逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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時行京都訪問記 時行と早矢の京都旅

 流鏑馬対決の翌日、時行は朝日に照らされ起きる。

 

「ここは…そうでした。私は昨日、両さんと早矢さんと一緒に京都の旅亭で食事をして…」

「起きたか。」

 

 両津が部屋に入る。ここで時行は思い出した。ここは早矢の実家だ。初めて来た時あまりにも豪華過ぎて次元が違い過ぎたため思考回路がショートして気絶したのだ。

 

「早矢さんって…もしかして私より位の高いお方でしょうか…」

「この時代ではな。」

 

 時行は早矢に失礼なことしてないか心配していた。そこに早矢がやってくる。時行は失礼のないように振る舞う。両津が気にするなと時行に言う。

 

「両津さん、時行君、折角ですので京都を散歩してみませんか?」

「いいな。時行、久しぶりの京都だろ。楽しむぞ。」

「は、はい。」

 

 支度を済ませて実家を出る。実家を出るまで1時間かかった。あまりの広さに時行は困惑している。3人で京都を観光する。すると、周りの人達の目線を感じた。

 

「綺麗な人…」

「子供も美しい…」

「家族かな…」

 

 どうやら、両津達を観光に来た家族と思っているらしい。その言葉に時行は照れている。

 

「…全部母親の遺伝子だな。」

「100%母親似だ。」

「良かった。父親の遺伝子が入ってなくて。」

「喧しいぞお前ら!」

 

 両津が怒鳴る。それを見た早矢がクスクス笑う。両津達は嵐山に着いた。秋色に染まる渡月橋を渡り竹林の小径を歩く。左右見ても竹が並ぶ絶景に時行は興奮していた。

 

「京都にはこんな凄い景色があるのですね。」

「ここは13世紀末に亀山上皇が吉野からサクラ数百株を移植したとされ、その後も夢窓国師によって吉野からヤマザクラ数千本が移植されるなどサクラやマツの植栽が行われたと言われています。」

 

 竹林の小径を抜け大覚寺へと向かう。その時、馬に乗った老人が両津達の前に現れた。時行は驚き警戒するも両津と早矢は知り合いのようで全然気にしていなかった。

 

「チョコ兵衛!」

「彦兵衛だ!」

 

 彦兵衛が槍を両津に向ける。

 

「早矢様!今すぐお戻りください!剣之介様がお帰りになられました!」

「まぁ!」

 

 両津が嫌な顔をする。彦兵衛が連れた馬に乗って急いで帰宅する。そのまま広い屋敷内を馬で駆ける。

 

「馬で行かないといけない場所なんて…」

「早矢の家は常識の外にあると思え。」

 

 大きな障子の前に到着する。両津達は息と身嗜みを整える。障子が開かれる。時行の目の前には巨大な空間に多くの屈曲な男達、そして中央に鎮座する威厳ある男性がいた。

 

「時行、前にいるのが早矢の親父の磯鷲剣之介だ。絶対に失礼のないようにしろ。」

「分かりました。」

 

 両津達は部屋に入り剣之介の前で正座する。剣之介が時行を見る。鎌倉でもなかなか体験しない威圧感に時行は圧されそうになる。

 

「そち、名はなんと言う。」

「わ、私は北条時行と申します。理由あって両津勘吉殿の元で厄介となりました。」

「両津勘吉?」

 

 時行が何かまずいこと言ったのかと緊張する。しかし、時行よりも緊張している男がいた。両津だった。両津はすぐさま土下座した。

 

「私の別称でございます!時行君にはそう呼んでほしいと私自らがお願いした所存でございます!」

「ほう、越前屋の別称か。」

 

 時行が?を浮かべる。両津はすぐに土下座しなから時行を見る。

 

「時行、ここではわしを越前屋と呼べ。」

「いくつ名前があるのですか?」

「お主、何が出来る?」

 

 剣之介が時行に質問する。時行はどう答えていいのか分からない。その時、門弟達が1人の門弟を連れて入ってきた。

 

