逃げ上手の転生記 〜亀有の破天荒警官と〜   作:虹武者

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カマキリの大逆襲!

 ある日、両津と時行がご飯にふりかけをかけて食べていた。中川と麗子が気になり聞いてみる。

 

「先輩、なんですかそれ?」

「食べてみるか?」

 

 両津に言われて食べてみる。緑色をしているがタンパクな味だった。

 

「思ってた味と違うわね。」

「何のふりかけですか?」

「カマキリだ。」

 

 その言葉に中川は吹き麗子は叫ぶ。

 

「こら!溢すな!行儀悪いしもったいない!」

「先輩、さすがにカマキリは…」

「今はコオロギだって食べる時代だ。昆虫食が流行るぞ。」

 

 休憩室にいた椎名は行かなくて良かったと思っている。それと同時にカマキリのふりかけを美味しそうに食べる時行が不思議だった。

 

「時行君は大丈夫なんですか?」

「はい!美味しいですよ!」

「時行様、凄いです…」

 

 食べ終わった時行。両津は既に新たな商売を考えていた。

 

「これからは昆虫食の時代だ。それに先駆け食用カマキリを育てる。」

「両津先輩。食べるため育てるってカマキリ達が可哀想じゃありませんか?」

 

 椎名の発言に両津が激怒する。

 

「バカヤロー!それ言うなら牛や豚はどうなる!?豚なんて猪を食用にした品種だぞ!鶏なんて産んだ卵も自身も食用にされるんだぞ!そっちの方が悲惨だろ!」

「す、すみません!」

「昔、豚がいた教室という映画があってな。一生懸命育てた豚をそのまま飼い続けるか食用にするかで意見が分かれた結果、食用にすることになって育てた豚が出荷されるというオチで終わった。それぐらい生き物の命をいただくというのは簡単なことじゃないんだよ。」

「そ、そんな映画があったんですね。」

「最近の子は知らんのか。」

 

 両津が頭を抱える。それでも食用カマキリをする気はあるようだ。両津は時行と椎名を連れて工場に向かう。そこでは既に食用コオロギの飼育が始まっていた。

 

「こんなにコオロギが…」

「なんだ椎名。コオロギが苦手か?」

「コオロギというより虫全般かダメです。愛くるしさの欠片もないあの独特なフォルムが生理的に無理です。」

 

 椎名がコオロギを見ないようにしている。両津はコオロギパウダーを時行に食べさせる。

 

「どうだ時行?」

「サラサラした食感の中に確かに肉々しい弾力を感じます。」

「時行様、お願いします。今だけ食レポは止めてください。」

 

 耳を塞ぐ椎名。これ以上は無理だと出て行く。両津はさらに奥へと進む。奥の部屋に入ると今度は大量のカマキリがいた。

 

「これがカマキリという虫ですか。」

「時行は知らんのか?」

「はい。そもそもイナゴ以外の虫を見た記憶が…」

「カマキリは肉食の昆虫で主にバッタなどを食べる。夏から秋の昆虫で稲を食べるバッタを食べるから益虫としてよく知られている。」

「へぇ。」

 

 時行はカマキリの卵を見つける。

 

「これは?」

「卵だ。この中に何千というカマキリの幼虫がいる。」

「なんかおぞましく感じてしまいますね。」

「カマキリはいろいろ特殊な昆虫でな。交尾した後、どうなると思う?」

「え?」

 

 時行は考える。しかし、何も思い浮かばない。ギブアップして両津に聞く。

 

「カマキリの雌が雄を食べる。」

「ええ!?」

「産卵はかなりの体力を使う。その体力を維持するための栄養として雄は1番いい。それに、頭を食べることで交尾しか出来ないようにする。」

「雌って恐ろしいですね。」

 

 時行のカマキリを見る目が変わる。

 

