、頭がくらくらする。
だが、止血する暇はない。
この場所もすぐに連中に見つかるだろう。
くっ。
ガクガクと震える足を何度も叩き、ふらつきながらも移動する。
僕は、こんなところで死ぬことも捕まるわけにも行かないんだ。
その思いだけが今の僕の支えだった。
しかし、出血によって意識が朦朧となっていく。
やばい…。
そう思った瞬間、身体の力が抜けてその場に崩れるように倒れた。
あははは…。
こんなところで死ぬのかっ、僕は…。
走馬灯なのだろうか。
遠くから人の声がするような気がする。
そして、ぼんやりとした目が咲世子さんの顔を映し出す。
ああ、咲世子さんっ…。
それは虚像ともつかないものではあったが、それでも構わなかった。
ただ、僕の思いを伝えたかった。
なぜなら、最後に悔いは残したくなかったから。
「あ、愛してます、咲世子さんっ」
たどたどしい言葉で何とかそれだけを言葉として吐き出す。
そして、僕の意識は暗闇の中に沈みこんでいった。
「はっ…」
僕は目が覚め、跳ね起きる。
身体中に激痛が走るものの、それは僕が生きている証だった。
「僕は……生きているのかっ」
「ええ、生きていますよ、ライ様」
僕を覗き込む咲世子さんのほっとした表情。
「そっか……」
安堵と共に身体中の力が抜けた。
だが、それと同時に現状を知りたいという欲求が湧いてくる。
本当に、現金なものだ。
さっきまで死にかけていたのに……。
「どうなってます?」
それだけで何を聞きたいのかわかったのだろう。
普段見せないような悔しそうな表情が咲世子さんの顔に一瞬浮かぶ。
それだけで判ってしまった。
「そっか……」
沈黙で答える咲世子さん。
そう、それが答えなのだ。
そして、ゆっくりと意識が遠くなっていく。
「ゆっくりおやすみください、ライ様」
そんな中、僕をいたわる咲世子さんの声が聞こえていた。
あれからどれくらいたったのだろうか……。
ふと気が付くと周りには誰もいなかった。
だが、隣の部屋からだろうか、声がするのがわかる。
小さな声だが静まり返った中では聞こうとしなくても聞こえてしまう。
どうやら、電話か無線の類のようだ。
「復唱できません。彼を見捨てるなんて……」
荒々しいまでに興奮した咲世子さんの声が聞こえる。
「わかっています。ですが、彼はこれからの騎士団に必要な方なんです。ですから、あと2日待ってください」
何度も相手を説得しょうと咲世子さんは言い続けている。
こんな咲世子さんは、初めてだ……。
ぼんやりとした思考の中で、その声を聞きながら考えていた。
僕がいると彼女に迷惑がかかる。
いくらなんでもそれだけは嫌だった。
好きな相手だからこそ、重荷になりたくなかった。
「っ……」
まだ痛みの走る身体を無理やり布団から起こすと部屋を出ようとした。
ずりっずりっ……。
足を引きずりながらもなんとかドアのところまでたどり着く。
そして、ドアに手をかけた瞬間だった。
バランスを失って、僕の身体は簡単にひっくり返った。
ドタンっ……。
派手な音が響き、僕の身体中に激痛が走った。
「ぐっ……」
それをなんとか歯を食いしばって耐え、立ち上がろうとした瞬間にドアが開いて咲世子さんが飛び込んできた。
「駄目ですっ、ライ様っ。まだ動いていい身体じゃありません」
彼女は、必死になって僕を布団に戻そうとする。
だが、僕がいたら足手まといになる。
その思いが僕を突き動かす。
「僕はっ……」
力が入らない身体を何とか動かし、無理やりにでも出ようとした。
だが、そんな僕の目に入ったのは、泣いてしがみ付く咲世子さんの姿だった。
「お願いです……ライ様。お願いしますっ……」
その泣き顔と言葉が、僕の心に突き刺さる。
身体中から力が抜けていく。
泣かせてしまった。
その事実だけで僕は愕然として何も出来なくなっていた。
再び僕を布団に寝かしつけると、まだ目元が赤いまま彼女は聞いてきた。
「なんで、あんな事をなさったのですか?」
僕は顔を背けた。
彼女の顔が見れなかった。
好きな相手を泣かしてしまったという事実から逃げたかった。
沈黙が周りを包み込んでいく。
その沈黙があまりにも重い。
だが、今の僕には何も出来ない。
そのジレンマがますます僕を苦しめていく。
その時だった。
咲世子さんの細い指が僕の髪を撫でたのは……。
ふわりっ……。
まさにそんな感じだ。
そして、僕の髪を撫でながら咲世子さんは話し始めた。
「ライ様、私は、ライ様がどういう考えであんな行動を取ったのかはわかりませんし、深く追求するつもりもございません。ただ……」
そこで咲世子さんの言葉が途切れる。
言うべきか言わざるべきか。
迷っているという感じだった。
でも、彼女は決意したのだろう。
ゆっくりと続けた。
「ライ様が…死んでもらっては……こ、困るのです。だって…、だって……」
咲世子さんの声が段々と落ち着きがなくなり、小さくなっていく。
僕は我慢し切れなくて、背けていた顔を彼女に向ける。
そして、目に入ったものは、涙を流しながら喋る咲世子さんの姿だった。
