ある日、両津が椎名とパトロールしていると声が聞こえた。普通の会話の声じゃない。気になって声がした方向に行く。そこには黒塗りの高級車に乗っていたであろう男達が時行に何か詰め寄っていた。
「頼んます!一緒に来てください!」
「で、ですから私では…」
時行がどうしようか周りをキョロキョロ見回していると両津を見つけた。
「両さん!」
「どうした時行?…ん?お前ら、御所河原のところの政じゃねぇか。」
「りょ、両津!?」
政が驚く。時行はすぐに両津の後ろへ逃げた。
「し、知り合いなのですか?」
「まぁな。」
「両津の知り合いなら話が早い。頼む!組長が来てほしいと!」
「どうします両津先輩?」
「わしが同行するならいいぞ。」
時行が両津を見る。
「両さん?」
「安心しろ。御所河原のところならわしがいれば問題ない。」
時行は両津を信じて一緒に行った。大きな屋敷に入ると強面で着物を着た男が組員達に囲まれて座っていた。そこに堂々と歩いて行く両津。
「久しぶりだな御所河原金五郎之助佐ヱ門太郎。」
「ほう。その名前を言えるとは…久しいな両津勘吉。」
「名前、長くないですか?」
両津が御所河原の前に立つ。
「今回は何の用だ?時行を無理矢理連れて来ようとしたそうじゃねぇか。」
「これだ。」
そう行って御所河原は組員にポスターを開かせた。『恋愛魔法少女マジカルラブレターズ』というアニメのポスターのようだ。
「この恋愛魔法少女マジカルラブレターズに出ている和達恋に似ているのだ。是非彼女に恋のコスプレをしてほしい。」
御所河原が指したキャラクターは確かに黒髪、ポニーテール、クール系、小学生と時行と似ている部分が多かった。しかし、1番違うところを両津が指摘した。
「御所河原、時行は男だぞ。」
「な!?」
組員達が驚愕する。よーく時行を見る。美少女にしか見えない。組員達が驚愕しているが御所河原は冷静だった。
「それでも構わん。」
「いいのですか!?」
今度は時行が驚く。
「私は男でその方は女性ですよね!?」
「見た目が可愛いなら問題ない。」
「問題しかないですよね!?」
「ここで1句出来たぞ。」
「私の話は!?」
時行の目が丸くなる。
「秋アニメ だいたい見るは 異世界ものと ハーレムものと 魔法少女もの」
突然の俳句に辺りがシーンと静まる。
「馬鹿野郎!静まるな!褒めろ!」
「素晴らしいです!」
「さすが組長!」
急いで組員達が褒める。
「さすがです組長。秋アニメという今の時代にあった季語を使い最近のアニメ情勢を見据えた1句。ハンパじゃありませんよ。」
「そうだろう。」
「え、そうなの?」
「しっ。」
政が御所河原をよいしょする。椎名が疑問に思うも両津が止めた。
「ここでもう1句…」
「話が進まん。」
「そうか。残念だ。」
両津が止める。御所河原は組員に恋のコスプレ衣装を持ってこさせた。それを時行に見せる。時行は首を横に振って拒否する。
「嫌です!」
「どうしても嫌か。なら…」
「どんな脅しにも屈しませんよ私は。」
「このマジカルハート、マジカルラブリー、マジカルパッションのハッピーフォームのフィギュアをやろう。」
「欲しい!」
時行と椎名がずっこける。
「両さん!?」
「いいか時行。あれはDVD初回限定盤に付属している抽選券から当選した者だけが手に入れる10体しか無い貴重なフィギュアだ。マニアに売れば50…いや100万出しても欲しいって言う奴が出て来るレベルのフィギュアだぞ。」
「全然分かりません!」
「わしが付いている!やるぞ!」
時行がどんなに拒否しても両津がやらせようとする。
「そ、そもそも私は男です!あなたも女性の格好をしろと言われてするのですか!?」
時行が御所河原に詰め寄る。そこに両津がため息をついて時行の肩を叩いた。
「時行、御所河原はするぞ。」
「え?」
「そうだな。確かに恋だけでは物足りん。ここは私が主人公の姫島ハートになろう。」
「ええ!?」
「両津、お前は八十小路愛をやれ。」
ずっこける両津。一安心する椎名。
「何故わしなんだ!?椎名がいるだろ!」
「彼女には敵役のフタマタ翔のコスプレをしてもらいたい。」
椎名が引き攣る。御所河原が見せたキャラクターは際どいボンデージの格好をした女だった。両津達は御所河原と共に屋敷の中へと消えて行く。それからしばらくして組員達がアニソンを流す。
「煌めくハートでロックオン!」
「こ、こ、恋する乙女にロックオン!」
「愛ある手紙を届けます!」
「「「私達!恋文の魔法少女!マジカルラブレターズ!」」」
カッコよく決める両津達。しかし、時行は顔を真っ赤にさせていた。
(た、助けてください!恥ずかしすぎて逃げたいです!)
