ある日の新葛飾署
そこで両津と小町が言い争いしていた。冬の署員旅行の幹事をどちらがするか揉めていたのだ。
「あんたは絶対やらしいところしか選ばないでしょ!」
「お前らこそ山滑るだけってつまらんだろ!」
「全然決まりませんね。」
「いつものことですよ。」
男性署員は両津を、女性署員は小町についている、両者、一歩も引かない。すると、両津がゲームで決着しようと提案した。
「何のゲーム?まさか野球拳?」
「違う。簡単に言えば缶蹴りだ。」
「またぁ!?」
「しかし、ただの缶蹴りじゃない。勝負は明日!その時にルールを説明する!」
小町が乗った。そして、明日。派出所近くの公園で缶蹴りが始まる。しかし、両津は缶を5つ持っていた。それぞれ、赤、青、黄色、白、黒のテープで巻き付けられている。
「名付けて五色缶蹴だ!」
「五色缶蹴?」
「基本的なルールは缶蹴りと一緒だが五色缶蹴は5つのうち、正解の缶を蹴らないといかん。」
「はぁ?」
両津が五色缶蹴のルールを説明する。
まず、赤、青、黄色、白、黒のテープで巻き付けられた缶をフィールドの決められた場所にそれぞれ置く。
鬼側と蹴る側に分かれ普通の缶蹴りのように蹴る側を見つけた鬼はどれでもいいので缶を踏んで見つけたと宣言する。
宣言通りなら蹴る側は退場。違うなら続行。これを繰り返し時間が経過するか蹴る側全員を退場させたら鬼側の勝利。缶をければ蹴る側の勝利となる。ちなみに、間違えた場合、踏んだ缶とは違う缶で宣言しないといけない。
ここからが普通の缶蹴りと違ってくる。5つある缶のうち、正解の缶は1つだけ。他の4つの缶を蹴っても勝利とはならないのだ。
「へぇ。つまり、ただ蹴るだけじゃ無くて正しい缶を蹴ればいいってことね。」
「そうだ。それと、規模も大きいから人数も増やす。今回は鬼側は2人、蹴る側は5人にする。制限時間は30分。正解の缶を蹴れば2点。不正解の缶を蹴ればマイナス1点。蹴る側が蹴っていい回数は2回までとする。」
「分かったわ。それで行きましょう。」
「先に10点先取した方の勝ちだ。他に気になるルールがあるならその都度説明する。」
こうして、両津考案の五色缶蹴が始まった。両津達男性チームと小町達女性チームに分かれる。まずは両津と本田が鬼側となり小町達が蹴る側になる。両津と本田はこれ見よがしに黒の缶を守っている。両津は本田に見張るように指示して探しに行った。
「こんなの簡単じゃん。」
小町はわざと音を立てて本田を誘導する。その隙に奈緒子が来て黒の缶を蹴り飛ばした。
「しまった!」
「はい!これで2点!」
「残念だが小町君。マイナス1点だ。」
審判役の屯田署長の発言に小町が唖然とする。
「はぁ!?だって原始人が守って…」
「正解の缶しか守ってはいけないなんてルールはないぞ。」
両津の発言に小町達はやられたと直感した。両津達はわざと不正解の缶を守っていたのだ。残りは4つ。これのどれかが正解の缶だが小町には分からない。
「まぁとりあえず…小町、見っけ。奈緒子、見っけ。」
「しまった!」
両津が青の缶を踏んで2人を退場させる。そのままどの缶が正解か分からず制限時間が過ぎ小町達はマイナス1点からスタートするはめになった。
「正解は青の缶だ。」
「騙された…」
「さすが原始人。卑怯者ね。」
「これもルール内だ。」
今度は麗子と早矢が鬼側となった。
「ルールは分かったわ。これは鬼側と蹴る側の駆け引きが重要ね。」
「そうですわね。ただ守るのでは無く欺くのも戦略に入れないといけませんわね。」
2人はそれぞれ白と赤の缶を守っている。両津と時行は遠くからその様子を見ている。
