ある日、両津達は新開発の手錠を中川から説明を受けていた。
「これが警視庁で開発された最新式の手錠です。」
「中川、枷に繋げる鎖がねぇぞ。」
両津が手錠を持つが普通の手錠にはあるはずの鎖がない。もう片方は中川が持っている。すると、いきなり手錠がくっついた。それに驚く両津達。
「これを繋げているのは鎖じゃありません。磁石です。」
「磁石?」
「そうです。リニアのような強力な電磁石が手錠同士を繋げています。詳しい内容は言えませんが磁石によって好きな距離で繋げることが出来ます。」
そう言って中川はスマホを操作してくっついた手錠を離した。しかし、今度は10cmぐらいで離れなくなった。
「これの利点はいくつかあります。まず、手錠を掛けたままの着替えが可能な点です。これにより着替えの途中に逃げられるなんてことがなくなります。次に距離を決めれるので従来の手錠より拘束の幅が広がります。そして、手錠を首にかけて絞め上げることが出来なくなります。」
「なるほど。前も手錠を運転手の首に掛けて気絶させて逃走なんてあったからな。」
「はい。その心配がなくなります。まだ、実証実験の途中なので実用化はまだ先になりますがこれが浸透すれば多くの手間や心配を省くことが出来ます。ちなみに、管理したスマホでの解錠する電子式なので鍵も必要ありません。」
両津が感心する。そこに渚が来た。
「渚!」
「遊びに来ました!」
「よう!今、面白い物があるぞ!」
「両津、ふざけてないでさっさと返せ。」
大原部長が両津に手錠を返すように促す。しかし、両津は楽しそうにいろんなところに手錠を掛けた。
「待ってください部長。こんな面白い物すぐに手放すなんてもったいないですよ。」
「そう言って前、私と手錠で繋がれたことあるわよね。」
「あの時とは違うだろ。それに今度はそうならないように注意するよ。」
両津が手錠で遊んでいると突然犬が来た。犬は手錠に興味を持ったのか両津に襲いかかる。両津は慌てて犬を引き離そうと暴れた。その結果、中川達を巻き込んだ。
「いててて…」
「両津!手錠は!?」
「えっと…大丈夫です部長!わしには掛かってません!」
「バカモン!どこにあるのか聞いておるのだ!」
両津達が手錠を探す。すると、時行と渚に掛かっているのを見つけた。
「あ、あれ?」
「手錠が…」
「まったく。中川、すぐに外せるか?」
「え、えっと…スマホは…」
中川がスマホを探す。すると、両津が踏んで壊しているのを見つけた。
「あ〜!」
「すまん。」
「あの、これどうやって外すのですか?」
「本来ならこのスマホに登録されているパスコードを入れれば外せるのですが…今回はパスコードは付けてません。なので、開発担当がいないと外すのが出来ません。」
「その開発担当を呼んできてくれないか?」
「それが出張で福岡に。」
中川が言うには3日福岡に滞在するらしい。それを聞いた大原部長達は両津を見る。両津もやっちゃったと気まずそうに笑顔になる。
「両津、貴様の責任だぞ。」
「そ、そうですね。あと、あの犬のせいでも…」
「責任持ってお前がなんとかしろ。」
「わ、分かりました。」
両津は仕方なく時行と渚を連れて行った。以前、両津と麗子が手錠で繋がれたことがあったがそれとは違い服で簡単に隠せるのが良かった。2人も近いだけで動くことは出来る。しかし、10cm以上は離れることが出来ない。
「3日後までどうするかだが…明後日学校か。」
「こんな状態で行けば間違いなく笑われます。」
2人は恥ずかしそうに顔を赤くする。すると、時行がモジモジし始めた。
「すみません。便所に…」
「仕方ない。コンビニに入るか。」
両津達はコンビニに入る。時行がトイレに入り渚が外で待つ。
「便利だなその手錠。前は扉を開けるか一緒に入らないと用なんて足せなかったからな。」
「時代の進歩に感謝しています。」
渚が安心する。しかし、なかなか進まない。時行が出てきた。まだ終わってないようだ。
「すみません。右手がずっと扉から離れなくて…脱げません。」
「渚、入ってやれ。」
「さっきの言葉、撤回します。」
渚が入る。時行がなんとかズボンとパンツを下ろす。渚は見ないように目を瞑る。なんとか終わりトイレを出る。2人とも顔を赤くする。
「両さん。警察官はこんなこともする時があるのでしょうか?」
「お前らはまだマシだ。部長とくっついた時なんて悲惨だったぞ。」
