夕日が落ち夜になる。スカイラグーンは未だ進行を続けあべのハルカスへ向かっている。内部では激しいバトルが繰り広げられていた。
パーティー会場ではジョディーと麗子が張鬼と撃ち合っている。両手にライフルわ拳銃を構え2人同時に相手する張鬼。弾切れになるとすぐにもう片方の銃で牽制しながらマガジンを取り替える。
「隙がないわね。」
「多対一が得意なのでね。」
なんとか纏達も加勢したいが射撃があまり得意じゃないためなかなか加勢に行くことが出来ない。そんな状況で張鬼が端に隠れる渚達を見る。すると、手榴弾を渚達に投げた。
「な!?」
「お前らは守る者が多いよな。」
ジョディーが咄嗟に手榴弾に弾丸を当て軌道を反らす。手榴弾は張鬼のところに落ちていく。そこに張鬼も弾丸を当てさらに軌道を変える。手榴弾は空中で爆発し轟音を鳴らす。張鬼はそれに乗じて移動し麗子を狙う。
「みんな、逃げて!」
「あれ?渚は…?」
麗子の声に反応して聡子達が弧太郎達を連れて逃げる。しかし、張鬼が扉を撃ち牽制した。ジョディーも移動して張鬼を撃つ。張鬼は隠れながら麗子の待っている拳銃を撃ち飛ばした。
「麗子!」
「これで終わりだ。」
張鬼が麗子を狙う。引鉄に指をかける。その瞬間、張鬼の背筋が凍った。殺気を感じたのだ。麗子でもジョディーでもない殺気。
(なんだ…この殺気…)
殺気がどこから来ているのか探す。そこに渚が現れ張鬼の前で猫騙しをした。いつの間にかいた渚に弧太郎達が驚く。弧太郎達にはただの猫騙しにしか見えていないが張鬼の様子がおかしくなったのは見て分かった。
(こいつ…ここまで気配を消して近付きやがった。)
張鬼の意識が一瞬飛ぶ。張鬼は舌を噛んで気絶を免れる。近付く直前まで悟らせなかった気配、そこから急にくる殺気。こんな子供にそれが出来るのかと驚いていた。渚が張鬼の隙を作ってくれた。その隙を見逃さずジョディーが接近しながらライフルを撃ち落とし張鬼の腕を掴んだ。そのまま押し倒す。
「これでフィニッシュよ!」
「まだだ…」
「拳銃!」
渚が叫ぶ。張鬼は袖からデリンジャーを出した。その時、麗子が張鬼の狙撃銃でデリンジャーを狙撃し吹き飛ばした。それでも抵抗する張鬼に纏がマイクスタンドで顔面に重い一撃を食らわせた。張鬼の鬼仮面が砕かれ張鬼は気絶した。
「な、なんか私だけいいとこ取りみたいになっちゃったけど。」
「そんなことないわ。ありがとう。」
気絶した張鬼を縛りながらお礼を言うジョディーに纏は恥ずかしがる。ジョディーは渚にもお礼を言う。
「ありがとうね少年。あなた、あの状況で立ち向かうなんて凄いじゃない。」
「い、いえ!その…僕もみんなのお役に立てたらと…」
「本当に凄かったっすよ。いつの間にか近付いて猫騙しで倒すんすから。」
弧太郎達も渚を褒める。
一方、宴会会場でマリア達が蛮鬼と交戦している。マリアと麻里晩の猛攻すら蛮鬼は防ぐ。
「《金ちゃん蹴り》!!」
「あまい!」
蛮鬼は麻里晩の蹴りを拳で受け止める。そのまま回転して踵落としをする。
「千葉拳法《落花星》!」
麻里晩が避けたところに蛮鬼の踵落としが炸裂する。畳に穴が空くほどの威力だ。マリアが蛮鬼に蹴りを入れるも蛮鬼は受け流した。
「ち、近付けん。」
「ここはあの人達に任せましょう。僕達では邪魔になります。」
「…ん?あの人がおらんぞ。」
