「そこっ!!」
ガァン!
「せいッ!!」
ズシャッ!
夜の森に戦闘音が響く。一匹のマッシュロンを撃ち抜いて始まったこの野戦だが、既に30分は経過している。しかしまだまだ大量にキノコンが湧いてくる。しかも運の悪いことに戦闘音を聞きつけ辺りの魔物も少しずつ集まってきている。
「なんでこんなに数が…!」
「何でも屋さん!後ろ…!!!危ない!」
エルテナの後ろから氷マッシュロンが突撃してくる。しかしエルテナは眼の前の敵に気を向いていたため一歩、対処が遅れてしまいマッシュロンの突撃が氷元素をまといながら直撃してしまう。
「っぐあ…!このやろ…!!」
ドンッ!ドンッ!
背中に攻撃を受けながらも頭に向けて銃口を構え2発、突撃してきた氷マッシュロンに撃ち込む。放たれた2発の銃弾はマッシュロンの頭に突き刺さり、そのまま後ろに倒れる。しかし同時に正面2方向から炎の棍棒を持ったヒルチャールが現れ、そのままエルテナに棍棒を振り回し突撃を仕掛けてくる。
「っ!?ヒルチャール…!?戦闘音に吊られたか…!」
それに驚き慌てて頭を狙って銃を構える。しかし先程受けた氷マッシュロンの突撃によって氷元素が付着しているエルテナの手は震え、動きは鈍く狙いは定まらない。
「…っ!(これじゃ狙いが…!)」
即座の反撃を諦め腕を交差させて自身の身を守ろうとする。しかし彼は1つ失念していた。彼の体には氷元素が未だ付着しており、ヒルチャールの棍棒には火がついている。氷元素と炎元素で起こる元素反応を彼は忘れていた。このまま殴られると命に関わる攻撃であり、ヒルチャールは容赦なくエルテナに火のついた棍棒を振り下ろす。
…しかしその棍棒がエルテナに直撃することはなかった。
「寒星…!!!」
ピキッ…カァン!
「ッ…!?こ、れは…!?」
何かが凍るような音と、何かを弾くような音が響く。エルテナを守るように円形に形を維持している薄い水色の壁が現れヒルチャールの攻撃を防ぐ。エルテナは一瞬混乱し動きを止めるが、すぐに立ち直り剣を片手に構えてヒルチャールを狙う。
「っせい!」
「Gurgaaaaaa!!!」
ヒルチャールに袈裟斬り型に筋が走り、そのまま地面に倒れ伏し光になって消える。後には砕けた仮面がぽとりと落ちる。
「はっ、はっ…!っう…!!」
「レイラ!!」
エルテナを自身の元素スキル『垂裳凛然の夜』で守ったレイラは、エルテナがヒルチャールを倒したことで油断し、それまでずっと戦っていたこともあって隣からのキノコンの奇襲に気付けず、シールド越しに直撃してよろけ倒れる。それを見た魔物が一斉にレイラに向かって走り出す。
「う、ぁ…!!」
「っ…!!ヤバい…!」
エルテナは銃と剣を持ちレイラを守ろうと走り出す。レイラは先程張ったシールドとその追加効果『飛星』のおかげで魔物たちを怯ませられている。まだ魔物の攻撃を受けてはいないが、シールドが破られレイラに危険が迫るのは時間の問題だ。しかもレイラは周りを魔物に囲われ恐怖で気絶してしまっている。シールドの貼り直しもかなり難しい状況だ。
「ッ…!その人から…離れろぉっ!!!」
そう叫ぶと同時に剣を投げつけ銃を2つ構え、乱射する。銃が淡く青白く光り輝き、轟音と共に銃弾が次々と絶え間なく発射される。キノコンやヒルチャール達はそれに為す術なく撃ち抜かれ、着弾位置がパキパキと凍り、光になって消える。あとには素材が残され、ぽとりと地面に落ちる。
銃声はなぜか火薬が爆ぜるような音ではなく、氷が割れるような甲高い音が響き渡っている。彼の銃はリロードを挟むことなく絶え間なく銃弾が出続けている。発射された銃弾も銃と同じようにうっすらと青白く光っており、着弾後は溶けるように地面染み込み、地面に濡れたあとのシミができる。
「はーッ、はーッ…!!この…!!」
夜の森に、凍る音が響き渡っていた。
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魔物が凍りつく音が響き始めて既に1時間が経過した。最初はレイラを狙っていた魔物たちもエルテナのその銃声は無視できなかったようでレイラに興味を失いエルテナの方を狙い始めていた。
既に何十発、何百発もの弾丸を打ち込み向かってくるヒルチャール、キノコン、マッシュロンたちを撃ち殺したエルテナ。既に限界を超えていたのにもかかわらず、体は気力だけで動いていた。しかしその気力も憔悴仕切り彼の視界は白くチカチカと光が飛び狭まっている。、青白く染まっていた二丁の銃は輝くのをやめ、鈍く月の光を反射していた。しかしそれでもまだ魔物が数匹残っている。
レイラの安全だけは確保しようとなんとか自身とレイラの距離は離したものの彼の腕、足の一部の骨は折れ、血もかなりの量を失い意識も朦朧としていた。
「ヒューッ、ヒューッ…(うごけない…潮時、か…)」
眼の前に人型で手に太い棒を持った影が映る。ゆっくりとそれは振り上げられ、エルテナは目を閉じ静かにその時を待つ。風を切る音と共にエルテナめがけてそれは振り下ろされる。
…しかしそれが、エルテナに届くことはなかった。
「今までありがとう…あとは私に任せて、眠りなさい。」
意識が消えかけるエルテナが最後に見たのは、黎明の神剣を握りしめ、ヒルチャールを斬り伏せるレイラの姿だった。