逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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北条時行密着24時

 体育が終わり教室で着替える時行達。体操服を脱ぎ髪を纏めて私服を着る時行。そんな時行を弧太郎達を見入っていた。

 

「俺、時行が恋人でもいいと思うんすよ。」

「私も!」

「なんですかこの会議?」

 

 弧太郎が中心になって会議が開かれる。

 

「なんすかあれ?妖艶?いかがわしい?なんて言えば分からんっすが、とにかくおかしくなるようなフェロモン的なものがバンバン出てるっすよ。」

「うん。時行はエロい。」

「静、はっきり言うんだね。」

 

 静がスマホで撮影した時行の写真を出す。いろんな写真の中にセーラー服の時行がいた。みんな、目を点にする。

 

「時行君ってたまに私達じゃ理解出来ないことするよね。」

「彼にも何か考えがあるのでしょう。」

「おい。その会議いつまで続くんだ。」

 

 両津が来た。弧太郎達が会議している場所は派出所の休憩室だった。

 

「コーチ!コーチは時行の親っすよね!時行のこと教えて欲しいっす!」

「そう言われてもわしは孤児となった時行を養子にしただけだしな…」

 

 両津が悩んでいると派出所にテレビクルー達が来た。

 

「すみません。密着24時間の撮影の許可を…」

「なんだ?また密着か。」

 

 両津が休憩室から出る。大原部長が対応していた。

 

「お久しぶりです。プロデューサーの杉原です。」

「どうも。」

「密着ということはわしの密着か。」

 

 大原部長が両津を殴った。

 

「痛え!なんで殴るんですか!?」

「バカモン!お前なんぞ密着したら警察のイメージダウンだろうが!」

「中川と麗子は既に密着しているんですよ!他に誰がやるんですか!?」

「わしに決まっとるだろ!」

「部長の密着なんか誰も見ませんよ!つまらなさすぎます!」

「あの…密着したいのは北条時行君です。」

 

 北条時行という単語に弧太郎達が休憩室から顔を覗かせる。

 

「時行の密着番組か。」

「彼を知るには絶好の機会ではありますね。」

 

 杉原が両津に許可を取っていると時行がやってきた。何やら騒がしくなっている派出所を不思議に思っている。

 

「時行、丁度いい。お前の密着だとよ。」

「私ですか?」

「ええ。あなたは時の人。見た目も愛らしく綺麗で、それに加えて先日のテロ事件を解決に導いたかっこよさと強さがある。こんな小学生なんて今まで見たことないわ。是非!あなたの密着をさせてほしいの!」

 

 時行は悩んでいる。そこに両津が来てコソコソ話す。

 

「安心しろ。わしが着いている。」

「そ、それでしたら…」

「よし。わしが演出及び検閲するという条件なら許可を出しましょう!」

「ありがとうございます!」

「ただし!全てのお礼は現金で。小切手だったらその場で燃やします。」

「不安しかありませんよ。」

 

 両津は時行が住んでいる超神田寿司に行く。夏春都にも許可を取り時行の部屋に行く。ほとんど物がなく質素な感じだ。

 

「今の子供にしては珍しいですね。」

(今の子供じゃないからな。)

「そう言えばご両親は?」

「そ、それは…亡くなりました。」

 

 時行が寂しそうに言う。

 

「親を失った魅惑の美少年。これはイケる!是非!ご両親のことを教えてほしい!」

「ええ!」

 

 時行はなんて言えばいいのか迷う。自分は本当は南北朝時代の人間で両親、特に父親は鎌倉幕府のトップなんて言えるはずがない。そのに両津が助け舟を出した。

 

「馬鹿野郎!子供に亡くなった親のこと聞くな!そんなもん放映しても空気が重くなるだけだ!そこは幼い頃に両親を亡くしたという説明だけにしろ!」

「わ、分かりました。」

 

