東方黒檀姫   作:Crimson Wizard

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引っ越しやら何やらでドタバタしてるので息抜きに投下します


第4話

 

日は沈み、魑魅魍魎の跋扈する逢魔が時

 

私はその吸血鬼のレミリア・スカーレットさんに演武を気に入られ、一晩泊まっていく事になった。

レミリアさんは紫から聞いた要注意人物の内の一人で、幻想郷でも上位の妖怪らしい。

昔は癇癪が酷かったと愚痴を零していたものの、最近は比較的落ち着いているとも言っていたので期限を損ねるような事をしなければ大丈夫と言っていた。

 

まあ吸血鬼であれば私の能力と致命的に相性が悪いと思うので、そこまで気にする必要はない。そもそも私は平和主義者だし……

 

「食事はお気に召して頂けましたか?」

 

丁度食事を終えた所でメイド長らしい十六夜咲夜さんからそう問われる。

 

「ええ、とても美味しかったです。」

 

「気に入っていただけて何よりですわ、お嬢様もお喜びになられる事でしょう。」

 

「レミリアさんにいずれ何かしらお返ししなくてはなりませんね。」

 

「そうですね。今回はお嬢様の気まぐれですのでお気になさらずとも良いのですが、頂き物があればお嬢様はとても喜んで下さると思いますわ。」

 

……ふふ、そこは正直に言うんだ。

 

「では寝室にご案内致します。」

 

そう言って案内された先に入ると、一人で使うにはかなり大きなベッドやソファ……他にも暖炉まで置いてあるかなり豪華な部屋だった。

 

「一応必要な物は常備されていますが、何かある際はこのベルを鳴らして頂けると参りますので。」

 

「分かりました、ありがとう咲夜さん」

 

そう言って部屋を出ていく咲夜さんを横目に、部屋を物色していた私は寝巻き……というかバスローブへと着替えてベッドに横になる。

……そういえば体拭いたけどお風呂入ってないな。でも吸血鬼の館にお風呂なんてあるのかな。

 

まあ疲れたし、明日の朝入ればいいか。

 

そうして……目を瞑ると、私はそのまま眠りにつく

 

 

 

 

 

 

 

 

私は心地よい微睡みに包まれながら、二度寝の誘惑を振り払って身体を起こすとひんやりとした感触を感じて右を向く。

 

「……え?」

 

そこでは金髪の少女が気持ち良さそうにスヤスヤと眠っており、口の端からは涎が垂れてきている

 

なんで私のベッドに女の子が……

 

「んぅ……おはよー」

 

「お、おはようございます」

 

その子はふぁーと欠伸をしてから私に抱き着いてきた。

 

「お姉ちゃん暖かいねー」

 

「……もうお姉ちゃんという歳でもないんですけどね。あなたはひんやりしてますね」

 

「え?ああ……フランは吸血鬼だからね。これが平熱なんだー」

 

「吸血鬼……という事はレミリアさんの妹ですか?」

 

「そうだよー。……あいつフランの事教えてないんだ。」

 

……不仲なのかな、なんか気まずい。

 

「それでフランさんは、何故この部屋に?昨日は見かけませんでしたが。」

 

「ん?フランは普段地下で過ごしてるからね。会わないのも無理はないよ」

 

「そうなんですか。で、なぜこの部屋に?」

 

「ちょっと味見しようと思ったから、かな?」

 

……てへ、と言わんばかりの顔をして誤魔化すフランだが、私からすればたまったものじゃない。

 

「駄目です。血を吸われたら吸血鬼になるんですよね?私は日中も外で過ごしたいので吸血鬼になるのは困ります。」

 

「へ?何言ってるの?それって眷属化の事でしょ?あれは私達がやろうと思ってやらない限り勝手になったりしないよ?」

 

そうなのか……じゃあ別にいいんだけど、そもそも私の血は美味しくないと思うんだけどな

 

「先程も言いましたが、私は既に半分人間を辞めてしまっているので美味しくないと思いますよ?」

 

「そうなの?でもたまにおばあちゃんになっても美味しい人いるらしいよ?」

 

……いやそんなの知らないですけど

 

「飲んでみますか?というか、流石に直飲みじゃないですよね?」

 

「え!?いいの!?じゃあいっただっきまーす!」

 

「え、あの」

 

カプっと、首筋に抱きつかれそのまま押し倒されるとちゅーちゅーと血を吸われる私……待ってなんか気持ちいいかも

 

「ぷはっ……何だ、美味しいじゃん!もうちょっとだけ」

 

「あっ……ちょ、ちょっと待ってくだ」

 

このままではミイラになりそうな私だったが、その前に部屋の扉が勢いよく開かれるとレミリアさんが現れズシズシと歩いてくる。

そして未だに血を吸っているフランの頭を勢い良くひっぱたく

 

「いっだい!何するのお姉様!」

 

「アンタこそ何してんのよ!私の客の血を勝手に吸ってんじゃないわよ!」

 

「お姉様も吸いたいなら吸えばいいじゃん!」

 

「そういう訳じゃ……」

 

そこまで言ってチラリとこちらを向くレミリアさん……冗談だよね?