「いつの時代もどの生物も女の方が恐ろしい。人間は男の方が大きいが他の生物は女の方が大きいことが多い。それに、ほとんどの動物は女性上位社会だ。象やハイエナは代々メスがトップだし鮟鱇の仲間にはメスと合体して生涯を終えるオスだっている。」

「鎌倉では男性上位でした。」

 

 生物の世界を知り驚く時行。両津はいい感じに育ったカマキリを担当の人に送り加工してもらう。ケージに入っているカマキリ達が向こうの部屋に消えて行くのを見た時行はムズムズしている。

 

「両さんが言っていた豚がいた教室の話、なんか実感してるかもしれません。さっきまで生きていた命をいただくって凄いプレッシャー感じてます。」

「今の時代は食べる物に困らない人が多いから食べ残しなどが多い。昔は食べ物を作るだけでも大変だった。食べる物に小松店いる国のことを考える前に食べ物を作ってくれる人のことを考えてやらんとな。」

 

 加工が終わり両津と時行のところにカマキリの粉末がくる。

 

「最近は簡単に時短で加工が出来るからな。ありがたみが薄れていくばかりだ。わしがガキの頃なんか食うためにいろいろと苦労してたもんよ。」

 

 両津と時行はご飯にカマキリ粉末を掛けて食べる。

 

「どうだ時行?」

「…しっかりと味わっています。」

「それでいい。」

 

 両津はこれなら売れるだろうと考え担当の人と交渉を始めた。両津はカマキリを受け取ると工場を後にした。外で待っている椎名が両津が持っている箱を見て下がる。

 

「両津先輩、その中って…」

「カマキリだ。」

 

 椎名はさらに下がった。両津は時行を連れて寮に入る。早速、カマキリを使った料理を考案し始めた。まずは素揚げ、次に天ぷら、唐揚げととにかくいろんな料理を試した。

 

「どうだ時行?いけるか?」

「…その…カマキリ達がこちらを見ているのが気になり味どころではありません。」

「気にするな。世界じゃザリガニやタガメだって食べるんだ。今さらカマキリぐらいでビビることはない。」

「今まではこんなことなかったはずなのですが…」

 

 一応、素揚げや天ぷらを食べる。カマキリ達が両津と時行をジーと見ている。

 

「どれもイマイチという感じでしょうか?合いませんね。」

「そうか。セミやカブトムシと違って食べれる部分が多いからいけるかと思ったんだがな。やっぱり粉末にするのが1番か?」

 

 時行が帰ってからも両津は他にないか考える。いろいろ試すが美味しくない。両津は明日にしようと寝た。その夜、カマキリ達がケージを鎌で切り脱走した。

 

「いない!あいつらがいない!」

 

 翌朝、起きた両津が必死に探すも見つからない。

 

「大丈夫だ。今回はカマキリ。それも残り20ぐらいだったはず…前と違って被害も少ない。」

 

 両津は虫取り網と新しい虫かごを持って寮内を探す。それを見つけた寮母が両津に話しかけた。

 

「何を探してんだい両さん?まさか、ゴキブリじゃないだろうねぇ。」

「安心しろ。今回はカマキリだ。」

「カマキリですか?」

 

 そこに時行が来た。昨日のカマキリが気になっていたようだ。両津は切られたケージを見せて話した。

 

「次からは金網じゃなくガラスの虫かごに入れる。時行も手伝ってくれ。」

「わ、分かりました。」

 

 時行は寮母と一緒に空き部屋に入る。カマキリの姿はない。押入れの中とか探すがどこにもいない。この部屋にはいないようだと扉を閉める。そこにいた。扉の裏側にびっしりとカマキリ達が張り付いていた。しかも、20匹は軽く越えている。

 

「どこにもいませんよ。」

「もう外に逃げたのか。」

 

 両津がカマキリ探しを断念する。仕方ないとまた工場に向かう。その道中、時行は何度も後ろを振り返る。

 

「どうした時行?」

「いえ…何故か視線を感じるのですが…」

「…誰もいないぞ。」

 