「赤か白のどちらかが正解なのでしょうか?」
「いや、違うな。」
両津が断言する。麗子が左近寺を退場させた。両津は時行に2人を監視するように指示して移動する。時行が2人を監視していると早矢が時行に気付いた。時行は慌てて隠れる。早矢は白の缶から離れない。その瞬間、両津が青の缶を蹴り飛ばした。2人が突然の両津に驚く。
「正解!両津チーム2点!」
「イェーイ!」
「やられたわ!」
両津がくるくる周りながら喜ぶ。
「よく分かりましたね。」
「缶の位置は覚えている。赤の缶と白の缶の位置から1番守りやすい場所にあるのが青だからな。」
両津チームが守る番になる。両津と時行が鬼側になるがどの缶も守っていない。蹴る側の纏達はどの缶が正解か分からずにいる。時行が駆け回り蹴る側を探している。
「時行って本当に小学生?」
纏はたまに時行が恐ろしく見える。このまま時間が過ぎるのはよくない。纏は意を決して飛び出し白の缶を蹴った。
「不正解。マイナス1点。」
「あぁ!もう!難しい!」
「フハハ!そう簡単に…」
「正解。プラス2点。」
「なにぃ!」
両津が驚く。小町が勘で蹴った黄色の缶が正解だった。時行が遅れて来る。
「やったー!」
「すみません両さん。」
「くそっ。マイナス覚悟で来やがったか。」
これでプラス1点。プラマイ0点となった。両津達の出番になる。鬼側は小町と奈緒子。2人は露骨に黒の缶を守っている。雑と残念ご隠れて2人を見る。
「怪しすぎる。」
「けど、あれが正解とか限らないんですよね?」
「普通の缶蹴りより神経使うよ。」
「雑、見っけ。残念さん、見っけ。」
あっさり見つかり退場してしまう2人。その隙に本当が青の缶に向かう。2人は慌てて追いかけるも本田が先に青の缶を蹴った。
「「しまった!」」
「不正解。マイナス1点。」
「ええ!?」
「「残念でした~!」」
「何してんだ本田ー!」
2人がニコニコで煽る。その後ろで根画手部が黒の缶を蹴り飛ばした。
「「しまった!」」
「正解。プラス2点。」
「ナイスだ根画手部!」
両津が喜ぶ。このターンで両津達は1点を獲得した。それを追う小町チームはマリアを投入した。両津とボルボが守る。
「ボルボ、とにかくマリアを探せ。」
「分かった。」
ボルボがマリアを探す。すると、マリアの制服が茂みの中にあるのを見つけた。ボルボはすかさず駆け寄る。
「見つけた!」
「残念、私でした。」
「しまったぁ!」
マリアの制服を着ていたのは麗子だった。ボルボの後ろにいた両津は慌てて走る。それと同時に麗子の制服を着たマリアが白の缶に向かって走り出した。両者同時に缶に足を出す。
「マリア、見っけ!」
砂埃が舞う。砂埃が晴れると半分消えていた白の缶があった。両津は足を抑え蹲っている。
「痛え…足が取れるかと思った。」
「壮絶な戦いですね。」
「これは…正解の缶だが一応、缶自体は踏んでるからアウトということで…」
両津はなんとか守りきったと喜ぶが痛みでそれどころではなかった。両津の代わりに時行が蹴る側に出た。鬼側は纏と椎名だ。
「頑張りましょう纏先輩!」
「おう!」
2人は赤の缶を守っている。両津はその赤の缶が正解と判断した。しかし、動く気配がない。このままタイムアップを狙っているようだ。
「これじゃあ、拉致があかんぞ。」
「両さんならどうするの?」
「誰かが囮になるが1番いいがあの位置じゃ囮も意味ない。」
外野から見ていた両津が状況を見て作戦を考える。纏が椎名に何か言っている。すると、椎名が眼鏡を取った。そのまま走り左近寺を見つけた。纏が踏んで左近寺を退場させる。
