逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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時行、特殊刑事になる!

「特殊刑事?」

 

 ある日の派出所

 本庁から刑事が来ると聞かされた時行。しかし、いつもと違い雰囲気が悪い。気になって聞いてみる。

 

「特殊刑事ってどんな人なんですか?」

「•••特殊だ。」

「特殊ね。」

「特殊です。」

「特殊だな。」

 

 全員曖昧な答えになる。

 

「特殊な人なら鎌倉にもいましたよ。」

「どんだけなんだ鎌倉。」

 

 時行がどんな人が来るのか気になっているとどこからか音楽が聞こえてきた。時行が聞こえる方向を見る。

 

「これは…」

「股間のモッコリ伊達じゃない!陸に事件が起きた時、海パン 一つで全て解決!特殊刑事課三羽烏の一人!海パン刑事 …只今参上!!」

 

 突然現れた男。海パンにネクタイ、ホルスターだけ身に着けた男に時行はびっくりして指を差す。

 

「この人は…」

「そいつが特殊刑事の筆頭海パン刑事だ。」

「さすがに鎌倉でもあんな人はいませんでした。」

(鎌倉武士を超えたぞ!)

 

 突如現れた変態に時行は慄く。両津達は初めて海パン刑事に会った時を思い出し懐かしむ。こんな時もあったなあ。そう思って時行の反応を見る。海パン刑事は時行を見て頷いている。

 

「君が北条時行君かね?」

「は、はい!なんで私を…?」

「噂で聞いたのだ。素晴らしい逃げ足の少年がいるとな。」

「それほどでも〜。」

 

 照れくさそうに時行は喜んでいる。それで喜ぶのかと両津達は思って見ている。すると、海パン刑事が提案してきた。

 

「そこで君に特殊刑事になってもらいたい!」

「えへへ…え?」

 

 時行が目を丸くする。その時、アラームが鳴った。どこからと思っていると海パン刑事が徐ろに左手を海パンへと突っ込んだ。時行が顔を赤くして両手で顔を覆う。海パン刑事は海パンからスマホを取り出した。どうやらアラームはそのスマホから鳴っているようだ。すると、今度は右手を海パンの中へと突っ込んだ。時行はさらに顔を赤くさせて見る。海パンからバナナが出てきた。

 

「すまない。おやつの時間だ。」

 

 そう言ってバナナを食べる海パン刑事。時行は顔を真っ赤にさせたまま海パン刑事を指差して両津達を見る。

 

「慣れろ。」

「懐かしいわね。」

「僕達もあんな反応してました。」

 

 もう慣れているのか冷静な対応をしている両津達。バナナを食べ終えた海パン刑事が時行に近付く。

 

「君の逃げ足は誰かを助けるのに役に立つ。だから、特別に君を特殊刑事として迎え入れたい。」

「こ、断ることは…」

「遠慮するな。名前も決めてある。”真っ裸刑事“だ!」

 

 時行はすぐ逃げる。しかし、海パン刑事がすぐ捕まえて奥の休憩室へと時行を連れて行った。

 

「安心しろ。私が手取り足取り教えてやる!」

「嫌だー!助けてくださーい!」

「あの時行を捕まえただと…」

「さすがエリート刑事ですね。」

 

 休憩室から時行の悲鳴が聞こえてくる。しばらくすると海パン刑事が出てきた。海パン刑事が休憩室を見て時行に出てくるように言う。時行がヒョコッと顔を出す。凄い恥ずかしそうだ。

 

「ホラッ。気にすることない。来たまえ。」

「ま、待ってください!」

 

 海パン刑事が時行を引っ張り出す。時行の姿は真っ赤な海パンに真っ赤な蝶ネクタイと誰が見ても変態だと分かる格好をしていた。時行は恥ずがりながら両津達を見る。

 

「凄い変態だ。」

「素晴らしい変態ね。」

「高貴さが全て失われるレベルの変態ですね。」

「そんな感想なんていらない!」

 

 時行が涙目になっている。よく見ると股間がもっこりしている。

 

「おい。股間に何が入ってる?」

「もちろんバナナだ。」

「なんてことしてるんだ!?」

 