 両津が止めてくれたことに時行はホッとする。密着取材は明日からすることになり打ち合わせが夜遅くまで続いた。

 翌日、両津は早速時行にいつものように生活しろと指示した。時行は両津の言う通りに起きる。布団を片付けてシャワーを浴び檸檬に挨拶する。その姿が小学生とは思えないぐらい達観していた。

 

「2人とも小学生よね?なんか時代劇見てるみたい。」

「2人とも時代劇が好きだからな。」

 

 時行は皿洗いや仕込みの手伝いをした後、檸檬と一緒に板前達が作った料理を試食する。

 

「これは…米の状態が良くないですね。和食にするには固すぎます。」

「うむ。焦り過ぎじゃな。焦ったところで良い結果は生まれん。お主には時間がある。ゆっくりと上達していけば良い。」

「…あ、ありがとうございます。」

「本当にあの2人は小学生?」

 

 杉原は疑問に思っている。時行は試食を済ませると万葉集を読み始めた。そこに両津がストップをかける。

 

「待て時行。お前、万葉集なんて読んでたのか。」

「はい。鎌倉にいた頃から好きでした。」

「ここは外に出て遊べ。家と外でギャップを見せることで視聴者は釘付けになる。」

「わ、分かりました。」

 

 時行が外に出る準備をする。両津はスマホで弧太郎達を呼び時行と遊ぶように指示した。近くの公園に集まり鬼ごっこする。それを撮影していたテレビクルー達はいいねと頷いている。

 

「子供はやっぱりこうでなくちゃ!」

「確かにギャップは凄いわね。」

 

 杉原達は両津の狙い通り時行のギャップに驚く。が、それ以上に驚いたのは時行の逃げだった。弧太郎達が全員で追いかけても全然捕まらない。

 

「生放送で見てたけど本当に逃げるの上手ね。」

「故郷の鎌倉じゃ逃げ上手と呼ばれていたからな。」

「両さん。時行君の弓も見てみたいんだけど。」

「分かった。準備しよう。」

 

 両津は時行達と一緒に新葛飾署の弓道場に向かった。テレビクルー達が時行の弓矢を撮影する。相変わらず的のど真ん中に命中させる腕にテレビクルー達は驚いていた。両津がその様子を見ていると弧太郎が両津のところにやってきた。

 

「コーチ。俺、時行のこともっと知りたいっす。」

「そうか。だが、時行が知られたくないのもあるから、そこは本人に聞いてみないとな。」

「でも、故郷は鎌倉ってこと以外ほとんど話してくれないっすよ。」

「まぁ、両親を亡くした話なんてするもんじゃない。」

「それはそうっすけど。」

 

 時行のことをあまり話せない。しかし、時行のことを知りたい弧太郎の気持ちも分かる。両津は悩んだ挙句OKした。

 

「わしに任せろ。出来る限りのことはしてやる。」

「ホントっすか!」

「おう!」

 

 弧太郎にはそう言ったもののどう話すか悩んでいた。時行が南北朝時代から来た人間だとバレてはいけない。しかし、既に有名人になった時行を普通の人として紹介するには無理がある。

 両津は今日のスケジュールを見る。両津はニヤリと笑った。両津は昼飯を済ませた時行に近寄る。

 

「時行、ここからはわしが演出する。」

「は、はい。」

 

 両津はそこから生活を演出し始めた。気品が溢れないように普通の子供を演じるようにする。弧太郎達と遊ばせたりコンビニでアイス食べたり今頃の子供を演出させる。しかし、時行から溢れ出る貴族オーラが消えない。

 

「やっぱりあの子、普通の子供じゃないわね。」

(まずいぞ。想像以上に時行の品が溢れ出ている。このままだと普通の子供じゃ…いや、待てよ。南北朝の人間だとバレなければいいのか。普通の子供としてじゃなくもっとインパクトある設定にすればバレない。)

 

 両津は1人ニヤリと笑った。時行を銭湯へと連れて行く。初めての銭湯に時行は目を輝かせている。

 

