逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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時行の生活を体験してみよう!

「大原君。今年もあの日がやってきた。」

 

 新葛飾署署長室で屯田署長が大原部長に言う。チラッとカレンダーを見る。11月11日に赤いマジックで丸が書かれている。この日は十一月十一日、つまり十(プラス)と一(マイナス)ということで電気に関する日なのだ。

 

「今年も電気の大切さを署員に知ってもらおうと思うのだが何かいい案はないかね?」

「そうですね。…1ヶ月間電気代3000円以下はやりましたし何か新しい催しが必要ですね。」

 

 2人は悩む。悩んだ結果、両津に聞いてみた。

 

「11月11日の催しですか?」

 

 自販機の前でコーヒーを買っていた両津に大原部長と屯田署長が聞く。両津はコーヒーを飲みながら考える。電気の大切さを知るためのイベント。それを考えていたらふと思い出した。

 

「なら、時行の生活を体験させてみてはいかがでしょうか?」

「時行君の?」

「はい。時行がいた時代は電気はもちろん、二酸化炭素なんてほとんど出ない究極のエコ生活ですよ。」

「確かに南北朝に電気などあるはずもないか…」

 

 2人はなるほどと唸っている。面白いアイデアだったため両津の案を採用し時行から当時の生活を聞き取りイベントにした。

 11月11日。新葛飾署の署員達は5人一組となり木で組まれた家の前にいた。屯田署長がみんなの前でイベント内容を話す。

 

「え〜、今回は電気の大切さを知ってもらうために電気を一切使わない生活をしてもらいます。そのため時代を遡り戦国時代の生活を体験しようという催しです。」

「スマホも無しか…」

「これはキツいぞ。」

 

 服装も時行の時代の物にして現代の家電はもちろん、南北朝時代にはなかった物の使用は禁止された。両津は時行、纏、早矢、椎名と組んでいる。

 

「1週間だけでも相当キツいよこれ。」

「昔の人はそのキツい生活をしていたんだ。我慢しろ。」

(私にとっては最近のことなのですが。)

 

 早速始まる南北朝生活体験。しかし、現代機器に慣れた多くの署員達が早速暇だとかテレビ見たいだとか言い始めた。さらに問題なのは電化製品が使えないため米を炊いたりするには竈門を使わなければならない。使い方など知らない署員達は食事をどうすればいいのか分からない。そんな中でも両津は早速竈門で米を炊き始めた。

 

「さすがカンキチ。上手いな。」

「超神田寿司で米担当もしているわしにかかればこれぐらい。」

「頼もしいです両津先輩。」

 

 一応、1週間分の米俵はある。野菜も少しある。しかし、それ以外は決められた範囲内にある物を採らなければならない。両津は米が炊き上がるまでに木と糸で弓を作り石を加工して鏃を作る。

 

「よし。これで弓矢の完成だ。」

「両津先輩。完全にその時代の人になってます。」

(実際にその時代の人間が居るんだよなぁ。)

 

 両津は時行をチラッと見る。時行に弓矢を渡す。

 

「時行、これでなんでもいいから獲って来てくれ。」

「分かりました。」

 

 時行が早速狩りに出る。その間に早矢が野菜を洗い纏が簡単な料理をする。残された椎名はどうしようかと悩んでいた。

 

「私だけ凄い浮いてる。」

「椎名は山菜か魚を獲ってくれ。」

「あ、はい!」

 

 両津に言われて椎名が家を飛び出した。一方、中川、麗子、本田、左近寺、ボルボのチームも食事の準備をしていた。

 

「とにかく火を焚いてくれ。俺達で狩りをしてくる。」

 

 ボルボが火の準備を中川と麗子に任せて本田と左近寺を連れて出掛ける。近くの川で魚を見つける。岩の陰に隠れていた。

 

「左近寺、この岩をあの岩にぶつけてくれ。」

「よし。」

 

 左近寺はボルボの指示通りに岩をぶつける。すると、気絶した魚が浮いてきた。ボルボ達は魚を獲って帰る。その途中、ボルボが止まった。何かを警戒している。そこに熊が現れた。

 

「熊〜!」

「逃げるぞ!」

「待て!…熊は貴重なタンパク質だ。」

「食べる気ですか!?」

 

