新葛飾署では新しい試みが行われていた。新葛飾署の前に集まる両津達。その後ろで時行が見学している。壇上には屯田署長と中川がいた。
「今日は新たな試みとしてAIによる適性診断で署長を含む役職をシャッフルして決めたいと思います。これは既に多くの会社で実施されている取組みです。企業のマンネリ化防止、新たな自分の才能の発掘などが目的です。」
中川が説明する。両津は欠伸しなから聞いていた。中川が新署長を決める。目の前のモニターに新署長になる署員の名前が出る。
『両津勘吉』
その文字を見た瞬間、両津は吹き他の署員達は驚愕した。
「何故両津が…」
「中川君、これは何かの間違いじゃ…」
「い、一応実績、人格、人望で決めているのですが…」
「じゃあ何かの間違いじゃん!」
「そうだ!何1つ合ってないじゃねぇか!」
「うるせぇ!」
両津が壇上に上がる。
「お前ら人間よりAIの方が見る目あるというだけだろ!」
両津か演説する。自分が新署長になったからには警察というイメージを改革すると。反対意見も多数あったがAIの判断ということでとりあえず両津が署長になった。次に副署長を決める。
「まぁ、ここで大原君が副署長になれば両津君の手綱を握れるか。」
AIが判断した副署長の名前が表示される。
『北条時行』
「「「えぇ〜!?」」」
「おい!さすがに署員じゃない時行がなるのはおかしいだろ!」
時行が目を丸くして表示された自分の名前を見る。これには両津もAIに疑問を持った。中川が急いで調べる。
「た、多分ですけど以前1日署長をした時の時行君が登録されていたみたいです。」
「欠陥だらけだろそのAI判断。」
署員達から不満の声が出る。両津も最初はおかしいと発言するも後から時行が副署長なら自分が好きに出来ると考えた。
「中川、1回時行にやらせてみよう。」
「先輩!?」
「時行は軍を率いた経験のある将だ。意外といい結果になるかもしれん。」
両津が中川にコソコソ話す。中川も屯田元署長もとりあえずはこのままで行こうという結論に辿り着く。そのままAIによる判別が続いた。
翌日、早速署長になった両津は署長室で笑っていた。時行がお茶を飲みながら久しぶりの署長室を見回す。
「両さん。署長の仕事は分かりましたが副署長の仕事はどんなものなのでしょうか?」
「簡単に言えば補佐だ。署長であるわしの指揮のもと、警察署を監督する役割だ。ここのNo.2だぞ。」
「フムフム…雫みたいな役割ですね。」
雫が誰だか分からん両津だが時行が言うのだから理解はしているだろうと判断した。一方、屯田は亀有公園前派出所勤務になった。一緒にいるのは小町、残念、乙姫、丸井だ。
「なんで中川さんが交通課に行ったのに私はここなの〜!」
麗子の机にうつ伏せになって不貞腐れる小町。そこに乙姫がお茶を差し出す。小町はお礼を言って飲む。乙姫は屯田にもお茶を出す。
「ありがとう。」
「いえ。」
「そう言えばなんで僕は変わってないんだろう。」
丸井が呟く。
「AIが今いる場所が最適と判断したら変わらないこともあるらしい。風波君や早矢君が交通課のままだったり他の署員も交番勤務のままだったりだからな。」
「それってあのゴリラが署長に相応しいってこと!?」
小町がガックシする。その言葉に屯田は頭を抱えていた。新葛飾署内では総務課になった大原部長が働いていた。
「部長さん。どうぞ。」
「ありがとう洋子君。」
大原部長がお茶を飲みながら書類整理する。そこに中川が来た。
「部長、こちら。」
「うむ。」
「どうですか?」
「署内勤務になったのはいいが両津の部下というのが嫌な予感しかしなくてな。」
大原部長が複雑な心境を話す。
「部長、先輩の仕事を見てみませんか?」
「そうだな。一度見てみよう。」
大原部長と中川は麗子も連れて署長室の前に来た。そっと音を立てずに扉を開けて見る。
「両さん、この規則ですと民達の不満が募るばかりです。緩和しましょう。」
