「おぉ〜!ここが京都!」
時行は今、京都に来ていた。きっかけは両津が早矢と一緒に京都で行われる流鏑馬の大会に参加するために行くことを知ったところだった。時行も行きたいと言うと両津は時行も連れて行った。
時行にとっては約700年ぶりの京都だ。凄く変わった京都に時行は驚きっぱなしだ。両津がタクシーを止める。向かった場所は会場だった。そこには多くの人が集まっていた。
「ここは?」
「今回全国学生流鏑馬大会が開かれる会場だ。」
両津が選手控室がある裏口から入る。弓矢を持った人達がいっぱいいる。時行が興奮して見ていると両津が1人の女性に声をかけた。
「よう、左京。」
「お久しぶりです。」
返事したのは飛鷹左京。北千葉大学の弓道部に所属しており、磯鷲早矢のライバルでもある。両津の声に反応した左京を見る時行。凛々しい彼女に見入っている。早矢が声をかける。
「お久しぶりです飛鷹さん。」
「久しぶりです磯鷲早矢。」
左京が時行に気付く。
「彼は?」
「北条時行君。彼も流鏑馬が得意なのよ。」
「へぇ。」
左京が興味深く時行を見る。すると、左京の出番が近付いたのかスタッフが声をかけた。左京が別れを言って去る。
「時行、左京の弓を見てみるか。」
「はい!」
観客席に向かう両津達。その途中、時行は左京を見つけた。さっき会場に行ったはずなのにと思い近付く。近付いて見ると雰囲気が違う。クールな感じの左京に対し彼女は柔らかな感じがした。左京に似た女性が時行に気付くと近寄ってきた。
「坊や、迷子になったのかな?」
「い、いえ!その…さ、左京さん…ですか?」
時行が珍しく慌てている。そこに両津と早矢が時行を捜しに来た。
「時行!お前、どこに…右京か。」
「お久しぶりです両津さん、早矢さん。」
「え、両さん。この方は…」
「さっき会った左京の双子の妹飛鷹右京だ。」
時行が驚く。右京は微笑むと両津に時行のことを聞いた。
「こいつは北条時行。わしが育てている子だ。」
「ええ!?あなたが!?」
「相変わらずはっきり言うな。」
右京が驚く。そこにアナウンスが鳴り左京の出番が近付いたことを知る。両津は右京と別れて会場に向かった。
「早矢さんは?」
「早矢はこの後のイベントに出るための準備だ。」
両津がコネで1番いい席に座って左京の弓を見る。時行は左京が持つ細い弦と白い弓幹が特徴的な独特な長弓に目を惹かれた。
「あれは…」
「南北朝時代にはなかっただろ。あれは左京が自分で考案した弓だ。」
静かになる会場。左京は精神統一すると胸から弦を一気に引き矢を放った。力強く放たれた矢は真っ直ぐ飛び的のど真ん中に命中した。それを見た時行は拍手する。
「す、凄いです。」
「だろ。左京はあれで国体、インカレ、全国学生弓道大会で3冠を獲得している。」
「貞宗殿や顕家卿とも違う弓ですね。」
「右京の弓にも驚くぞ。」
両津が話していると右京の出番になった。左京とは違って普通の弓矢だ。その代わり乗っている馬が桜色の珍しい馬だった。
「あの馬は…」
「右京の愛馬琴姫だ。生まれつき体が弱かったが右京が熱心に育てたから立派になったぞ。」
右京の出番が始まる。琴姫と息を合わせ右京が矢を放つ。すると、矢は軌道を曲げながら的に命中した。そのまま全ての的のど真ん中に命中させた。それに時行は驚いた。
「矢が曲がりましたよ!」
「あれが右京の得意技、変幻自在の矢だ。羽根が特殊な作りになっている。あれも南北朝じゃ見なかっただろ。」
「はい…」
そこからも大会は続くが優勝は飛鷹左京、右京の姉妹が同点優勝となった。両津が時行を連れて2人の元へ行く。
「お見事だったぞ。」
「ありがとうございます。」
右京の微笑みに時行はドキッとする。そこに早矢が来る。道着を纏った凛々しい姿だ。
「早矢、あれはただのイベント。大会じゃないがあなたに負けるつもりはありません。」
