逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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闇バイトにご注意を

 時行がいつものように派出所に行く。しかし、両津はいない。

 

「両さんは?」

「両ちゃんなら本庁の八課よ。」

「え?何故ですか?」

「仕事よ。」

 

 その両津は本庁でスマホを見ていた。そこに八課課長がやってくる。

 

「どうだね両津?」

「難しいですね。いろいろと試してみましたがなかなか引っかかりません。」

「何をしているの?」

 

 婦警が聞くので答える。

 

「闇バイトを探してる。」

「ええ!?」

 

 婦警が驚いていると両津のスマホに返信がきた。両津は来た来たと言ってスマホを見る。

 

『ホワイト案件あります。』

 

「ホワイト案件?」

「闇バイトがよく使う手だ。真っ当な仕事を装い参加した奴に強盗をさせる手口が増えた。実行犯を捕まえても指示役にはなんのダメージもない。言わばトカゲだよ。どんだけ尻尾を捕まえてもすぐに切られる。なら、頭から捕まえてやろうということだ。」

 

 両津がDMで応答する。よく見ると両津のSNSには『坂田』の名前で登録されていた。

 

「坂田?」

「潜入用の偽名だ。本名でやるわけにはいかんからな。自宅の場所も中川から借りた一軒家にしている。」

 

 両津はニヤリと笑いタップした。すると、違うアプリに登録された。

 

「それは?」

「会員制の通話アプリだ。秘匿性が高いから外部から調べてもなかなか指示役には辿り着かん。ならば、中に入って探ろうってわけだ。」

 

 両津はアプリで会話する。すると、通話相手からタタキという単語が聞こえた。両津はそれに答える。

 

「はい!タタキでもなんでもやります!」

 

 通話が切れる。

 

「タタキ?」

「強盗の隠語だ。時間も集合場所も指示された。」

 

 両津はすぐに課長に報告する。

 

「よくやった両津!」

「これで闇バイトの指示役を…」

「まだです。」

 

 喜ぶ課長達を両津が止める。

 

「ここで潜入しても強盗に付き合うだけです。頭は掴めません。」

「ならどうする?」

「指示役にとって予定外のことを起こします。安心してください。わしに考えがあります。」

「よし。任せよう。」

「明後日、正午、江戸川区の廃倉庫に集合です。」

「分かった。」

 

 明後日

 廃倉庫に3人の男が集まった。全員、闇バイトに応募してしまい強盗をさせられようとしている。廃倉庫に入るとバンがある。恐る恐る開けるとガムテープやバールなど強盗に使う道具が入っていた。

 

「やっぱりこれ強盗じゃ…」

 

 1人が慄く。すると、そこに両津がやってきた。後ろには椎名と有栖川がいる。3人ともサングラスを掛けいかにもヤクザな感じを出していた。それを見た3人は震える。この闇バイトはヤクザが仕切っていると確信した。両津は3人に話しかける。

 

「おい。全員揃ったか?」

「え…あれ?」

「確か…4人でやれと…」

「言われてたような…」

 

 3人は曖昧な答えをする。それに対して両津が叫んだ。

 

「アホかぁ!時間厳守と報連相は社会人の常識だろぉ!」

「「「ひぃ!」」」

「お前ら、1人ずつ名前と年齢、職業言え!」

 

 両津に気圧され1人ずつ自己紹介を始める。

 

「や、屋良樫茶太です。19です。コンビニでアルバイトしています。」

「本野出来心です。年齢は28で職業はホームヘルパーです。」

「原江内理速です。23歳、む、無職です。」

「で、誰が来てないって。」

 

 両津が有栖川に言う。有栖川はスマホを取り出し操作する。

 

「坂田ですね。神田の一軒家に祖母と2人暮らしです。」

 

 両津は椎名からスマホを受け取る。

 

「あ〜、わしです若頭。1人参加していない奴がいるようでして…」

 

 両津はあたかも電話しているフリをしながら離れる。その隙に原江内が椎名にお願いする。

 

「あの…この仕事辞めることは出来ませんか?」

「はぁ?あんた、楽して金稼ぎしたいんじゃないのか?」

「いえ!そうなんですが強盗して10万なんて…」

 

 それを聞いた椎名がサングラスを外して原江内をバンまで追い詰め彼の隣を蹴った。

 

「アホか!毎日汗水流して働いて1ヶ月で10万の奴だっているんだぞ!1回じいさん襲って奪うだけで10万の方が遥かに楽だろうが!」

 

 椎名の圧に負けた原江内が謝る。今度は本野が有栖川に物申す。

 

「でも、これって立派な犯罪じゃ…」

 

 すると、有栖川が上着を脱いだ。入れ墨が本野達の目に写る。

 