「よし、分かった。」
「逆にこの規則はもっと厳しくしてもいいと思います。」
「じゃあ、そうしよう。」
時行が両津が作った規則にいろいろと提言していた。その提言に従っている両津を見て大原部長達は驚いている。
「時行君が両ちゃんの手綱握ってるわね。」
「思ってたよりちゃんとしているな。」
「時行君は南北朝で数万人の軍勢を率いた将軍ですから人を導くノウハウがちゃんとしているのでしょう。」
「これなら問題ないかもしれんな。」
「そうね。」
大原部長達は気付かれないように去る。両津は時行のアドバイスを受けて規則を完成させた。
「よし!明日からここを改革するぞ!」
「はい!」
翌日
新葛飾署は両津の改革によって大きく変化した。まず、交通課の婦警は青いバニースーツ、男性はタキシードに変更、地域課の婦警は青いビキニ、男性はシャツとジーンズに変更した。
「恥ずかしすぎるぞカンキチ!」
「うるさい!まず、警察官の制服というイメージから変えていく!」
「あの、両津先輩。」
「両津署長だ。」
「両津署長!その…これは今の季節寒いです。」
椎名の意見に両津は網タイツを出した。
「安心しろ。海パン刑事から網タイツが支給されている。」
「さらに、変態になるだけじゃん!」
「喧しい!わしだってその変態になったことあるんだぞ!それぐらい我慢しろ!」
両津が纏達婦警に弾圧していると中川と風波がやってきた。2人のタキシード姿に婦警達は黄色い声をあげている。
「さすが!2人は似合っているぞ!」
「ありがとうございます。」
「交通課のリーダーを風波と麗子にする。地域課は屯田君と纏だ。今日から警察官のイメージを覆す!犯罪の抑制だけではない!市民から親しみやすい警察官になるのだ!」
「確かに警察官には見えないけど…」
「これ、完全にカジノだよな?」
文句を言っている署員達。しかし、両津の革命は早速結果を出した。
「すみません、13キロオーバーです。」
「はい…」
「ここ、駐車禁止ですよ。」
「はい!」
タキシードの風波に惚れて素直になる中年女性。バニーガール姿の早矢にメロメロになるチャラい男性。警察官に対するイメージが変わったことで文句を言ったりする人が減少、また気軽に交番に行ったり警察官に声をかける人も増えた。しかし…
「すみませ〜ん!信号を無視して…なんだ男かよ。」
「分かりやすくがっかりするな。」
「あの…写真は止めていただけないでしょうか。」
婦警に会いたいがためにわざと交通違反をする者や警察官を盗撮やストーキングする者が続出した。そんな状態に纏達は両津に抗議した。
「カンキチ!やっぱりこれはダメだって!」
「そうよ両ちゃん。」
「安心しろ。対策は考えてある。なぁ、時行。」
「はい!」
「時行、カンキチに任せて大丈夫なのか?」
「私は両さんを信じてますので。」
両津は早速違反者に対する厳罰化を開始した。信号無視や駐禁に対しては即座に罰金刑を科したり当て逃げ、轢き逃げ、煽り運転など悪質な交通違反者には規定の罰則に加えて免停かつ10年免許取得禁止にするなど過激ともとれる罰則を科した。盗撮やストーキング行為に対しても一度の注意を聞かなかった場合即座に逮捕する権限を持たせる。
「先輩、これするぐらいなら最初から制服にしません?」
「あまいな本田。これぐらい厳罰化しないとバカは何度でも繰り返す。」
両津のやり方に文句を言う人が増えても両津は気にしない。パトロールから麗子達が戻って来る。すると、時行がゴミ袋を出していた。
「時行君…じゃなかった副署長。それは私達がするわよ。」
「いえ。皆さんはパトロールというお仕事がありますので休んでいてください。私は警察官らしい仕事は出来ませんのでこういうことぐらいでしかお役に立てません。こんな私でも皆さんのお役に立てればと思いまして。」
「尊い!凄く尊い!」
「有能天使じゃん!あの無能ゴリラと正反対じゃん!」