 ボルボは石で作ったナイフを取り出し構える。本田と左近寺は慌てて帰った。家に着くと中川と麗子が驚いてやってきた。

 

「どうしたんですか!?」

「く、熊が出た…ボルボが1人残って熊と…」

「ボルボさんが!?」

 

 中川が心配する。そこに熊を仕留めたボルボがやってきた。全員驚く。

 

「喜べ。当分、肉に困ることはないぞ。」

「ええ…」

 

 喜んでいいのか分からない中川達であった。山中では小町達が山菜を探していた。

 

「はぁ…なんか疲れるわ。」

「分かるわ〜。今時のレディに戦国時代を体験しろなんて無茶よ。」

「こんな生活出来るのあの原始人ぐらいよ。」

 

 小町と奈緒子が文句を言っている。すると、時行を見つけた。弓矢を構えて何かを狙っている。そして、矢を射った。その先には鹿がいた。矢は鹿に命中した。時行は鹿に手を合わせると両津達のところへと運んで行った。

 

「時行君って私達よりもサバイバル慣れしているわよね。」

「縄文時代から来たと言っても納得出来そうなんだけど。」

 

 逞しい時行を見て泣き言も文句も言えなくなった2人であった。時行は仕留めた鹿を持って帰る。それを見て椎名が驚く。

 

「時行様って本当になんでも出来ますよね。」

「武士の家系だからな。小さい頃から弓矢は習っていたみたいだし。」

 

 両津が炊き上がったご飯を試食する。鹿を解体し料理しいただく。残った野菜は漬物にする。それを繰り返し初日は終わった。

 翌朝、椎名が起きると既に両津達は支度していた。寝ていたのは椎名だけだった。起き上がって外を見ると纏が薪を割り時行が運び早矢が洗濯していた。

 

「もしかして、何もしていない…」

「わしらは早起きしただけだ。周りを見ろ。」

 

 椎名が周りを見てみる。まだ起きていないところが多い。

 

「でも、自分だけ寝てたというのは…」

「じゃあ、時行と一緒に山菜でも採りに行ってくれ。」

「わ、分かりました!」

 

 椎名と時行が山に入る。

 

「時行様ってたまに昔の人って感じがしますよね。」

 

 ドキッとする時行。

 

「え、えっと…」

「弓の腕もそうですし今の子供にしては達観しすぎている気が…」

「りょ、両さんと一緒に暮らしていると苦労が多いので!」

 

 時行が慌てて理由を作る。椎名はまだ納得していない様子だがこれで押し切る。すると、時行は気配を感じた。すぐに隠れる。しあも一緒に隠れる。時行が見た先には周りの草や枯れ葉で即席ギリースーツを作っていたボルボが俯せになっていた。

 

「ボルボ先輩…何をしているのでしょうか?」

「狩り…ですかね?」

 

 なんか怖いのでその場から立ち去る。別の所では大原部長達が体操していた。

 

「さすが大原部長ですね。早起きだ。」

 

 山菜採りのつもりが他のチームの偵察みたいになる。多くが生活に苦戦していた。米すら食べれずに参っている。

 

「炊き方教えましょうか?」

「それがいいかも。」

 

 時行と椎名はさすがに可哀想だと思い他のチームのところに行っては米の炊き方などを教えて周った。みんなから慕われた。時行と椎名は結局山菜を採れずに戻った。

 

「どうだった?」

「疲れました。」

「どうした?」

 

 2人が経緯を話す。両津は何故かニヤリと笑っている。

 

「そうかそうか。それは良いことをしたな。飯が出来たから食うぞ。」

「また、あの変な米ですか?」

「これは粟と言いまして戦国時代では米が貴重なためなかなか手に入りません。そのため庶民は米の代わりに粟を食べていたとされています。」

 

 早矢が答えてくれた。納得はしたがそれでも慣れない粟に苦戦する。両津と時行は気にせず食べている。早矢も美味しそうにいただいていた。

 

「食い終わった。さて…」

 

 両津が時行を連れて出て行く。両津は悪戦苦闘中の小町達を見つけた。あれから竈門が上手く使えず飯すら食べれない状態だ。そこに両津が来た。

 

「お〜、苦戦してるな。」

「何の用よ原始人!」

「邪魔だからあっち行って!」

「そうか。折角、竈門で飯を炊いてやろうと思ったが仕方ない。時行、行くぞ。」

 