「はぁ?それ知って応募したんだろうが。」

「し、知りませんよ!向こうからはホワイト案件だって。」

「そもそも運ぶだけで10万とかおかしいと思わなかったのか?」

「お、思いましたけど…」

「じゃあ、あんたの責任だ!勝手に他人のせいにするじゃねぇ!」

「ごめんなさい〜!」

 

 有栖川の凄みに負け本野も謝る。その姿を彼女達の胸ポケットに仕込んだカメラで課長達が見ていた。

 

「凄いな2人とも。完全にヤクザだぞ。」

「そうでしょう。」

 

 そこに両津がやってくる。

 

「椎名は元ヤンですからそういうのが得意なんです。有栖川は現在進行系でヤクザに潜入していますから。」

「なるほど。あのヤクザっぽい動きやオーラはそこからか。」

「あの入れ墨もいつでもヤクザに潜入出来るように常に着けてますよ。」

「素晴らしい!」

 

 課長が感動する。

 

「そろそろ次の段階に進めます。おかしいと思った指示役は見張り役を出す頃です。そこでトラブルが起きれば必ず行動に出ます。課長達はそこを抑え見張り役を捕まえてください。」

「分かった。」

 

 両津は再び椎名達のところに戻る。

 

「補佐、どうでした?」

「部下に向かわせた。タタキはわしらだけでやるぞ。」

 

 意外とノリノリの椎名。両津もヤクザの演技をしながら3人を睨む。両津に睨まれ震える3人。それを遠くから双眼鏡で覗いている男がいた。誰かと電話している。

 

「え?なんで?」

『どうした?』

「なんでかあいつらヤクザに絡まれてるぞ。」

『はぁ!?なんでヤクザがいるんだよ!?』

「知らねぇよ!3人組のヤクザが実行役に絡んで…おい!車乗っ取りやがった!」

『はぁ!?』

「実行役連れてどこか行きやがった!」

 

 見張り役は慌てて両津達を追いかける。両津は椎名に運転させ後ろから屋良樫達を睨んでいる。

 

「お前ら、なんで金が欲しい?」

「え、え〜と…その…遊ぶ金欲しさです。」

「母の治療費のために…」

「借金返済です。」

 

 両津が呆れる。

 

「バカだろお前ら。まず、犯罪で手に入れた金で治療出来ても母は喜ばんぞ。」

「そ、そうですよね。」

「借金は膨れ上がる前にコツコツ返すのがコツだ。」

「あ、はい。」

「で、お前。遊ぶ金が欲しいならそれこそ真面目に働け。コンビニのバイトしてるならそれを続けろ。」

「はい…」

 

 両津が3人にアドバイスする。

 

「人間、余裕が無くなると周りが見えなくなる。まずは余裕を持て。周りがやっているから自分もやるとかじゃ何も変わらん。自分だけの何かを持つことが大切だ。余裕があるだけでこんな闇バイトに引っかかることはなくなる。」

 

 両津のアドバイスを黙って聞く3人。両津の表情が優しくなる。

 

「まぁ、今回は誰も傷付いてないし未遂だ。厳重注意だけで済むだろう。」

「「「え?」」」

 

 3人が目を丸くして両津を見る。そこで気付く。この車は強盗する予定の家に向かっていない。じゃあ、どこに向かっているのか?そう思っていると警視庁の前に到着した。

 

「ここでバラすがわしらは警察官だぞ。」

「「「えぇ〜!?」」」

 

 3人が叫ぶ。

 

「こういう闇バイト撲滅のために応募して潜入している。」

「じゃあ…ヤクザって言うのは…」

「嘘だ。」

「この人の入れ墨は!?」

「それっぽいでしょ。」

 

 恐怖から解放された3人は腰を抜かす。そこに課長が配置していた警察官達が来て3人を連行して行った。それを後ろから見ていた見張り役がすぐ連絡しようとした。

 

「おい!あいつら警察に…」

「警察だ。動くな。」

 

 そこに課長達が突入して見張り役を逮捕した。

 

「見事だった!おかげで闇バイトを斡旋している指示役逮捕が出来そうだ!」

「いや〜。わしらにかかればこれぐらい。」

「この調子でどんどん闇バイトを撲滅していくぞ!」

「「「おぉ〜!」」」

 

 後日

 

『闇バイトに参加したとしてヤクザと思われる男女3人が逮捕されました。3人はおとり捜査として潜入していたと供述しており…』

「両さん…」

「3人ともそれっぽいですからね。」

「演技が凄すぎたのよね。」

 

 テレビのニュースで流れた両津達の逮捕。それを休憩室で見ていた時行達は呆れていた。

 

「京華、何してんだ…」

 

 その頃、京華の逮捕をニュースで知った一文字翔は京華に呆れていた。

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