麗子と一緒にいた婦警達が感動している。時行はゴミ出しを終えるとお茶をいろんな人に配って行った。
「どうぞ。」
「あ、ありがとうございます!」
「どうぞ。」
「ありがとう!」
「凄いな北条副署長。あの歳であんな献身的になれるのか。」
「何故、両津の子供になったのか不思議すぎる。」
署員達は時行を尊敬の眼差しで見ていた。署長室では成金みたいな服装をした両津が警備課に配属されたボルボと話し合っている。
「両津署長。来週の商店街のイベントだが急遽ラグビーの池谷将暢選手が来ることになったからその警備に予算を増やして欲しい。」
「具体的に何が欲しい。」
「AKにAWMだろ。防弾チョッキに手榴弾にデザートイーグルに…」
「馬鹿野郎!商店街を戦場にする気か!お前とマリアと根画手部がいれば素手で警備出来るだろ!」
予算はアップさせたが危なすぎる武器は使わないようにボルボに釘を刺した。ボルボが署長室を出る。それと入れ替わりに時行が入った。
「両さん。凄い数の批判が来てますよ。」
「気にするな。いつの時代も新しい政策に最初は批判がくるだろうがいずれ慣れて気にしなくなる。消費税がいい例だ。予算もたんまり残ってんだ。使わなきゃ損だ。」
両津は高らかに笑っている。両津へのクレームは大原部長や屯田に寄せられる。そこに中川が例のAIのことで話があると言ってやってきた。
「実は先輩の行動が荒唐無稽過ぎてAIが把握しきれずなかったことにしてしまったようです。」
「それで両津が署長になったと?」
「おそらく。」
「じゃあ、今すぐあの無能ゴリラを引き摺り降ろしましょう!」
小町が熱くなるも大原部長と屯田は冷静だった。
「放っとこう。」
「え?」
「それより中川、そのAIは大丈夫なのか?」
「はい。AIに先輩の行動を学習させましたので。」
「なら大丈夫。」
その場を去ろうとする2人に奈緒子が詰め寄る。
「あの調子乗りをそのままにするんですか!?」
「結果が出ているからな。しばらく待っていれば元に戻る。」
「安心しろ。もう少しの辛抱だ。」
小町達は心配していた。その日、両津は署員の給料やボーナス、新葛飾署の予算を改竄し自分の懐に入れていた。それが発覚し両津はあっという間に署長の座から転げ落ちてしまった。それと同時に両津が出した改革も全て消えた。
「な?この通り調子に乗ればすぐに自分から落ちてくる。」
「AIと違って学習能力ゼロだからな。」
「さすがですね。」
中川達が大原部長と屯田に感心する。大原部長と屯田にヘコヘコ土下座している両津。両津の肩を軽く叩く時行。周りからは最低の声が両津に向けられる。中川は改めてAIによるシャッフルを始めた。
「今度は誰が署長になるんだろう。」
「両津じゃないのは確かだな。」
「今度は副署長から始めましょう。」
AIが副署長に相応しいと判断した人の名前を表示した。
『屯田五目須』
「私が副署長!」
「じゃあ、署長は…」
「もしかして…」
みんなが大原部長を見る。大原部長は遂にこの時が来たのかと感無量になっている。そして、AIが署長に相応しいと判断した人の名前を表示した。
『北条時行』
「…あれ?」
みんなの目が点になる。時行も自分の名前が表示されたことに驚いていた。
「私…ですか?」
「確かに時行君なら信頼出来るけど。」
「人望あるし人格者だし実績もあるな。」
(時行君は鎌倉を3度も奪還した実力もありましたね。)
みんな、時行が署長になることに納得していた。その後…
「北条署長!お茶が入りましたよ!」
「あ、あの…」
「北条署長!肩が凝っていませんか?お揉みしますよ。」
「だ、大丈夫ですよ!」
「時行様!椅子が固くないですか!?私が椅子になりますよ!」
「小学生に媚び諂う大人って端から見ると情けないな。」
「鎌倉ではこれが普通だったのかもしれませんね。」
新たに署長になった時行にヘコヘコ媚び諂う大原部長や屯田副署長を見た両津達は哀れに思うのだった。