「ハッピー…ハロウィン!」
派出所に時行達がやってきた。ミイラ男やドラキュラ、魔女の仮装をしている。
「もうそんな時期か。」
「コーチ!トリックオアトリート!」
「待て…確かこの辺りに…あったあった。ほら、飴やる。」
「やったー!」
両津が引き出しの奥にあった飴を弧太郎達に渡す。時行が両津にミイラ男の仮装姿を見せる。
「ど、どうでしょうか?」
「似合っているぞ。」
時行は恥ずかしそうに顔を赤らめる。弧太郎が中川や麗子にもトリックオアトリートと言うのでクッキーやチョコをもらった。
「でも、驚きっすよ。時行、ハロウィン知らなかったから。」
「時行は家が厳しくてそういう祭りに行けなかったみたいだし最近はハロウィン自体が廃れていってるしな。」
両津が答える。
「元々ハロウィンはヨーロッパの祭りであの世から来るお化けと同じ格好して逃れようという習慣から始まった。それがアメリカや日本に伝わった時にいろいろと変わっていった。」
「そうなんすね。」
「正確には死者の魂が家族のもとへ戻ってくるとともに悪霊も一緒にやってくると考えられ、その悪霊に人間だと気づかれないように、火を焚いたり仮面を着けたりして身を守ったといわれています。」
両津の説明に中川が追加する。
「最近は渋谷でおふざけやマナー違反が増えたから規制されてどこに行ってもハロウィンと騒ぐ奴が減っていった。」
両津が去年のニュースをスマホで検索し時行達に見せた。
「確かにゴミのポイ捨てや交通妨害などか問題視されていましたね。」
「どの祭りもそうだがマナーを守らないと規制され消えていく。伝統を残したいならまず伝統に合わせたマナーを守ることが大切だ。」
「はい!コーチ!ためになるっす!」
ハロウィンを楽しんでいる時行達。それを見た両津が中川に提案した。
「中川、今年のハロウィンを渋谷で復活させれないか?」
「厳しいですね。先輩も言ってましたけど規制が厳しくなって今じゃ仮装すら禁止されていますから。」
「そこはわしでなんとかしよう。」
両津は決めると時行達を新葛飾署に連れて行った。みんな、仮装していれ時行達を見て興奮している。時行達は署員達にトリックオアトリートと言ってお菓子をもらっていく。
「トリックオアトリート!」
「…すみません。お菓子ないので私を好きにいたずらして構いません。」
「そこまで重いの!?」
時行の前に土下座する椎名を見て渚がツッコむ。両津はその間に屯田署長に直談判しに行った。
「渋谷でハロウィン?両津君、今渋谷ではハロウィンどころか仮装すら禁止されているんだよ。」
「それを解禁するんです署長!今、マナーのなっていない若者の急増でなんでも禁止にしたら伝統は潰えてしまいます!昔はみんなちゃんとルールやマナーを守ってハロウィンを楽しんでいます。そのハロウィンを復活させましょう!このままですと三社祭も祇園祭も禁止になるつまらない日本が来ますよ!」
「し、しかし、これは新葛飾署だけでは…」
「なのでわしが渋谷署に直談判しに行きます!ここでちゃんとしたハロウィンを実行出来ればまた規制が緩和されたハロウィンを楽しんでいくことが出来るんですよ署長!」
「わ、分かった!そこは君に任せよう。」
「はい!」
両津は早速渋谷署に話を通す。まず、警察官も仮装して威圧感を出さずに監視するようにする。次に気球に乗り上空から監視する。さらに、時間帯を制限することで監視しやすくした。
両津の提言で渋谷署も納得し渋谷ハロウィンを開催することにした。ハロウィン当日になると多くの人達が仮装してやってきた。人々が空を見上げる。そこにはジャック・オ・ランタンの形をした気球が飛んでいた。
「絶景だな。よく見える。」
気球には両津と時行と椎名がいる。時行は悪魔、椎名は猫の仮装をしている。椎名が火の調整をして気球を飛ばしていた。両津が拡声器を取り出す。
『え〜…ハロウィン前夜祭としてここに集まって楽しんでほしいと思いますが中にはマナーを守らない者もいます。そういう者には…』
両津が双眼鏡で覗く。その先には路上で飲酒している集団がいた。路上飲酒は禁止されているので明らかに違反である。両津は時行に指示を出す。時行は弓矢を構えて放つ。矢は缶を貫通しそこからビールが溢れてくる。
『悪魔の矢で射った後に連行します。』
飲酒していた人達が青ざめる。そこにオオカミ男の仮装をしたボルボとフランケンシュタインの仮装をした左近寺が来て連行した。
「相変わらず凄い腕だな。」
「どんな人生送ったらあの歳で弓が上達するんだ?」
「ナイス時行。」
「時行様の生弓矢…初めて見た。」
時行の後ろで椎名がキラキラした目で見ている。時行の弓矢の脅しが効いたのか大きなマナー違反は起こることはなかった。この催しは成功と言えるだろう。