 その発言に小町が反応し両津を止めた。

 

「わ、悪かったから炊いてくれない?」

「それが誠意か?」

「お、お願いします。」

「じゃあ、米俵一俵貰うぞ。」

「なんでよ!?」

 

 両津の要求に反発する。

 

「残り日数3日だぞ。3日で全部食いきれるのか?」

 

 小町が黙る。実際、一口も食べてないから7日分の粟がある。それを全部食べるのは無理だ。

 

「分かったわ。一俵ね。」

「それと、お前達の土地も貰う。」

「はぁ!?」

「お前らそんなに使わないだろ。共有の山地さえあれば問題ないだろ。」

 

 両津に圧され小町は了承してしまう。両津は時行と手分けしてスムーズに米を炊く。久しぶりの米に小町達は泣いて食べていた。

 

「なんか変な米だけど美味しい…」

「これ、そんなに変ですか?」

「今の時代はな。」

 

 両津は時行を連れて丸井チームに行き同じように米俵と土地を戴く代わりに米を炊いた。両津は画策していた。昔の生活に慣れていない人達の足元を見て技術を貸す代わりに土地や物をもらっていった。

 

「これでわしらの領地はかなり増えた。」

「やってること足利軍と同じですよ。」

 

 家に戻る。大量の米俵などの食料を持っている両津に纏達が驚く。

 

「これで食料問題は解決だぞ。」

「カンキチ、強盗でもしたのか?」

「違う!これはちゃんとした取引だ。」

 

 両津はもうやることは無いと寝る。そこに椎名が来る。

 

「両津先輩、やることなくて暇過ぎです。何かありませんか?」

「時行と早矢を見ろ。2人とも瞑想してるだろ。お前らもしろ。」

「あれはあの2人が凄いだけじゃ…」

 

 纏と椎名が時行と早矢を見る。すると、近くで暴れている声がした。纏が窓から覗くと左近寺が暴れていた。ボルボと中川が止めている。

 

「頼む!ゲームをさせてくれぇ!もう3日以上さおりに会ってない!」

「落ち着け左近寺!」

「落ち着いてください!」

 

 自分達以外も似た感じの人が続々出現していた。今の生活に慣れ過ぎた結果、文明の利器無しで生活が出来なくなっていた。

 

「両津先輩…」

 

 椎名が両津を見る。既に寝ている。時行と早矢も瞑想していて動かない。纏と椎名もやることないと夕飯までゴロゴロした。

 翌日、両津はまた時行を連れて土地と物質を交換する代わりに技術提供をする。その結果、参加チームのほとんどが半分以上両津に土地をあげてしまった。

 

「これで全土地の4分の3はわしらの土地になった。」

「完全に支配になってませんか?」

 

 両津は調子に乗る。取った領地と食料で贅沢三昧を見せつける。欲しがる人達には裏で金を要求する。その結果、両津はかなり儲けた。両津はさらに調子に乗る。足元も見て値をつり上げる。それに加えて欲しい物を要求する。それを見た時行はさすがに両津の支配に疑問を持ち大原部長のところに報告に行った。

 

「…ということです。」

「あのバカモン。」

「やってること完全に戦国時代だぞ。」

 

 大原部長と屯田署長が呆れる。そして…

 

「どうする?欲しいなら…」

「両津!」

 

 両津がびっくりして振り返る。そこには大原部長達がいた。時行や中川もいる。

 

「時行君から聞いたぞ。」

「時行!裏切りやがったな!戦国時代だと裏切りは重罪だぞ!」

「戦国時代でも裏切りは普通にありましたよ。」

「え…」

 

 両津が黙る。

 

「鎌倉時代では足利尊氏が幕府を裏切り、戦国時代では松永久秀や斉藤道三、毛利元就が裏切りを普通に行っていましたよ。」

 

 中川の補足で両津が汗を掻く。纏達が呆れて両津を見る。大原が迫る。

 

「両津、覚悟はいいな?」

「い、いえ、全然出来ていません…」

「問答無用!」

 

 大原部長が両津に天誅を下した。

 

 後日

 

「あれ?両さんは?」

「あのバカは性根が腐っていたからな。金剛寺に僧として送った。ちゃんと心が清らかになるまでここには戻ってこんよ。」

 

 居なくなった両津を気にする時行。その時行に大原部長が説明してくれた。

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