新葛飾署配属2日目、椎名蘭が他の婦警と一緒にパトロールしていた。すると、駐車違反の車を巡って小町と奈緒子が2人組の男と言い争っていた。
「1分も停めてねぇだろ!」
「既に10分以上経ってるでしょ!」
「それに1分だろうが1秒だろうが停めた時点でアウトよ!」
「ふざけるな!」
「絶対動かさねぇぞ!」
「動かせるものなら動かしてみろ!」
2人組の男が小町達の邪魔をする。すると、眼鏡を外した椎名が車に足を着け蹴り飛ばした。それを見た小町達が唖然とする。
「動かしたぞ。文句ねぇよな?」
「え、ええ…」
「え〜と、椎名ちゃん…よね?」
「はい。椎名蘭です。」
「あんたがやったこと、凄い迷惑になってる。」
小町が指差す方向を見る。椎名が蹴り飛ばした車が他の車にぶつかったり道路の真ん中で停まっているため交通被害が増えていた。それを見た椎名は眼鏡を掛け凄い量の冷や汗を掻きアハハと笑っていた。
「配属されてから2日連続で始末書とは…」
新葛飾署では椎名のことを聞いた屯田署長が頭を抱えていた。
「彼女は両津君を目指しているのか?」
「さすがに配属2日目でクビにすると周りの目も厳しくなるでしょうし…」
一緒にいた大原部長も頭を抱えている。すると、屯田署長が提案をした。
「なら、いっそのこと両津君に面倒を見てもらうというのはどうだ?」
「署長、お言葉ですがあの両津に任せると問題しか起きないのでは?」
「ボーナスをちらつかせればいくら両津君でも真剣に教育するだろ。」
屯田署長が1回試しにと大原部長に言う。大原部長は不安しかないが屯田署長の提案に乗ることにした。
「わしが教育係!?」
時行にベーゴマを教えていた両津が驚く。
「そうだ。一気に署員が増えたからな。教育係が少ない。それに彼女は配属されてから2日連続で始末書を書くことになった問題児だ。お前とそっくりじゃないか。」
両津は目を反らす。
「とにかく、彼女の教育係を両津、お前に任命する。上手く出来ればボーナスに影響が出るぞ。」
「やりましょう!」
両津が教育係になったことで椎名は葛飾区亀有公園前派出所に配属することになった。両津は教育係と言っても何すればいいのか分からない。とりあえず、時行と一緒にベーゴマの遊び方を教える。大原部長が殴る。
「バカモン!何を教える気だ!」
「教育係って言ったって大したこと教えるわけじゃないでしょ!」
(心配しかない。)
椎名は時行を見る。その目は恋愛に似た感じをしていた。時行はそれを察知してそそくさと休憩室へと逃げた。椎名が目を丸くして止まった。
「まずパトロールでも教えてやれ。」
大原部長が両津と椎名を無理矢理パトロールへと出した。
「はぁ、署長の命令とは言え心配しかないぞ。」
大原部長はため息をつく。
「あの人はどんな人なのでしょうか?」
「さぁ。まだ、会って2日だから分からん。」
「一応、昔はヤンキーだったと本人が言ってましたね。」
時行の質問に中川が答える。時行は椎名に興味を持ち2人の後を追った。両津と椎名は商店街をパトロールしている。その様子を見て商店街の人々がコソコソ話している。
「何かあったのでしょうか?」
「わしが他の女と歩いてるだけで噂になるところだ。気にするだけ無駄だ。」
2人の後を時行がついて行く。電柱の陰に隠れ2人を観察する。
「先輩…」
「わしのことは両津先輩と言え。先輩だけだと中川や本田と紛らわしくなる。」
「わ、分かりました両津先輩。」
「それで、お前は何故警察官になった?」
両津の質問に椎名は1回黙るも答えた。
「ヤンキーしていた頃に東京で絡まれたことあるんです。その時に助けてくれた女性警察官に憧れて…と言ったところでしょうか。」
「よくあるタイプか。」
「両津先輩は何故警察官に?」
「わしは体力を買われてあれよあれよと警察官になっていた。」
両津が警察になった理由を聞いて唖然とする椎名。そんな時に風が吹き落ち葉が眼鏡に着いた。落ち葉を取ろうと眼鏡を外す。そこに両津が振り向いた。
「そう言えば…」
「あん?何ガン見してだこら!」
「両さーん!」
椎名が両津を蹴り飛ばす。時行が叫ぶ。蹴り飛ばした後に気付き眼鏡を掛けて両津を追いかける。両津は壁に頭から刺さっている。
「お前は眼鏡を絶対に外すな。いいな?」
「わ、分かりました。」
両津が体中痛がっている。椎名はまたやってしまったとトボトボ歩いていた。その時、前を歩いていた女性のバッグを男が引ったくった。
「ひったくり!」
「わしの目の前でやりやがったな!追うぞ!」
「はい!」
2人は急いでひったくり犯を追いかける。その時に両津は気付いた。椎名は意外と身体能力が高い。両津の走りについて行っている。ひったくり犯との距離がだんだん短くなっていく。椎名が素早くひったくり犯に駆け寄り捕まえた。
「ナイスだぞ椎名。お前…」