「はい。受けて立ちます。」
「なんかバチバチですね。」
「東の飛鷹、西の磯鷲と並び称されるレベルのライバルだからな。」
時行が早矢と左京を見ている。そこに右京が来て時行と同じ目線までしゃがんだ。
「初めまして時行君。自己紹介がまだでしたね。私は飛鷹右京。今は料亭に住み込みで働きながら京都の大学に通ってますわ。」
「は、はい。北条時行です…」
顔を赤くする時行。両津はその姿を見てニヤリと笑った。早矢が様子のおかしい時行に気付く。
「時行君、どうしたのかしら?」
「時行の奴、右京に惚れたな。」
「まぁ!」
早矢が喜ぶ。
「時行はお淑やかな大和撫子がタイプだ。右京なんてタイプど真ん中だそ。」
「そうなのですね。」
右京と別れた時行。そこに両津が来る。凄いニヤニヤしている。
「どうだった時行?」
「え!?何がです!?」
「右京だよ。一目惚れだろ。」
「え、え〜と…」
「恥じることはない。わしも惚れるぐらい素敵だからな。」
時行は顔を赤くしたまま頷く。両津は右京に時行のいいところを見せてやろうと考え連れて行く。すると、早矢が流鏑馬の出番が来たと言って去って行った。
「早矢さん?」
「早矢は社会人だから大会には出ないがスペシャルゲストとして流鏑馬をすることになっている…そうだ!」
両津は時行を連れて乗馬体験しているところへと行く。時行にどの馬がいいか聞く。すると、時行はジーと馬を観察して1頭の馬に手を置いた。
「両さん。私はこの馬がいいです。」
「よし。お〜い!この馬借りれないか!?」
「え…あぁ、乗馬体験ですね。」
「違う。流鏑馬にだ。」
「え?」
両津は無理矢理馬を借りて行く。時行に流鏑馬の準備をしていると早矢が流鏑馬を開始した。流れるような美しい流鏑馬に時行を見惚れている。
「時行、次はお前がやってみろ。」
「わ、私がですか?」
「そうだ。右京達に見せてやれ。」
「分かりました。」
ほとんどの人が早矢の流鏑馬を撮っている。そこに時行が馬に乗ってやって来た。時行を見た人は不思議に思っている。
「なんで子供が…」
「乗馬体験から抜け出してきた?」
「でも、あの格好って流鏑馬よね。」
「まさかぁ…」
「あれ?あの子って…」
いろんな人が見ている。両津が的を設置するように言っている。時行は深呼吸して右京を見る。
「時行君、流鏑馬が出来るのですね。」
「私も認める腕ですよ。」
「早矢が…」
ほとんどの人が時行をあまく見ていたが左京と右京は時行を真剣な眼差しで見ていた。時行の流鏑馬が始まる。時行は綺麗なフォームで1つ、また1つと全ての的に冷静に命中させた。それを見た観客達は静まりかえった後、拍手した。
「凄いな…」
「でしょ?」
「綺麗ですね。」
時行が一安心して帰ってくる。
「どうでした両さん?」
「見事だ!見ろ!みんなお前に夢中だぞ!」
両津が観客席を指差す。みんな、時行を撮影してたり写真に撮っていた。時行はそれを諏訪に戻った時の民のように見ていた。そこに早矢達がやってくる。
「お見事でした。」
「ありがとうございます。」
「どうだ右京、左京。時行の弓矢も凄かっただろ。」
「ええ。」
「素晴らしかったですわ。」
時行が照れる。そこに早矢が提案してきた。
「先程、大会の責任者とお話して許可をいただきました。時行君、流鏑馬対決に出場してみませんか?」
「え!?」
「おっ!やってみろ時行!」
時行は戸惑うも両津が出場してみろと促す。
「いい機会だ。この時代の流鏑馬を体験してみろ。」
「りょ、両さんが言うなら…」
時行は早矢の提案を受け入れる。時行を入れた31人で行うバトルロワイヤルだ。1人15本の競技用の矢を使って相手に当てるゲームだ。時行が出場してみるとほとんどが女性なのに気付いた。
「凄いですね。ここは女性達が流鏑馬をするのですね。」