 

「ね、ねえカヤ……すこーしだけでいいから私も血を吸っていいかしら?」

 

「やめてください」

 

「ほんの少しだけでいいの?ねっ?これくらい」

 

いや、これくらいとかじゃなくて普通に嫌なんですが……

 

「駄目です」

 

「……よし、フラン行くわよ!魅了の魔眼!」

 

と、レミリアさんがなにやら搦手を使おうとした瞬間、フランさんと共にナイフがブスブスと……

 

「いったい!ちょっと咲夜何するの!……ってこれ銀のナイフじゃない!私のこと殺す気なの!?」

 

「……お嬢様、妹様も、少しお話がありますので申し訳ありませんがカヤ様……今の内に屋敷の外へどうぞ。お見送りも出来ず申し訳ありません。」

 

「助かりました咲夜さん……このお礼はまたの機会に」

 

そう言ってスタコラサッサと屋敷の外まで出てくると中で凄い音がする。……結局お風呂も入れなかったし、近くに湖があったから身体を流そうかな。

門の方を見ると涎を垂らして立ったまま寝ている美鈴さん。

 

……ここには寄らない様にしようと肝に銘じて私は屋敷を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

あれから湖の冷たい水でささっと身を清めた私はまたふらふらと歩き始めた。

特に何処に向かっているという訳では無いものの、既にかなり歩いてはいるというのに気になる建物の一つも見付からない。

 

仕方なく空を飛び、人里も飛び越えてさらに奥の山へ向かって進み続ける。あれだけ大きいって事は妖怪の山かな?

天狗の根城と聞いてはいるものの、誰か住んでいるようには……ん?

山の頂上付近に結界を張っているということは、あの辺に居を構えているのかもしれない。

 

そのまま麓まで辿り着くと私は着地した後頂上へ向かって歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日も今日とて、射命丸文は話のタネもとい、ゴシップ記事のネタを求めて獲物を探し回っていた。

しかし、その辺を飛び回ったところで見付けられるのは精々妖精の喧嘩くらいである

やはり人間の里に降りて聞き込みをするしかないと考え、射命丸は妖怪の山から人里へと自慢の翼をはためかせながら向かい……

 

残念ながら全く収穫のないまま同じルートで自身の住む妖怪の山へと帰っている所であった

 

「あやや?」

 

一里程先には成年かそこらの着物の女が辺りをキョロキョロと見回しながら妖怪の山へと侵入していた。

 

「あや、外来人ですか……そして着物に刀だけ。最近外の世界で流行っているというこすぷれ?の最中に来てしまったんですかね。」

 

どちらにせよ、あのままでは妖怪の餌になるのは時間の問題だ。

そしてあの先は天狗の縄張りである妖怪の山……すぐに哨戒天狗に見つかって連行されてしまい、どの道生きて帰れないだろう。

 

「どうしますかねぇ……誰かに食われる位なら私が貰っていくのもありっちゃありですけど。」

 

一つ、気にかかるのはあの刀……外の世界では刀を所持するのが酷く面倒だと聞いたことがあります。

それにあの刀……ここからではハッキリとは分かりませんが何かしらの霊気を帯びている、ただの刀ではありませんね。

 

「ここは直感に従って、手を出すのはやめておきますか。……万が一があると怖いですしね」

 

射命丸自身長く生きている妖怪なだけはあり、常に己の感に従って生きてきた。彼女曰く長生きのコツらしいが……

 

「とはいえせっかく記事に出来そうですしインタビュー位ならいいですよね」

 

今回は好奇心の方が勝ってしまったようだ

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

「それにしてもずっと誰かに見られてますね……千里眼を使える者でもいるのでしょうか。」

 

先程から常に視線を感じる為、若干警戒しながら歩いていたものの特に誰かと会うこともなくここまで来てしまった。

そして一息吐こうとした矢先……

 

「初めまし」

 

遠くから凄い勢いで飛んでくる物体を感じた為、反射的に抜刀しそのまま刀身を走らせる。

 

「……っ」

 

「あ、あぶないです……よ?」

 

っはぁ……襲われた訳では無かったみたいだ。危ない……ギリギリで寸止め出来たものの、もう少しで……

 

 

「……危ないので亜音速で飛んでくるのはやめてください。」

 

「あ、はい。すみません……っじゃありませんよ!?私辻斬りされる所だったんですけど!?」

 

「辻斬りとは人聞きの悪い……あなたから突っ込んで来たんでしょう」

 

「いや普通いきなり斬られるとは思いませんけど!?」

 

……たしかに

 

「私も気を張っていたんです。仕方ないでしょう」

 

埒が明かないと思ったのか射命丸はひとつため息を吐いた後に侵入者へ警告する

 