「これが…銭湯というものなのですか。」

「そうだ。昔は風呂自体が家になかった人はここに通っていた。」

「両津さん。そろそろ…」

「分かった。」

 

 両津は時行に裸になって銭湯に入るように指示する。時行も指示通り裸になって入る。その裸体を見た杉原達は唾を飲み込んだ。

 

「あの色気は小学生が出せるものじゃないですよ。」

「私でも誘惑されるわね。」

「凄いだろ。CMの時にこれを流せば視聴率は5%は伸びるぞ。」

「行けますよ!」

 

 テレビクルー達が喜ぶ。時行は初めての銭湯に燥いで走り回る。両津は先に体や髪を洗うように言う。時行はシャワーだけで髪を洗う。

 

「え?お湯だけですか?」

「そうだ。時行の髪は傷みやすいからお湯だけで洗髪している。」

「お湯だけであのサラサラヘアー…」

 

 杉原が唖然とする。時行が洗髪などを終わらせ浴場に浸かる。その姿も品が出る。浴場から上がった時行に両津がコーヒー牛乳を渡す。

 

「銭湯から上がればパンツを履く前にこれを飲め。」

「わ、分かりました!」

「飲む時も腰に左手をかけて鏡に自分の勇姿を映しながら一気に飲め。」

「はい!」

 

 両津の指示通りにコーヒー牛乳を一気飲みする。その間に両津がテレビクルー達に詰め寄る。

 

「え!?それを両津さんが!?」

「わしに任せろ。」

(南北朝よりインパクトある設定がある。あれを使えば…)

 

 時行の密着取材が終わる。後日、北条時行密着24時が放送される。時行は弧太郎達と一緒に超神田寿司で見る。

 

『今回は今話題の美少年、北条時行君の1日をお見せします。』

「始まったっすよ!」

「楽しみじゃのう。」

「えへへ…」

 

 時行が照れる。所々見える上品オーラに弧太郎達は見惚れている。

 

「やっぱり時行は俺達と違う世界に生きてる感じがするっすね。」

「確かに。」

(あれ?これって私が違う時代から来たことがバレたらまずいのでは…)

 

 時行は心配していた。自分の正体を隠すだけでも辛いのにそれがバレるのが怖かった。すると、ナレーションの声が変わった。

 

『彼は故郷の鎌倉では基本全裸で外を走り回っていた。』

「…ん?」

「この声…コーチの声っすね。」

「時行君…」

 

 突然の両津のナレーションにみんな固まる。時行の顔が真っ赤になる。

 

『彼の特技は逃げること。鬼ごっこで負けたことがない。逃げることに興奮する彼の鎌倉でのあだ名は全裸逃亡ド変態美少年である。』

「待ってください両さん!私のイメージというものがどんどん変態に!」

「時行君、これ本当なの?」

 

 時行は全力で首を横に振る。しかし、両津のナレーションは続く。

 

『東京に来てからはコスプレにハマる日々。海パン、スクール水着、セーラー服、バレリーナ、魔法少女…彼のコスプレレパートリーは増えていく…』

「止めてくださーい!!」

 

 真っ裸刑事シリーズや御所河原でのコスプレが流れる。時行は急いでテレビの前に出て体で遮る。弧太郎達の目が冷たくなる。時行は全身を真っ赤にする。

 両津は南北朝時代の人間ということがバレないようにするため、それよりもインパクトのある変態設定を着けたのだ。両津から時行がどんな人かを教えてもらう約束をした弧太郎は引いている。檸檬すら時行を見る目が変わっていた。

 

「時行よ…」

「コーチが時行がどういう奴なのか教えるって言ってたっすけどこれがそうなんすか?」

「あ、アハハハハハ…私、ちょっと行くところが出来ました。」

 

 そう言って時行は去って行った。その後…

 

「両さ〜〜ん!!」

「待て時行!これもお前のためなんだ!」

 

 馬に乗り弓矢を装備して両津を追いかける時行。両津は自転車で逃げながら必死に弁明するのであった。

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