超神田寿司
「演劇?」
そこでは両津が檸檬からお願いされていた。
「レモンの母校の幼稚園で演劇をしたいのだが園長が是非カンキチにしてほしいとお願いされてのぉ。」
「幼稚園を母校って言うのお前ぐらいだぞ。」
両津は考える。そこに檸檬がもう1つお願いしてきた。
「もしでよいのじゃが…レモンも演劇に出てみたいのじゃ。」
「檸檬もか…よし!わしに任せろ!」
「本当か!」
両津は笑いながら了承した。
後日、両津は派出所に時行や弧太郎達を呼んでいた。
「檸檬ちゃんの幼稚園で演劇ですか。」
「そうだ。脚本は既にわしが済ませた。後はお前達が了承してくれればいける。」
「私は構いませんよ。」
真っ先に時行が了承した。そこから面白そうだと全員が了承した。
「それで、どんな劇にするんですか?」
「園長から難しくなく笑える物語がいいと言われてな。童話が1番いいということで桃太郎にした。」
「桃太郎って…先輩、以前桃太郎は現実味がないと言ってませんでした?」
「だから、わしの新桃太郎をやる。」
両津の発言に大原部長が反論した。
「バカモン。あんなふざけた桃太郎を幼稚園の演劇に出すな。」
「もちろん、あれとは少し変えてますよ。」
両津が安心してくださいと大原部長に言う。
「わしが桃太郎に文句があるのは桃から産まれるところと犬、猿、キジで鬼に敵うわけないところと鬼から財宝を奪うところです。そこを納得いく形に変えます。」
両津はそう言って配役を発表し始めた。
「まずは主人公の桃太郎だが…時行にやってもらう。」
「私ですか!?」
時行はびっくりして両津を見る。誰も反対しない。
「まぁ、時行なら納得っすね。」
「そうね。時行君なら安心よね。」
「中川と麗子はおじいさんとおばあさんの役だ。」
「分かりました。」
「いいわよ。」
中川と麗子が了承する。
「渚が犬、亜矢が猿、静がキジだがいいか?」
「僕は大丈夫です。」
「私も!猿役楽しそう!」
「異議なし。」
次々と配役が決まる。
「雪長にはナレーションをしてほしい。」
「ナレーションですか?」
「そうだ。語り部みたいなものだ。」
「分かりました。」
「それで鬼役を…部長と椎名と弧太郎にしてもらう。」
両津の配役に大原部長と椎名が異議を申し立てる。
「何故わしなんだ!?」
「私はもっと他の役が…」
「残りがこれぐらいしかないから我慢してください。」
「両津は何の役をするんだ?」
「わしは鬼のボス役ですよ。」
全員が似合うと言う。両津は自分でも分かっているため言い返せない。そこに檸檬が来た。
「カンキチ、レモンの役は?」
「檸檬はな…主人公の桃太郎の次に重要な役をしてもらう。」
「せ、責任重大じゃな。」
「大丈夫だ。檸檬なら出来る。」
配役が決まり練習が始まる。そして、演劇当日。幼稚園には園児や園長先生の他、保護者の姿もあった。時行達は緊張している。
「いっぱい来てますね。」
「なんか落ち着けないっすね。」
「安心しろ。あんだけ練習したんだ。それに、ちょっと失敗した程度ならわしらでフォロー出来る。」
両津が笑う。演劇が始まった。語り部役の雪長が物語の始まりを告げる。
『むかーし、むかし。あるところにおじいさんとおばあさんと娘さんがいました。』
最初に出たのはおじいさん役の中川とおばあさん役の麗子と娘役の檸檬だった。
『娘さんは桃姫と言って大層おじいさんとおばあさんに可愛がられていたそうな。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。』
中川と麗子がフェードアウトする。そこに今度は鬼役の両津達が現れた。両津達を見て園児達は怖がる。
「この家にあるお宝全部奪ってしまえ!」
「「「おおー!」」」
「おお?いい子供がいるじゃねぇか!」
「助けてー!」
『そこになんと悪い鬼達がやってきました。鬼達は乱暴し財宝を奪い桃姫を拐ってしまいました。』
両津は檸檬を抱える。中川と麗子が来るも暴力で振り払い去って行った。
両津は劇の練習中に鬼に関してこんなことを言っていた。
「鬼は退治されても仕方ない外道にします。これなら桃太郎が鬼を退治した時のカタルシスが得られます。まずは鬼がどんなに怖いのか見せるのです。」
「確かに怖いが…」
「普通に誘拐は犯罪じゃ…」
「だから悪役としてみんなを怖がらせることが出来る!」
両津の狙い通り園児達は怖がり泣きそうになる子もいた。
『桃姫を拐われたおじいさんとおばあさんは噂で聞いた桃の国の英雄桃太郎に娘を取り戻して欲しいとお願いに行きました。』
中川と麗子が祈る。そこに桃太郎の格好をした時行が現れた。絵本の桃太郎よりも凛々しくカッコいい桃太郎に園児だけではなく園長や保護者達も魅入っていた。
「私が桃の国の桃太郎です。」
「桃太郎さん。どうか娘を…桃姫を悪い鬼から助けてください。」
「お願いします。お金ならいくらでも払います。」
「いえ。お金なんて入りません。お二人の気持ちだけで私は満足です。」
『桃太郎はおじいさんとおばあさんの願いを聞くと3人の仲間を呼びました。それぞれ犬、猿、キジという名前の勇敢な者達です。』
時行の前に渚、亜矢、静が来る。動物としてではなく犬、猿、キジというコードネームの人間という設定に置き換えていた。