邪魔にならないように下がる大原部長達。すると、檸檬がキョロキョロ周りを見回していた。マリア達の攻撃を受け流す蛮鬼。その強さに苦戦していると早矢が加勢にきた。
「早矢さん!」
「私も参戦しますわ。」
早矢の手には飾りとして置いてあった薙刀のレプリカがある。3人がかりで蛮鬼に挑む。それでも蛮鬼は止まらない。
「千葉拳法《千葉県のマスコットキャラクターはチーバくんなのにふなっしーが凄く人気になり過ぎてマスコットキャラクター間違えがちキック》!」
「長いうえに比較的どうでもいい技名ですね。」
「そ、そうじゃの。」
技名はともかく蛮鬼の飛び蹴りは鋭く麻里晩を蹴り飛ばす。麻里晩は両腕でガードして耐える。
「なら…翻堕羅拳奥義《唾の舞》!!」
「効かぬ!」
蛮鬼は大量の唾を浴びても怯まずに攻撃した。早矢の薙刀も受け流しマリアのキックも避ける。3人は蛮鬼の攻撃から防御して後ろに下がる。
「あやつ、なかなかやりおる。」
「皆さん、私に任せてくれませんか?」
早矢が提案する。時間がないと2人は黙って了承した。早矢が突撃する。蛮鬼も対抗して走り出す。早矢の凄まじい薙刀捌きも蛮鬼は対応してみせた。
「ぬるい!磯鷲流はその程度か!」
蛮鬼が手刀で薙刀を真っ二つにした。
「磯鷲流に勝てば俺は武術の頂点だ!千葉拳奥義!《所在地千葉なのに東京が付いてるとこ多すぎパンチ》!」
蛮鬼が早矢に向けてパンチする。それを見切った早矢が蛮鬼の腕を掴み投げた。
(誘われたか!だが、これぐらい受け身で…)
受け身をとろうとした蛮鬼。そこにマリアと麻里晩の蹴りが顔面に命中した。鬼仮面が砕け吹き飛ぶ蛮鬼。壁に激突した蛮鬼は歯が欠けボロボロになって倒れた。
「お見事ですわ。」
「よし。これで翻堕羅拳道場は確約されたも同然。」
「お父様、それはないと思いますわ。」
「両津の嘘だな。」
「僕もあれで磯鷲流と並ぶことなんてないと思いますよ。」
マリア達の辛辣な一言に麻里晩は黙ってしまう。そして、怒りの矛先を両津に向けた。
「両〜津〜!」
「ひっ!」
「どうしました両さん?」
両津の背筋が凍る。時行が心配してくれたがなんでもないと答えた。両津達は今、ホテル『アスピドケロン』のロビーにいた。ここの天井にも輝く大きなシャンデリアが吊り下げられている。
「凄いですね…」
「さすが中川財閥のホテル。5つ星ホテルなんてレベルじゃねぇぞ。」
「ところで両さん。食べ物を勝手に持ってきて良かったのでしょうか?」
時行がジーと持っているおにぎりを見る。両津はお構いなく厨房から持ってきた食べ物をガツガツ食べている。
「こういう時こそ腹ごしらえは大切だぞ。お前がいた時代でもそうだったろ。」
「確かにそうですけど…」
時行は複雑な表情でおにぎりを食べる。そこに暗鬼が忍び寄る。その時、ガクンと揺れが来たと思ったら突然止まった。スカイラグーンが進行を停止したのだ。
「止まり…ました?」
「ボルボがやってくれたぞ!これであべのハルカスに激突は無くなった!」
(なるほど、隠鬼がやられたか。)
「興鬼、今すぐ操縦室に行って自動操縦から手動に切り替えろ。」
『了解。』
暗鬼は指示を出すとライフルを構えてアスピドケロンに近づいた。両津達が見入っている。その時、気配を感じ後ろを振り向いた。既に暗鬼がライフルを向けている。
「回避!」