 さすがに可哀想と思ったのか両津が自分の上着を着せる。

 

「まさか、この状態の時行をパトロールに連れて行くとか言うんじゃないだろうな?」

「そうでないと真っ裸刑事の意味がないだろ。」

「必要ないだろ!」

 

 両津が抗議する。

 

「安心したまえ。君も一緒にパトロールしようではないか。」

 

 海パン刑事の提案に両津がロッカーに頭を突っ込む。

 

「なんでわしがやらなきゃならんのだ!?」

「お願いします両さん。」

 

 時行がウルウルした瞳で両津を見る。さすがに断りにくい状況になった両津は中川達を見る。

 

「なら中川や麗子も…」

「いや、先輩が適任だと思います!」

「そうね!両ちゃんなら安心よね!」

「時行君の保護者なんだからいけ!」

「お前らー!」

 

 3人が即座に断るため両津がなんとかして巻き込もうとしていると緊急の電話がなった。

 

『亀有銀行で銀行強盗が発生!犯人は人質を盾にして立て籠もっている模様!至急応援に来られたし!』

「何!?よし!今から応援に行くぞ!」

「この格好で!?」

 

 時行が驚く。南北朝時代でも経験したことない格好に狼狽えている。こんな姿で人前に出られるわけがない。時行は必死に拒否するも海パン刑事は無視していた。

 

「わしらも行くぞ!」

「「はい!」」

 

 逃げるように大原部長が中川と麗子を連れて急行する。両津も出ようとするが海パン刑事に捕まった。既に海パンは用意されている。両津は観念して海パン刑事と同じ格好になった。

 大原部長達が現着する。現場は緊張状態になっていた。銃を持った覆面の男が人質の銀行員を盾にしている。人質はガムテープで口、目、両手を塞がれている。

 

「さっさとこの通りから警察は出ていくんだな!俺達が安全に逃げれるように余計なことはするなよ!そうそう、このハイエースは盗んだやつだから照合しても無駄だ!」

 

 強盗が要求をする。人質がいるため強硬策はとれない。交渉役の警察官が必死に説得する。

 

「人質が無事かどうか教えてほしい!」

「安心しろ!傷1つない!だけどそれはお前らの対応次第だ!」

「人質なら私がなろう!だから、他の人質を解放してくれ!」

「ダメだ!どうせ、拳銃や発信器を持ってるだろ!」

「持っていない!拳銃も発信器も持っていない!」

「信用できるか!なら服を脱いで証明しろ!」

 

 強盗の要求に答えるように警察官が服を脱ぐ。

 

「これでどうだ!?」

「まだだ!とりあえず上は全部脱げ!」

 

 強盗の要求がエスカレートしていく。警察官の動きが止まってしまう。このままでは交渉が出来ない。どうすると考えていた時、後ろから声が聞こえた。

 

「私に任せなさい。」

「あ、あなたは…」

「おい!出来ねぇのか!?ならば人質交換は…」

「待て!ここからは私が交渉に応じよう!」

 

 パトカーの陰から海パン刑事が現れる。もちろん、海パンとネクタイだ。

 

「君の要求通りにしたぞ。」

「そこまで脱げとは言ってねぇ!」

 

 突然の海パン刑事に強盗はたじろいでいる。

 

「俺は上はと言ったんだ!下も脱げとは言ってねぇぞ!」

 

 強盗が拳銃を向ける。それでも海パン刑事は進む。すると、強盗がホルスターの拳銃に気付いた。

 

「おい、思いっきり拳銃あるじゃねぇか!隠す気ゼロか!」

「私は隠し事が嫌いだ!」

「意味ねー!」

 

 強盗が叫ぶ。

 

「とにかくそれ捨てろ!」

「分かった。」

 

 そう言って海パン刑事は海パンを脱ぎ捨てた。

 

「そっちじゃねぇ!なんでそっちを捨てた!?人質の目塞いでなかったらとんでもねぇもん見ることになるぞ!」

「おっとすまない。ネクタイが緩んでいた。これでは交渉が出来ないしレディに失礼だ。」

「違うだろー!」

 