両津が駆け寄る。すると、椎名が眼鏡を外していた。両津と目が合う。
「…じろじろ見んな!」
「両さーん!?」
「両津先輩!」
またしてもやってしまったと椎名は震えた。
「あの…これ、どう見ても連行されているんですが…」
「連行してる。」
ひったくり犯を他の警察官に引き渡した両津は椎名の両手に手錠を掛けロープで繋げていた。時行もその光景を見て両津が椎名を連行しているように見える。
「さすがに人に言われたことは守れ。」
「すみません。ヤンキー状態の方が動けるので…」
「それなんだがお前、何かスポーツやっていたのか?」
「一応、空手と陸上なら。」
「だから運動神経がいいのか。」
周りの目が気になる。椎名は恥ずかしくなり顔を埋める。それがさらに犯罪者感を出している。眼鏡が曇っている気がする。なんとなく気になり眼鏡を外して拭く。そこにまた両津が振り向く。
「忘れてた。お前は…」
またまた椎名と目が合う。
「何ガン飛ばしてんだこらぁ!」
やっぱり両津を蹴り飛ばすヤンキー椎名。今度は椎名の両手を後ろ手にして手錠で拘束し首にロープを繋げた。
「あの…これもう連行じゃなくこういう変態プレイにしか見えませんが…」
「こうでもしねぇとまた蹴り飛ばされるからな。」
「うわぁ…」
時行の目が冷たくなる。周りの人の目も冷たくなる。公園に入る。疲れたとベンチに座る。両津が自販機で飲み物を買いに行く。椎名は拘束されたまま足組みして空を見上げる。
「あ〜、何してんだろ私…」
椎名のところに子供達がやってきた。みんな、今の状態の椎名に興味津々のようだ。
「何やってんの?」
「変な人〜!」
「あ、えっと…これは…」
椎名がなんて説明しようか迷っている時、子供の1人が眼鏡をとった。それと同時にみんな逃げる。両津がペットボトルを買って戻って来る。そこには豹変してヤンキー状態の椎名が子供達を追いかけていた。
「てめぇ!窃盗罪だぞこらぁ!」
「止めろバカ!」
「グエッ!」
両津がロープを引っ張る。椎名はうめき声をあげて倒れた。
「私は鵜か!」
「こいつの教育係、大変だぞ。」
両津が椎名を起こす。ふと、下を見るといつの間にか眼鏡が置いてあった。時行が子供達から取り返してくれたのだ。両津は眼鏡を椎名に掛ける。ベンチに戻って水を飲ませる。
「落ち着いたか?」
「は、はい。すみません両津先輩。」
なんとか落ち着く椎名。そんな椎名に両津が聞く。
「聞きそびれたがお前が警察官になった理由は分かった。で、何故新葛飾署なんだ?時行目当てか?」
「うっ…は、はい。簡単に言えばそうです。」
椎名は理由を話し始めた。
「私はどちらかと言えば可愛いのが好きなんです。でも、家庭の事情でグレてヤンキーになった時にカッコいい方も好きになりまして。それで、カッコ良かった警察官になったんです。でも、まだ可愛いが諦めきれず…」
椎名は目を反らす。
「そんな時でした。スカイラグーンの生放送を見たんです。テロリストと戦う時行君を見てカッコいいと思いました。私もこんな風になれたらと…そして、最後のあの笑顔。あれに一目惚れでした。カッコいいと可愛いを両立した時行君に会いたい。その一心で新葛飾署に来たんです。」
「さすが時行。あの歳でカリスマ、人望がカンストしてる。」
両津がコーヒーを飲みながら時行を褒める。それを時行が陰から聞いていた。椎名が両津に聞く。
「両津先輩と時行君の関係ってなんですか?」
「親子だ。」
椎名が信じられないという顔をして両津を見る。
「血は繋がってないぞ。両親を亡くした時行の親代わりになっている。」
「そ、そうなんですね。」
ホッとする椎名に両津はイラッとする。時行はクスクス笑うと先に派出所へと戻って行った。両津もそろそろ戻るかと立ち上がった。
「まずはその二重人格をなんとかせんとな。」
「二重人格というよりメリハリ…」
「二重人格だ。」
「は、はい。」
両津は帰りながら考える。眼鏡以外で椎名を大人しくさせる方法…さっきの会話を思い出しいい方法を思いついた。
「どうでした先輩?」
派出所に帰った両津達。どこかに行っていた中川が戻って来るなり聞いた。
「大変だったぞ。本田の二重人格、纏の男勝りかつ勝気の性格、マリアの蹴り、有栖川の度胸、そんでわしの喧嘩っ早さのハイブリッドだ。」
「凄まじい新人が来ましたね。」
「それでその新人はどこだね?」
戻って来た大原部長が聞く。両津は休憩室を指差した。中川達が休憩室を覗く。
「時行様、時行様、時行様…尊い、尊い、尊い…」
「誰か助けてくれませんか!この人怖いです!」
人前でしてはいけない顔で時行に抱きつき擦りつく椎名。
「両津、これは?」
「椎名の二重人格を治すために時行成分を摂取させてます。」
「また、時行君の苦労が増えるわけか。」
必死に椎名から逃げようとする時行を見て不憫に思う大原部長達であった。