両津達はすぐにソファやフロントに逃げ込む。入口のガラスを豪快に割りながら侵入する暗鬼。時行が矢で攻撃するも暗鬼はそれを腕で弾いた。
「!?」
「あの野郎、篭手を仕込んでるな。」
暗鬼は挟み撃ちにされないように上手く立ち回りながらライフルを乱射する。両津も拳銃で応戦する。暗鬼はソファに隠れマガジンを装填する。その上をハトポッポ刑事が飛び位置や状況を両津に教えた。両津は暗鬼が装填している隙を狙いダッシュする。それに気付いた暗鬼が懐から拳銃を取り出し撃った。
「危ねえ!」
「…ああ、あの鳩か。驚いた。鳩まで手懐けていたか。」
暗鬼はハトポッポ刑事にも撃つ。ハトポッポ刑事はなんとか避けて両津のところに行く。そこに暗鬼が手榴弾を投げ込んだ。両津は慌てて逃げる。時行がまた矢を放つも篭手で防がれる。
「場所は分かった。次姿を見せた時がお前らの最後だ。」
「ふざけるな!わしは勝手に決められるのが大っ嫌いなんだよ!」
両津が飛び出そうとするより早く暗鬼が撃つ。両津はなかなか出れない。すると、スマホが鳴った。こんな時に誰だと出る。
『両津!今どこにいる!?』
「部長!話は後にしてください!今戦ってます!」
ライフルの射撃音が響いている。
『カンキチ、手短に話す。藤村という男が居なくなっておるぞ。』
「はぁ!?」
『お主が飛び降りる前まではいたはずなのじゃが…』
「わしは知らんぞ。」
『とにかく、こっちにいる張鬼と蛮鬼は捕まえました。』
「プラスか!お前ら全員無事か!?」
『無事だ!とにかく両津!そこを切り抜けてこっちに来い!』
両津が通話している時、時行が両津の名前を叫んだ。両津が反応すると手榴弾が転がってきた。両津はそこから逃げる。
「おい!お前の仲間はわしの仲間達が倒したぞ!」
「なら、お前達を殺した後で俺が皆殺しにしよう。」
両津はなんとかして暗鬼に近付きたいと思っている。その時、またスカイラグーンが動き出した。
「また動いたのか!」
「興鬼が手動に切り替えたのだ。残念だったな。」
またカウントダウンが始まってしまう。すぐに操縦室へと向かいたいが暗鬼の猛攻が止まらない。時行はこの状況を打破する何かがないか探す。すると、時行の前に小さな光が通った。その光を追って見るとシャンデリアが目に止まった。吊り下げられている鎖に光が集まる。時行は深呼吸した。そして、光に向けて弓矢を構えた。
「御ぶちのめせ!」
時行が放った矢は鎖を破壊した。その結果、シャンデリアが落下した。暗鬼は驚き逃げる。なんとかシャンデリアに押し潰されずに済んだが隙が生まれた。そこに時行が間髪入れずに矢でライフルを撃ち抜いた。
「あのガキ、まさかシャンデリアを落とすとかいかれてんのか!?」
「わしの子だからな!」
暗鬼に両津がのしかかる。拳銃を取り上げ両腕を抑える。
「凄いな時行。鎖を矢で貫くのか。」
「顕家卿を真似ただけです。」
時行が両津のところへと歩く。暗鬼の鬼仮面を取る。両津はスマホを取り上げ開く。蛮鬼や張鬼の他に怨霊鬼が電話帳に入っていた。
「おい、正木繁。この怨霊鬼は誰だ?」
「言うと思うか?」
「そう。なら…」
そう言って両津はワサビやカラシのチューブなどを取り出した。
「おい、なんだそれは?」
「ワサビにカラシにタバスコだが。」
「それをどうするつもりだ?」
「もちろん。こうする。」
そう言って両津は正木を拷問し始めた。その途中、スマホが鳴ったので代わりに時行が出る。