 それ以上来るなと銃を向ける。交渉は膠着状態だ。その隙に両津と時行が銀行の裏口から中に入る。こちらに気付いていない強盗犯がいるため両津が後ろからこっそり近付き一瞬で倒す。

 

「時行、行くぞ。」

「はい。(モグモグ)」

「おい!何バナナ食ってんだ!?」

 

 時行が股間から出したバナナを食べている。両津がしまえとジェスチャーすると皮だけになったバナナを海パンの中にしまった。

 

「お前もだんだん海パン刑事に染まってきたな。」

「それ言わないでください。」

 

 銀行内を進み強盗犯達が立て籠もっているフロアへ着いた。しかし、音や声しか分からず突入しにくい。すると、両津は時行を見てニヤリと笑った。時行は嫌な予感がしてゾッとした。両津は暴れる時行を押さえつけ彼の海パンにスマホを仕込む。

 

「いいか時行。」

「よくないです。」

「この作戦はお前にかかっている。」

「私の言葉は無視?」

「お前が突入して強盗と人質の数を仕込んだスマホでわしに教えろ。」

 

 両津が作戦を話すも時行は首を横に振り続けている。

 

「嫌ですよ。」

「これは逃げ上手のお前にしかできん。」

「それ以前の問題があるんですよ。」

「いいから行けー!」

「最悪だぁ!」

 

 両津が時行を投げ飛ばす。強盗達の前に時行が倒れる。強盗達は一斉に拳銃を時行に向ける。海パンと蝶ネクタイだけの美少年が起き上がる。お互いに相手を見て沈黙する。

 

「「「へ、変態だー!」」」

「違いますー!!」

 

 両者が叫ぶ。時行は必死に弁明するが効果はない。強盗達はこの事態に戸惑い過ぎて海パンに仕込まれたスマホに気付かない。テレビ電話にしていた両津はそこから情報を得る。

 

「強盗犯は…中に3人か。外にいる奴とさっき倒した奴の計5人。人質は…客が7人、銀行員が5人、あとは支店長。支店長以外はガムテープで拘束されている状態と。」

 

 両津は時行から得た情報を大原部長と海パン刑事に伝える。イヤホンから情報を得た海パン刑事は小さく頷く。その間もフルチンだ。

 強盗達は時行を見てどうするか話し合っている。人質達は何が起きているのか理解出来ずに戸惑っている。すると、リーダーらしい強盗犯が支店長に指示した。

 

「おい支店長。とりあえずあの子に何か着せてやれ。」

「は、はい。」

「まずい!このままだと見れなくなる!時行、断れ!」

 

 両津が叫ぶが時行には聞こえていない。支店長が自分の上着を着せようとする。その時、時行が転んだ時に出たバナナの皮を踏んでしまい転んで頭を打って気絶した。強盗が何事かと前に出て見る。

 

「バナナの皮で滑って転んで気絶した…ギャグマンガかよ!?なんでそんな奇跡的なバカが起きるんだよ!?」

 

 頭を抱える強盗達。両津も時行も頭を抱えている。強盗の1人が支店長の上着を持って時行に近付く。とにかく何か着せたいと思ったのだろう。でも時行には息を荒げている危ない奴に見えた。身の危険を感じ逃げる。

 

「待て!逃げるな!何もしないから!痛くしないから!」

「とにかく服を着てくれ!」

「裸で逃げ回るな!」

「ってか、なんで裸!?」

 

 強盗達の声が外にまで聞こえた。強盗も警察官達も野次馬も無の顔になっている。気になった外にいる強盗がチラッと中を見る。海パンの時行が逃げ回っている。

 

「おい!最近の警察は子供を裸で突入させるのか!?」

「そうだ!」

「「「違います!」」」

 

 強盗の質問に力強く答えた海パン刑事に対して他の警察官達が即座に否定する。中ではほぼ裸の時行が強盗達から逃げている。ある意味地獄絵図だ。

 

「待ってください!とりあえず銃を捨てましょう!」

「まずお前は羞恥心を捨てるな!」

「早くしてください!これ凄く恥ずかしいです!」

「捨ててはなかった!」

 