「大変です!こいつ、鍛錬と偽りパチンコをやっていました!」

「なんだとぉ!」

「も、申し訳ございません!」

「貴様!嘘をついただけではなくギャンブルをしていたのかぁ!」

 

 剣之介が鉄拳制裁を加える。その姿に数多の猛将と戦った経験のある時行ですら恐れていた。

 

「あわわわわ…」

「可哀想に。あれは全治1年だな。」

「お父様は嘘とギャンブルが大嫌いなのです。」

「両さん…」

「わしの命のためにも越前屋を貫き通せ。」

 

 嘘とギャンブルだらけの男に時行が呆れる。剣之介が鉄拳制裁している間に早矢がアドバイスしてくれた。

 

「うちは武道の名家ですのであなたが1番誇れる武道を言えば大丈夫です。」

「分かりました。ありがとうございます。」

 

 時行は深呼吸して落ち着く。剣之介が戻る。

 

「お主の特技はなんだ?」

「私の特技は…弓と逃げることでございます。」

 

 時行が正直に答える。

 

「お父様、時行君は私も認める弓の達人です。それに彼は如何なる脅威からも逃げることが得意なのです。」

「ほう。弓の腕、今ここで見たい。」

 

 剣之介が準備をさせる。弓矢を装備した時行の60m先に的がある。普通の小学生なら届くことすらない距離だ。時行が弓矢を構える。その構えに門弟達は目を奪われる。そして、矢を放った。矢は真っ直ぐ飛び見事的のど真ん中に命中した。

 

「素晴らしい!」

「構えも美しい…」

 

 門弟達が時行を褒める。時行が剣之介を見る。喜んでいるのか怒っているのか分からない。時行が緊張していると剣之介が口を開いた。

 

「見事だ。」

「あ、ありがとうございます。」

 

 時行は一礼して両津の隣に正座する。

 

「どうだった?」

「土岐頼遠より圧がありました。あの方と鬼ごっこしたら凄く楽しそう…」

「南北朝でも通用するのか…」

 

 時行は興奮している。両津は改めて剣之介に恐怖する。的を片付けさせた剣之介は立ち上がり両津の前に来た。両津はすぐに土下座する。

 

「お前を呼んだのは他でもない。最近、京都に礼儀を知らん外国人が増えている。」

 

 そう言って剣之介は巨大な紙芝居を用意させた。両津はまたか…とつまらなさそうな顔をする。剣之介は紙芝居で京都の現状を伝える。

 

「鳥居で体操するふざけた奴、写真を撮るために道路に出て進行妨害する奴、さらには神聖な神社仏閣に落書きする不届き者まで現れる始末だ。」

「確かにマナーのなっていない外国人が増えましたね。」

「そこでだ!越前屋!お前に使命だ。京都から全ての外国人を排除しろ!」

「全て!?」

 

 両津が驚く。それも無理はない。今、京都にいる外国人の数は10万近い。その外国人を全て京都から追い出すなんて不可能だ。それを両津が言おうとする。

 

「た、確かにマナーのなっていない外国人はいますがちゃんとマナーを弁えている外国人もいますしそもそも私1人で外国人を全て追い出すなんてとても…」

「全て排除しろ!」

「はい!」

 

 両津の目の前まで来る剣之介。剣之介の圧に惨敗して了承してしまう両津。早矢と時行はもう用事がないようで部屋から出る。

 

「待ってくれ早矢!時行!わしを1人にしないでくれ〜!」

「早矢様、こちらに。」

 

 両津の叫びも虚しく彦兵衛が2人を部屋から出す。時行は両津を心配している。

 

「大丈夫でしょうか両さん…」

「気にする必要はない。それよりもお主、素晴らしい弓の腕であった。」

「ありがとうございます。」

「お主が磯鷲家を継ぐなら磯鷲流は安泰じゃろう。」

 