両津は語る。渚の家に行き事情を話す。母親は呆れていた。今日は超神田寿司に泊まることにする。事情を聞いた夏春都も呆れている。
「あんたも毎度面倒事を持ち込むね。」
「ま、まぁ、たまたまですよ。」
「両津家の男はいつもこうだ。」
夏春都は呆れながらも了承した。お風呂に入る。仕方ないとはいえ時行と渚は一緒に入っていた。
「時行君ってやっぱり今の人じゃない気がする。」
「え!?いきなりなんですか!?」
「だって見た目が既に品格あるし弓矢凄い上手だし今じゃ考えれない性癖だし…」
「最後は両さんのせいです。」
恥ずかしくなった時行は湯に顔半分着けてぶくぶく言っている。その姿さえ美しく見える。
「時行君って凄い身分の高い人の子?」
渚の質問にブクッと吹く。お湯を飲んでしまいケホッケホッと咳き込む。
「え、え〜と…そう思った理由は?」
「品格がある。礼儀正しい。変態。」
「最後は身分関係ないですよね!?」
時行がツッコむ。なんとか自分の素性を隠さないと思い言い訳を並べる。
「私は昔からの武士の家系てそういうのに厳しくて両さんの周りの人も中川さんや麗子さんや早矢さんのような身分も高く礼儀正しい人達なのでそれを見たからでしょう!」
「なんか嘘くさい。」
ギクッとする時行。
「別に言いたくないならこれ以上聞かないけど友達にも言えないことなの?」
「そ、そうなんです。」
(すみません。これだけは知られてはいけないのです。)
時行は渚に秘密にしていることに罪悪感を感じつつもなんとか誤魔化そうとも考える。その結果、逆上せてしまいお湯の中へブクブクと沈んでしまった。
「時行ー!」
渚が慌てて時行を湯船から出す。そこに両津が来て時行を救出した。時行が目を覚ますと渚が心配して見ていた。両津がそこに食事を持って来る。
「起きたか。まったく、心配かけやがって。」
「すみません。」
「ちゃんと食え。お前が起きるまで渚が待っていてくれたから感謝するんだぞ。」
「は、はい。」
両津が部屋を出る。
「あ、ありがとうございます。」
「本当にびっくりしたよ。」
2人で一緒に食事を摂る。そのまま就寝し翌日…
「マジっすか!そんなことあるんすか!」
「やっぱり時行は面白い。」
事情を知った弧太郎達が大爆笑している。2人は顔を真っ赤にさせていた。
「でも、いいんですか?これ、世間にはまだ出ていない手錠ですよね?」
「そこは両さんが始末書を書くことで納得したみたいです。」
「原因とはいえ不憫ですね。」
離れなくなっているため渚の席を時行の隣にする。周りの目が凄い気になる状況で勉強するのが難しい。時行が何か書く度に渚の手が当たる。時行が挙手すると一緒に渚も挙手してしまう。
「た、大変すぎる。」
「手が動かしにくい。」
1番大変だったのは体育の時間だ。今回はドッジボールだ。いつもボールを全て避ける時行だが渚と繋がれているため動きにくい上に渚が当たると一緒に出ることになった。
「これは…」
「2人の力を合わせないといけないですね。」
弧太郎が投げるボールを避ける。そこから何度か避けるも遂に渚に当たってしまう。
「思った以上に難しいですね。」
「息を合わせて…」
2人は悩む。とりあえずシンクロさせてみようと同じ動きをする。上手くいくわけなかった。結局、凄い疲れるだけだった。2人は体育の次の授業を寝てしまい怒られた。放課後になりやっと帰れると一安心する。しかし、このままの状態で帰らなければなない。
「凄い恥ずかしいです。」
「上手く行かないと普通に動くことすら難しいです。」
「じゃあ、ダンスしてみたら?」
静の提案に首を傾ける。そこに亜矢がスマホを見せた。社交ダンスの動画だ。
「こういうのいいかも!2人で息を合わせてダンス!仲良く出来るよ!」
「既に仲良いと思いますが…」
「やってみる価値はあるっすよ。」
渋々やってみる。時行が女性的に見えるため美男美女のダンスに見える。試しにと静が時行の髪留めを外す。うん。分かる。紛れもない美少女だ。
「やっぱり時行にち〇こ生えてるのおかしいっすよ。」
「おかしいってなに!?」
「ごめんね。私もそう思ってしまったわ。」
いつの間にかいた担任も2人のダンスに目を奪われていた。そのまま踊りながら帰らされる。2人は何の罰ゲームと思いながら踊る。しばらくして気付く。弧太郎達が見ていないなら踊る必要なくね?