「まずい!椎名の奴、ヤンキーモードになりやがった!」
「おらぁ!コソコソしてねぇで出てこいやぁ!」
椎名が暴れる。がむしゃらに探して次々と見つける。残りは時行と中川だった。椎名が駆け回り探す。纏も2人を探す。すると、カサカサと音がした。纏が振り向く。一瞬、中川の制服が見えた。しかし、不自然に揺らめいている。
「時行、見っけ!」
纏は中川の制服を着た時行た判断して宣言した。しかし、中川の制服を持った中川だった。
「あっ!」
纏はしまったと思った。その瞬間、別の場所から時行が着た。纏は別の缶で宣言しないといけない。しかし、宣言するより時行が蹴る方が速い。
「椎名!」
「押忍!」
椎名が赤の缶に向かう。両者、ほぼ同時に缶に足をかけた。結果は…時行の方が速かった。
「正解。プラス2点。」
「ナイスだ時行ぃ!」
「すみません纏の姉御。」
「いや、これは騙された私のせいだ。」
そこからも拮抗した戦いが続く。小町達もだんだん追い上げ遂に9対8にまで追いついた。鬼側に小町とマリアがつく。両津は時行とボルボと一緒に隠れていた。
「ここで正解の缶を蹴れば勝利だ。」
「どうする両津?」
「まずは分かれる。わしが合図するまで蹴るな。」
「分かった。」
「分かりました。」
両津達は散開して様子を伺う。小町は缶蹴りが得意だ。下手に騙さず正解の缶を守ることに徹すればかなり厄介な相手だ。小町は黒の缶を守っている。正解は黒の缶で確定だ。両津はそう判断する。
「時行、ボルボ、根画手部、中川で一斉にかかれ!」
小町がその場を離れた。その時を狙った両津は見つからないように叫んだ。それを合図に全員が一斉に走る。マリアが中川を退場させる。小町も根画手部を退場させた。それでも時行とボルボがいる。小町が反応するより早くボルボが黒の缶を蹴り飛ばした。
「よっしゃあ!」
「不正解。マイナス1点。」
「なにぃ!?」
「残念でした~!やり返してやったわよ!」
小町はボルボを退場させた。時行はすぐさま隠れる。
「これで正解の缶を蹴らないといけなくなった。」
「どうしますか?」
「わしに考えがある。時行は見つからないように移動しながら音を立てて注意を引け。」
「分かりました。」
時行は移動しながらガサガサと音を立てていく。2人は警戒しながら見る。すると、小町が違う方向に走り出した。両津の制服が見えた。小町が茂みをかき分ける。そこにいたのは両津の制服を着たモモだった。
「またぁ!?」
小町が呆れる。至るところから音が聞こえる。そこに向かうもシャツを着た猫、ズボンを着たカラス、パンツを持ったサソリと両津が全然居ない。
「どこに居るのよー!」
「ここだ!」
両津が現れる。全裸に下駄を履き股間には葉っぱという海パン刑事よりひどい姿になっていた。小町達女性陣は目を覆う。両津はそれを合図に走り出した。
「時行!青の缶を蹴れ!」
「はい!その前に何か着ましょう!」
2人が青の缶に直進する。両津の裸を見て興奮そているマリアはもう使えない。小町が顔を赤くさせて走る。正解のようだ。3人がほぼ同時に缶に着く。
「ここで蹴れば勝ちだぁ!」
「やらせないわよ!」
両津がスライディングし小町がジャンプし時行が飛び蹴りする。両津が缶を蹴り小町の両足が両津の顔面に命中し時行の蹴りが両津の股間に命中した。
「正解!プラス2点!よって両津君チームの勝利!」
男性署員達が喜ぶ。しかし、当人の両津は悶えていた。
「か、顔と…チ…コが…潰れた…」
「これは痛いわね。」
「すみません両さん!」
喜ぶ署員達とは裏腹に勝利はしたものの痛みで喜べない両津とさすがに同情する小町と必死に謝る時行であった。