 彦兵衛も時行を褒める。早矢は時行と2人で京都を観光したいと言って家を出た。改めて京都観光を再開する。時行は変わってしまった京都を見て自分の時代との違いを実感していた。

 

(私が生きた時代からこんなに変わっていたのですね。)

「ここが伏見稲荷大社ですわ。」

 

 時行は感動している。沢山の鳥居が並んでいる光景は圧巻だった。時行は鳥居を潜り伏見稲荷大社に到着する。南北朝時代、京都にいた頃には一度も行ったことのない伏見稲荷大社に時行は興奮していた。

 

「凄い…」

「伏見稲荷大社は元々秦氏の祖霊として711年に建立されました。そこから神仏習合や山頂から山麓への遷座、応仁の乱、鳥羽・伏見の戦いなどを経て稲荷神社に名前が変わり1946年に今の伏見稲荷大社になったんですよ。」

 

 早矢が教えてくれる。時行は一通り伏見稲荷大社を楽しむ。今度は金閣寺へ向かう。南北朝の時にも一度行ったことある場所。しかし、今はそこに金ピカに輝くお寺があった。

 

「あ、あれは…」

「あれが金閣寺です。正式名称は北山鹿苑禅寺。南北朝合一を果たした足利義満が1399年に建立されました。」

(雫が言っていた通りだ。)

 

 時行は目を丸くして金閣寺を見る。

 

「ちなみに、鎌倉幕府滅亡後に当主の西園寺公宗が後醍醐天皇暗殺を企てたことが発覚し処刑されたことで西園寺家の膨大な所領と資産は没収された後1397年に足利義満が河内国と交換に西園寺を譲り受け建立を始めました。」

「え?」

「後醍醐天皇暗殺未遂と同時期に足利尊氏の暗殺未遂も行われたようですよ。」

(その下手人、私達です!)

 

 時行が顔を背ける。それを見て早矢が笑う。

 

「京都は織田信長や坂本龍馬が暗殺された場所でもあります。京都は様々な文化を生み出した場所ですがそれと同時に日本を動かす重大な事件が起きた場所でもあります。それが京都の魅力なんでしょうね。」

 

 時行は何も話せない。

 

「北条時行…中先代の乱を起こした人と同じ名前ですね。」

「そ、それは…偶然ですよ!」

 

 時行は慌てて否定する。

 

「そうですね。でも、あなたが本当に中先代の北条時行なら素敵ですね。」

「え…」

「だって私達の昔の人があなたみたいな優しくて信念があって魅力的な人でしたら日本は世界に誇れますから。」

 

 この時、時行は感じていた。

 

早矢さんはもう私の正体を知っている。

 

 時行は早矢の微笑みを見てそう直感した。

 

「昔の北条時行がどんな人かは私には分かりません。でも、今私の目の前にいる北条時行はよく知っています。優しくて信念があって逃げることが好きだけど決して自分で決めたことからは逃げない素敵な人です。」

 

 早矢の言葉に時行は実感する。もう、自分は土地や権力のために殺し合う南北朝時代の人間じゃない。もう、軍を率いる将ではない。平和な令和の両津勘吉の子供だと。それを実感した時行は少し荷が下りたような気がした。

 

「そう…ですね。私は両さんの子供の北条時行です。」

「はい。これからもよろしくお願いしますね時行君。」

「こちらこそよろしくお願いします早矢さん。」

 

 2人は互いの顔を見て微笑む。早矢には見えていた。時行の周りには沢山の人がいる。時行と同い年の子供達や派手な人、頭から後光が出ている人など老若男女別け隔てなく彼を慕っている。

 

(時行君、あなたは本当に人の上に立つ人ですね。)

 

 早矢が時行を優しく見守る。時行はこれからも両津勘吉の子供として令和を生きていこうと決意するのであった。

 

 

「助けてくれ〜!早矢〜!時行〜!」

 

 一方その頃、剣之介に睨まれた状態で必死に2人の名前を呼ぶ窶れた両津がいた。

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