「普通に帰りましょう。」
「そうしましょう。」
2人は疲れていた。もうすぐ夜だ。2人は一休みしようと休める場所を探す。その時、女性の悲鳴が聞こえた。慌てて行くとひったくりが女性から鞄を奪い逃走した。慌てて渚が追いかけるも時行が女性の方へ行ったため手錠に引っ張られて転けた。
「早く追いかけないと!」
「まずは彼女が無事か確認したかった。」
2人は女性の無事を確認してひったくりを追いかける。しかし、かなり出遅れたため見つからない。すると、時行は渚をお姫様抱っこして塀の上を走り始めた。
「時行君!?」
「この辺りの道は両さんとよく一緒に歩いているので道は覚えています!だから…」
時行が走っているとひったくりを見つけた。先回りに成功したことに渚が驚いている。2人はひったくりの前に着地する。
「なんだ!?」
ひったくりが殴ろうと突っ込む。それを2人は踊るように避けた。何度も殴るが全て避ける。さっきのダンスがこんなところで役に立った。ひったくりは埒が明かないと逃げる。そこに渚が猫騙しをした。それに怯んだひったくりに2人で体当たりして伸し掛かった。そこに両津が来る。伸びたひったくりの上でぴーさする時行と渚。
「やりましたよ両さん!」
「バカヤロー!何危ないことに首突っ込んでんだ!」
褒められると思っていた2人は両津に叱られ目を丸くして驚く。両津は2人の頭を軽く殴る。
「まったく。わしが近くにいたから…こいつが武器を持ってなかったから良かったものの、次からはこういうことは止めておけ。」
「「は、はい…」」
2人はショボンとしてしまう。それを見た両津は反省したと判断し優しい顔になる。
「まぁ、無事ならそれでいい。何かあったらわしに連絡しろ。いいな?」
「「は、はい!」」
「よし!わしはこいつを連行するから先に帰れよ。」
そう言って両津は去って行った。2人は互いの顔を見てクスリと笑う。何となく互いのことが分かってきた感じがする。
「帰ろっか。」
「はい!」
翌日
「「取れた〜!」」
担当の人が来て手錠を外してくれた。良かったと喜ぶ2人。両津は手錠の輪っかに指をかけてグルグル回している。
「お前のせいで大変な目に遭っているんだぞ。」
「あれは…」
「ワンッ!」
「この犬のせいですよ!」
両津が来た犬に指を向ける。すると、犬はまた両津に飛びかかった。ドタバタする派出所内。両津が犬を追い出す。
「両津!手錠は!?」
「ちゃんとここに…あれ?わしの手に掛けられてる。」
両津が右腕に手錠が掛けられているのに気付く。もう片方はどこだと探すと大原部長の左腕に掛けられていた。2人の顔が青ざめる。
「中川、今すぐ外すことは…」
「すみません。先程、ニューハンプシャーに1ヶ月出張すると言って出て行きました。」
「今すぐ連れ戻せ!」
「もう無理です!」
両津が中川に詰め寄るももう遅い。
「部長と1ヶ月なんて嫌ですよ!」
「バカモン!それはこっちのセリフだ!」
「懐かしいオチですね。」
「結局こうなるのね。」
中川と麗子が呆れる。
「これがいつもなんですか?」
「いつもです。」
「なんだか両さんらしいですね。」
時行と渚がクスクス笑う。いつも以上に仲良くなった2人。そんな2人は口喧嘩する両津と大原部長を見て笑っていた。