あぁもう、なんで論文が終わらないの…!もう3日はまともに寝てないのに…!ここまで手がつかないなんて…
はぁ…
……でも、なんとなく原因はわかってる。多分、あの時の…一週間くらい前の彼。…見ず知らずの私の危機にさっそうとやってきて、あんな量のヒルチャールを瞬きする間に一瞬で倒しちゃった。……しかも動けない私に負い目を感じさせないように、ちょうどいいから一緒にって理由まで作って…!ずるいよ…。
「はぁ…」
さっきからため息がとまらない。本当に名前を聞いておくべきだったかな…………。
そういえば彼、何でも屋をやってるって言ってなかったっけ。…今夜シティの外に出たいから、その護衛をお願いしようかな……。で、でもこんなことであの人の手を煩わせていいのかな…?うぅ…この臆病なところ、だめだなぁ……って、なんでこんなに尻込みしてるの!?た、ただあのひとに、何でも屋さんにお客さんとしていくだけ!なのに、なんでこんなに顔が熱くなるの……?
もう……!!!
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「…っ、護衛依頼か…!」
エルテナの家は何でも屋の事務所と一緒の建物にあり、毎朝ポストに何でも屋への依頼が来ていないか確認している。依頼内容は実に多種多様で、その一部を抜粋すると、『ペットが逃げたから探してほしい』『周りにヒルチャールが巣を作り始めているから退治してほしい』『グランドバザールにある出店の店番をしてほしい』など、なかなか沢山の手紙が来る。
彼はまだシティに来て日が浅いが、その高い戦闘力と引き受けた依頼は必ずやり通す性格が評価されているのだ。 しかし、まだ新参者の身であるため、今回の依頼である護衛はまだなかった。大抵、ここらに詳しい人間に護衛を頼むのが普通だろう。砂漠なら尚更だ。
「依頼日時は明日、集合場所は冒険者教会前のベンチ、目的地は夜のシティ周辺か…。まぁ最近は物騒だし念には念を押してってことかな…?」
スメールに来て初めての護衛任務。エルテナはスメールで少しずつ受け入れられてきたような気がして気合は十分。すぐに明日に備えて、自身の相棒である2つの銃と剣の手入れを始めるのだった。
ふと、手紙の主を見る。
「(依頼者はスメールの学生…?まさかね…)」
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「(…そろそろ時間だな)」
手紙が届いた次の日の夜。エルテナは冒険者教会近くのベンチで依頼主を待っていた。腰に二丁の銃と霧鋒の剣を携え、ゆったりとベンチに座っている。既に当たりは寝静まっており、近くには冒険者協会の受付に常にいるキャサリンしかいない。
「あの人いつもあそこにいるけど何時寝てるんだ…?」
そんな事を考えているうちに、通路の奥に人影が見えてきた。
「…うっそぉ」
依頼主は、レイラだった。
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二人でシティを出て森の中を歩く。
「あー…久しぶりだな、レイラさん。」
「こ、こちらこそ…!あのときはありがとうございました…!」
「いや、あれは俺のエゴだから…。…それより今回の依頼内容は護衛、という事でいいのか?神の目を持ってるんなら俺の護衛なんていらないと思うんだけど…」
「わ、私は戦うのは得意じゃないから…」
「…なるほど」
神の目は決して万能なものではないのだなと再確認するエルテナ。しかし無意識に神の目に向ける目は険しくなってしまう。レイラはその視線を感じ取り身震いし、恐る恐る後ろにいたエルテナを見る。
「ね、ねぇ何でも屋さん…わ、わたし、何かしたかな…?」
「…あ、いや、ごめん。なんでもないから気にしないで、……それよりも」
ガァン‼‼
「ッ!?!?」
「…まだ街に近いとはいえ、外なんだから油断はしないほうがいいかな………数が多い」
銃弾が通り過ぎて風穴が空いた真横の草むらから、マッシュロンが倒れた。額に穴を開けてふわりと消え、さらに周辺からキノコンが5〜6匹ほど現れ二人を取り囲む。
「レイラさん、敵だ、俺の後ろへ下がってください。」
「後ろにもいる…!私も戦うから…!」
レイラは首を振り、エルテナの横に並び虚空から剣を取り出す。
「危険ですよ!大丈夫なんですか!?」
「た、確かに戦うのは得意じゃないけどあなただけに任せるのは嫌だし、神の目だってあるから…!!」
エルテナは二丁の銃、レイラは自信の愛剣である『黎明の神剣』を構え背中合わせにキノコンたちに対峙する。
エルテナは逃げることも考えたが、自身だけならともかくレイラもいる上にキノコンたちは二人を逃がす気はないようだ。
「…行きますよ!」
「うん…!」
二人はキノコンの群れに走っていくのであった。
あとは次で…