「時行様以外キツい。」
時行が目をグルグルさせている。フタマタ翔のコスプレをした椎名が冷たい視線を送る。組員達は拍手してあるが時行はそんなもの要らないと両津の後ろに隠れた。
「よし。この格好で秋葉原に行くぞ。」
「嫌です!それは止めてください!」
「私も嫌です!」
時行と椎名が抵抗する。両津もこの格好で外に出るのは嫌なようですぐに着替えようとするも政に止められた。
「そもそもコスプレなんてアニオタの極致ですよね!」
「待て椎名。それは違うぞ。」
そこに両津が反論した。
「確かにコスプレは子供が抜けてない大人やアニオタがやるもんだと昔は言われてきた。しかし、世界中でドラゴンボールが大ヒットし2019年の鬼滅の刃でコスプレブームが到来した。その結果、日本に来る外国人が増え着物や刀が飛ぶように売れた。そのおかげで日本の経済が助かったのだ。」
「そんなに力説しないでも。」
魔法少女のような着物とフリフリのスカート姿をした両津が詰め寄る。それが怖い。それでもこの姿で秋葉原は嫌だと言う。それを聞いた御所河原が違う服を持ってきた。毛皮のビキニだ。
「なら、“異世界獣人サーカス”のレボアのコスプレはどうだ?」
「どれだけあるんですか?」
「これとそれ、どっちがいい?」
「どっちも嫌!」
この場をなんとか切り抜けたいと時行が両津に懇願する。すると、両津は恋愛魔法少女マジカルラブレターズを調べる。すると、ニヤリと笑った。
「なぁ。椎名がコスプレしているキャラクター、その姿だと眼鏡いらないだろ。」
「うむ。確かに。」
両津が御所河原に提案する。御所河原は提案に乗り椎名に眼鏡を外すように言う。椎名が断ると政が近付いて眼鏡を外した。
「正にフタマタ翔だ。そのコスプレで秋葉原に行こう。」
「…はぁ?」
「ん?」
「こんな恥ずかしい姿で行けるわけねぇだろぉ!」
ヤンキーモードになった椎名が暴れる。組員達を蹴り飛ばし木を蹴りで折り雄叫びをあげる。
「その暴れっぷり…正にフタマタ翔だ。」
「今のうちに逃げるぞ。」
「椎名さんは?」
「時間が立てば帰ってくる。」
その隙に両津と時行が御所河原のところから逃げた。
後日
「アニメの聖地が増えるにつれコスプレ文化も浸透する。今の時代は誰でもコスプレが出来る時代だ。どこでもコスプレ祭りをしているからな。」
「私の普段の姿もコスプレというものになるのですね。」
諏訪にいた頃の服装をした時行。両津が撮影した写真をネットに載せる。可愛いの連続だ。時行がおぉ〜と見ている。中川も一緒にに見ている。
「そう言えば椎名さんはどうしたんですか?」
「「あ…」」
中川の一言で2人は椎名を思い出す。そこに椎名が来た。肩や太腿が露出している際どいメイド服姿だ。椎名は顔を真っ赤にさせている。
「あれからあの御所河原とかいうヤクザに制服やらチャイナ服やら訳分からん変態衣装まで着せられましたよ。私を置いて逃げましたよね?」
「い、いやぁ〜、お前ならすぐに戻ってくると思ってたのだが…」
「は、はい!決して忘れていたわけではありません!」
「椎名君、この数日は欠勤扱いになってるぞ。」
眼鏡を外し両津と時行を睨む椎名。その椎名に厳しい一言を浴びせる大原部長であった。