「昔は男性が主流でしたけど今の時代は女性も進出していますわ。」
早矢が答えてくれた。時行はお礼を言う。もうすぐゲームが始まる。時行達はバラけて開始の合図を待つ。そして、開始の太鼓が鳴った。その瞬間、一斉に走り出す時行達。後ろから2人が時行を狙う。時行はそれに気付く。2人が矢を放つ。すると、時行は馬の上でジャンプして避けた。
「「!!」」
時行は馬に着地するとすぐさま矢を連続して放ち2人に命中させた。それには会場もびっくりする。その反応を両津は楽しんでいた。
「そんなことも出来るのか。」
左京は他の選手を倒しながら時行を見る。時行に興味を持ち始めた。右京も時行を見て興味を持つ。右京と左京が横並びになる。
「右京、ここは停戦だ。私は早矢と時行を相手したい。」
「私もですわお姉様。」
「なら、組むか?」
「はい。」
右京と左京は時行と早矢以外の選手を次々と倒す。早矢も他の選手を倒しながら2人を見る。そして、時行、早矢、右京、左京以外の選手が全滅した。右京と左京が並ぶ。それに対して早矢は時行の隣に並んだ。
「時行君、ここは私と組みませんか?」
「はい!よろしくお願いします!」
時行は早矢の提案を受け入れる。時行はワクワクしていた。南北朝では味わえない弓の腕を持つ2人と対決したいと心から思っていた。時行と早矢、右京と左京が睨み合う。その雰囲気に圧倒される会場。両津が生唾を飲み汗が垂れる。汗が両津から地面に落ちる。その瞬間、両者同時に馬を走らせた。
「行くぞ!早矢!」
「望むところですわ!」
「時行君、私とお手合わせお願いします!」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
令和鬼ごっこ 流鏑馬対決
国
立
弓 北
道 千
部 葉 《飛鷹 左京》
大
学
上
弓 京 鷹
道 《飛 京》
部 大 右
学
先制したのは左京だ。早矢を狙って矢を放つ。早矢は涼しい顔で避けると矢を放ち返した。左京も矢を避ける。右京は時行をじっと観察する。そして、矢を放つ。矢は軌道をくねらせ時行を狙う。時行は体を仰け反らせ避けると矢を放った。
「琴姫!」
右京と琴姫は華麗に避けた。
「行ける琴姫?」
琴姫が頷く。
「よし。」
右京が左京と並ぶ。そのまま2人同時に放った。しかし、狙いが違った。左京が時行に、右京が早矢に向かって矢を放った。早矢が警戒するも右京の矢は軌道を変え時行を狙う。時行は左京の矢を避けるも右京の矢の反応が遅れた。そこに早矢が矢を当て援護した。
「ありがとうございます!」
「いえ。」
時行と早矢は左右に別れた。再び左京は早矢を、右京は時行を狙う。
「凄い…さっきの連携、早矢さんがいなかったら当たってた。」
時行は胸の高鳴りを感じていた。顔を真っ赤にさせて興奮している。このドキドキは恋か戦か。時行は益々右京の虜になっていく。
「私はまだまだ行けます。あなたもどうですか?」
時行は馬に語りかける。やる気満々のようだ。時行は胸の高鳴りを治め弓矢を構える。右京は待っていてくれたのか弓矢を構えたまま時行を見て微笑んでいた。
「あなたは不思議な人ですね。」
「この時代は凄い。まだ見ぬ弓の達人がいっぱいいます。私はまだまだ逃げを楽しめます。」
時行と右京が同時に矢を放つ。矢は空中でぶつかり落ちる。右京は一瞬驚いたがすぐに冷静になり弓矢を構える。左京が隣に来た。早矢も時行の隣に並ぶ。
「早矢、思っていた決着と違うが今なら私は全力でいける。」
「私も万全のあなたと全力でお相手したいと思っています。」
「時行君、初めてあなたの流鏑馬を見てから一目惚れです。」
「私もあなたのような美しい方とお会い出来て楽しいです。」
再び会場が静かになる。全員が矢を向けたその時、近くで爆発音がした。