「はい。」
『私だ。海パン刑事だ。』
海パン刑事からの電話に時行は嫌な顔をする。両津がスピーカーにしてくれと言うのでスピーカーにして両津にも聞かせる。
「どうした?」
『たった今藤村という男を保護した。』
「はぁ!?」
両津が聞く。海パン刑事はその経緯を話し始めた。
呪鬼がライフルを構えながら歩く。そこに海パン刑事が上から飛び降りてキックした。
「《海パンキック》!」
「なんだこいつ!?」
ライフルが蹴り飛ばされ呪鬼はナイフを取り出す。そのに後ろから鼻血が垂れた状態のボルボが来て呪鬼の首にチョークスリーパーした。呪鬼はバタバタ抵抗するがやがて気絶した。
「なんとか戻ったぞ。」
「これで残るテロリストは…」
その時、音がした。ボルボが警戒して探る。どうやら、音は非常階段に通じる扉の奥からのようだ。ボルボが扉を思いっきり開ける。そこには怯えた様子の藤村がいた。
「こ、殺さないでくれ!」
「誰だお前は?」
「お、俺は藤村って言うんだ。あんた達は…テロリストじゃないのか?」
「警視庁から応援として来た警察官だ。」
「た、助かった〜!」
安心したのか藤村は力が抜けて立てなくなっていた。
「お前はここで何をしている。」
「お、俺は宴会場で警察官とテロリストのゴタゴタの隙をみてここまで逃げてきたんだ。」
「そうか。一応、両津君に連絡しておこう。」
こうして、海パン刑事は両津に経緯を話した。
「な…じゃあ、藤村はずっとそこにいたのか。」
『彼の話を信じるならそうだ。』
両津は考える。てっきり怨霊鬼は藤村だと思っていたからだ。状況的に怨霊鬼もスカイラグーンに乗り込んでいると思われるが該当する人物が思い浮かばない。
「じゃあ、こんなに頻繁に連絡出来る奴など…」
時行も考える。スカイラグーンに来てからのことを思い出す。感じた違和感がないか探す。すると、もしかしてとある人物のことが頭に思い浮かんだ。まさかと思い時行は走り出した。
「待て時行!」
両津が追いかけようとするとハトポッポ刑事が鼻にワサビやカラシのチューブが刺さりタバスコまみれになりながらも正木が逃げようとしていることを両津に報せた。
「あ!逃がすか!必殺《熊殺しスペシャル》!」
「ぎゃあああ!」
「《逆関節外し》!」
「ぐわぁぁぁぁ!」
「《極•振動の舞》!」
「あああああああ!」
時行は走る。ある人物を捜すため走った。
「どこだ…あの人はどこだ…」
しかし、世界最大の大きさを誇るスカイラグーン内を闇雲に捜しても見つかるはずがない。どうすれば…そう思った瞬間、さっき見た光がまた見えた。蛍のような小さな光。それが少しずつ増えていき集まっていき時行を導くように動いていく。時行はその光を辿る。すると、光が少女の形となった。
「雫…」
時行が呟く。雫はヘリポートへと続く階段を指さした。時行が瞬きした時、雫も光も消えていた。あれは何だったのか?幻なのか?それでも時行は雫を信じてヘリポートへと向かった。
そのヘリポートに金色の鬼仮面を着けた人物がいた。側には気絶している中川もいる。見下ろすと誰もいない街が不気味な静けさを醸し出す。
「後、30分ってところか。」
「ここにいたのですね。怨霊鬼さん。」
怨霊鬼、そう呼ばれた金色の鬼仮面を着けた人物が後ろを振り返る。そこに時行がいた。スカイラグーンがあべのハルカスに激突するまであと30分…