 なんとか捕まえようとするも裸で逃げる時行を捕まえることが出来ない。そんな状態に気が触れた強盗の1人が時行に向けて発砲した。

 

「危ない!」

 

 両津が叫ぶ。しかし、銃特有の発砲音がしない。あれ?と思いよく見ると本物の拳銃じゃなくサバゲーとかで使うモデルガンだと分かった。強盗達が人質の目を塞いだのは拳銃が偽物とバレないようにするためだった。

 

「おいバカ…」

「やってしまった…」

「部長!海パン刑事!強盗が持っている拳銃は偽物です!突入しましょう!」

「よし!」

 

 両津が海パン刑事達に報告する。海パン刑事が分かったと頷いた瞬間、強盗に向かって走り出した。もちろん、フルチンである。

 

「く、来るなぁ!人質がどうなってもいいのかぁ!マジでくるなぁ!交渉相手さっきの警官に変わってくれぇ!」

 

 強盗が拳銃を向けるも撃つ素振りはない。海パン刑事は思いっきりジャンプすると自分の股間を強盗の顔面にぶつけた。モザイクが強盗の顔を覆う。そのまま銀行内へ突撃する。

 

「警察だ!」

「なんでこいつ興奮してんだよ!?ってか何に興奮してんだ!?」

 

 海パン刑事が突入するとほぼ裸による羞恥心と逃げることによる興奮で赤面している時行が涙目で強盗達から逃げていた。強盗達はもう人質を見ていないようで人質達は既に端っこで固まっている。 

 

「変態だー!」

 

 時行を追いかけていた強盗が海パン刑事に気付く。その強盗に向かって走る。残りの強盗達もまずいと判断し逃げる。その先に両津が待ち構えていた。

 

「変態が増えた!」

「やかましい!したくてしてるわけじゃねぇ!」

 

 両津が背負投げ、海パン刑事がゴールデンクラッシュでそれぞれ強盗を倒す。残ったリーダーは変態から逃げようと奥へと走る。しかし、そこには時行がいた。強盗が苦し紛れのパンチをするが時行は避けお尻アタックで強盗を倒した。

 

「素晴らしい。」

 

 その姿を見た海パン刑事は感嘆する。そのまま機動隊が突入し強盗犯は全員お縄となった。

 

「これで一件落着。」

「してない!」

 

 机の陰に隠れ服を探す時行。咄嗟にやったお尻アタックが凄い恥ずかしかったみたいだ。両津が時行の肩に手を置き慰める。こうして、事件は解決した。

 翌日、昨日の事を忘れたいと現実逃避してある時行。頭を抱えて何度も忘れようとしている時行を見て両津達は同情している。そこに海パン刑事が現れた。時行は即座に休憩室へ逃げる。

 

「やぁ諸君!昨日は素晴らしい働きだった。」

「その結果があれだぞ。」

 

 両津はこちらを覗いている時行を指差す。時行は歯ぎしりして海パン刑事を威嚇している。

 

「安心したまえ時行君!今日は君にプレゼントを持ってきた!」

「プレゼント?」

「贈り物ってことよ。」

「そうだ!昨日の事件で一番活躍した君に是非私からプレゼントしたいと思ってな!」

 

 時行は警戒しながらも前に出る。

 

「贈呈しよう!…これが“等身大時行君フィギュア真っ裸刑事バージョン”だ!」

 

 海パン刑事が出したそれがみんなを黙らせる。精巧に作られた時行人形に昨日着けた海パンと蝶ネクタイが付属している。肌触りも質感もしっかり再現されていて時行のおいなりさんも再現されていた。

 

「生々しいぐらいに再現されています。」

「しかも、関節がちゃんと動くぞ。」

「素晴らしいだろう!昨日の時行君の必殺技を再現することが可能だ!それと、私と同じ海パンとネクタイを着ければ時行君海パン刑事バージョンも作れるぞ。」

「こんなの…い…い…要りませ〜〜ん!!」

 

 時行の叫びが派出所中に響いた。

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