 両津も後ろを振り返り探すが誰もいない。時行も気の所為かなと思い気にしなくなる。が、そこにはカマキリ達がいた。上手く草陰に隠れたり草そのものに擬態して後をつけていた。

 両津と時行が工場に入る。担当の人とまた交渉してカマキリを手に入れる。2人が工場を出た。その瞬間、1匹のカマキリが両津の背中に飛び移った。

 

「あれ?両さん、背中にカマキリがいますよ。」

「何?ここからは出てないはずだ…ぞ…」

 

 両津はゾッとした。まさか、このカマキリは今朝脱走したカマキリなのでは…そう思い始めた時、突然カマキリが両津の首を攻撃した。

 

「いてぇ!」

 

 両津は慌てて振り払う。その時にケージを落としてしまった。時行が慌てて拾おうとする。そこに他のカマキリが来て妨害した。さらに、カマキリ達は連携しケージに付いている電子ロックを解除した。

 

「両さん!カマキリ達が逃げます!」

「くそっ!逃がすか!」

 

 両津が捕まえようとするとさらに、カマキリの援軍が来た。2人は慌てて工場に逃げる。これで大丈夫だろうと思っていたが両津と時行に張り付いていたカマキリ達が中からボタンを押して扉を開けた。

 

「両さん…」

「まずいぞ…」

 

 2人は戦慄する。大量のカマキリ達が工場に入ってくる。

 

「逃げるぞぉ!」

「はい〜!」

 

 2人は奥へと逃げる。それを追うカマキリ達。

 

「完全にZ級映画のワンシーンだ!」

 

 両津と時行は急いで部屋に入り鍵を閉めた。これでもうカマキリ達は追って来ない。安心する2人。どんな部屋か見ると虫を加工してパウダーにする場所のようだ。ガラスの向こうで全自動で行われる加工に時行は目を瞑る。すると、機械が動かなくなった。2人は気になり覗く。そこに大量のカマキリが現れ加工直前のカマキリを救出した。

 

「なに!?どうなってる!?」

「両さん!後ろ!」

 

 時行が叫ぶ。両津が振り返るといつの間にかいたカマキリ達が鍵を開けていた。扉が開き中に入るカマキリ達。2人は逃げ場がないため突撃した。

 

「痛い!」

「うわぁ!」

 

 カマキリ達の猛攻を凌ぎ外へと向かう。しかし、どこに行ってもカマキリの群れが2人を襲う。そこにアナウンスが流れた。

 

『き、緊急連絡!突然、カマキリが…ぐわぁ!』

「完全にモンスターパニック映画だぞ!」

 

 2人はどこに行けば外に出られるかすら分からず逃げ惑う。なんとか入った部屋には何もない。両津はそこで気付く。ここはカマキリを飼育していた場所だ。そのカマキリがいないということは…

 

「この工場にいるカマキリが全員脱走した。」

「え…」

 

 2人の汗が止まらない。そこにカマキリが押し寄せる。よく見ると飼育していたカマキリと違う姿、種類のカマキリもいる。どうやら、野生のカマキリも援軍に来ていたようだ。

 

「ア、アハハハ…完全に逆襲にきたな…」

「た、食べようとしてすみませんでした…」

 

 ジリジリと近寄るカマキリ達。もう逃げ場がない。カマキリ達は2人に一斉に飛びかかった。2人の悲鳴が工場中に響き渡る。

 

 後日

 

『突然、食用カマキリが工場を脱走、工場を占拠してから丸2日経過した今でも…』

「時行様と両津先輩に連絡が取れません。」

「まさか…」

 

 ニュースを聞いて2人を心配する椎名達。その2人は…

 

「両さん、これって…」

「完全にわしらを加工する気か!止めろ!スプラッタ映画になるぞ!」

 

 カマキリ達に逆に加工場へ連れて行かれるのであった。

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