逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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渚の心

「一緒に鬼ごっこやりましょう!」

「やだ。」

 

 翌日、時行は何度も渚にアタックするも全てかわされる。その姿を弧太郎達が後ろから見ている。

 

「よく飽きもせずやるなぁ。」

「諦めが悪いのも彼の長所なのでしょう。」

 

 亜矢が時行を誘ったので今回は渋々諦める。渚は遠くなって行く時行の髪を眺め続けている。時行達は一緒に校庭に行く。その途中、亜矢が時行の髪を撫でる。

 

「時行君って凄い綺麗な髪してるよね。」

「ありがとうございます。」

「まるで女の子だぜ。」

「別に髪の長さで性別が決まるわけではない。髪の短い女がいるのなら髪の長い男がいても不思議はない。」

 

 時行の髪を触りまくる亜矢達。雪長が弧太郎の言葉に返す。そこで時行は思い出す。渚の髪も長い方だった。そのことが気になり雪長に聞いてみる。

 

「さぁ?彼は自分のことをあまり話そうとはしませんので。私の言葉も届いてないでしょう。」

 

 雪長が残念そうに語る。それから、時間が過ぎて行き放課後になる。弧太郎達と一緒に帰っていると時行がふと上を見上げた。屋上に誰かいる。渚だ。時行は渚を見つけると適当な言い訳をつけて弧太郎から離れた。そのまま屋上に行く。渚は1人屋上で空を見上げていた。

 

「毎日ここにいるの?」

「だったら何?」

「私も高いところが好きなのだ。」

 

 時行が渚の隣に座る。渚は顔こそ嫌な感じを出すが離れることなく時行を見ている。気にはなっているが心を閉ざしているみたいだ。

 

「何の用?」

「君と友達になりたくて。」

「必要ないよ。僕がいなくても君には既に友達がいるじゃん。」

「君ともなりたい!」

 

 時行がグイグイ来る。渚は迷惑だと思いつつも気になったことを聞く。

 

「君は何故髪が長いんだ?」

「これか。これは生命の現れだ。この髪は大切な人に切ってもらいたい。そう思っているだけだ。」

「変わってるね。」

「君も髪が長い…」

 

 時行が言い切る前に渚が睨む。

 

「好きでなったわけじゃない。母がこうしろというからやってるだけ。」

 

 渚にとって自分の髪は好きじゃないらしい。

 

「私は好きだなあ。」

「君はたらしかい?」

「それはよく分からないが雪長が言っていた。長い髪の男もいてもいい。」

「それ、僕も言われたけどそういうことじゃない。頼むから1人にしてくれないか?僕に友達はいらない。」

 

 ドライな渚に時行は困惑する。下を向いて考える。結構高い。下には一応、木や砂場がある。それを見た瞬間、時行は閃いた。立ち上がり渚を見る。

 

「そうだ!もし君をびっくりさせれたら友達になってくれる!?」

「何それ?まぁいいよ。多分無理だけど。」

 

 渚がそう言うと時行は立ち上がり何の躊躇も無く屋上から飛び降りた。突然のことにびっくりして立ち上がる渚。時行は壁や木を上手く蹴って着地するとドヤ顔で立ち上がった。びっくりしすぎて開いた口が塞がらない。それは偶然目撃していた弧太郎達も同じだった。そこに眼鏡をかけた男性教諭が来る。

 

「北条君!?君、何してるんだ!?」

「いやー、昔からよくこういうのやってましたので…」

「昔からなの!?どんだけアクティブなんだよ!?」

 

 男性教諭が屋上と時行を交互に見る。その時に屋上からこちらを見ている渚に気付いた。

 

「潮田君!まさか君もしようとか考えてないよね!?」

「しません!」

「じゃあ、早くそこから離れなさい!」

 

 男性教諭は時行を連れて渚と一緒に生徒指導室でたっぷり説教した。説教が終わり生徒指導室から出てくる2人。渚がげっそりしながら時行を見る。

 

「なんであんなことしたの?」

「君をびっくりさせたかったから。」

「確かにびっくりしたよ。でも、そんなもののために自殺行為とか頭おかしいよ。」

「よく言われる!」

 

 嫌味のつもりで吐いた言葉に時行は元気に答える。

 

「私は死ぬのは怖い。逃げるのが好き。周りからは変わった子って言われ続けた。私は死なないよ。逃げて生きてまた逃げる。これが私だ。」

 

 時行を見て呆れる。

 

「君の所為で屋上に鍵がかかるだろうね。せっかくの拠り所だったのに。」

「なら私が君の拠り所になろう!」

 

 時行が前に出て手を伸ばす。渚は靡く髪を見る。自分の髪を触って比較する。渚が手を伸ばそうとする。そこに弧太郎が走ってきて飛び蹴りした。時行は飛び蹴りを避ける。

 

「何考えてるんだ!?心臓止まるかと思ったぞ!」

「私はあれぐらいでは止まらないぞ。」

「俺達の心臓だよ!」

 

 仲良くしている時行達が羨ましく思えてくる。そこに雪長が来る。

 

「変わった子ではありますが…あれも彼の魅力の1つでしょう。だから、君も手を伸ばした。」

 

 雪長が渚の手を見る。握手しようと伸ばした手だ。渚は手を引っ込め少し恥ずかしそうに赤面する。

 

「約束したから。その約束を破るわけにはいかないから伸ばしただけだ。か、勘違いしないように!」

 

 渚はそそくさと去って行く。雪長はその後ろ姿を見て微笑む。昨日とは違いどこか嬉しそうな感じがしていた。

 

(潮田君の心を開かせたのか。北条時行…不思議な魅力を持つ少年。君になら…)

 

 雪長は親指で眼鏡をクイッと上げると楽しそうにしている時行を見て微笑んだ。

 後日、屋上に鍵がかけられたのは言うまでもない。

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