逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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両津の仏像修復術

 寮の自室で両津は何かしていた。時行は興味津々に見ている。そこに本田がコンビニ弁当を持って入ってきた。

 

「セ〜ンパ〜イ、言われた弁当買ってきましたよ〜。」

 

 本田が声をかけるも返事がない。本田が何をしているのか気になり覗いて見ると仏像があった。両津が器用な手付きで仏像の欠けた部分を直していく。

 

「両さんってなんでも出来ますよね?」

「センパイはいろんな技術を持ってますからね〜。」

 

 修理が完了した仏像を時行に見せる。

 

「どうだ?」

「凄いです!鎌倉にもここまで精巧に短時間で直せる職人はいませんよ。」

「そうか!わしの技術は鎌倉より上ってことか!」

 

 両津が高笑いする。

 

「それでこれはなんですか?」

「高額で頼まれたから直した仏像よ。道具さえあれば1日で直せる。」

 

 両津が仏像を箱に入れる。本田が両津の後ろを見ると似た箱が大量にあった。

 

「もしかしてセンパイ…あの箱全部仏像ですか?」

「そうだ。最近は仏像ブームで寺社仏閣を周って仏像を見学する人が増えた。仏像も時間が経てば老朽化する。だから、最近仏像修理は高額バイトになってるってわけよ!」

 

 両津は直した仏像を時行に運ばせる。その間に次の仏像の修理に取り掛かる。これを何回も繰り返していた。その結果、かなりの仏像を修理することに成功し結構儲かったという。

 

「鎌倉の仏像も足利尊氏が焼いたせいで多くは失われました。」

「見てみたかったな。もしかしたら、その中から国宝が出てくるかもしれんぞ。」

 

 コンビニ弁当を食べながら次の計画を練る。その過程で両津が時行に提案した。

 

「時行、お前も仏像修理やってみるか?」

「いいんですか!?やってみたいです!」

 

 時行が即答する。両津は道具の使い方や手順、最近の仏像の種類を教えた。

 表面に溜まったほこりや汚れを取り除き時には解体して木地内部に虫喰いなどがない確認し組み立て膠や漆で接着する。最後に造形をなめらかに整え色を元と同じように塗って修復が完了した。

 両津が教えると時行は飲み込みが早くサクサクと熟していく。それを見た両津は心の中で悪巧みを考えた。

 

(時行がここまで器用だとは…このまま時行に仏像修理をさせれば効率は2倍、お金も2倍!)

 

 両津の両目が¥になっている。両津は早速時行に仏像修理の仕事を任せる。時行がノリノリで始めるのを確認すると両津は部屋から出て行った。

 

「よし、このままもっと注文を受けるぞ。」

 

 両津が出て行ったことに気付かない時行はそのままずっと仏像修理をしている。やり方が分かるとあとは簡単だった。時間が過ぎていき気が付くともう夜になっていた。時行が一休みしようと背伸びする。そこに着信音が鳴った。両津が時行のためにと買ってくれたスマホだ。時行は作業を止めて電話に出る。

 

「もしもし…」

『時行、今どこにおるのじゃ?』

 

 電話の相手は檸檬だった。時行はすぐ正座する。

 

「りょ、両さんの家です!」

『もう19時じゃ。早う帰ってこい。夏春都が怒っとるぞ。』

「はい!今すぐ!」

 

 時行は慌てて帰る準備をする。慌て過ぎて修理中の仏像を蹴り飛ばしてしまった。さらに、仏像が道具箱に辺り飛び散り他の仏像にも当たってしまう。折れたり新しい傷が出来たり道具が散乱したりと大変な状況になってしまう。

 

「あわわわ…」

 

 時行は急いで仏像を直そうとする。しかし、時行は間違えて仏像修復に使う接着剤じゃなく両津がプラモデルを作る時に使っていた接着剤で仏像をくっつけてしまった。とりあえず見た目はなんとかなった。時行はすぐに道具箱に道具を入れて走って出て行った。

 

「ごめんなさ〜い!」

 

 翌日、両津が派出所で仕事していると大原部長が来た。手にはそこそこ大きい正四角柱の箱がある。

 

「両津、お前仏像の修復が出来ただろ?」

「出来ますけど。」

 

 大原部長は両津の前に箱を置くと蓋を開けた。中には威厳ある顔をした古い仏像がある。所々傷んでいるようだ。色も落ちている。

 

「明日、尊巌寺で10年ぶりにこの仏像をお披露目することになったのだが劣化が激しくてな。急に頼めるところもないし両津に直してもらおうと持ってきたわけだ。」

「部長、これ1日じゃ到底直せませんよ。」

「代金は弾むぞ。」

「部長!やらせていただきます!」

 

 両津は仏像を箱に入れてすぐ帰った。部屋に戻り早速仏像修理に取り掛かる。

 

「時行は…そうか。今学校か。仕方無い。わしだけでやろう。」

 

 両津は仏像を置いて状態を確認する。これなら他の仏像を後回しにして急ピッチでやればなんとか間に合いそうだ。両津は道具箱を前に置いて道具を取り出す。そのまま仏像修理に取り掛かる。

 

「これなら…ん?」

 

 最後の接着で両津が気付く。今仏像に塗っている接着剤が修復に必要な接着剤ではなくプラモデルに使う接着剤だった。そこを触ってしまい両津の手と仏像がくっついてしまう。

 

「しまった!どこで間違えた!?それよりも…」

 

 両津はなんとか剥がそうとした瞬間、勢いあまって仏像が吹っ飛んだ。しかも、他の仏像に命中しバラバラになってしまう。最初に写真なんか撮ってないため元の顔が思い出せない。

 

「まずいぞ…」 

 

 両津は焦った。

 翌日、両津から届いた箱を持って大原部長が尊巌寺に向かう。既に住職や見物人達がいる。屯田署長もいる。大原部長は住職に箱を渡す。

 

「いやぁ、間に合って本当に良かった。」

「これも大原君のおかげですな。」

「え、ええ!」

「では…尊巌寺如来御尊顔〜。」

 

 住職が箱を開けた瞬間、全員が自分の目を疑った。威厳ある顔は完全に消えふざけているのかと言いたくなるニヤリ顔になっている。体もキメラみたいにいろんな仏像が合体していて腕も大量にあった。住職は気絶し屯田署長は大原部長に詰め寄る。

 

「大原君、これはどういうことかね?」

「そ、それは…」

 

 後日

 

「両津はどこだぁ!両津の大馬鹿者はどこだぁ!」

「鎌倉大仏が見たいと言って出て行きました!」

 

 渋川義季の格好で派出所に激怒しながら突撃してきた大原部長に時行はそう言ったのだった。

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