翌日、ジャック・オ・ランタン気球の警備が新聞に載った。それを見た時行達は両津を尊敬の眼差しで見ていた。
「凄いっすよコーチ!」
「いつも発想力には驚かされますね。」
「それほどでもある。」
時行達に囲まれて満更でもない様子。大原部長達も新聞を見て両津の提案が成功したのを知る。成功したのだからどうこう言うつもりはないがどこか不安に感じている。
「まぁ、やり方はともかく結果が出ているのならいいが…」
両津のところに電話がくる。
「はい!……はい。…分かりました!…部長!ハロウィンバルーンの依頼が来たので本官は失礼します!行くぞ時行、椎名!」
「ええ!?」
「私もですか!?」
「待て両津!お前の本職はこっちだろうが!」
大原部長の言葉など聞こえず両津は時行と椎名を連れて出て行った。不安が大きくなる大原部長達。
両津達はハロウィンバルーンと名付けたジャック・オ・ランタンの形をした気球に乗り寂れた商店街の上を飛ぶ。商店街からハロウィンを盛り上げてほしいという依頼を受けてのことだ。もちろん、代金はちゃんともらっている。
「両津先輩、これ本当に警察官の仕事なんですか?」
「何言ってる。イベントの治安を守るのは立派な警察官の仕事だぞ。」
両津が下を覗いて盛り上がっている商店街を見る。そこで両津は新たな商売を思いついた。
翌日、別の場所でハロウィンバルーンを上げる。下には“ハロウィングッズ販売中”と書かれてあった。すると、両津が拡声器で参加者達に商売を始めた。
『え〜、只今からハロウィングッズやお菓子の販売を始めます。注文は今から下ろすタブレットにお願いします。』
両津がワイヤーに着けたタブレットを降ろす。そこにどんどん人が集まり次々と注文をしていく。ある程度注文が集まると両津はタブレットを回収した。
「え〜と、クッキー10、チョコレート13、飴21…」
「両さん、これはなんですか?」
「時行、お前が降りて販売しろ。」
「ええ!?」
両津は時行に着けたハーネスをワイヤーと繋げると商品が入った箱と貯金箱を渡して時行を降ろした。
「え、えっと…」
「時行君だ!」
「本物だ!可愛い!」
参加者達は時行に群がり買物を始める。時行は両津の言う通りに商品を渡し代金を回収する。商品が全て渡し終わると両津が上げまたタブレットを降ろす。これを繰り返し商品はあっという間に完売した。
「よし!これでかなり儲けたぞ!」
「両津先輩。本物にこれが警察官の仕事ですか?」
「もちろん。」
両津はさらに調子に乗りハロウィンバルーンを大きくし様々な機械も導入し本田も巻き込み1つの店として運営を始めた。仮装した人達で賑わう場所にハロウィンバルーンはやって来た。
「両さん、この時行ブロマイドってなんですか?」
「お前のコスプレをカードにした物だ。」
「両津先輩、いくらですか?」
「1つ500円。」
「10枚買います!」
「椎名さん!?」
両津達はこの前と同じようにタブレットで注文してもらい時行が直接接客した。儲けは上々。お菓子や仮装道具、時行のハロウィンコスプレブロマイドが飛ぶように売れた。時行を引き上げタブレットを降ろす。その瞬間、突風が吹きハロウィンバルーンが流された。
「まずい!」
流されるハロウィンバルーン。タブレットを着けたワイヤーが電線に絡まってしまう。急に止まるハロウィンバルーンの中で両津達は転けた。
「こ、これで止まったのか?」
「せんぱ〜い!めちゃくちゃになってますよ!」
「今すぐ直せ!」
すぐに片付ける両津達。そこにまた突風が吹く。今度は電線に沿って流される。その先には変圧器がある。
「ヤバい!早くワイヤーを引き上げろ!」
「無理です!絡まってます!」
「なら、切り離せ!」
「どうやって!?」
ワイヤーが徐々に変圧器に近付く。そして、ワイヤーが他の電線や変圧器に触れた瞬間、ものすごい電流が両津達を襲った。ビリビリくる電流に両津達は痺れる。それと同時に機械が爆発、炎上しバルーンにも燃え移った。
「せんぱーい!燃えてます!」
「見りゃ分かる!時行!消火!」
「え、ええっと…これどうやって使うのですか?」
「そうだった!」
両津が消火器を持って消火しようとしたところにまたまた突風が吹く。ワイヤーを繋げていたリールが外れ吹き飛ぶハロウィンバルーン。火の粉を撒きながら飛んで行く。
「おい!なんでもいいからまず火を消すぞ!椎名、水かけろ!」
「うるせぇ!今それどころじゃねぇだろ!」
「眼鏡外れてる!」
両津達が叫ぶ。操縦出来なくなったハロウィンバルーンはグルグル回りながらとうとう近くのビルにぶつかり爆発した。売上や売物が夜空を散乱した。
後日
「最悪のハロウィンって大々的に新聞に載りましたね。」
「ハロウィンのイメージダウンにならないか心配ね。」
「あいつが1番の厄だったな。」
3面まで載った両津達の失態を見て呆れる大原部長達であった。