目と目が合い、彼女の表情がかすかに動く。
そう微笑みの形に……。
そして、はっきりと言葉を紡ぎ出す。
自分のありったけの思いをのせて……。
「私も、ライ様の事……好きですもの」
その言葉に、僕の心の中のわだかまりが解けていくような感じだった。
その夜、彼は熱を出した。
看病はしているものの、2日経った今でも熱が下がる気配はない。
無理がたたったのだろうか。
ともかく、何とかしなくてはいけない。
だが、逃走中の我々にちゃんとした医療品があるわけがない。
また、安全地帯ではない以上、暖をとるわけにもいかない。
どうすれば……。
私は、ガタガタと震える彼を見つめているしか方法がないのだろうか。
その時、混濁した意識の彼の瞳が私を捉える。
一瞬ではあったが、ほっとした表情になる彼。
それは、傍にいるだけで安らげるという彼の優しい心が見せたものだろうか。
それで決心がついた。
私は、彼の服を脱がせると、自分の服も脱ぎ捨てる。
そして、震える彼を抱き寄せると二人一緒に布団に包まった。
冷え切った彼の身体が無意識のうちに私の身体をしっかりと抱きしめる。
それは、温かさを求める無意識の行為とわかってはいた。
だが、私は、女としての幸福感に包まれている。
好きな殿方に抱きしめられるというのは、ここまで嬉しいものなのか……。
ふとそんな考えが頭に浮かぶ。
いけない。
何を考えているの。
これは看病なんだから。
そう自分に一生懸命言い聞かせた。
だが、ドキドキが止まらない。
幸福感と興奮が身体中を駆け巡っている。
だんだんと私自身の身体が熱を帯びていく。
多分、今の私は、真っ赤になっているだろう。
そして、私は気付いてしまう。
彼の唇が目の前にある事に。
心臓の動悸がより激しくなる。
意識しだすと、ますます唇から目が離せなった。
苦しそうな荒い息。
時折、唇を舐める舌の色っぽさ。
「……咲世子さん……」
彼の唇が、私の名前を呼ぶ。
その微かな声。
ゾクゾクしたものが背中を走った。
そして、気が付くとその唇に自分の唇を重ね合わせている私がそこにいた。
僕は身体に押し付けられる温かさと柔らかな臭いに包まれて目が覚めた。
焦点のあっていない目が機能を取り戻し、ぼんやりとした意識がはっきりとしていく。
それでも、僕は現状を理解できなかった。
なぜなら、僕は裸で、その僕に抱きつくような感じで咲世子さんも眠っていたからだ。
それも裸で……。
「うーんっ……」
咲世子さんの身体が少し動く。
布団がめくれ、咲世子さんのお椀型の胸が露になる。
ドキンっ。
いけないと思いつつ、それから目が離せない。
大きすぎす、それでいて小さすぎない。
ちようど手に収まるような感じ。
そんな事を考えてしまう。
これは、男の悲しい性なのだろうか。
そして、気が付くと、僕は男として目覚めていた。
ごくりっ……。
唾を飲み込む音が部屋に響くように感じる。
僕の気配の変化に気が付いたのだろうか。
あるいはたまたま目が覚めたのか。
うっすらと咲世子さんの目が開き、僕を捕らえた。
しばしの沈黙がその場を支配する。
どれだけ時間がたったのだろう。
何時間も止まっていたかのように感じる。
だが、もしかしたらほんの数秒なのかもしれない。
どちらにしても、僕にとってはとても長く、そして短い時間だった。
だが、その時間も終わりを告げる。
微笑みながら咲世子さんが囁く事によって。
その声は、とても小さかったが、はっきりと聞こえた。
「ライ様の好きなようになさってください」
一瞬、思考が停止したかのような衝撃を受け、そして、その言葉に、僕は理性を捨て去った。
行為が終わり、互いに脱ぎ捨てていた服を身につける。
ただ、布ずれの音だけが響く。
「ごめん……」
僕はそれだけしか言えなかった。
よく考えれば、あの行為は熱を出した僕を暖める為にした事だとわかる。
だが、それなのに僕は……。
「いいえ。誘ったのは私ですから……」
「でもっ……」
言いかけた言葉は、僕の唇に重ねあわされた咲世子さんの唇で途切れた。
「私も、ライ様が欲しくなってしまっていましたから……」
真っ赤になってそう告白する咲世子さんはとても可愛かった。
思わず手を伸ばして、彼女の手を強く握り締めた。
その瞬間、身体に痛みが走る。
「つっ……」
そうだ。
そうだった。
愛しい人との行為に夢中になっていたため、自分の身体の状態を忘れかけていた。
それだけ、興奮し、夢中だったのだろうか。
「だ、大丈夫ですか?ライ様」
慌てた様子の咲世子さん。
多分、彼女も僕と同じで忘れていたのかもしれなかった。
でも、それはそれで嬉しいものだ。
それだけ、夢中で僕を求めてくれたのだから……。
だから、僕は微笑んだ。
ほっとしたような表情の咲世子さん。
彼女のその顔を見ながら、僕は気が付いた。
僕は手に入れることが出来たのだ。
絶対に守りたいものを……。
そして、もっとも大切なものを……。
それがすごく嬉しかった。
《続く》