「……まあいいです。とりあえずここから先は我々天狗の領域です。これ以上進むというのならば許可が必要です。」

 

「どうやったらその許可を頂けるんですか?」

 

「……基本的には取れないですよ。あくまで建前なので、我々も通行くらいなら見逃しますけど、山頂まで来るのは無理です。」

 

目の前にいる人間が山頂を目指している事は何となく察していた為予め説明しておく

 

「……ふむ、ならば仕方ありません。迂回しましょう。」

 

「山頂まで来ないのでしたらどうぞご勝手に……ただ、天狗以外にも数多く妖怪がいるので身の安全は保証出来ませんよ……今更ですけど」

 

仮にこの人間が約束を破り勝手に山へ侵入したとしても、哨戒天狗から身を隠して移動するのでは山頂付近まで体力が持たないし、

中腹までなら辿り着けてもだいたい河童が水浴びをしているか白狼天狗が哨戒しているので彼らに捕まる事だろう。

射命丸は話を続けるのが面倒になったので後は彼らにこの女の対応を押し付ける事にしたのであった。

 

「ご丁寧にありがとうございます。では私は先に向かいますので」

 

「あ、はい」

 

軽く一礼して去っていく女を見て射命丸はまたひとつため息を零すのであった

 

 

 

◆◇◆

 

 

少し迂回して山の麓を歩き続けたところ、明らかに異様な雰囲気を醸し出す井戸跡の様な縦穴があった。

周辺には墓石の様な物が転がっており、人骨のような物もそこかしこにある。墓石には札が夥しい数貼り付けられており明らかに近付くべきではない。

古びた立て札もあり、文字は擦れてしまってもう読めないが十中八九、立入を禁止する旨だろう

 

「……地底、ですかね」

 

私は意を決して飛び降りると、軽く浮遊しながら下へ下へと落ち続ける。縦穴には蜘蛛の糸が張り巡らされており、恐らく妖怪化した蜘蛛の糸だ……

能力を使用して糸を燃やしつつさらに下へと向かうが未だに地面は見えてこない。

 

そのまま降り続けること数分……ようやく灯りが見えた為勢いを増して降りていく

 

 

「ふぅ……漸くですか」

 

降りた先は虫の死骸や人骨に塗れ、不衛生極まりない環境だ。普通の人間なら即座に発狂する程に気味が悪い……

 

 

 

 

「おや?人間かい?こりゃあ珍しい事もあるもんだねぇ」

 

奥へ見える下町の灯りを目指して足を踏み出した所、後ろから声が掛かる

 

「……土蜘蛛ですか、最後に見たのはいつだったかしら」

 

そう言うと土蜘蛛は怪訝そうな顔をして口を開いた

 

「お前さん土蜘蛛を見たことがあるのかい?」

 

「もうどれほど前かすら覚えていませんけどね」

 

「ほんとかい!ねえねえそいつはどんな姿をしてた!?」

 

……急に口調が変わるのか、キャラを作ってるのかな

 

「うーん……少なくともあなたみたいに人の形はしてませんでしたよ。もっとこう、ごちゃごちゃしてました」

 

「……それはどういう感じ?」

 

「そうですね……まず人体を解体した後チグハグに繋ぎ直してそこから毛を生やしたみたいな姿ですね。」

 

「……多分そいつは元々人間だね、後天的に妖怪化したんだろうさ」

 

「何故分かるんですか?」

 

「多分だけど、皇室に従わない元豪族か何かを化け物に見立てて情報をばら蒔いた結果、そいつの死後その通りになっちまったんだと思うよ」

 

言いたくないのなら、聞かない方がいいのかな

 

「……そうなんですね」

 

「ああ……ところでアンタ、どれだけ生きてるんだい?」

 

まあ……現代でこんな話を知ってる人間なんか生きてる訳ないし分かるよね

 

「……さて、私自身数えていないのでハッキリとは。多分、1000年いくかいかないかじゃないですか?」

 

「ハハッ!アンタもこっち側って訳か!ここ、通ってもいいよ。ただ、いいかい?間違っても鬼にだけは喧嘩を売るんじゃないよ?」

 

紫の言う通り、やはり鬼は妖怪からも畏れられているのか。

 

「まあ、向こうから喧嘩を売ってこない限りは大丈夫です。」

 

「ハハハハハッ!こりゃまた肝の座った人間だ、いいさ……好きにするといい。命の保証はないけどね。」

 

「ご親切にどうも」

 

そうして私は地底へと足を踏み出し、明るく賑わっている下町へ向かって大きな吊り橋を渡る。

 

「……妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい」

 

……妬ましい妬ましい妬ましい、じゃない!……危ない危ない。変な術に罹る所だった。

 

嫉妬ときて橋といえば、橋姫伝説か……

後ろを振り向くと着物の袖を噛みながら妬ましい妬ましいと連呼する妖怪が居た。

 

……また同じ術に掛からない様、私は足早に橋を渡り切るのだった。

 

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