場所が変わり両津達の出番になる。両津達は酒代わりの水を飲みながらワイワイ宴会していた。そこに檸檬もいる。
「親分!サイッコーっすね!」
「だろ!やはり我ら鬼に敵う者など…」
そこに笛の音が鳴る。両津達がどこから聞こえるのか探していると笛を吹きながら時行が登場した。
『桃太郎達は桃姫を救うべく鬼ヶ島に上陸しました。』
「何者だ!?」
「桃の国から来た桃太郎。悪鬼羅刹。悪い鬼を退治に来た。」
時行が笛を仕舞う。そこに渚達も登場した。
「ええい!鬼に歯向かうなど…やってしまえ!」
両津がバットで作った金棒を振り回し命令する。
『さぁ、始まりました鬼退治!犬は腕に噛みつき、猿は顔を引っ掻き、キジは痛いところを突く!』
雪長が音楽を流す。音楽に合わせて渚が大原部長に体当たりして噛みつくフリをする。亜矢は本気で引っ掻き弧太郎を泣かす。静はスマホを見せ椎名を土下座させた。そのまま鬼役は両津以外みんな退散した。
「情けない!こうなったらわしが相手してやる!」
両津が檸檬を抱えながら暴れる。渚、亜矢、雫も奮戦するが両津には敵わない。両津は練習の時にあっさり勝ってはつまらないと言って苦戦するところも脚本に入れていた。
「フハハハ!その程度か!」
両津は渚達を追い出し時行との一騎打ちに持ち込む。時行も相手するが苦戦していた。
『圧倒的な力の前になす術なく押される桃太郎。このまま負けてしまうのでしょうか?』
雪長がそう語った瞬間、檸檬が叫んだ。
「頑張って桃太郎!」
その声を皮切りに園児達も頑張れ桃太郎と叫び始めた。それに狼狽える両津。時行は立ち上がると真っすぐ両津を見た。
「はい!」
『ここから桃太郎の大逆転劇が始まりました。』
雪長が違う音楽を流す。時行は真っすぐ両津に向かう。両津は金棒を振り下ろす。しかし、さっきと違い本気で振り下ろしていた。それを時行は避ける。
「コーチ?さっき本気で振り下ろしてませんでした?」
「両津の奴、演技ということを忘れてないだろうな。」
「忘れてないと思いますよ。」
中川が心配する弧太郎達に言う。
「先輩は確信していますよ。自分がどんなに攻撃しても時行君なら絶対に避け切れると。」
中川の言う通り時行は両津の攻撃を全て避ける。それを見た保護者達は演技の範疇を越えていると息を呑んでいた。園児達はさらに時行を応援する。
「ちょこまかと…」
両津が油断する。その隙をついて時行がジャンプして両津から檸檬を救い出した。その姿に興奮する園児達。時行は檸檬を安全な場所へと下ろす。
「桃姫。暫しお待ち下さい。」
「うむ。」
2人の仲を裂こうと両津が迫る。時行は再び両津に向かって走る。時行は両津の攻撃を避けながら周りをグルグル周る。両津がめちゃくちゃに金棒を振る。
『さぁ、鬼退治はクライマックス!みんなで桃太郎を応援しましょう!』
「「「頑張れー!桃太郎ー!」」」
「やかましい!」
両津は悪役っぽく振舞う。それでも園児達の応援は止まらない。園長達も応援する。時行は楽しくなってきた。両津の後ろに周ると挑発するように手拍子を始めた。
「お〜にさ〜ん、こ〜ち〜ら〜、手〜の鳴〜るほ〜うへ〜。」
「桃太郎〜!」
劇は最高潮に盛り上がる。両津は激しく攻撃を続けた結果、疲れが見え始めていた。そこに時行が迫る。両津が金棒を大きく振り下ろす。すると、時行の姿がなくなっていた。どこだと探す。一瞬、影が出来た。両津が上を向くと時行が笑顔で模造刀を構えていた。
「待て時行…それはさすがに痛いでは…」
「覚悟!」
時行の一撃が両津の脳天に命中する。両津はそのまま倒れ動かなくなる。時行は着地すると模造刀を納めた。
「成•敗!」
その瞬間、歓声があがる。時行は檸檬のところへ行き手を差し伸ばす。檸檬が手を繋ぐと引き寄せた。
「帰りましょう姫。」
「うむ。」
「なんか見てるこっちがドキドキしてしまうっす。」
「本当に小学生?」
弧太郎達が顔を赤くする。園長達も顔を赤くしていた。場所が変わり中川と麗子の出番になった。時行達は檸檬を連れて2人のところへと行く。檸檬は中川と麗子に抱き着く。
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「いえ、皆さんのおかげですよ。」
『こうして、悪い鬼から大切な娘を救った桃太郎は桃姫と共に幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。』
幕が閉まり劇が終わる。みんなから拍手喝采の嵐がきた。
「いててて…痛かった。」
「いい演技じゃないか両津。」
「最後はやり過ぎましたけど。」
「大丈夫ですか両さん?」
時行が心配するも両津は気にしてないという。
「演劇は大成功じゃな。」
「緊張したけど楽しかったっすよ!」
「私も!」
「園児の皆さんも大喜びみたいですし良かったですね。」
みんな満足して演劇は終わった。後日、新訳桃太郎演劇がネットにアップされ大反響を呼んだ。それに伴い両津はビジネスとして新訳桃太郎演劇を売り出す。
「ダメだよ。小学生だから学業があるしね。この3倍出すなら考えてもいいけど。」
「両さん…」
「先輩はなんでも商売に繋げますからね。」
「失敗して泣くのがオチだ。放って置け。」
プロデューサー気取りで商談する両津を見て呆れてしまった時行達であった。