私は逃げた。逃げ続けた。そして、捕まった。
1353年5月21日
鎌倉の龍ノ口に連れて来られた北条時行、根津弧次郎、吹雪は足利尊氏の目の前に正座させられた。縄で縛られ後ろには刀を持った武士がいる。
その時、3人は縄を抜け処刑場を楽しそうに逃げ回った。足利尊氏達が追いかける。時行は逃げながらもいろいろと考えていた。
心残りはある。鎌倉を奪還したかった。もっと逃げたかった。出来れば平和な世の中で楽しく鬼ごっこをしたかった。
そう思いながらも時行は松の木に登ると天を見上げ人生を振り返ると…
「あー…楽しかった!」
そう言い残すと心臓が止まり火に焼かれた。こうして、北条時行の人生はここで終わった…
はずだった。
時行が目を覚ます。眼前には青い空、白い雲、風で揺れる緑。
ここは…?私は確か死んだはず…
起き上がる。周りを見る。後ろには古びた神社、左右には青々しい木々、前には見たことない景色。時行はびっくりして立ち上がる。自分の姿を確認する。小さな手、諏訪大社にいた頃の服、腰には頼重からもらった刀《鬼丸》、頭には顕家からもらった冠がある。
私はどうなったのだ?頼重殿からもらった鬼丸と顕家卿からもらった冠がある。けど、この姿は鎌倉が焼けたあの日と同じだ。
時行は自分の頬を抓る。痛みがある。夢じゃない。自分は鎌倉が足利尊氏によって滅ぼされた時と同じ年齢になっていたのだ。時行は走る。今いる場所がどこなのか知りたい。そう思い階段を駆け降りる。
そこで目にしたのは自分の常識を疑う光景だった。見たことない服を着た人々がよく分からない物を持って歩き、馬より速く走る何かが通り過ぎて行く。
こ、ここは…どこなんだ!?
時行は左右を見て情報を得ようとする。しかし、何も分からない。若い男が長方形の板を向けている。時行は身の危険を感じ走り出した。
一方、別の場所で歩いている警察官が3人いた。その中央にいる警察官があくびをしていた。
「あ〜、やってらんねぇぜ。なんでわしが態々鎌倉なんてとこに…それも捜査会議なんて。鎌倉に来たら美味いもんでも食いたいだろ!」
「仕方ありませんよ先輩。東京、埼玉、千葉で窃盗を繰り返している窃盗団がここに現れたなんて通報が来たらこうなります。」
「そうよ両ちゃん。文句言わずに。」
「そもそもなんで葛飾区で窃盗するんだ!他になかったのか!?」
文句を言いながら歩いている警察官。筋肉質で剛毛な身体、角刈りの髪に無精ひげ、そして一目で印象に残るM字状に繋がった太眉をしている。警察官というが袖を捲り靴もサンダル履きで制帽をかぶっていない。このだらしない警察官は両津勘吉。葛飾区亀有公園前派出所に勤務する巡査長だ。
隣で両津勘吉を先輩と呼ぶイケメンは中川圭一。両津と同じ派出所に勤務する巡査で世界規模の財力を誇る中川財閥の御曹司でもある。
そして、両ちゃんと呼んだ美女が秋本麗子である。中川と同じで両津の後輩であり世界有数の企業「秋本貿易」の社長令嬢だ。
「中川、麗子。このまま美味いもん食いに行くか?」
「まずいですよ先輩。また部長に怒られますよ。」
雑談しながら歩く3人。すると、両津が黙って止まった。中川と麗子も止まる。
「どうしました先輩?」
「なぁ。あの子供、なんか変じゃないか?」
両津が指を差す。中川と麗子がその方向を見ると時行がいた。周りを見てあたふたしている。すると、車が減った瞬間に横断歩道を渡り始めた。信号はまだ赤のままだ。
「まずいぞ!」
両津が走る。しかし、それよりも速く車が時行に向かう。運転手が慌ててブレーキを踏む。麗子が叫ぶ。中川も両津を追って走る。時行は車を見た瞬間、ボンネットに飛び乗り回避するとそのまま横断歩道を横切った。向かってくる車をジャンプしたり下に逃げ込んだりして避けると横断歩道を渡りきった。
「な、なんとか逃げれたぞ。」
「おい!」
両津の声にビビり振り向く。両津が時行の腰にある鬼丸に目がいった。
「中川、あの刀…」
「まさか、さすがに本物じゃないですよ。」
「そうか。それよりも…」
両津が信号無視を注意しようと近付く。それにビビった時行が逃げた。
「あっ!こら!待て!」
両津が時行を追う。
令和鬼ごっこ 銭鬼《両津勘吉》
ここから2人の出会いが始まった。